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見て、嗅いで、味わって。それをたのしむ、特別な空間。
食のひとときは、いろんな感覚が刺激されます。
こだわりぬいた料理に加え、食を通じて表現できることは無限にあるのかもしれません。
その土地ならではの食材を、世界のトップシェフが新たな料理で表現する。その料理を、野外の特別な空間でたのしめるのが「DINING OUT」。
株式会社ONESTORYは、「DINING OUT」をはじめ、地域の価値をあらゆる手法を駆使して発信している会社です。
今回募集するひとつは、「DINING OUT」などのイベント事業を一からつくるイベントプロデューサー。もうひとつは、地域のメディア発信や、食を絡めた企業のコンテンツづくりなどを担うコンテンツプロデューサーです。
手がける分野は幅広く、プロジェクトやイベントの制作・運営経験のある人が望ましいとのこと。
本当の価値とはなにか。それは食でどう表現できるか。
その価値がいろんな人に届いたとき、土地に根付く人の心はどう動くのか。
関わる人たちと強固な関係を築きながら、あらゆる表現方法を探っていく、おもしろい仕事だと思います。
明治神宮前駅から歩くこと、およそ6分。キャットストリート沿いのビルの2階に、ONESTORYのオフィスがある。
笑顔で迎えてくれたのは、代表の大類さん。
もともと博報堂で20年以上、広告マンとして働いてきた方。
ONESTORYのベースとなった「DINING OUT」は、2012年、博報堂の社内プロジェクトとして始まった。
当時は、ゆるキャラやB級グルメの全盛期。地域が世の中と接点をつくっていこうと、活発に動き始めていた。
「ゆるキャラやB級グルメもいいけれど、地方に眠るA級を発掘して、それらを世界に通用するキラーコンテンツとして発信する。そこに広告マンとしてのロマンを感じたんです」
地域の新しい表現フォーマットとして考えたのが、「DINING OUT」。
「食から紐解くと、地域をわかりやすく表現できると思って。郷土料理は気候や地形、歴史、文化に影響を受けていて、地域性が一番反映されているんです」
「あと野外レストランだと、食を楽しみながら、五感すべてでその土地を感じられるおもしろさもあるんです」
たとえば沖縄の世界遺産群にも登録される「勝連城跡」を貸し切った「DINING OUT RYUKYU-URUMA」。
城跡をライトアップした荘厳な雰囲気のなか、ゲストは地元の食材を使った料理と、地元の中高生によって脈々と受け継がれてきた歌謡劇のパフォーマンスを楽しんだ。
DINING OUTは一回40名限定で、二日間だけの開催。参加費は25万以上と高額で、ゲストは最高級の料理やサービスを知る人ばかり。
「トップシェフが地元の食材で料理をつくり、世界の最高レベルを知るゲストが涙ぐむほど感動する。その光景にスタッフである地元の人が遭遇することで、自分が住む土地って素晴らしいんだと、改めて気づくきっかけになるんです」
「僕らがDINING OUTでやりたいのは、地域の人のシビックプライドに火をつけることなんです」
地域の価値を伝えるために、まずは徹底的なリサーチと、地域の人との信頼関係を築くことから始める。
「たとえば、石川県輪島のDINING OUTに向けて地域のことを調べているとき、輪島塗の全124の工程一つひとつが、職人による分業で成り立っていることに驚いて」
完成品ではなく、つくる過程を担う職人の素晴らしさも表現できるお皿をつくりたいと、大類さんは考えた。
「ただ、輪島塗に関わってきた人からしたら、『つくり途中のものを出すなんて』という思いが当然あるんですよね」
そこで外部の強力なサポートを得ようと、世界的建築家の隈研吾さんにお皿のデザインを依頼。
輪島に足を運び、その工程に感動した隈さんは、快くデザインを引き受けてくれることに。それがきっかけとなり、地元の人もお皿づくりに賛同。
124の工程が大きく6つに分けて表現され、6枚のお皿が完成した。
当日の「DINING OUT WAJIMA」では、一枚一枚に、能登のノドグロや、輪島で採れたイバラノリという海藻など、能登半島の食の幸を感じられるトップシェフ渾身の料理が盛り付けられた。
翌日は、輪島塗職人の工房見学のツアーを実施。こまやかな工程に感銘を受けたゲストも多く、準備されたお皿は次々と売れていった。
「地域の素晴らしい歴史や文化に、僕らが別の視点から見出した価値とゲストが遭遇する。DINING OUTでないとできない体験だし、これが最大のおもしろさだと思います」
大類さんたちが大切にしているのは、イベントだけで終わらせないこと。
地元の人たちでイベントを再現できるよう、レシピも運営マニュアルもすべて地域に置いてくる。
「DINING OUTで火のついたシビックプライドをもとに、地域の人たちが自走できるようにしたいんです」
ただ、現状は理想の状態になっているわけではない。
「地域は僕らのものじゃないし、一方で部外者だから引っ張っていけるところもある。地域のために何をすべきなのかはその地域ごとにまちまちだし、僕らがやろうとすることがすべてじゃないと常に意識しています」
「一緒に働く人も、物事にはいろんな価値観があると思える人だといいですね」
「地域の人と密に関わって、一生もののつながりができる。DINING OUTはやみつきになるイベントです」
そう話すのは、入社4年目のプロデューサーの福持(ふくもち)さん。
「DINING OUT」のプロデュースに加え、地域とのつながりを活かしてセレクトショップでの地域食材の展開や、レストランプロデュースなども手がけている。
「前職では日本各地で伝統工芸の取材や商品開発にも関わったんですが、食を切り口にすると、こんなにいろんなことが表現できるのかと、DINING OUTに魅力を感じました」
