求人 NEW

地域の発展と重なるように
知るほど豊かな能登の魅力を
温泉旅館から伝える

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

おいしいものを食べて、温泉に入って、きれいな景色にみとれて。

温泉旅館で過ごす、うるわしい時間。それが土地に根ざしていて、滞在することがその地域の発展にもつながるならば、もっとうれしい。

多田屋は北陸屈指の温泉街、和倉温泉にある明治時代創業の旅館です。

「旅館と地域の発展が重なるようにありたい」と話すのは、多田屋の代表、多田健太郎さん。

その多田屋で、客室係を軸とする旅館業務全般を担うスタッフを募集します。

旅館という日本文化の土台のうえに、どうやって地域と時代、それぞれに沿ったあり方をつくっていけるか。

心身の癒しだけでなく、知的好奇心も満たすものが求められるなど、旅が多様に変化している今だからこそ、やりがいのある仕事だと思います。

 

高層ビルのように背の高い温泉宿がそびえる和倉温泉の中心部から、さらに車を走らせると海がひらけ、多田屋が見えてくる。

多田屋では海に一番近い6室が貴賓室になっていて、近年は部屋から釣りができるということで話題に。 

遮るもののない海を眺めて釣りをして、露天風呂に入って。さぞ気持ちがいいだろうな。

「ホテルもマンションも高層階がいい部屋とされますよね。でもうちは自然に一番近いところを特等席にしているんです」

そう話すのは多田屋の代表、多田健太郎さん。

大学時代にアメリカに留学、東京のIT系広告代理店に勤務したのち、家業を継ぐため帰郷。2015年に6代目の代表に就任した。

多田屋の創業は明治時代に遡り、和倉温泉のなかでも1、2番に数えられる老舗だという。

「戦争やオイルショックなど、社会経済環境の大きな変化も経験してきました。それを超えてきた旅館には何かある。変化に対する強さは受け継がれるものだと思うんです」

健太郎さんが戻ってきた当初は、一緒に働く人のほとんどが「私たちはお父さんと仕事してるんです、あなたは何もわからないですよね」というアウェイな状況。そこで自分が大事にしたい価値観を対外的にも、社内にも発信する想いでつくったのが、能登を発信するwebサイト「のとつづり」だった。

「のとつづり」には、土地の空気や人の魅力を伝える写真やインタビューが豊富に掲載されていて、思わず能登に行きたくなる。

「ただ、『館内でその世界観が表現されていない』と入社まもないスタッフに指摘を受けたことがあって。ショックでした(笑)」

「それからずっと、価値観を共有しあいながら、伝えたいことを形にしようと努力してきています」

たとえば、それまでは県外品の土産物も多く扱っていた売店を、能登の名産品を発信する場に改装。調理場もフロントも客室係も、みんなで話し合いながら売り場をつくった。

コロナ禍のなかでは料理改革を実施。7種類ほどに分かれていた献立を一本化し、品数も10品から6品に絞り込んだ。

そして食材のほとんどを地場産にして、地域の農家や漁港など、生産者とのつながりを密につくってきた。

「うちが発展することで、地域も発展するビジネスモデルにしたいんです。ある程度規模があるからこそ、地域にもたらせる効果があると思いますし、そこに僕らがやる意味があるはず」 

「これからは、旅館と一緒に地域のものをどう磨き上げていくかが大事だと思います。酒蔵やほかの旅館と、短期人材交換・育成プログラムみたいなこともやってみたい。そうすることで理解が深まって、新しい発想が生まれたりもするんじゃないかな」

今回募集するのは、客室係を軸としながらフロントや売店のカウンターなど、オールラウンドに仕事をするスタッフ。

これまでは業界的に分業が主流だったものの、旅行の個人化が進んでいることもあり、ニーズに柔軟に対応できるほうが働きやすく、効率も良い場面が多くなってきているそう。

現在は支配人のいない多田屋。ゆくゆくは、そうした仕事の全体像を把握する人のなかから育っていくのが理想だと思う。

「旅館全体の仕事をわかっているほうが、お互いに手伝いあえたり、それぞれの事情がわかったりして、気持ちのうえでも円滑に働けると思うんです」

健太郎さんは、どういう人と働きたいですか?

「接客業の経験は問わないので、これまでの旅館のあり方にとらわれない人に来てほしいですね。ほんとうにこれは必要なのか、フラットな目線で物事を見ながら、より良いサービスと働きやすさ、両方が叶うあり方を一緒に考えていってもらえたら」

「それぞれの人の魅力が伝わる、その人らしい接客をしてほしい。僕も、人の個性をうまくいかした経営をしたい。いいスタッフが集まってきてくれているから、その人たちが活躍できる場として、旅館をやりたいと思っています」

 

現在、オールサポートに近い形で働いているのが中平(なかひら)さん。

「客室係を中心に、フロント、売店、お酒の担当をすることもあります。仕事によってリズムが違うのは少し大変なところですが、常に学びがあっておもしろいですよ」

中平さんは大学時代の職場体験から、旅館には人と人の関わりの温もりがあると感じて、旅館業を志した。

多田屋を選んだのは「気持ちがいい」と感じたから。働いて5年目になる今でも、その感覚は変わらないそう。

「雰囲気が好きというか、人間関係がいいというか。スタッフの年代が若い子から70代の人まで多様なので、ちょっとした世間話や、みんなが見てきたものを聞くのも楽しくて。人との関わりが経験値になっているのを感じます」

