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広告やカタログ、雑誌など。わたしたちが普段目にするものには、たくさんの写真が使われています。
そうした写真の多くは、カメラマンや美術スタッフ、撮影プロデューサー、ディレクターなど、写真にかかわるたくさんのプロたちが集まる撮影プロダクションで生まれている。
そんな撮影プロダクションのひとつが、SHAKTI(シャクティ)。カタログの商品写真といった物撮りや人物撮影などを手がけている会社です。
今回募集するのは、ディレクターアシスタントとカメラマンアシスタント。未経験から挑戦できます。
アシスタントとしてそれぞれの業務をサポートしつつ、ゆくゆくはディレクターやカメラマンとして自立できるように、先輩たちから学んでいきます。
プロになるという覚悟を持って、写真を楽しみながら。ともに働く人を探しています。
東京・お台場。
フジテレビが見える東京テレポート駅で降りて、バスかタクシーで5分ほど。青海流通センターの1号棟へ。
流通センターは巨大な建物で、どこが入り口なのか、どうやって目的の部屋にたどり着くのか迷ってしまうほど。電話でサポートしてもらい、なんとか到着。
中に入ると、天井が高い巨大な空間。白い壁で仕切られた部屋がたくさんあり、それぞれスタジオや倉庫になっている。
迎えてくれたのは、SHAKTI代表の藤本さん。
「ここの仕切りの白い壁はぜんぶ自分たちでつくって設置したものなんです」
「もともとは一つの広い空間だった場所に部屋をつくって、スタジオにしているんですよ」
SHAKTIは、1986年に大阪で創業した会社。その約10年後に東京へ拠点を移した。
藤本さんは、働き始めてすでに30年以上。一時期離れていたものの、再び戻り社内ではかなりのベテランだ。
「最初はカメラマン志望で入ったんですけど、美術セットとか大道具の担当になって。いまは、さっき言った壁とかセットをつくる仕事も手がけています」
SHAKTIの特徴は、美術スタッフの存在。
写真を撮るだけではなく、撮影物に合わせたセットやインテリア、小道具などを、自分たちで0からつくることができるのが大きな強みだ。
「ぼくらに頼んでくる企業さんたちって、どうやって撮影したらいいんだろう、ってところから困っていることが多くて。予算が潤沢にあれば、代理店に発注して撮影のコンセプトから決めることができるんでしょうけど、それができなくて困ってる」
「ぼくらは撮影プロダクションだけれど、どんなコンセプトで、どんなふうに撮影を進めるかっていうことから、一緒に考えてつくっていくことができるので、頼ってもらえる。そういう仕事って楽しいんですよね。一緒に考えて、困りごとを解決していく感じ」
たとえば、インテリア商材で椅子の撮影をしたいという依頼が来たとき。
白バックで撮影するのか、インテリアのなかで日常のシーンを感じられるような写真にするのか。
加えて、クライアントの予算はどれくらいで、どういったターゲットに向けて発信したいのかなど。問診しながらセットを準備する。
ほかにも、床材や壁材を撮る案件であれば、そのまわりにあるべき住宅環境のセットが必要になる。
そういったものも用意できるよう、SHAKTIの倉庫にはキッチンから家具、インテリア、衣類、壁材や床材、加工用の木材まで。さまざまなものが揃っている。
ほかにも、撮影のためにクライアントが送ってきた商品を保管する場所も。
「写真を撮ることだけが仕事じゃないんですよ。たとえば、通販の商品撮影とかの仕事を受けると、大量に商品が送られてくるので、まずはそれらの荷物を捌くところから始まる」
「撮影するだけ、みたいなイメージで入ってくると、どうして引越し業者みたいなことをせなあかんのって思っちゃう人もいて。ちょっとした肉体労働もあるし、希望してくれたら美術セットのようなものづくりもできる環境です」
クオリティの高い撮影をするために、ものづくりから取り組む。その姿勢が、SHAKTIが長年信頼されている強み。
ここも自分たちでつくったんですよ、と見せてくれたのが、カフェバーのような雰囲気のスペース。
休憩場所としてカフェのような場所があったらいいねという話から生まれたそう。裏が給湯室になっている。
想像していたより自由な雰囲気というか。写真の業界って、もっと厳しい雰囲気のイメージがありました。
「カメラマン、ってなるとそうかもしれないですね。うちも先代のときはすごく厳しい社風だったんです。すべて指導されて、ひたすら言われたことをする、みたいな。ある意味、楽なんですけどね。」
「でも、ぼくが代表になったときに言ったんです。自由にやりなさいよって。たしか… 『自由っていう恐怖を与えてやるから』みたいに言ったかな(笑)」
自由という恐怖、ですか。
「自由って聞こえはいいですけど、つまり自分で何をするか考えて動かないといけない。それって、ずっと言われたことだけをしていた人がいきなりできるものじゃないわけで」
「これからはそれぞれが主体的に仕事を進めてほしい。そんなふうに、新しいSHAKTIをつくっていきたいと思っています」
藤本さんが代表になって5年。だんだんとやわらかい雰囲気になってきたものの、まだまだ変化の途中。
「ぼく会社を一時期離れたときに、畳職人になったんです」
え、畳職人ですか?
