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15の春までに
伝えたいことがある

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

今の自分の考え方や価値観は、いつごろつくられたんだろう。

根っこはやっぱり、子どものころの体験や環境にあるような気がします。

社会をつくるのが人で、人の考え方をつくるのが教育だとすると。教育に携わることは、数十年後の社会をつくるのと同じことなのかもしれない。取材を通して、そんなことを思いました。

舞台は岡山県、西粟倉村(にしあわくらそん)。

人口約1,400人の西粟倉村には、高校がありません。

小学校、中学校と顔なじみのなかで育った子どもたちは、15歳の春、村外という大海原へ漕ぎ出すことになります。

“15の春”までに、外の世界でも自分らしく生きていく力を、この村で身につけてほしい。

一般社団法人Nestはその思いを胸に、学校教育のコーディネートから社会教育のプロデュースまで、多岐にわたる活動を通じて地域教育のあり方を探究し続けているチームです。

今回は、今年度から新たに「子どもの居場所づくり」プロジェクトを始めるにあたり、その拠点を一緒に企画・運営するメンバーを募集します。

地域×教育に心がふれる人、ぜひ読み進めてみてください。

 

岡山駅から山陽本線に乗り、一両のワンマン列車に乗り換える。車窓から山々を眺めて、計2時間ほど。

車内で切符を渡し、無人の西粟倉駅に降りる。

車で3分ほどの、あわくら会館へ。

Nestの活動拠点であり、図書館や役場、公民館を合体させたような複合施設だ。中へ入ると、ふわっと木の香りがする。

まずは、西粟倉村教育委員会の方に話を聞く。

というのもNestは、教育委員会の榎原(えばら)さんと白岩さんの始めた活動が起点となって設立された団体。

今もNestと教育委員会は、二人三脚でプロジェクトを進めているそう。

向かって左が榎原さん、右が白岩さん。

おふたりとも、西粟倉村で生まれ育った。

「私も15の春に、進学で一度村を出ているんです。当時は村出身であることが恥ずかしくて、周りに言えないような感覚でした」と榎原さん。

「でも外に出たら、あらためて西粟倉村のよさに気づいて。自分もこの村で二児の母となり、子どもたちが村出身であることを誇れるようにしたい、子どもの活躍できる場を地域にもっとつくりたい、と思うようになったんです」

白岩さんも、教育委員会の仕事で地域教育に熱心な先生と行動を共にするうち、村での教育に興味を持ち始めた。

「僕らの世代は、『別に西粟倉で一生暮らさんでいいけん、就職は都会で好きなようにやればいい』と教えられていたんです」

「でも今の教育は、いったん外に出た子どもたちが大人になったとき、『西粟倉に帰りたい』がファーストチョイスになるのを目指せるんだ、と気づいて」

村の魅力を学び、村出身であることを誇りに思えるように。“15の春”に村の外へ出ても、自信をもって意見を発信できるように。

榎原さんと白岩さんは、そのための仕組みをつくろう、と動き始める。

そこで生まれたのが、「あわくらみらいアカデミー」。子どもたちの「やってみたい」を形にするのがコンセプト。

まずは村の中学生で実行委員会をつくり、地域の大人と子どもが話す場を一緒に企画・運営することから始めた。

走りながら、考える日々。

子どもたちの成長ぶりに手応えを感じる一方で、役場の仕事と並行していく難しさも感じ始める。

もっと腰を据えて、西粟倉の教育全体を考えていける組織が必要だ。そう考えて2020年、Nestを立ち上げた。

 

思いを受け継ぎ、Nestの代表を務めるのが福岡さん。現在のNestメンバーは、福岡さんを含めて3人だ。

福岡さんは埼玉県出身。大学では生物学を専攻し、カラスの研究をしていたそう。

地域おこし協力隊として赴任した山形県遊佐町で、地域教育の実践者と出会い、興味を深めた福岡さん。その後沖縄・久米島でも地域学習の実践経験を積み、これまでの経験を西粟倉で活かしている。

西粟倉の教育全体を考えるというだけあって、Nestの活動は幅広い。

学校教育のコーディネートと、社会教育として運営する「あわくらみらいアカデミー」。さらに大学生や社会人を対象にした「さとのば大学」の受け入れと、教育移住の窓口業務。その4部門が現在の柱。

「学校教育と社会教育の両面を横断的に見ている団体は、全国でもまだ多くないと思います。地域での教育を多方面から考えて実践していける土壌があるのは、Nestの強みですね」

その土壌があるのも、役場との連携があってこそ。

「役場の方が教育について熱く語ってくれること自体が大きな価値です。 基本は僕らの考えに任せてくれつつ、こちらが相談すれば驚くほどフットワーク軽く行動してくださる。本当に心強いし、西粟倉ならではだと思います」

今年度からはさらに、子どものための新たな拠点づくりプロジェクトが始まる。

あわくら会館の横にある、今は使われていない建物を活用する予定。

あるときは、ランドセルを置いて自然遊びに繰り出すための基地として。またあるときは、やってみたいことに没頭する工房として。さらに本屋や博物館、美術館、映画館など文化的な要素も取り入れるべく、構想をふくらませているとか。

「イベントメインだと、どうしても来てくれる子が固定化されてしまうのが課題でした。新しい拠点は、放課後にふらっと訪れてもすぐ『やってみたい』にチャレンジできるような場にしていきたいんです」