「接客のスタイルは旅館によってさまざまですが、うちはお客さまとしっかりお話しするので、お客さまが見てこられた景色を共有してもらえるのもうれしいですね」

仕事のなかで少し特徴的なのは、働く時間。

始業時間は、チェックインがはじまる午後3時頃。夕食の片付けが終わるまで働いて、翌朝は早朝からチェックアウトまで。その後、夕方までの時間は休憩になる。

「朝が早いので夜は帰ったらほぼ寝るだけですが、お昼の時間は工夫次第で有効に使えます。何か学ぶにも集中できるし、釣りが趣味な人は釣りし放題、スポーツをする人もいたり。朝早くて夜遅いのは大変だけど、リズムに慣れてくると身体に馴染むところもあります」

中平さんの趣味はカメラとアウトドア。車内にフルフラットのベッドを設えてあり、休みの日には能登半島のさまざまな場所へ出かけて写真を撮り、そのまま車中に泊まる。出勤の日にも、従業員は入り放題の多田屋の温泉に入ったあと車で寝て、また翌朝出勤することもある。

日本のなかほどにある石川県。多田屋は空港からもほど近く、北からも南からもいろいろなお客さんが訪れるため、情報が集まってくる。近年は国外からの方も増えていて、能登に当たり前にあるものが、お客さんにとっては特別な価値があると気づけるのだそう。  

「地元の同世代はここには何もないと都会に出る人も多いけれど、この仕事をしていると、とてもじゃないけど『何もない』なんて言えない。地域の良さに気づく機会が多いから、旅館で働くと地元に残る子も増えるような気がしますよ」

 

磯野さんも客室係。奥能登の出身で、若い頃には都内に住んだことも。

さまざまな仕事をしてきたなかで、子供の手が離れた約20年前から多田屋で働き、今年でなんと70歳になる。

「自分で野菜をつくったり海のものをとったりして、自然と直接ふれあう暮らしが好きで。地元のおいしいものは季節によって旬がいろいろあるので、今はこれがおすすめだよ、どこのがおいしいよと、お客さまにお伝えすることがとても楽しいんです」

磯野さんが働いてきた年月のなかでは、旅館における働く環境も変化してきた。

たとえば昔は残業の概念もなく長時間労働が当たり前だったのが、今は勤務時間はしっかりと管理され、休みもとれるように。

「いろいろなことが変わってきました。昔は一定年齢になったらパッと引退するのも決まっていましたが、今は体力に応じて働き方も柔軟に調整してもらえるので、できる限り続けたいと思っています。接客業が好きなので」

まかないを一緒に食べる食卓には、磯野さんをはじめ、往年の仲居さんたちがつくってきてくれる手づくりのおかずが、さながらビュッフェのように並ぶのだそう。

わたしが採ってきた山菜やって、料理して持っていったり。みんなで食べられるようにミニトマトを育てたりとか」

「あとね。夕方ってきれいなもんなんやなあって思うようになって。それもここで働いて、良かったなあと思うことなんですよ」

 

最後にお話を聞いたのは堀上(ほりかみ)さん。仕事百貨の記事をきっかけに2015年に入社、今年で8年目になる。

学生の頃にバックパッカーとしてヨーロッパを周遊。いわゆる観光地ではない場所で、観光が産業として根づいていることに感銘を受け、観光を通じて地域に還元する仕事に興味をもった。

大学卒業後は神奈川で建築設計の仕事に携わり、もっと地域に関わる仕事がしたいと考えていたところで、「のとつづり」と多田屋の存在を知った。

健太郎さんの人柄に惹かれ、また改装など設計の部分でも力を発揮できると感じて、入社することに。

はじめの2年間は客室係をしながら、並行してレストランの改装など設計の仕事にも携わった。現在は「料飲」という館内のお酒の仕入れや発注、メニュー開発、接客指導の仕事を中心に、ひきつづき建築系のプロジェクトも担当している。

「やりがいは初期衝動と変わりません。能登の魅力を伝えるのが、旅館で働いていて一番楽しいこと。僕の場合はお酒がメインなので、能登のお酒をおいしく飲んでいただく瞬間がほんとうにうれしいです」

「ここで働くことで、能登が新しい発見に満ちた場所になると思う。つい先日も、すごくおいしい枯露(ころ)柿の農家さんを知って、こんな近くにいたんだ!ってびっくりして。まだまだ追いきれない、掘っても掘っても新しい発見があります」

健太郎さんに「のとつづり」の世界観が表現されていないと伝えたのは、実は堀上さん。

働きはじめれば、自分も表現をする側になる。今は土地の魅力を掘り下げながら、スタッフ同士で厚く共有しあっていく、その循環が能登を伝えることにつながると考えている。

「サービスの内容もそうだし、働き方についてもそう。受け身じゃなくて、自分たちでよりよくしていく提案をしあっていきたいし、ここはそれができる場所です」

ものごとの魅力も、場所や自分の成長も、共有しあえる人がいると、いっそう豊かになる。

働く仲間と、地域の人と、日々出会えるお客さんと。

わかちあい、育っていくうれしさが実感できる職場だと思います。

2022/12/12取材 2023/5/18 更新 籔谷智恵)

有限会社白崎シーサイドホテル多田屋はかこむ仕事百貨2023に出展します。詳細はこちらをご確認ください。

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事