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お困りごとを
聞いて、悩んで、一緒に動く
おせっかいな復興支援

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「僕らは、いい人に出会ってきたんですよね。この人と一緒にやりたいとか、その人が頼ってくれたなら困りごとを解決したいと思う。仕事ではいろいろありますけど、いい人に恵まれているから、よし!やろうって、がんばっちゃうんです」

株式会社バトンは、主に中小企業の人事やバックオフィスのサポートに取り組む会社です。

さまざまなプロジェクトに取り組んでいるなかで、今回紹介するのは、福島県大熊町の復興支援に関わるチーム。2019年に一部の避難指示が解除され、まちが再開しはじめた今、まちに戻って暮らしたい、働きたいと考えている人たちへのサポートを行っています。

じっくり話を聞くことからはじめて、人や仕事を紹介することもあれば、やりたいことを応援しながら事業の立ち上げをサポートしたり、イベントを開催することも。目の前にいる人が困っていること、抱えている課題を、一緒に試行錯誤しながら解決していくのが仕事です。

探しているのはサポート役のナビゲーター、そしてナビゲーターをまとめる役割を担う人。経験の有無よりも、人の話をよく聞けるおせっかいな人に似合う仕事だと思います。

基本的には腰を据えて取り組める社員を探していますが、全員リモートで働いていることもあり、短い時間で関わる業務委託やインターンなど、お互いに関わりやすいかたちを相談できそうです。

  

向かったのは東京・品川区の西小山駅。

商店街を歩いて2分のところにある、クラフトビレッジ西小山という施設で待ち合わせ。

小さな飲食店が集まるこの施設は、バトンとどんな関係があるんだろう。

まずはオンラインで、代表の林さんから話を聞かせてもらうことに。

「はじめまして、今日はそっちに行けずすみません。そこではイベントを開催したり、一部の飲食店の運営に関わっていたりいます。バトンってオフィスはあるものの、ほとんどのメンバーは自宅にいたり、西小山に顔を出したり、大熊町に行ったり。基本は、それぞれの場所で働いているんです」

ハキハキと話をしてくれる林さん。

バトンについて尋ねると、大学時代にさかのぼって教えてくれた。

「当時関心を持ったのが、海外での企業研修、インターンシップを運営する学生団体です。世界中に仲間がいて、掲げられていたテーマが『持続可能な環境開発』でした。今から30年前ですよ。おもしろくって、その活動にのめりこんじゃったんです」

まだインターンシップがメジャーではない時代。受け入れ先の企業開拓やイベントの運営など、事務局メンバーとして活動を広げることに夢中になった。

さまざまな人と出会い話をするなかで、企業のあり方、社会との関わり方、働くということについて考えることが増えていく。

いざ自分の就職となったとき、内定をもらった会社はいくつかあったものの、なんだかしっくり来なかった。

「僕はどの道を選ぶと正しいと思いますか?って先輩に尋ねたんです。そしたら、『俺がなに言っても、お前はその通りにやらないし、言う通りにしてもおもしろくないだろう』って。ハッとしました。自分の人生を生きようと思って、就職しないってことだけを決めたんです」

求人情報を集めて雑誌を発行したり、企業へのインタビューを頼まれたり。デリバリー中心の飲食店で働いてみたこともあれば、大きな会社の採用部長として働いた時期もある。

大企業の社長や勢いのある起業家など、自分で仕事をつくる人たちとのご縁に恵まれたという林さん。自分がやりたいことというよりも、経験しておくべきだと思うこと、人から頼られたことを仕事にしてきた。

バトンを立ち上げたのは、今から16年前のこと。

「いろんな人に出会ってきて、人に困ってない中小企業はなかったんですよね。人事面での顧問契約からはじまって、バックオフィスのアウトソーシングが事業の中心になっていきました」

林さんの話には、関わってきた人の名前が次々と出てきて、人との出会いを大切にしてきた方だということがわかる。

大熊町とのつながりも、人との縁がきっかけだった。

「羽田空港の滑走路を使って、各地の食材を紹介するマルシェをやりたいって相談をもらったんです。そんなのやったことなかったから、まあ大変でしたよ。そのイベントの担当者が、大熊町へかかわるきっかけをつくってくださった方なんです」

福島県双葉郡大熊町は、福島第一原子力発電所の所在地でもある。2017年当時はまだ避難指示が出ていて、簡単に立ち入ることができない状況だった。

そんななか、まちの復興について考える「未来会議」が発足。

林さんは仕事づくりについて話し合うグループに参加することになる。

「大熊町が再開するとき、最初に人が必要になったのが高齢者向けの福祉施設でした。帰って来たいという高齢者が多かったんです。だけど、経営的にも人材面でも、ここで福祉施設の運営は厳しいだろうって言われていて。なんとかしなきゃ!って、思わず、手を挙げちゃったんですよね」

大熊町に関わり続けることを決めたバトンは、駅前につくった活動拠点「KUMA PRE」の運営と、町内での就労支援を行う相談窓口を受託。大熊町が復興する土台づくりに深く携わってきた。

  

就労支援を担当するナビゲーターであり、ナビゲーターとして働く人をまとめるディレクターとして働いているのが山口さん。

ふだんは横浜の自宅で仕事をすることが多いそうだけれど、この日は西小山に会いに来てくれた。

「塾の先生として10年ほど働いて、結婚を機に、保育補助やライターの仕事をするようになりました。仕事は楽しかったし安定もしてたんだけど、出産後、わが子に自分が色々なことにチャレンジする姿を見せたいと思うようになって、あたらしい仕事を探すことにして」

