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マンションや幼稚園など。
暮らしにかかわる大切な建物を手がけているのが、株式会社アクアス。ファッショナブルかつ、どこかあたたかく、懐かしい雰囲気の設計事務所です。大阪の都心部に拠点をおき、日本全国、そして海外の仕事にも取り組んでいます。
今回募集するのは、建築意匠設計監理。
デベロッパーから「あそこの土地にビルをつくりたい」といった話があると、現地に足を運び、イメージを描き、企画を提案。そして企画を実際の図面にしていきます。
工事が始まれば、現場の職人ともコミュニケーションを図り、クオリティを管理。建物をつくる工程すべてに関わるので、完成したときの感動は大きいです。
そんなアクアスがなにより大切しているのは、仲間、そして仲間を大切に想う心です。
アクアスの本社があるのは、大阪の中央区。北御堂の隣にあるビルの6階。
北御堂は、都会のなかにいきなりあらわれた大きなお堂みたいで驚いた。取材の日はちょうど盆踊りの日で、櫓も建てられ、たくさんの提灯が飾られて賑やかな様子。
エレベーターを上がり、6階のオフィスを訪ねると、「どうぞ、どうぞ。遠くからありがとうございます」と代表の大浦さんが迎えてくれる。
「もともと私を含めた6人のメンバーが、前身である『タウン設計』という会社で働いていました。14年前、オーナーが突然『会社を廃業する』って宣言したんですよね」
「でも私からすると、結婚したばかりの若手や家のローンが抱えた人もいる。そして、お客さまも。そこで、自分たちで事業やらせてくださいと申し出たんです。そうしてアクアスがはじまりました」
現状、会社のメンバーは9人。多いときは17人いたけれど、家族の事情や独立したい気持ち、新しいことにチャレンジしたいなど、さまざまな理由で離れていったという。
「会社にも問題があったんじゃないかって、悩みました。社労士や設計コンサルの先生からアドバイスをもらって、すべて変えようとするのはちがうと。アクアスの良いところは何かを考えて、その上でいろいろと変えていくのが良いよ、そうアドバイスをもらったんです」
アクアスの良いところ。
「それはメンバー同士の関係性が近いこと。そしてメンバーみんなで話し合って、会社の未来をつくっていく文化が根付いていることだと思っていて。そこは大切に、昔ながらの長時間労働などは変えていっています」
業種的に、どうしてもハードワークが必要なタイミングがある。昔は今と違い、もっと徒弟制度のような雰囲気が業界にあった。もちろん良い部分もあるけれど、やりすぎは当事者や会社にとって良くない。
今は、21時以降の残業は禁止にして、可能な限り長時間労働をなくしていこうとしている。
「わたしは故・稲盛和夫さんの盛和塾に通っているんですが、そこで学んだ影響は大きい。そこでは『事業の目的、意義を明確にする』が大事だといわれていて。事業は食べていくためだけじゃないんだ、社会や未来からみた事業の存在意義は必要なのだ、と。それは常に探求しています」
会社が大切にしていることは、ほかにもあるのですか。
「世の中に貢献することです。ぼくらにとってお客さまとは、依頼をくれるデベロッパーさん、実際にそこに住む人、そしてその近所さんも、私たちのお客さまだと思っています。」
「建物の植栽が豊かになれば、住人、ご近所さんも心が豊かになる。視野をひろげて建物をつくっていけば、少しずつ世の中は豊かになっていくんじゃないか。そんな気持ちを大事にしています」
また、アクアスでは、定期的に子どもにむけた「仕事体験のイベント」を開催している。
知り合いの会社や、アロマセラピスト、駅にある靴修理屋さんなど、さまざまな人を呼んで子どもたちに仕事を体験してもらう。世の中にはたくさんの仕事があることを知ってもらうためだ。
「毎年参加してくれる児童養護施設の先生がおっしゃるのが、子どもたちの将来の夢って、学校の先生とかパティシエとかくらいしか出てこないみたいで。それって、いろいろな職業を見てきてないからなんですよね」
「今年は10月にあるんですけど、22社参加してくれる予定です。毎年3000㎡のホールと5000㎡の広場で開催していて、とても喜んでもらってます」
ほかにも、会社のホームページを見ると、事業内容のなかに宇宙開発という項目がある。
これはどういうことでしょう。
「なんか面白いでしょ? それはですね、いずれ人類は宇宙で暮らすようになる。宇宙という環境的で人々が幸せに暮らすためには、どうすればいいのか。それを考えるんです。でも、それを考えることは、地球のどこかに新しい街をつくるときにもあてはまるよねっていう発想です」
「その事業は、会社で実施する合宿のなかで生まれたんですよ」
アクアスでは年1回、大人数で泊まれる施設で、未来の構想やビジョンを考えるそうだ。
もしお金や時間の制限がないなら、自分は何をやってみたいか、というのをポストイットに書き出したり、今の課題と解決策を話し合ったり、チームワークを高めるワークをしたり。
そこで出てきたのが宇宙開発で、事業化しようとなった。
「みんながいろんな考えや想いを書きだして、分類していきます。すると、自分の夢とみんなの夢が重なっていくんです。そして、みんなが熱くなれるテーマが浮かび上がってきます」
