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クラブチームのように
地域で支える
あたらしい部活動のあり方

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

体育館で響く運動靴の音、音楽室から聞こえる演奏。グラウンドを走る野球部、部室でおしゃべりに花を咲かせる文化部。

学校という空間で、部活動は多くの景色をつくってきました。

子どもを含めた地域でスポーツや文化活動を行うのが主流の海外に対して、部活動という独自の文化を育んできた日本。生徒の成長を支えてきた一方で、少子化による部活数の減少や、教職員の負担など持続に向けた課題も持ち上がっています。

北海道・むかわ町。中学校が2校という小さな町で、部活動の指導を、学校から地域の人々へ移行する取り組みが始まろうとしています。

総合型地域スポーツクラブや、少年団、文化クラブ。さまざまな大人が関わりながら中学生の新しい部活動をつくっていく地域おこし協力隊を募集します。

 

北海道の南に位置するむかわ町。新千歳空港からは、車で40分ほど。

2つの町が合併して生まれたこの町は、海辺から内陸にかけて細長く伸びている。

港にはシシャモやホッキ貝の漁船がとまり、内陸にはメロンや野菜、米の畑が広がっている。ついさっきまでにぎやかな空港にいたことを忘れてしまうほど、のんびりした雰囲気だ。

迎えてくれたのは、教育委員会の清野(せいの)さん。むかわ町出身で、高校卒業後から役場に勤めて6年目になる。

清野さんが担当している、中学校の部活動の地域移行。

国が3年前から掲げている方針で、長時間勤務の先生方の負担を軽くすることや、子どもが減っても部活動を継続できる環境を整えることを主眼に、部活動指導の担い手を地域に移していこうというものだ。

すでに各地で取り組みが始まっていて、むかわ町も今年度から本格的に取り組もうとしている。

「町には中学校が2校あります。僕が中学校を卒業したのは10年ほど前ですけど、この間にバレーボール部、ボランティア部がなくなって、僕が入っていた野球部も1名に減って休部状態になりました。今も残っている部活は5つです」

もう一校も、部活動はパソコン部、バトミントン部、陸上部の3つだけ。

放課後に先輩や後輩と練習したり、部活後に気の置けない仲間と寄り道して帰ったり。

そうした光景が、この町から少しずつ消えていっている。

「町の子どもの数は減少傾向です。チームスポーツを諦める子や、先生の異動とともになくなる部活も今後増えていくだろうと思っていて」

「地域移行をきっかけに、子どもたちが放課後にやりたい活動ができる体制をつくりたいです。中学校だけでなく、まちづくりの一貫として、持続可能なスポーツと文化環境を整備していこうと思っています」

部活動移行プロジェクトで、むかわ町は二つの柱を立てている。

一つ目の柱は、現在の部活動のうち、まず土日の活動を地域で担う体制を整えること。2026年4月までに達成することを目標にしていて、現時点では、町の少年団やスポーツチームが受け入れ先の候補として考えられるという。

もう一つの柱は、放課後や土日に、運動や文化活動の場を新たに用意すること。すでに町内の総合型地域スポーツクラブが主体となって、今年の夏から開始することを目標に動いている。

子どもたちの部活動の機会を維持したうえで、学校や先生の負担を減らしていく仕組み。生徒が好きなこと、興味のあることに地域の大人と一緒に取り組める環境。

今回は、これらを実現するコーディネーターを、スポーツ・文化の両分野で募集したい。

「今は検討が始まったばかりで、地域でどのようなスポーツ・文化クラブがあるのか、指導を担っていただける可能性があるのか、という調査を始めようという段階です。中学生のニーズもこれから探っていかなければと思っています」

部活動移行プロジェクトは、全国的にも新しい取り組みで前例も少ない。

コーディネーターは、中学生や先生、地域の少年団やクラブチームの方々と対話しながら、3年の任期中に、二本柱の達成に向けて計画をマネジメントしていくことになる。自分自身でプロジェクトを主導していく気持ちがなければ、なかなかむずかしいと思う。

チャレンジングなぶん、中学生が楽しく活動している様子や、地域の大人と一緒に体を動かしている景色を見られたときの喜びは、きっとひとしおだ。

 

むかわ町の部活動地域移行プロジェクトの特色が、今ある部活動に加えて新しい活動の場をつくろうとしていること。

町は町内の総合型地域スポーツクラブ「むーブ」にその支援を依頼していて、コーディネーターも、町民体育館にあるむーブ事務局に机を置いて活動する予定だ。

むーブの事務局長である石井さんは、小中学生のお子さんを持つ明るい女性。きっと、今回募集する人の力になってくれると思う。

「むーブはNPO法人化して7年目です。町の支援やボランティアのコーチのみなさんのおかげで、卓球やテニス、バスケにヨガなど、いろいろな運動ができる場になっています。年少から年長さん、小学生、中学生がメインで参加してくれていますね」

石井さんご自身は、ヒップホップを中心としたダンスインストラクター。むーブでダンスを教えるうちに「いつの間にか事務局長になっていた」そう。

「もともと部活動の地域移行は、道内のスポーツクラブの間でもここ1、2年すごく話題になっていて。研修や会議に参加しながら、私たちができることを検討していたタイミングで教育委員会からご相談いただきました」

「子どもたちには、狭い町だからという理由で好きなことを諦めてほしくない。私たちで放課後の過ごし方を提案したいというのは事務局みんなの思いでした。今度始める『むブカツ』は、その最初のチャレンジです」

