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初めて行くお店に入るときの、期待と不安が混ざるような心地。
そんなとき、店員さんの心やさしい気遣いや言葉が緊張を解いてくれて、記憶に残る買い物体験になることがあります。
一人ひとりとの距離感を見極めながら、目の前のお客さんに対して何ができるかを考え、行動する。eimekuのみなさんが大切にしていることです。
eimekuは、ヨーロッパを中心に、世界中から買い付けた服飾や生活雑貨を取り揃えるセレクトショップ。
2002年に横浜の白楽でeimeku、2016年にみなとみらいでBLAUBERG an der KÜSTE(ブラウベルグ アン ダー キュステ)をオープン。
今回募集するのは、BLAUBERGのショップスタッフ。将来的には、商品の買い付けやデザイン業務などを担う可能性もあります。
アパレルや接客の経験は問いません。メンズ・ウィメンズ問わず商品を展開しているので、男性、女性ともに歓迎です。
相手がよろこぶ姿を見てうれしくなる、親しい人へあげるプレゼントを考えることが好き。そんな人にぴったりだと思います。
横浜・日本大通り。
神奈川県庁や横浜開港資料館など、歴史的建造物が建ち並ぶ歩道を抜けると、港の近くにBLAUBERGを見つけた。
1930年に建てられたというビル。中に入ると、古い校舎のような装いでどこか懐かしい。2階へと上がり、入り口をノックするとスタッフのみなさんが迎えてくれた。
ゆとりのある通路を囲む古い什器に、商品がディスプレイされた店内。
どの商品も手に取りやすく、つい長居したくなるような心地のいい空間。
ヨーロッパで買い付けたという大きなカウンターテーブルに座り、さっそく代表の小平さんに話を伺う。
「今日は、僕はあんまり話さなくていいんです。スタッフみんなの話を楽しみにしていました(笑)」
その言葉に、隣に座るスタッフのみなさんも笑顔に。
現在小平さんは店舗経営のかたわら、ブランドとのコミュニケーション、ヨーロッパを中心とした買い付けなど担当している。
「1997年から横浜で小売業の販売スタッフとして働きはじめました。古くていいものが昔から好きだったので、時代や流行に左右されない、自分がよいと思うものを並べたお店を開き、独立したいと思ったんです」
「最初は白楽で、アンティークの文房具やカメラを扱う雑貨屋さんから始めることにしました」
“一年365日全ての日、誰かにとって特別な日である”をコンセプトに、ギフトをテーマにしたeimekuをオープン。
徐々にお客さんが増えていくのに合わせて、アパレル、時計、靴や鞄など、扱う商品を増やしていき、今では生活に必要なものがほとんど揃うお店になった。
2016年には、みなとみらいでBLAUBERGをオープン。
二店舗にはどんな違いがあるのでしょう?
「来てくださるお客さまによって、おすすめする商品のテーマを変えています」
eimekuのある白楽駅は、商店街や大学の近くにあるので、ファミリー層から学生まで、お客さんの年代や性別はさまざま。ギフトをテーマにしていることから、ジュエリーやインテリアなど小物雑貨類がメイン。
対してBLAUBERGでは、みなとみらいという場所柄、観光客も多い。ファッション感度の高いお客さんを想定して、アパレルや、希少性の高いヴィンテージの雑貨を取り扱っている。
「BLAUBERGは、アパレルにおいて横浜一番のセレクトショップを目指しています」
一点もののアンティークやヴィンテージから、日本未発売の現行のブランド。ファッション好きもそうでない人も、手に取る楽しさがある見慣れないものばかり。
お店に置くものは、どんな基準で選んでいるのでしょうか?
「高くていいものを買い付けてくるのは、正直誰にでもできる。どんなものを選ぶときも、お客さんの手に届きやすいことが何よりも大事で」
「お客さんには絶対かっこよく、綺麗になってほしいっていう気持ちがあるんです。そのために僕らはチケットを握りしめて、買い付けへと向かいます」
アンティークから現行のブランドまで、世界中のものを幅広く取り扱っているセレクトショップはめずらしい。
一過性の流行に流されない、時代の垣根を越えたよいものを集めているのには、理由がある。
「直接買いに行くからこそ、商品にストーリーが付随するんです」
アイルランドやスコットランドであれば、名産である羊毛。タイのチェンマイでは一針一針手刺繍で仕立てる刺し子。その国でしか表現できない素材や伝統技術が、選ぶもの一点一点に宿っている。
さらに、手にしたときの感動や、サプライヤーさんとの会話など、買い付けのときの実感を伴う話も、お客さんにとっては付加価値になる。
「ここでしか出会えないものばかりです。それぞれがお店に並ぶまでの背景が、僕らが商品以外に売ることができる、大切な要素なんです」
「私、このお店のオープンが決まったときに入社しました。アルバイトなのに一緒に内見へ行かせてもらったんですよ」
そう話すのはBLAUBERG店長の橋爪さん。
笑顔が多く、話を聞きながらよく頷いてくれる、柔らかい雰囲気の方。もともとはeimeku近くの大学に通う学生で、お客さんの立場だった。
「素敵なお店だなと思いながら、初めて入ったときはもじもじしていたのを覚えています。気になるお財布を見つけたんですけど、そのときは即決できなくて」
「そのあとすぐに、どうしても欲しいって思って。サイトを見に行ってみたら、求人が出ていたんです」
当時橋爪さんは大学4年生で、就活を控えていたタイミング。
外国語学部に通っていたので、英語を活かしつつ、さまざまな人と出会い話ができる仕事がしたいと思っていた。eimekuにはそれができる環境があった。
アパレルの経験はなかったという橋爪さん。最初は、接客や商品整理など基本的な業務を身につけた。
「次第に、お店を組み立てることに苦労するようになりました」
お店を組み立てる、というと?
