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見るだけじゃつまらない
体験・体感する
文化財の活かし方

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

文化財や史跡を訪ねて、心から感動することもあれば、ちょっと残念な気持ちになってしまうこともある。

その違いはなんだろう。

事前の予習や知識がなくてもわかりやすい掲示があったり、言葉の説明は最小限にとどめつつ、五感で場所の魅力を味わえるような仕掛けや動線の工夫がなされていたり。

その場所らしい「体験」や「体感」がデザインされているかどうかが、大事な気がします。

長崎県波佐見町ではじまろうとしているのは、実体験を伴った文化財の活用です。

400年にわたって、日用食器をつくってきた波佐見町。

じつは焼き物のほかにも、さまざまな文化資産や観光資源が眠っています。

今回は、波佐見町に残る有形・無形の文化財のことを発信したり、それらを活かした企画やイベントを興したり。さまざまな形で活用方法を考え実践していく地域おこし協力隊を募集します。

一緒に事業を進めていくのは、地元出身で既にいろんなプロジェクトを手がけている方々や、波佐見町の歴史・文化に詳しい学芸員さんなど、頼もしいメンバー。お酒も飲みながら、わいわい話して進めていく場面も多いそう。

特別な経験は求めません。歴史や文化に関心があって、人との距離感が近い地域の雰囲気が好きな人にとっては、おもしろい仕事だと思います。

 

長崎・波佐見。

このまちの歴史や文化を伝える拠点として、2021年にオープンした波佐見町歴史文化交流館を訪ねる。

昭和の時代に波佐見焼製造で栄えた、旧橋本家住宅をリノベーションした場所。

旧石器時代にはじまり、古代から中世にかけての仏教やキリスト教とまちの関係、諸外国との交流や土地に根付いてきた風習、そして波佐見焼の成り立ちなどが展示されている。

まず話を聞いたのは、波佐見町教育委員会次長の朝長(ともなが)さん。今回の地域おこし協力隊を募集しようと声をあげた方。

「波佐見町は、400年以上にわたって日用の食器をつくり続けてきた焼き物のまちです。ここ数年で産地としての知名度も上がってきて、年間100万人が訪れるようになりました」

「でもじつは、焼き物以外にも活用できる資源をたくさん抱えたまちでもあるんです」

たとえば、波佐見町講堂。昭和12年に建てられた木造建築で、もともとは小学校の体育館として長年使用されてきた。

音の響きがよく、和洋の要素を取り入れた内装や外装もとても雰囲気がある。そんな空間を活かして、最近ではEGO-WRAPPIN’や仕立て屋のサーカスといったアーティストによるライブやパフォーマンスにも使われている。

「先日も古澤巌さんっていうバイオリニストが来られてですね。ここでやりたいと。そういった著名なアーティストの方にも、どんどん使っていただきたいと考えているんです」

また、現存する木造建築物としては、西日本を見渡してもなかなかない規模なのだとか。札幌の時計台からも、「パネル展示で紹介させてもらえないか?」と問い合わせがあったそう。

「令和7年度には、長崎県で国民文化祭が開かれます。それに合わせて、全国で木造建造物の保存や活用に取り組んでいる方々にお声かけをして、この講堂でシンポジウムを開きたいと思っています。建築としての価値を高めて、より広く知っていただくための仕掛けを考えていきたいです」

今回入る協力隊には、講堂を使ったライブやシンポジウムを企画・調整したり、日常的に情報を発信したりなど、さまざまな形で波佐見の文化財を活用する方法を考えていってもらいたい。

波佐見町の文化資産は、形あるものだけではない。

無形の文化財として残っているのが、皿山人形浄瑠璃。

3人で1体の人形を操り、太夫と呼ばれる語り手と三味線の音色に乗せて物語を進めていく伝統芸能で、波佐見町では皿山という地区に保存会がある。島原市や西海市、長崎市内の老舗料亭など、県内のさまざまな場所に出向いて公演をおこなうことも。

全国各地に浄瑠璃の保存会はあるものの、担い手不足で活動を縮小しているところも少なくない。皿山人形浄瑠璃を後世に残していくためにも、朝長さんはより多くの人にその魅力を伝えていきたいという。

「国民文化祭のオープニングで人形浄瑠璃を披露できないかと思っていて。町内だけでなく町外の人にも、こういう文化があることをもっと知ってほしいんですよ」

波佐見町には、人形浄瑠璃以外にも「浮立(ふりゅう)」と呼ばれる豊作を祈るお祭りが4つの地域に伝わっている。地域それぞれによって特色が異なるこれらの伝統芸能のことも、併せて伝えていきたい。

 

「浮立なんか、準備段階がおもしろい。小屋入りとかさ、練習も観光資源になってくる」

そう話すのは、株式会社高山の代表を務める小林さん。90年ほどの歴史を持つ窯元の経営に携わりつつ、文化財を活かしたさまざまな取り組みを立ち上げてきた方。

「本番がいつありますっていう発信だけじゃなくて。過程を見たい、一緒に体験したいっていう人は必ずいるから」

たとえば浄瑠璃の人形を動かしてみたり、夏休みに入った子どもたちや地域の大人たちが夜な夜な神社に集まり、浮立の練習に励む様子を目の当たりにしたり。

地域で当たり前のように続いてきたことも、外から訪れる人にとってはとても貴重な体験になる。

人形浄瑠璃や浮立といった伝統芸能は、もともとは収益を得るためにはじまったものではない。ただ、伝統を継続していくためにも、文化財を観光に活かしていくことが必要だと小林さんは考えている。