「正直、バトンはなにをしている会社かよくわかりませんでした。テレワークできるし、なんだかおもしろそうだなって気軽に応募したんです」

バックオフィスの仕事を担当する予定だったものの、もっと向いている仕事があると勧められたのが、大熊町のチームだった。

「ふつうの主婦だった人が復興支援に関われるのかって、不安はありました。それでも、まちが再開していく時期の答えがない取り組みだからこそ、私でもなにか役に立てることがあるかもしれないって思えたんですよね」

入社したのは2年前。

当時大熊町は、町に入れるようになったものの、学校や幼稚園なども再開していない状態。暮らせる場所も限られているという状況のなかで、これから大熊町に戻りたい、大熊町にかかわりたいと登録してくれた人に話を聞くところから仕事がはじまった。

「とにかくZoomで話を聞く。最初は行政がなにもしてくれないってクレームを言われることもあって。でも、まずは皆さんの状況、想いをとにかく聞く。話を聞いていくと、本当はまちに住みたい、帰りたいけれど、いろいろな事情で戻れない人がたくさんいることがわかってきて」

就職先が見つけられない人。自分にできる仕事があるだろうかと、漠然と不安を抱える人。遠方からでも町に関わりたいけれど、まずはZoomの使い方がわからない人。

話を聞くなかで気がついたのは、せっかく大熊町に関わりたいと思っているのに、その想いを伝える相手がわからず行動ができていない人がたくさんいることだった。

「まずは話を聞いて、周りの人に相談したり適切な人をつなげたりしながら、お困りごとをひとつずつ、どうにか解決していく。どうしようって一緒に悩むこともあります。そうやって、大熊町に関わる人を1人ずつでも増やしていくのが私の仕事なんです」

「大熊町って原発の被災地で、ある日突然まちを離れなければならなくなったという悲しい事実がある。ようやく戻れる場所が出てきたものの、まだまだにぎやかなまちとは言えない状況です。だけど、再開するということに可能性を感じている人が集まってきていて」

最近は飲食店をはじめる準備をしている人、あたらしく農業に挑戦しようという人など、大熊町にも人が集まってきている。

山口さんは横浜に住んでいて、大熊町へは月に1度を目安に通っているそう。

打ち合わせをしたり、就職先となる企業と話したり、ときには田植えやイベントなど、地域の活動に参加するとも。大熊町で出会った人のこと、開催したイベントでの出来事などを、とても楽しそうに話してくれる。

「私には、キャリアコンサルティングや起業のノウハウはありません。だけど話を聞いて、解決できそうな人を一緒に探すことはできる。移住とか起業とか、大熊町で挑戦する人たちを応援できるのが、この仕事のおもしろさなのかなって思います」

「頼られたら10倍にして返したいっていうのは、バトンのメンバーに共通していることかもしれません。おせっかいっていうか、御用聞き、世話好きが集まっているんでしょうね。人の話を聞くのが好きな人に向いている仕事だと思います」

今、大熊町に関わっているナビゲーターやディレクターは、社員と業務委託のメンバーを合わせて7名。働く場所を探している人の話を聞くこと、事業を立ち上げた人の伴走支援、人材に困っている中小企業のサポートなどの仕事、まちの賑わい創出に向けた企画立案・運営を、少しずつ役割分担しながら取り組んでいきたいと考えている。

現地で暮らしながら担える人がいれば大歓迎だけれど、今は全員、遠方からリモートで関わっているそう。

「大熊町でしかできないこともあれば、東京にいるからできることもあるんです。たとえば、興味がある方々に大熊町の『今』を伝えるためにイベントを開催するとか、町でのお困りごとを解決できる人を探して紹介するとか」

「できる形で、できることをしようっていうバトンのスタンスなんです。会社のなかにも、私みたいに子育て中で働く時間が限られる人もいれば、身体に不自由な部分がある人もいて、それぞれができる範囲でがんばっている。そういうのがあたり前の会社なんですよ」

幅広い仕事は、どれも経験のないことばかり。山口さんは楽しそうに話してくれるけれど、簡単なことばかりではないと思う。

すると、画面の向こうで聞いていた林さん。

「地域の情報を発信するイベントやメディアって、すでにたくさんありますよね。だけど、そこで働きたい、暮らしたいっていう具体的な行動につなげるのって簡単なことではないんです。変わり続ける地域の情報を集めて、個人の状況に合わせて提供するのは、すごく地道で根気のいることなんですよ」

「キウイを食べておいしいとか、実際に育てた人の声が聞けるとか。リアルで体感できる場をつくることで、次は大熊町に行ってみようという行動が起きる。一人ひとりに関わって、地道に進んでいく。一過性のものではなく、持続可能なかたちで地域を応援したいんです」

大熊町と西小山をつなぎながら挑戦していることは、ほかの地域でも共通した困りごとの解決につながるはず。

バトンでは今後、つながる地域を増やしたり、どの地域でも応用できるような仕組みづくりをしたり、ということに取り組んでいきたい。

「これまでは頼まれたことに一生懸命応えてきました。みんなで議論して、これからは、僕らの得意な個別支援という方法でできることを広げていきたいと思っているんです。やろうと決めたからには、チャレンジしないままでは終われない、気がすまないんですよね」

目の前で困っている人がいれば、とことん向き合う。

自分にできるだろうかと不安を感じていたら、まずはバトンのメンバーと話をしてみてください。お互いに話し聞き合うことから、最初の1歩がはじまるかもしれません。

(2023/3/23 取材 中嶋希実)

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