「お客さまに私たちのお店の魅力をどう届けていくか、業務を自分で選んでいけるようになるんです」
「経験を積めば、海外へ行って仕入れもするし、売上の予算も立てられます。たとえば今月は何を、どこに置いて紹介していくかまで、少しずつ任せてもらえるようになります」
商品を届けるだけでなくお店をどうつくっていくか。店頭に立つスタッフでありながら、まるで経営者のような視点で業務の幅を広げていく。
「当然プレッシャーはあります。でも、そのぶんお店に自分たちの色が出やすいんです」
今年で9年目になる橋爪さん。最初は小平さんに同行していた海外買い付けも、今では一人で任されるようになった。
BLAUBERGの店長として、どんなお店づくりを心がけてきたのだろう。
「自由にできることも多く、正解がない仕事です。だから何でも実行する前に『お客さまによろこんでもらえるように』って、シンプルに考えるようにしました」
「そうしたら、これまでバラバラに見えていた仕事が、全部線が通ったようにすっきりしたんです」
お店に訪れる人も、買い付けで出会うサプライヤーさんも、みんながお客さん。
目の前の相手によろこんでもらえれば、少しずつ信頼してくれる人や、ファンになってくれる人も増えていく。それが結果的に、自分たちのよろこびにつながる。
思い入れのある商品があるんです、と橋爪さんがラックにかかった洋服を指してくれた。
Artisav(アルティサブ)というインドのブランドの服。ディレクションしているのが日本人で、毎シーズン細かな打ち合わせを重ねて、型からつくっていくそう。
「たとえば、ワンサイズでしか展開していないパンツもあります。性別も体格も気にせず着ていただけるように、ベストはどのぐらいの丈だろうとか、センチ単位でパターンを修正しながら」
「生地やステッチの色を選んだり、ちょうどいい襟の長さを考えてみたり。一型ずつ洋服をデザインしているような感覚ですね」
ヒントにするのは、日々接客をしながら聞き留めていたお客さんの声。
「お客さまには、お洋服のデザインやサイズについて意見を持っている人が意外と多いんです。そういうささやかな声を掬い取りながら、デザインに落とし込むチャンスってなかなかないと思っていて」
「次のシーズンに、お客さまのご要望叶えましたよってお伝えすると、本当によろこんでもらえるんです。服をつくるブランドさんも、それを届ける私たちも、みんなうれしい。一石三鳥です(笑)」
「私が入りたいと思ったきっかけは、橋爪だったんです。人の記憶に残る接客だったり、お話だったり、そんな人となりに憧れて」
そう続けるのは、eimekuスタッフの中村さん。社内で一番の若手スタッフだ。
もともとは、出身の愛知で管理栄養士として働いていた。横浜へ旅行にきたときに、たまたまこのお店に訪れたという。
「接客を受けたというより、楽しくお話をしたような感覚でした」
「商品のお話はもちろん、代表と橋爪から、おいしいお菓子屋さんやカフェを教えてもらったんです。お店のことだけじゃなくて、横浜という場所のこと、あとは二人の人柄も伝わってきて。こういうお店あんまりないなって、感動しました」
その後何度か足を運び、入社を決意。当初は、接客の仕事に慣れるのが大変だった。
「ほかのスタッフから、『距離感が近いよ』とかいろいろなアドバイスもらいながら、少しずつお客さまとの関わりかたを覚えていきました」
お店を訪れるお客さんはさまざま。おしゃべり好きな方もいれば、スタッフとのコミュニケーションを望まない方もいる。ファッションに詳しい人も、そうでない人も。
商品の見方など、些細なところまで目を配りながら、少しのコミュニケーションでお客さんのニーズを汲み取ることが大切。
「考えることが膨大です。入社する前に想像していた販売の仕事よりも、ずっとハイレベルでした」
ほかのスタッフのいいところを真似してみるなど、お客さんと会話をするなかで、自分なりの接客を見つけてきた。
今では、友だちのような親しい関係性の常連さんもいる。
「40代の方で、洋服について話をしていると、好みが似ていることに気づいたんです」
「『中村さんが着ているその服がほしい!』って言っていただけて。その上で、お客さんだったら別の色が似合うかなって提案したり。これまで買っていただいた服も覚えているので、一緒にコーディネートを考えたりもしました」
休みの日にプライベートで会うほどだそう。お客さんと店員さんではなく、人と人としての関わりを築いていることが伝わってくる。
「相手によろこんでもらえるようにって、一生懸命考えたぶん返してくれるお客さまがたくさんいるんです」
「お店に来て、この人に会いたい、この人に会ったらいやなことも忘れちゃうみたいな、そんなふうに思ってもらえれば何よりうれしいです」
今年で4年目になる中村さん。ショップスタッフとして店頭に立ちながら、国内ブランドの新規開拓と仕入れ業務を任されている。
「展示会では自分自身のときめきも大事にしつつ、お客さんを想像して、あの人に着てほしいなって考えて選んでいます」
「どんな業務の先にも、お客さまがいることを忘れずにいたいです」
買う人、売る人、つくる人をよろこびでつなぐ。
確かなしあわせを実感できるお店です。
(2023/09/01 取材 田辺宏太)