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店をつくることは
街をつくること

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「キッチンに立ちつつ、ときには飲食店のプロデュースに取り組む料理人。自らぶどう畑にも立つ醸造家。生産者さんも訪ねつつ接客をするホールスタッフ。カオスの時代にあって、自分にワクワクできる働き方をして、機嫌よう暮らす人が増えたら」

大阪のグランフロントやイーマ、東京の新丸ビルやKITTE、名古屋の大名古屋ビルヂング…。

街の顔ともいえる商業施設の飲食コンサルティングや商業プロデュースを手がける株式会社ケイオス。

澤田充さんが、32歳で立ち上げた会社です。

「街づくりって、永遠に完成しないものです。僕らは前の世代から受け継いで、次の世代へと受け渡していく。そのなかで、お店をつくることが、街をつくることにつながります」

プロデュースを行う上で、澤田さんはつねに「街にとってのお店の重要性」に着目してきました。

なかでも、飲食店。月に2度、3度と繰り返し通える飲食店にこそ、街を変える力があるといいます。

その一つが、2018年にプロデュースした大阪エアポートワイナリー。世界で初めて空港内にワイナリーをつくりました。

飛行機に乗り降りするときだけでなく、街の人が使う商業施設としての価値を高めたい大阪国際空港。ワイナリー併設のワインバルができたことで、多くの人が訪れるようになりました。

「社名のケイオスは、大きく変化する直前の状態を意味します。30年前に船出してからというもの、世のなかの変化は年々加速している。自分たちの手でつくる時代だと思うんです」

ケイオスは、はじめて自社の飲食店を立ち上げます。

2023年10月17日に京都髙島屋の新館でオープンする「京都ワイナリー 四条河原町醸造」。

ここで、オープン準備から関わる仲間を調理、ホール、ワイン醸造を中心に募集します。

 

訪ねたのは、大阪・北浜。

大阪を代表するオフィス街でありながら、ゆったりと川が流れるおかげか、道ゆく人もおだやかな表情。

ここにあるのが、ケイオスが運営するコワーキングスペース「HUDSON STREET1947」。

中に入ると、代表の澤田さんが本を片手に迎えてくれた。

「ここは、“ヒューマンでいい街”なんですよ」

ヒューマンでいい街、ですか?

「人間が居心地のいい、ほどよい大きさでつくられた街なんですね。適度な広さの通りに、魅力的な建築。32歳でケイオスをはじめて以来、この街に事務所を構えています」

新卒でリクルートに就職した澤田さん。

入社当時から「いつかは何かで独立したい」と考えていた。配属希望には人材教育事業と書いたものの、配属先はビル事業部。オフィスビルを開発し、テナントを募集する仕事に就いた。その後は、経理部へ。

ここで澤田さんが開いたのが「コンセプトワーク」。東急ハンズをプロデュースした浜野安宏さんが、1981年に書いた本だ。

「『一軒の店から街づくりはできる』という言葉が、独立の原点です」

店づくりも街づくりもまったくの未経験。顧客もいないなかで独立に踏み切ったので、最初から店づくりの仕事に臨めたわけではなかった。

「リクルート時代や学生時代の縁で、仕事を発注してくださる人がいたんですね。二世帯住宅マンションのマーケティングや、賃貸マンションの企画を。見よう見まねで、必死に仕事をしていきました」

はじめの10年間は、綱渡りの経営が続いた。

「いつも資金繰りが頭の片隅にありました。若い会社だから、銀行からの借入も難しくてね。月末になると、今月はどうしようかと金策に走り回ったものです」

「しかし、お金はなかったけど…ワクワクしていました。確実に手応えはあったんです。自分に力がつく手応え、何よりお客さんが喜んでくださる顔。これは行くぞ。僕たちは絶対に次があるぞ」

店づくりは、街づくり。

その言葉を胸に抱きつつも、思うように仕事が巡ってこない時期。だからこそ、自分たちのポートフォリオをつくることができた。

自主プロジェクトとして取り組んだのが2002年の「淀屋橋WEST」。

ケイオスの原点ともいえるプロジェクトだ。

はじまりは、住友商事さんからの3区画のテナント募集の相談だった。

「所有するビルの1階が空いているので、テナントを見つけてほしい」

当時の淀屋橋は、1日に30万人の駅利用者がいるオフィス街ながら、夜になると人の気配が消えていた。

仕事を終えた会社員たちは、どこか薄暗い通りを歩き、わざわざ梅田などのターミナルへ飲みに行くことが多かった。

「ヒューマンでいい街なのに、魅力が伝わっていませんでした。このままでは、定食屋とコインパーキングが続くエリアになってしまうと思ったんです」

淀屋橋に人が集いはじめ、通りに笑顔が増えていくことで、自ずとテナントも決まっていく。

そう考えた澤田さんは、独立以来温めてきた街のイメージを、企画書に爆発させた。

店づくりと街づくりには、イメージが欠かせない。

目に浮かんだのは、スペインやイタリアの旧市街で見た暮らしの風景だった。

「中世の街並みが守られた旧市街にポツ、ポツ、ポツとオープンカフェやカウンターのバルがあって、その明かりが通りを彩るんです。店内ではワイン片手に、食事をしながら街のサッカーチームのことを熱弁していたり、通りにも人が溢れていて」