「そうそう。日本文化が好きで、瓦職人と畳職人で悩んで畳にしました。そこで思ったのは、職人のなかには、人に教えるときにすごくむずかしく教える人がいるんです。これはカメラマンにも共通してるなって」
「たぶん、自分の仕事に誇りを持っているからこそなんでしょうけど、むずかしく教えられたら楽しくないじゃないですか。だからうちのカメラマンには、写真って楽しいものじゃないの? っていうことをよく問いかけるようにしています」
通してもらった応接室には、スタッフが撮った写真が掛け軸の作品となって飾ってあった。
仕事として淡々と撮ることも大切だけれど、写真自体を楽しむ気持ちも必要なのだろうな。
「次に紹介する彼女は、マルチに働いてくれていて。カメラマンに加えて、今はプロデューサーの役割もできるようになっています。できることが多いほうが、楽しいと思うんですよね」
そう紹介してくれたのが、藤井さん。
9年前に入社して、その後出産などを機に退職。今は業務委託で、プロデューサー兼カメラマンとしてSHAKTIにかかわっている。
SHAKTIでは、独立などで会社を離れた人が、業務委託という形で再び働くことも多いそう。
「そのあたりにある机とかメイク台とかもわたしたちでつくっているんですよ。撮影プロダクションだけど、ものづくりの側面が強いかもしれないですね」
前職はウェディングのカメラマン。カメラマン志望で入ったものの、当時は人数が多かったこともあり、藤本さん直属のアシスタントとして活動することに。
「藤本さんの仕事を見ているうちに、ディレクションやプロデュースをしていくのも好きだってことに気づいて。自分に合っている職場なのかなって思っています」
藤井さんは、仕事のどんなところにやりがいを感じているんでしょう。
「単純ですけど、かかわった写真が世の中の人たちの目に留まるのがうれしい。雑誌とか広告に出るってすごいことだと思うんですよね」
自分が撮った写真がテレビに出てきたり、雑誌に載ったり。わかりやすい形で世の中にアウトプットされると、手触り感のあるやりがいになる。
新しく入る人のなかには、藤井さんのアシスタントにつきながら教えてもらう人もいると思う。
ディレクターの仕事は、クライアントとの打ち合わせから、外部スタッフなどの調整・手配、スタジオのセッティングに、撮影の進行管理など、幅広い。
「最初はとくに、しがみついていくしかないですね。ディレクターは経験を重ねて慣れていく部分があるかもしれないですが、写真に関してはやっぱり自分でやっていくしかない」
「技術的なことは教えられるけど、撮影する瞬間、構図、光の入れ方、現像の仕方。そういったものは、ある意味正解がなくて。自分の感覚とセンスで考えないといけないと思っていて」
最初はわからないことだらけかもしれない。それでも、わからないなりに粘っていくことが必要だ、と藤井さん。
「たぶん学んでいる本人は苦しいと思うけど、乗り越えられたらすっごく楽しい未来が待ってます。最初はとにかくがんばっていくしかないのが、この世界の厳しさなのかなって思いますね」
現在はディレクター業務の資料製作やキャスティング業務、撮影した画像のレタッチや動画の編集など、子育てをしながら在宅で仕事をしている。保育園の急な呼び出しの対応や家事など、子育てと仕事の両立がしやすい環境だそう。
「もちろん会社のスタッフの支えがあってできることですが(笑)。今後入社する方も、がんばっていればこういった形で仕事を続けていけるよ!っていうロールモデルになれたらいいなと思っています」
厳しさのなかにも、少しずつおもしろさを見つけているのが、一番の若手である日隈(ひのくま)さん。
入社して2年。主に撮影現場でのディレクター、スタイリストアシスタント業務を担当している。
「インテリアスタイリストに興味を持って入社しました。いまはディレクターのアシスタントや、ときにはカメラアシスタントをしながら、インテリアの仕事も任せてもらっています」
実際に働いてみてどうですか?
「こだわってつくられたものを、どうしたらより美しく、魅力的に見せられるのか考えながら、空間をつくることが楽しいですね。なによりも、一つのものをみんなでつくるのが楽しいです」
「たとえばアシスタントについた人に、『そこに物を置かないで』って言われたら、どうしてだろうって考える。そこから、カメラマンやスタイリストが求めていることやこだわりが見えてくると、おもしろいなって思います」
まだ何もわからない状態だとしても、仕事を見つけることが仕事であり、自分にできることを見つけることが大切、と日隈さん。
「自分で考えて手を動かして、ダメならダメって、いいならいいって言ってくれる人たちばかりなので。弱気にならず、自分から動いていける人だといいと思います」
勤務時間は、基本的に9時から18時。クリエイティブの業界は勤務時間が長いと思われがちだけれど、よっぽどのことがない限り18時を大きく過ぎることはないそう。
社員は7名と少数精鋭。そこに、外部のカメラマンやプロデューサーが加わって案件を進めていく。
「残業は、仕事配分をミスしているからであって、個人じゃなく会社の責任。そういう考え方なので、残業は少ないです。みなさんが思っているよりブラックじゃないよとは言いたい(笑)」
日隈さんは、どんな人と働きたいですか。
「困りごとを見つけるのがアシスタントの仕事なので、まわりのことに気づいて、場の雰囲気を読み取る力がある人だといいなと思います」
「あとは、デザインでもなんでも、つくることを楽しめる人だと、おもしろく働けるんじゃないかな」
すると、代表の藤本さん。
「俺が若かったらめちゃくちゃうれしいと思うことを、今みんなにやってるから」
「会社を卒業していった人も出入りできる雰囲気になっているのは、いいことだと思ってます。お互いに大事な人たちやからね」
クライアントに寄り添い、手を動かして撮影環境からつくり出す。
イメージするディレクターやカメラマンとは少し違う、ものづくりの手触り感が強い仕事だと思いました。
チームで働き、なにかをつくるのが好きな人。そして写真が好きな人。
経験の有無にかかわらず、そんな人だったら、楽しく、そして仲間やクライアントのことを想って働ける場所だと思います。
(2023/6/18 取材 稲本琢仙)