入社後、しばらくして起こったのがコロナ禍。それをきっかけに、福持さんは人とのつながりが一番なんじゃないかと考えるように。
そこで昨年、コロナ禍後の第一弾となった、長野・木曽での「DINING OUT」では、それまでのラグジュアリー志向に、地域の人が住む場所の素晴らしさや人との関係性などの要素を加えることを心がけた。
「DINING OUT KISO-NARAI」のメイン会場となったのは、江戸時代、中山道の宿場として栄えた「奈良井宿」の跡が残る公道。
地域のリサーチからイベントのテーマ決め、会場選び、料理メニューの考案、イベントの演出まで。
プロデューサーは、あらゆるチームと関わりながら全体の舵取り役を担う。
ときには、地元のスナックに通い続けて常連さんに話を聞いたり、いろんなお店とつながりのある酒屋さんに情報をもらったりしながら、地域の本当の価値を探っていく。
「山奥なので食材は山菜や発酵食品が中心。決して華やかではないけれど、お母さんの手作り料理のようなあたたかさが食の価値だと思ったんです」
加えて注目したのは、木曽漆器。
地域にある学校では給食器がすべて木曽漆器であることを知り、その給食器をイベントで使用。
そして生徒にゲストへのサーブもお願いすることに。
「漆器がつくられるのは、木曽平沢という奈良井宿の隣町。これを機に、二つのまちで一緒になにかつくってみようという話になって」
塗り直せばずっと使える漆器。オリジナルの漆器のお椀をつくり、またこれを持って木曽に来てもらえたらと願いを込めて、ゲストにプレゼントした。
「木曽漆器の組合長ご夫妻は本当にあたたかい方々で、何度もご自宅に招いてくださいました」
招かれた先で驚いたのは、自宅に飾られていた漆器の数々。
「あまりにも素晴らしいので、ご自宅をイベントのゲストにも見せてもらえませんか、と提案したら、『うちなんかでいいんですか?』と快く引き受けてくださって。ツアーではゲストに大好評でした」
すると、隣で聞いていた代表の大類さん。
「何度も地域に足を運んで仲良くなると、地元の方の開かずの扉が、パカっと開くことがあるんですよ」
開かずの扉。
「普通なら、自宅を公開するなんて気が進まないじゃないですか。でも、しっかりと信頼関係を築くから、こちらの想いも汲み取って協力してもらえるんです」
ここで再び、プロデューサーの福持さん。
「プランニング力も必要ですが、仕事の99%は地域の人とのやりとり。いかに地元の人に信用してもらえるかが大事ですね」
「シェフが海外から来れなくなったら、とか、雨が降ったらどうしようとか。最後まで不安もあるんです(笑)。でもうまくいったときの達成感は、何事にも変えがたいですね」
華やかに見える「DINING OUT」だけど、地道な積み重ねで出来上がっているんだろうな。
そしてONESTORYは、「DINING OUT」の特集記事やショートムービーを作成し、自社メディア「ONESTORY」を通じて、地域の魅力を広く伝える取り組みもしている。
その運営などを担うのが、会社設立とともに2016年に入社した、コンテンツプロデューサーの山崎さん。
自社メディアの情報発信に加えて、企業向けのコンテンツづくりもおこなっている。
これは、「DINING OUT」で培ったシェフとのつながりなどを活かして、食・地域・旅の要素を、企業の商品開発やイベント、ツアーなどに活用していくもの。
たとえば、と教えてくれたのは、国産のラグジュアリー時計ブランド「Grand Seiko」とのプロジェクト。
「女性向けの時計を、スペック以外の面からアピールしたいとご相談をいただいて。女性の情緒に訴えかけるなら、食の切り口が効果的だと考えました」
Grand Seikoと親和性が高いのは、どんな食だろうか。
熟考して出たのが、和菓子だった。
「Grand Seikoは自社ですべてのパーツ制作から組み上げまで行う、世界的に見ても稀有な時計ブランドで」
「そんな1秒を追求するクラフトマンシップの精神性と、日本人ならではの季節や旬を大事にする時間経過の考え方が、和菓子に通じると思ったんです」
そして昨年、原宿に10日間だけオープンしたのが「和菓子屋とき」。
見せてくれたウェブサイトには、「一瞬」や「一分」など、時を連想させる名の和菓子が並ぶ。
「ブランドを知ってもらうきっかけづくりのお店なのに、時計は奥にちょこんと1個、鎮座しているだけ。それがかっこいいんですよね」
プロジェクトごとに企業、クリエイター、外部パートナーなどいろんなメンバーが混ざり合うため、全員の共通認識を図ることも山崎さんたちの大切な役割。
約2200人が会場を訪れ、和菓子は連日完売する好評ぶりだった。
「お客さまが和菓子を自宅の一番いい器に置いて、撮影した写真をSNSにアップしてくれたり。ギリギリまでクオリティーを高めたからこそ、ちゃんと反応してもらえたんだ、とうれしくなりました」
ほかにも、大手食品メーカーとの商品開発や、国内外のラグジュアリーブランドとのツアーイベント、自動車メーカーのオウンドメディア制作など、企業もコンテンツも多種多様。日々依頼は後を絶たない。
「ハードルもたくさんあって、忍耐力も求められます。一方で、イベントが始まるとお客さまの反応を直接感じられるので、楽しいですね」
最後に大類さんの言葉を紹介します。
「僕らの仕事は、ここまでやったら80点取れるっていうものじゃない。正解がないからこそ、新しく入る人には個性をどんどん入れてもらって、ONESTORYのアウトプットのバリエーションを一緒に増やしていきたいですね」
本当の価値を見出し、それをどう伝えていくか。
食を通じた新たな表現を、自分の感性で見つけてみてください。
(2023/5/30 取材 小河彩菜)