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みゃくみゃくと
資源巡るまちづくり
農、食、エネルギー、暮らし

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「資本主義の歪みや限界が見えてきたなかで、いろんな人が今のシステム以外の暮らし方を求めていると思うんです。やってみたい人をどんどん受け入れて、次の豊かさのために実践するフィールドをつくる。それが、これからのわたしたちの役割だと感じています」

三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、滋賀県。2府4県に暮らす約1,500万人に水を届ける琵琶湖。

ほとりの滋賀県東近江(ひがしおうみ)市で、約20年にわたり「次の暮らしかたの社会実験」をしている人たちがいます。

菜種油づくりから農、食、エネルギー、そして暮らしまで。2005年からぐるりとまちづくりを行うのがNPO法人愛のまちエコ倶楽部。

東近江市から「あいとうエコプラザ菜の花館」の指定管理業務を受託しています。くわえて、職員一人ひとりが地域に根ざした仕事をつくることで、現在は6人が働いています。

今回は、企業や大学との連携を深めて仕事をつくり、資源循環型の地域づくりに取り組む仲間を募集します。

 

JR京都駅からは電車で40分。東近江にあるJR能登川(のとがわ)駅は、思っていたよりも近い。

駅から車で25分。

満開のコスモス畑越しに見えるのが、あいとうエコプラザ菜の花館。

ここが、東近江の資源循環の拠点施設。

地域で出た使用済み天ぷら油を、せっけんやバイオ燃料にリサイクルし、地域で育てた菜種を搾って菜種油を製造している。

事務所に向かうと、みなさんがわいわいと話している。みんなリラックスして仕事をしているという第一印象。

「名残の夏野菜のパスタ、おいしかったあ…」という声も聞こえてきた。

「気が向いた人が、たまにまかないをつくるんです。今日は、滋賀県庁から転職した大西さんが、料理してくれました」

求人の窓口を担うのが、事務局長の園田さん。

出身は、千葉県のベッドタウン。アスファルトを踏みしめて育ってきた。

農業系の出版社、有機野菜を宅配する会社を経て、滋賀へ。愛のまちエコ倶楽部の立ち上げ直後に、働きはじめた。

「一歩ずつ産地に近づいていった感じ。ずっと農に関わる仕事をしていますね」

そんな園田さんの足もとに目を向けると、白いスニーカーに土色が染みていた。

東近江市はお米や野菜に加え、果樹栽培も盛んなところ。地域ブランドの“愛東梨”などで知られる。

園田さんは、19年のあいだ東近江をぐるぐる駆けまわり、人と対話を重ねてきた。畑の上では農家さんと、市役所や農協にも足を運びながら。

関わる人が増えるほど、プロジェクトは豊かに。

農業体験、移住ツアー、菜種油の製造、くん炭づくり、シェアスペース「だれんち」の運営…

東近江全体へと広がりつつあるさまざまなプロジェクトは、ぜんぶがつながっている。

「一貫して取り組んでいるのは、地域で資源が巡る“資源循環型社会”なんです」

東近江市において、どうして資源循環が大切なのだろう。

はじまりは、1977年に琵琶湖で大量発生した赤潮(あかしお)だった。

「原因の一つは、生活排水でした。つまり、“暮らしかた”にあったんです。そこで滋賀県のみなさんが『自分たちの暮らしを見直そう』と、動き出しました」

1970年代、滋賀県全域で、リンを含んだ合成洗剤の使用をやめて、せっけんを使おうという市民運動が起きた。この運動はのちに、東近江市愛東地区で「菜の花エコプロジェクト」というまちづくり活動へ。

東近江で立ち上がったのは、子育て真っ最中のおかあさんたち。みずから、使用済みの天ぷら油を集めて、おおきな釜でせっけんを炊くようになった。

そんな親の背中を見て育った次の世代たちが、あいとうエコプラザへ使用済みの天ぷら油を持ち寄るように。

琵琶湖の市民運動はやがて東近江の暮らしとなり、暮らしがまちの風景を生み出している。

ずっと持ち続けている問いがあるんです、と園田さん。

「自分たちの暮らしを自分たちでつくる文化が、どうしてみゃくみゃくと受け継がれてきたんだろう?」

答えが出ないから、もっともっと東近江を深掘りしたくなる。このまちには、気持ちのよい仲間も集まってくる。

 

6年目を迎える伊藤さんは、三重県の出身。

同僚と話しているときも、作業をしているときも、よくほほえむ。「お昼食べすぎちゃいました」とあくびもする。

自然体で働いているんだろうな。

「企画書も書けば、ものづくりもする。仕事が幅広いんですよ」と伊藤さん。

事務所で労務管理をしていると、菜種油の注文の電話が入った。受話器を置くと、間髪入れずに「ビーッ」というブザー音。

ブザー音を受けて、すたすた歩きだす。

「時間になったので、プラント行きますね」

プ、プラント?

向かった先では、透明のビニール袋に黒い粒々が詰められていく。これは?