「文化財って、維持するだけで終わってしまうと厳しいというか。“文化ツーリズム”として事業化していかないと、残したいものも残せなくなっていく」

訪れる人の視点からしても、保存整備された文化財や披露される伝統芸能をただ見るだけでなく、少しでもその輪のなかに混ざって“体験”できると、記憶にも深く刻まれるし、いい思い出になる。

そうして地域にもお金が落ちるようになれば、経済的な面でも持続可能になっていきそうですね。

「ネタはいくらでもあるっちゃんね。あとはこれから入る人が、どう地域に溶け込んで、その資源を活かしていくかだよね」

焼き物関連の文化財でも、活かしきれていないものがまだまだある。

ひとつは、中尾上登窯跡(なかおうわのぼりかまあと)。世界で2番目の長さを誇る登り窯の跡地で、もともと器を焼く部屋だったスペースが、33段の大きな階段のように斜面地に続いている。

活用法のひとつとして今考えているのが、キャンプ場としての利用。

階段状のスペース一つひとつにドーム型のテントを設置することで、山からのきれいな景色を楽しめる。加えて、あかりの灯ったテントが並ぶ様子を集落の側から見上げると、かつて登り窯に火が入っていたころの情景を味わうこともできる。

キャンプイベントの企画や提携できそうなアウトドアブランドの誘致など、関心があれば1から企画立ち上げを担っていってほしい。

もうひとつは、お隣の有田町へ向かう道の途中に現れる畑ノ原窯跡。こちらは波佐見焼の生産初期の窯跡で、中尾上登窯跡よりはこぢんまりとした雰囲気がある。

特徴的なのは、現役で窯焚きができること。全24室のうち4室が復元されていて、地元の中学校では、授業で作陶した器をここで焼き上げているという。

「その中学生の作陶体験は、波佐見高校の生徒が指導していて。腰パンしてたやつがさ、指導に行ったらピシッとして(笑)。高校の先生が一番驚いてたよ。指導する立場になると、こうも変わるのかって」

「窯焚きも、全国の陶芸教室に通っている生徒さんに『自分の作品を登り窯で焼けますよ』って呼びかければ、来たい人もおると思う」

さらに小林さんは、窯を焚いた熱を活かして、冬場に野外レストランを2度実施したこともある。

両サイドを幕で覆ったものの、思うように暖気がこもらず、寒さ対策が今後の課題。それでも小林さんは、「3度目のリベンジをしなきゃ…」と、飄々としながら前を向いている。

「こういうアイデアは、飲みの席でどんどんあがってくるんです」と朝長さん。

「で、みんな忘れてしまう。何言ったかな?って(笑)。文化財活用専任の担当として、そうやって話したことをちゃんと覚えておいて、形にしていくところを今回募集する人にぜひお願いしたいですね」

活かせそうな文化財も、アイデアや知識の引き出しも、たくさんある。すべてを実現することはむずかしいし、これから入る人がワクワクすることから取り組めばいい。

頭でっかちに考えるよりは、いろんな人の協力をあおぎながら、どんどん動いて実践できる人が向いていると思う。

 

歴史・文化的な背景から、今回の取り組みを後押ししてくれる学芸員の中野さんにも話を聞いた。

石川県金沢市内の大学で考古学を専攻していた中野さん。畑ノ原の窯跡を調査していた先生のすすめで、当時募集していた波佐見町の学芸員に応募し、30年前に移住してきた。

「波佐見は住みよい場所ですよ。ここ5、6年ですごく発展して。何よりやっぱね、人がいいですよね。排他的じゃなくて、飛び込んだらすぐ受け入れてくれるような人が多い。そこが魅力です」

「外から来る人に慣れてきた面もあると思います。前は工房を見せてほしくてもダメだったところが、今は逆にどうぞどうぞって。どんどんオープンになってきているように感じます」

もともと寛容な地域柄に加えて、ここ数年でいろんなデザインの波佐見焼が生まれ、各地から人が訪れるようになったことで、新しいことに取り組みやすい土壌がつくられてきている。

一方で、歴史的な背景があってこその文化財。中野さんのように考古学を学んできたとか、何か素養がないと、仕事で関わることはむずかしいのでしょうか。

「いや、そんなことはないと思いますよ。むしろ経験や知識はないほうがよくて」

それはなぜですか?

「最近は文化庁の考え方も、文化財を単に守るだけじゃなくて、どんどん活用しなさいっていう方向に変わってきています。見るだけじゃなくて体験できるとか。+αの付加価値が重要で」

「文化財や伝統芸能への関心はもちろんある人のほうがいいですけど、活かし方は既存の発想にとらわれてほしくない。知識を補足したり、人を紹介したりする面ではサポートできるので、好奇心を持って飛び込んできてくれる人がいいですね。あとはお酒が飲める人かなあ」

取材をしていても、途中からいろんなアイデアが飛び交い、作戦会議に混ざっているような気持ちになりました。

粛々と企画を立てて、思い描いた通りに進めていきたい人には、ちょっと苦しい環境かもしれません。活かしたい文化財もたくさんあるし、その活用法には無数の可能性があるのでなおのこと。

脱線も楽しみながら、転がっていった先でアイデアを掴み、まずやってみる。

文化財の新しい活かし方を考えるには、そんな柔軟な思考と行動力が必要なのだと、話を聞きながら何度も思いました。

実際に現地を訪れて、五感をひらきながら妄想を膨らませてみるのもいいかもしれません。

(2023/7/4 取材 中川晃輔)

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