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身体も心も満たす食を
丘のまち、美瑛で
まるごと味わう

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

目の前いっぱいに広がる美しい丘に、はっと息をのむ。

四季で変わる畑の表情は、晴れていても雨の日でも、どんなときだって美しい。

そんな景色を眺めながら、産み出された食材を使った料理を食べると、心も身体も満たされていく。

今回紹介する「フェルム ラ・テール 美瑛」はそんな時間を体験できる場所です。

北海道・上川郡美瑛町。

北海道のほぼ真ん中に位置するこの地域は、丘の上に広がるまちとして知られています。

ここで2017年にオープンしたのが、「フェルム ラ・テール 美瑛」。

洋菓子とパンの製造・販売、そして美瑛を中心とした北海道の食材をその場で味わうことができるレストランの3つが揃っている場所です。

運営しているのは株式会社ラ・テール。1998年に東京の世田谷で「ラ・テール洋菓子店」としてはじまり、「自然に生きる」をコンセプトに、添加物をできるだけ使わない洋菓子店として都内を中心に出店してきました。

今回は「フェルム ラ・テール 美瑛」で、パティシエ、ブーランジェ、販売・ホールスタッフを募集します。パティシエはスーシェフレベルの技術が必要だそう。

素材にこだわり、産地で調理して届けたい人にとっては、どんどんチャレンジできる場所だと思います。

 

羽田空港から旭川空港までは、約2時間。空港からは高速バスで美瑛に向かう。

美瑛駅でバスを降り、少し迷いながらタクシーに乗り込む。

この日は雨、10分ほど走ると、フェルム ラ・テール 美瑛の店舗が見えてくる。

お店に着くと太陽が出てきた。空気が澄んでいて気持ちいい。

シロツメクサが一面に咲いた庭では、お店から出てきたお客さんが景色を眺めたり、ヤギと触れ合ったりしている。地元の牧場から夏のあいだ来てくれているヤギだそう。

中に入ってまず目に入るのが、洋菓子・パン・レストランの工房。部門ごとに工房が分かれていて、職人たちがそれぞれ手を動かしている様子が一望できる。

右手にはお菓子やパンが並んでいるショップが、左手には広々としたレストラン。あちこちからおいしそうな匂いが漂ってきて、おなかがすいてくる。

「僕らの使命は生産地と消費地、生産者と生活者を結ぶ架け橋になること。コンセプトの『自然に生きる』は、素材の鮮度を大切にすることだと思うんです。それを実現するには、産地のそばでつくることが一番ですよね」

そう話すのは、フェルム ラ・テール 美瑛の取締役専務、細田さん。

ラ・テールに勤めて10年、フェルム ラ・テール 美瑛の立ち上げからかかわっている方だ。

「20年前に美瑛の小麦と出会って、そこから全店舗で美瑛産の小麦を使うようになりました」

北海道産のなかでも、タンパク質の含有量が高く、お菓子やパンづくりに適していると言われる美瑛産の小麦。ラ・テールでつくられる洋菓子やパンには、美瑛の製粉会社と共同開発したオリジナルの小麦粉が使用されている。

「たとえば、食パン『北の香り』に使っているのは、『キタノカオリ』という品種の小麦。パン職人にとっては理想的な小麦粉と言われるほど人気があるものです」

「キタノカオリ」は病気にかかりやすく栽培が難しいため、つくり手が減っているのだとか。洋菓子やパン、つくるものにあわせて最適な品種の小麦を、地元農家の協力を受けながら使用している。

「グリホサート系除草剤とかネオニコチノイド系殺虫剤を使わずにつくっている美瑛の小麦農家さんがいるんです。『この小麦粉でパンをつくりたい』と、われわれの想いを伝えたら共感してくれて、2年前からラ・テール専属の契約栽培をしてもらっています」

ラ・テールが20周年を迎えたとき、美瑛の小麦を使っていたご縁で美瑛町から声をかけてもらい、15ヘクタールの土地を借りることに。

東京ドーム3つ分ある敷地には、店舗や散策路、テイクアウト店舗「ノンノの小屋」などがあり、夏にはひまわり畑も見られる。

まちのなかでも小高い丘にあるフェルム ラ・テール 美瑛。はっと見上げると、どこまでも広がる空が見える。

奥に見える茶色い部分が、収穫を終えたばかりの小麦畑。手前の家は、映画「愛を積むひと」のロケセットで、今はゲストハウスとして使われている。

「きれいですよね。東京生まれの自分も、この土地と住む人に惚れ込んでいます」

「東京にいるころは、電話やメールをすれば製粉された小麦粉が届くので、生産者とのかかわりがあまりなかった。でも今は、その年の天候によって収穫量や質が左右されることも、自分の肌でわかる。直接声を聞くことができる距離感はいいですね」

ほかにも、「この農家さんは無農薬でつくっている方で…」、「お店のなかに飾っている写真は美瑛に移住してきた写真家が撮影したもので…」など。細田さんは、このまちでかかわっている人のことを詳しく教えてくれる。

昨日も地域の農家さんに、ラ・テールのお菓子を差し入れに行っていたそう。

自分で体感した自然の恵みを伝えて残していきたいという熱意と、それを育んでいる生産者との関係性を大切にしていることが伝わってくる。

「食っていうものは、胃袋を満たすことよりも心を満たすというか。食を通じて自分らしく活き活きと仕事をしていきたい。そんな気持ちを大切にしています」

 