「お米のもみがらを600℃の炉の中で炭にして、くん炭(くんたん)をつくる工場なんです。農家さんの土壌改良材として人気の資材なんです」

最近では、自然素材の断熱材として、住宅に用いるなど新たな用途も。

さらに、くん炭を畑にまくことで、炭素を地中にとどめておくことができ、CO₂マイナスの効果があるという。

CO₂マイナス分を企業に購入してもらうことで、資源循環型社会を進めるのが、Jクレジット制度。

これから働く仲間とともに、力を入れていきたいことの一つだという。

「東近江をはじめ、滋賀県内の企業さんとともに形にしていきたいんです」

あいとうエコプラザには、菜種油とバイオディーゼル燃料をつくるプラントもある。

地域の農家さんたちが育てた菜種を、収穫から手がけ「菜ばかり」というブランドで販売する。

「原料となる菜種をかじると、ちょっとツンとした香りがあります。独特の風味を理由に、菜種油が苦手という声も聞きます」

「でもね、うちのプラントでは、菜種を湯煎(ゆせん)することで、マイルドな味わいに仕上げています」

味の話になると、ますます口角の上がる伊藤さん。

聞けば、以前は、東京のイタリアンレストランでマネージャーをしていたのだとか。

「ぼくは、菜種油に惹かれて働きはじめたんです。もともと油って…まちごとに油屋さんがいて、そこで菜種を搾るから、地域ごとの味があって」

東近江産100%の菜種油を、昔ながらの圧搾スタイルでつくる。

「菜種を乾燥させて、湯煎して、油を搾る。シンプルでしょ?どの地域でもできることが大事なんです」

「シンプルでしょ?」は、使用済み天ぷら油をもとに年間30,000リットルつくる、バイオディーゼル燃料にもいえることだった。

バイオディーゼル燃料は、軽油に代わる環境配慮型の燃料として注目されている。

伊藤さんには、農家さんにバイオディーゼル燃料をもっと使ってもらう夢がある。

「農業におけるCO2排出の削減が課題なんです」

トラクターやコンバインへのバイオディーゼル燃料の利用を広げたい。けれども、なかなか利用促進が進まない。

「農家さんは不安なんです。万が一農機具が故障してしまった場合、メーカー保証が受けられないので。そこで、NPOでは実証実験を行っていて」

NPOの畑で使うトラクターを、バイオディーゼル燃料だけで動かすこと8年。アクションを通じて、農家さんの安心につなげたい。

「できることは自分たちで取り組んでいく一方、みんなでの取り組みも欠かせません。とくに資源循環型社会をつくるには、自治体、企業、教育機関、市民といった、さまざまな立場の人のコラボが大事です」

それぞれの組織の強みを生かした連携で、資源循環型の地域づくりを進めていく。これから働く仲間と一緒に、取り組んでいきたい。

 

東近江にあらたな連携を生むため、ゆるやかなつながり方をデザインしたい。2022年には、あいとうエコプラザに続く新たな拠点が生まれた。

築50年の民家を、みんなで改修してつくりあげた「だれんち」。

これまで取り組んできた農業体験や、民泊コーディネート、移住・新規就農の支援事業を、さらに豊かなプログラムにするため運営を開始した。

関わる人の層も豊かになること、特に20~30代の入口となることも意識している。

移住を考える人が宿泊したり、大学のゼミ生がフィールドワークの拠点として活用したり、シェアキッチンでは新規就農者が加工品開発に取り組むこともできる。

人の流れからなりわいをつくろうとしているのが、入職2年目の藤澤さん。

大学卒業後、大阪の病院で言語聴覚士として就職。その後、地元である東近江市へ帰ってきた。

「ずっと憧れていた山小屋でのアルバイトや、北海道の酪農家さんでWWOOF(ウーフ)をして。持続可能な生活や教育というキーワードと出会い、海外でワーキングホリデーを考えていたんです」

思いがけず出会ったのが、東近江の魅力だった。

「なんだか地元が面白そうだし、いろんな人が活発に動いている感じがして。あいとうエコプラザのことも知らなくて。最初はショックだったな」

農、食、エネルギー、そして暮らし。

あいとうエコプラザを訪ねてみると、今の自分がふれたいキーワードが、ぜんぶあった。ちょうど、求人募集もあった。

「働きかたもいいなと思ったんです。まっしろな事務所でずっと、じっと、決められた役割を分業するんじゃなくて。全身を動かして、企画も運営も、いろいろやってみたい」

NPOでは、一つのプロジェクトを、一人の担当者が進めていくのが特徴。

藤澤さんは入社1年目から、東近江市が主催する移住体験ツアーを任されるように。

「市役所や観光協会さんと企画を打ち合わせて、募集を開始して、ツアー当日は参加者と畑に行ったり、みんなでごはんをつくったり」

そうして、自分をめいいっぱい使って、過ごす東近江の暮らし。

ちなみに住まいは、3万円程度からマンションやアパートを借りることもできるそう。NPOのつながりで空き家を借りることも相談可能。

車はあったほうが便利だけれど、まずは自転車や原付からはじめてみてもいい。映画館や美術館に行きたくなったら、琵琶湖線に40分揺られて京都へ。

「ここには、仕事を通じて人から学ぶことがすごくたくさんあります。東近江で暮らすようになって、世界が日々日々広がっている感じ!」

働く一人ひとりの世界が広がっていく。その先に、愛のまちエコ倶楽部はどんな未来を描いているのだろう。



最後に園田さんから。



「食べものもエネルギーも自給して、“ここなら生きていける”って安心感をつくりたい。お金だけで考えたら底辺に感じられることが、生きることの豊かさから見たら、てっぺんかもしれませんよね。仕事を通じて、社会の価値観をひっくり返したいんです」

(2023/10/1 取材 大越はじめ)

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