今回募集するのは、この拠点の企画運営を主に担当する人。もちろんひとりきりではなく、Nestメンバーや役場などと相談して進めていく。

「最初の1、2か月は慣れるのが仕事です。先輩について、周りを観察するところからで大丈夫。だんだんと、自分自身の関心をNestの取り組みとかけ合わせながらやっていけるといいですね」

Nestにはスタッフ個人の興味を大切にする風土があり、ほかのスタッフも自分の関心を起点に、Nestの企画を生み出したりしているそう。

一方で、「黒子としての役割も楽しめる人」がいいと、福岡さんは添える。

「教育って、庭づくりだと思うんです。僕らの仕事は、環境を整えること。きれいな庭園を見たときに庭師のことを考えないように、子どもたちにも僕らがやったことを悟られてはならないと思っていて」

「いまやっていることの本当の成果は、もしかしたら僕らが死んだ後に出てくるかもしれない。それくらいのスケール感で働くことを、それもいいね、と思う人が来てくれたらうれしいですね」

 

次に話を聞いたのは、今井さん。

2020年の設立時にNestに入り、教育委員会の榎原さん、白岩さんとともに奔走してきた。西粟倉に来て、もうすぐ3年。

現在は小学校の教育コーディネーターや、あわくらみらいアカデミーの伴走などを行っている。

奈良出身の今井さんが、子どもに興味を持ったのは大学時代。乗馬や自然遊びを行うNPO活動を通して、子どものフラットさに惹かれた。

「学校に通う子も、不登校の子も混ざって活動していて。大人は難しく考えがちだけど、子どもはその場で自分と相手の考えを交流させて、どんどん話を進めていく。この人たち、すごいな!って」

Nestでも、子どもたちと同じ目線でやりとりできることが楽しいそう。

「一緒に学びを得るというか。『先生と生徒』じゃない関わり方ができる仕事ってなかなかないと思うんです。その関係だからこそ伝えられることも、いろいろありそうだなと思ってます」

特にやりがいを感じるのは、子どもたちが「やってみたい」を叶えた先で、自分からさらに吸収しにいく姿勢が見えたとき。

「例えば学校教育ではこの前、生徒たちがクッキーの販売を行う授業をコーディネートして。実施後、子どもたちが先生に『もっと売りたかったのに〜!来週やろうよ!』と言っている姿を見て、この授業を一緒につくれてよかったな、と思いました」

「西粟倉というフィールドを、自分自身も楽しんでもらえる人に来てもらえたらうれしいですね。西粟倉は、『やりたいことを言ってたら、叶っちゃった』ということが多いので」

今井さん自身、お茶が好きと話したら「じゃあ、地域の人にふるまう場をつくろうか」と、月1回、Nestカフェという取り組みをスタート。

さらに和菓子づくりのイベントをきっかけに和菓子への興味も高まり、製菓学校の通信講座を受講して、村内でのイベント出店も行っているとか。

「役場の方をはじめ、できない理由を探すんじゃなく、できる方法を一緒に探してくれる人たちが本当に多くて。それが『やってみん!』精神の西粟倉をつくってきたんだなと、すごく思います」

 

福岡さん、今井さんのもとに1年ほど前から加わった、青木さん。主に中学校の教育コーディネートなどを行っている。

青木さんは宮城県出身。11歳から大学まで、国際教育系のNPO団体でグローバルに活動していた。進路に悩み、まずは社会経験を積もうと始めたインターンがきっかけで、Nestへたどり着く。

「西粟倉村のスローガンが『生きるを楽しむ』なんですけど、出会う大人がそれを実践している方々ばかりで、素敵だなと思って」

「私もここに住んでから『生きるを楽しむ』がどんどんできるようになってきたんです。猫を飼いたいと言ったら、今井さんが家探しを手伝ってくれて、地域の方が猫を譲ってくださって、猫との暮らしが始まったりとか」

今井さんの話していた、「やりたいことを言っていたら叶う」そのものですね。

仕事のほうは、どうですか?

「いわゆる田舎でのんびり、のイメージとは全然違います(笑)。毎日が激動で、1日も同じ日はないというか。体力も必要だなと」

「でもいろんなことが起きる環境はおもしろいし、『働くって楽しいよね!』と言えるかっこいい大人たちが、この村にはたくさんいるんですよ」

働く楽しさ。青木さんにとっては、たとえばどんなことでしょう?

「子どもたちの目がきらきらしている瞬間を見ると、ああ、やっててよかったなって思います。eスポーツ大会を開催してみたい!とか、劇団をつくってみたい!って言ってくれたりとか」

「親でも先生でもなくて、一緒にやりたいことをやってみる、良い意味でのいたずら仲間みたいな関係を築けるのが、すごく楽しいです」

取材の合間、Nestが社会教育の一環として伴走している、小中学生が運営するカフェの打ち合わせを見学させてもらった。

この日の議題は、会場で流すBGMや、接客フローについて。

今井さんは子どもたちの発言を引き出しつつ、それを土台に問いを投げかけて、話し合いを進めてゆく。

途中、みんなで上のフロアに行き、役場に施設の借用書を出しに行く場面も。

役場の窓口では、大人は後ろでそっと見守っていた。この関係性が、いいんだろうなあ。

 

西粟倉村にはすでに、豊かな土壌があります。

教育委員会のふたりが耕した土地へ、Nestメンバーが集まって懸命に苗を育てる。花もたくさん咲いているけれど、きっとNestのみなさんが本当に見ているのは、50年先に広がる森なのだと思いました。

このチームの一員となって、一緒に未来をつくっていきたい人。

ぜひ西粟倉村で、話の続きを聞いてみてください。

(2023/04/19 取材  渡邉雅子)

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