ここで働くことに誇りを持っている。取材を通してそう感じたのは、菓子製造の責任者でありシェフのバクサ・裕子さん。

パティシエとして10年間ドイツで経験を積んだのち、帰国。東京の世田谷にあるラ・テール洋菓子店で12年働いたあと、2年前に美瑛にやって来た。

「ドイツではなるべく添加物を使わないお菓子やオーガニックな製法を当たり前にやっていて。日本で働くときも、同じ考え方を持っている場所で働きたいと思いました」

ラ・テールではできるだけ添加物などを使わず、素材のあるがままを活かしたお菓子やパンを届けることを大切にしている。裕子さんは、その想いに共感した。

「北海道とドイツって気候が似ていて。2017年、フェルム ラ・テール 美瑛がオープンするときに、この土地で働くことに興味を持ちました」

裕子さんが手がけた商品で、フェルム ラ・テール 美瑛の看板商品となっているのが「バターチーズサンド」。

小麦はもちろん、バターや塩などもできる限り北海道産の素材にこだわった一品。クリームを挟むサブレは軽い食感で、これまで食べたバターサンドとは一味ちがう。

「食べる人が安心して、かつ手にとりやすいお菓子をつくりたいと思っていて。新しい見たことのないお菓子を一からつくるより、馴染みのあるバターサンドを北海道の素材でつくってみたらどうだろう?と思って、生まれた商品です」

菓子とパンのショップでは、焼き菓子やプリン、チーズケーキのほか、多数のパンが並び、レストランでは北海道の四季を味わえるメニューが展開されている。定番商品もあれば、職人たちがアイデアを出し合って生まれたオリジナルメニューも。

「製菓のスタッフがパンの販売を手伝ったり、レストランの皿洗いやバッシングを手伝ったり。北海道のトップシーズンは5月から8月ごろなので、とくに今みたいにいそがしい時期は、ほかのセクションの作業をうかがいながら行ったり来たりして手伝うことも多いです」

ときには店舗を貸切ってウェディングパーティーを開くことも。スタッフ総出で会場の設営や料理の準備、会の進行などもおこなう。

つくるものごとに部門が分かれているお店が多いなかで、自分の専門分野外のことも学べるチャンスがあることは、食にかかわる人にとって成長する機会になるんだろうな。

「垣根を越えてみんなでつくり上げることを、すごく体感できる場所だと思います」

お店のオープンは午前10時。製造は朝の7時から仕込みを開始し、販売やレストランは9時から勤務が始まる。

レストランの厨房をのぞかせてもらう。

厨房には3人、できたてを提供するために注文が入ってから調理をはじめる。

この日のおすすめメニューとして出されていたのは、「美瑛産ポークと北海道ポテト 濱田さんのブロッコリー モホロホソース」。

ポークとポテトに合う味を求めて辿り着いたモホロホソース。パプリカとにんにくを使ったスパイシーな味が、素材の味を引き立ててくれる。

ほかにも「ファームズ千代田さんのジャージー牛乳を使ったミルクジャム」など、農家さんの名前が書かれた商品がずらりとお店に並んでいる。

どんな人がつくっているのか近い距離で知ることができる環境は、食に興味のある人なら好奇心を満たしていけると思うし、お客さんに説明するときにも心からおすすめできる。

ここで働く人は食に思い入れのある人が多い。だからこそぶつかるときもある、と裕子さん。

「希望とか不満も含めて、みんな言いたいことは言い合っていて。入社したばかりとかは関係なく、アイデアや意見をどんどん出していってほしいです」

 

「最近は、ほかの店舗にも行っていろんな経験を積んでみたいなと考えています」

そう話すのは、入社3年目の石森さん。東京の製菓の専門学校を卒業したのち、フェルム ラ・テール 美瑛に入社した。

「はじめて美瑛に来たときは、何もないまちだなって思いましたね(笑)。でもそれが新鮮で、東京だとこんなに広い空って見ることがないし、ここだけでしか見られない景色や体験ができると感じました」

希望はブーランジェだったけれど、まずは販売とレストランのホールからはじめることに。

「『まずは商品についてよく知ることが大切』と、細田さんに言われて。北海道ならではの素材や訪れるお客さんのことを知るには、現場に出るのが一番。日々勉強しています」

お客さんは、なだらかな丘に広がる畑や草原を見にくる観光客もいれば、ラ・テールの食を堪能しにお店にやってくる人もいる。

都内の店舗で商品を手に取り、その美味しさから美瑛までやってくるお客さんも多い。

遠方からでもわざわざ訪ねたくなる場所だからこそ、特別な時間を過ごしてほしい。お客さんの声を聞くことは、商品開発にもつながっていく。

今はレジやホールをしつつ、パンの製造も担当している石森さん。自分の好きなことや挑戦してみたいことに取り組めている、と笑顔で話してくれる。

「私は絵を描くことが好きで。商品紹介のポップを描いて、お客さんがそれを見て買ってくださる様子を見ると、すごくうれしいです」

自分が考えたアイデアをもとに、ブーランジェが実際にパンをつくってくれたこともあった。まだ試作段階で、店頭に並ぶのは先になりそうだけれど、働く人のアイデアやチャレンジしたいことが形になる環境は魅力的だと思う。

 

自然の恵みを受けとり、生産者と素材の魅力を「食」を通して伝える。

地元の人とお客さんとの距離が近く、広々としたこの土地だからこそ、体感できることはきっと多い。

「自然に生きる」という想いに共感した人なら、心地よく自分の腕を磨いていける場所だと思います。

(2023/07/25 取材 大津恵理子)

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