「そのテーマを叶えるためのビジョンを具体化したり、事業をつくったり。できるだけ現実になるようにしています。うちには宇宙好きがいることがわかったんで、宇宙開発事業部をつくりました(笑)。今のアクアスは、10年前につくったビジョンが形になったモノなんです」
やってみたいけど心の中に留めていることを言語化することで、お互いのことがよくわかるし、実際に叶う可能性も出てくる。
「ここで大きな変化を体験したのが、遠原くんなんだよね」
そう話を振ると、隣に座っている遠原さんも恥ずかしそうに頷く。
9年前、アクアスへ入社した遠原さん。
ある時期、会社に行けない状態になってしまったことがあった。
「怒られてばかりというか…。会社に行こうと思ったら、お腹が痛くなるくらいになっていたんです」
けれど、大浦さんが直接家に伺い、お母さんに膝をついて「合宿だけは来てもらえるように、応援してもらえないでしょうか」という話をしたことがきっかけで、参加することに。
「いろんなワークを通して、自分が弱いわけじゃなくて、まわりの先輩たちの接し方にも問題があったんだって、みんなが気づいてくれたんですよね」
遠原さん自身はもちろん、それまで遠原さんに厳しく接していた会社のメンバーにとっても、合宿の効果は大きかった。
たとえば、片方がパズルのピースを動かし、もう片方が正解を見ながら指示するワークをしたとき。
「こういう接し方じゃ相手に何かを伝えることはできないんだ」、「今までの接し方ではあかんかったんやな」。見ていたメンバーはそう痛感した。
「チームとしてなにができるか? を考えることで、もうちょっとがんばってみる価値があるんじゃないかと思えて。まわりのみなさんの接し方も変わったのも大きかったです」
今では職場での関係性もよく、遠原さん自身もふざけて冗談を言えるほど馴染むことができた。以来、合宿は毎年必ず参加している。
建築にはもともと興味があったんでしょうか?
「中三のときに担任の先生が、これからは手に職をつけたほうがいいって。模型や製図が楽しかったので、建築の勉強をしてきました」
大学のときは、コンビニなどのアルバイトをしながら生活していた。
アクアスに出会ったのは、そのコンビニのオーナーと大浦さんが知り合いだったから。「真面目に働く子がいるんだよ」と紹介され、入社することになった。
「『一緒に働けへんか』って言ってもらえたのがうれしくて。あと、うちは母子家庭で、大学のお金も親に出してもらっていたので、僕自身、恩返しをしたい気持ちが強いんです。その想いに本気で向き合ってくれたのも大きかったです」
仕事内容は、デベロッパーから依頼が来たら、現地調査や役所に行くなどして、ボリューム図を描く。その後は基本設計に入り、間取り図を書いていくという流れ。
「マンションだったら、ファミリータイプか単身者タイプなのかの情報をもらい、ターゲット層を想定します」
「その上で、地域性と歴史を調べ、コンセプトを考えます。たとえば、省エネに特化したマンションをつくろうとか、ブルーボトルコーヒーをイメージしたデザインのマンションにしようとか」
印象に残っている案件はありますか。
「デベロッパー・地域の人とのやりとりが複雑な案件がありました。苦労して、なんとか完成までもっていって。完成したマンションを前に、足場をバラして外壁が見えたとき、関係者のおじさんが…」
「『いい家になったね』って、ハグしてくれて。もう、それはめちゃくちゃうれしかったです」
最後に話を聞いたのは横浜オフィスで働く王さん。働いている横浜オフィスからオンラインでつないでもらった。
18歳で来日し、日本語学校へ。その後いくつか設計の会社を経て、1年半前にアクアスに入社。
今は中国の案件と、関東地方の案件を担当している。
「アクアスでは、ボリューム出しや意匠設計も担当するんです。そうすると、日本の法規の知識も必要だったりします。ほかの会社より、総合的にいろんな力をつけていける職場だと思いますね」
「あとは合宿の文化があるのが面白いです。定期的に建築構造の勉強会や、宇宙事業に関する勉強会なんかを有志でやってるんですよ。そういう雰囲気があるのもいいなと思います」
プライベートでは、最近ご結婚された王さん。代表の大浦さんは、ちょうど中国への出張に合わせて、王さんのご家族に挨拶してきたそう。
すると、ここで代表の大浦さん。
「遠原くんのときもそうですが、入社のとき、既婚者は奥さん、独身の人は親御さんのもとへご挨拶に伺っているんです」
「うちはこういう会社でこういう働き方をしていますっていうのを知ってもらいたくて。なんていうのかな… 人を預かる身としては当然というか、信頼してもらう上でご挨拶に行くのは大切だと思っているんですよね」
続けて、大浦さんにどんな人と働きたいか聞いてみる。
「明るい人がいいですね。お客さまとの会話を通じて、いろんなことを感じ取ることが大事なので。図面が描けたらいいんじゃなくて、コミュニケーションをサボらない。それがぼくらの仕事では大事です」
「あとは、自分の損得じゃなく、仲間のためにとか、子どもたちのためとか、世のため人のためにとか。そういう姿勢に共感してくださる人だったらいいなと思います」
アクアスでは、働く人やお施主さん、そして未来の子どもたちまで。広い視野を持ってかかわろうとしているのが印象的でした。
たくさんの人を喜ばせたい。そう思う人には、アクアスはとても合っていると思います。
(2023/8/25 取材 稲本琢仙)