むブカツは、町の中学生向けに開催する放課後の居場所のこと。

初回は、アルティメットというフライングディスクを用いるスポーツを、事務局の若い男性が講師になって行う予定だそう。ほとんどの子がはじめて経験するスポーツだ。

「講師になってくれる男の子はもともとサッカー少年で、体を動かすのがすごく好きなんです。アルティメットは小学生向けの運動教室でやってみたんですけど、本人から『周辺視野を使うスポーツだから、中学生のほうが面白いかも』と提案してくれて。運動の苦手な子も楽しめるように、投げ方から教えます」

たしかに、部活動では敷居が高くても、軽いスポーツをやってみたいという子は案外多いかもしれない。運動が苦手な子の、最初の入口になりそうだ。

今後、むブカツは月に1回から開催していきたいそう。どんな活動を予定しているんですか?

「まず、部活動にはないスポーツですね。文化系をやりたい子に向けては、事務局メンバーが得意なドライフラワーやお菓子づくりも考えています」

「あとは、むかわは農家さんが多いから一緒に野菜をつくることも相談できそうですし、ボランティアとしてむーブの小さい子ども向けのクラスを手伝う機会もいいのかなと思っています」

すごい、もりだくさんですね。

「そうなんですよ(笑)。実際、常勤3人という小さい組織だからなかなか時間がとれなくて。今回来ていただく方には、むブカツを一緒に企画運営してもらいながら、どんな子がどんな活動をしたいのかニーズ調査をしてほしいです。そのうえで、今後の活動を考えていきたいですね」

むーブではこれまでも中学生向けに教室は開いていたものの、積極的に参加を呼びかけるのはむブカツが初めて。この日もまだチラシができたばかりで、広報はこれから行う予定だそう。

体を動かしたり、自分でものづくりしたりする楽しさを、むブカツを通して知ってほしい。

「ここは、与えられたものをこなす仕事じゃないほうが圧倒的に多いので、自発的にやりたいことを発信してくださる方が向いていると思います。それができないとちょっとうちはむずかしいかもしれないな」

「新しい方の意見を取り入れて、いろいろなことを子どもたちにやらせてあげたいと思っています」

町内の子どもたちを、小さいころから見守ってきた石井さん。「子どもの運動会では、『あんなに運動が苦手だった子がこんなに走れるようになって』と感動して、めちゃくちゃ写真を撮ってしまう」と笑っていた。

むブカツも、今までできなかったことにチャレンジする最初のきっかけになる予感がする。

 

既存の部活動の地域移行についても、教育委員会と中学校の間で会議が定期的におこなわれている。今後は、コーディネーターも参加して今ある部活動の地域移行について検討していくことになる。

町内に2校ある中学校の1校、鵡川(むかわ)中学校の校長の阿部さんは、もともと道内各地の社会教育に携わっていた方。

「今、うちの学校にある部活は、バドミントン、ソフトテニス、アイスホッケー、それからサッカー。文化系は吹奏楽部です。部活動が楽しみで学校に来ているような子もいて、放課後がいちばん楽しそうですよ」

「ただ、サッカーは部員が2人で隣の苫小牧市の学校と合同ですし、野球部も休部となりました。少年団の続きでバスケをやりたいという声も多いのですが、体制がつくれていないのが実情です」

現在、鵡川中学校には15名の先生がいて、部活動の顧問も分け合っている。

活動日は、土日を含めて週5日ほど。部活動を教えたい先生もいる一方で、授業準備や校内事務にくわえて、放課後や休日の部活動を見るなど、負担は小さくない。

今後の移行については、阿部さんも賛成している。

なかでも、吹奏楽部の取り組みはモデルケースになりそうだ。

「吹奏楽部は町内の高校と合同演奏会を開催しているんですが、生徒も楽しそうなんです。やっぱり人数が増えると音の迫力や一体感が違いますし、高校生の高い演奏レベルに触れて非常に刺激になっているようで。とても貴重な場になっています」

「子どものうちは、一般的に家と学校、部活動くらいの範囲しか自分の世界がないんですね。地域で年代の異なる他者と過ごす空間、誰かと一緒に学ぶ時間というのはすごく大事だと思うんです」

阿部さんは、「先生の代わりを探すのではなく、地域の人たちに主体的に関わってもらえる仕組みをつくっていくこと」が大事だと話してくれた。

町内には、各スポーツ少年団や運動チームもあるので、土日は小中学生合同練習をしたり、コーチに教えてもらえたりするような体制は実現できそうだ。例えるなら、サッカーのクラブチームのようなあり方が理想型の一つかもしれない。

コーディネーターは、学校や生徒、地域の橋渡しとしてその場づくりを担っていく。

「とにかく人と関わる仕事です。私も長く社会教育に携わっていましたが、地域では意見の違いやニーズのずれが出てくることもあると思います。そこをコミュニケーションしながらつないでいく。たとえば、廊下ですれ違った先生に気軽に声をかけて関係性を広げていく力のある人がいいですね」

「他の人には見えない場面も含めて、どれだけ人と関係性をつくれるかがこの仕事のおもしろさになっていくんじゃないかなと思います」

部活動の地域移行は、全国各地でその地域らしい方法を探している真っ最中です。

この北海道の小さな町の挑戦も始まったばかり。

この町らしい場づくりを、一緒にしていく方を探しています。

(2023/06/27 取材 遠藤真利奈)

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