「淀屋橋も気の利いたレストランが建ち並んで、お店の光が通りに漏れる街をつくりたい。オープンな店が続くことで、通りが賑わえば、街が絶対街明るくなるだろうと思いました」

淀屋橋WESTを通じて、38店舗が入居した。

2007年には、三菱地所さんとの「丸の内の再開発プロジェクト」を手がけるなど、その後は次々と大型プロジェクトを手がけていく。

今プロデュースしているのが、京都髙島屋の新館「T8(ティーエイト)」。

百貨店離れという言葉も聞こえるなか、新たな客層が訪れたくなる施設をめざしている。

京都の地元民に愛される飲食店7店舗が軒を連ねるのが、地下1階。フロアのコンセプトは、B面の京都。

「B級グルメではなくて、“B面グルメ”ですね。A面を、全国の人が京都と聞いてイメージする京料理だとすると、B面は濃口のラーメンやしっかりとした味つけの洋食。京都の人がふだん使いする大好きなお店が集まることで、この街で暮らす人に利用してもらえたら」

T8のプロデュースを進めるなか、澤田さんにはある思いがふつふつと湧き上がっていった。

「自分たちでお店をやりたくなったんです」

これまで、100以上のお店のオープンに関わってきた自分たちだからこそ、自由に描ける飲食店の形があるのでは。

そしてオープンするのが「京都ワイナリー 四条河原町醸造」。今回募集するのは、こちらのオープニングスタッフ。

澤田さんは、出来たてほやほやのロゴデザインをもとに説明をはじめる。

「一番左がワイナリーですね。そして、出来たてのワインを提供するレストラン。ここでワインが進むおいしいごはんをつくります。そして、全国から集めた小さなつくり手のお酒を販売するショップも併設します」

ここで、澤田さんが手に取ったのはマイタンブラー。

「京都ワイナリーは、日常使いされる街のワイン屋さんになりたいんです。生活者のそばで、つくり手が見える形で醸造する。これが一番大事だと思います。都市型ワイナリーだからこそ、添加物を最小限に抑え、フードマイレージも少ないワインがつくれます」

オープンは、10月17日。現在はロゴデザインやパースが出来上がり、工事が着々と進んでいる最中。

「できれば、オープン前の準備から携わっていただけたら」

料理について聞いてみる。

「うれしいことに、僕が大好きなイタリアンレストランYOTTERIA GAKU(ヨッテリア ガク)の小林岳シェフがお店に立ってくれることに。岳さんとともに、レシピ開発や食器選び、仕入れや原価設定、調理の工程までを決めていただきたいです」

料理のテーマは、ワインがおいしく飲めるメニュー。オリジナルのハンバーグ、スペインのピンチョス、チーズ、京都のおばんざいなどがジャンルレスに並ぶ街の食堂をイメージしている。

料理のスタッフとして働く人に伝えたいことがある。

「メインはお店を切り盛りしつつ、ケイオスが今後手がけていくレストランのプロデュースや食を軸にした地域づくりを、僕らと一緒に取り組む人も現れてくれたら」

なんだか、おもしろそうですね。

「プロデュースを通じて、色んなお店の料理人の方とお話しさせていただくなかで感じたことなんですが…365日、来る日も来る日もキッチンに立つのはそれでいいこともあるのですが、料理人として煮詰まってくる部分もあると思うんです」

「そうではない料理人の道を一緒につくりたい。調理技術を畑とつなげましょう。調理技術を街づくりに活かしましょう。料理人が街にできることはもっともっとあるはず。そうして、いろんな道を築いてほしい」

今までレストランで働いてたけど、閉塞感がある。料理は好きだけど、ずっと料理じゃなくっていい。畑やオフィスも行き来したい。そんな人も、今回のプロジェクトに手を挙げてほしい。

ホールスタッフについても、次のように考えている。

「京都ワイナリーが、生産者の方と一緒に育っていけるといいですよね。そこで大事になるのがホールのみなさん。希望する人には、生産現場を訪ねてもらいたい。卸の業者さんに仕入れを任せたほうが楽ではあるけれど、自身で本当にいいものを見極める目を養ってください」

「おいしくて環境にも配慮したものづくりをしている。百貨店でも十分勝負できるクオリティなのに、提供時期が限られている。少ロットゆえになかなか流通には乗りにくかった。そうした食材にも光をあてたいんです」

ワインの製造は、ボトルで1万本ほどから始める予定。

醸造の指導を行うのは、深川ワイナリー東京の醸造長・上野浩輔さん。

「これから醸造をはじめてみたい人でも、大丈夫です。2年ぐらいで京都ワイナリーを任せられる醸造家となっていただけたらうれしいです」

今後は第2の工場をつくる予定もある。

原材料となるブドウについても、初年度はご縁のある農家さんから仕入れを行う予定。ゆくゆくは北海道に畑を持つ準備を進めている。

「自分たちのブドウ畑をはじめたら、希望するスタッフが順番に現地へ行きつつ、畑仕事をしてもらいたい。醸造家であり農家、ホールスタッフであり農家という関わり方もつくってもらいたいです」

最後に、澤田さんから。

「色々言いましたが『ケイオスおもしろそうだな』と思ってくれたら、まずは一緒に京都ワイナリーをつくりましょう」

「初めてだから、しんどいですよ。初めてだから、面倒くさいっすよ。そして初めてだから、楽しいっすよ。一緒に、自分の将来にワクワクしていきましょう」

(2023/7/10取材 大越はじめ)

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