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隠岐をもっと元気に
にぎわいづくりの仕掛け人

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

中山間地域や離島など、どこの地域でも少子高齢化が進んでいます。

どうしたらその現状に歯止めをかけることができるのか。全国でいろいろな取り組みが行われています。

「賑わいづくり喫茶 ゆらぎ」は、島根県・隠岐の島町にある喫茶です。港のにぎわい創出を目的に、今年の3月にオープンしたばかり。

隠岐汽船という船会社が箱をつくり、経営者は島外から集めることにしました。

そこに手を挙げたのが、眞壁海斗さん。経営は未経験。大学を卒業後、単身で島に飛び込み、日々奮闘中です。

合同会社隠岐ゆらぎを立ち上げた眞壁さん。

隠岐の島単体ではなく、そのほか3つの有人島を含めた隠岐全体を盛り上げることが必要だと言います。

実際に、各島のプレイヤーを巻き込んでイベントの開催にも積極的です。

来春からは喫茶の2階にあるホテルの経営も引き継ぎ、ビジネスモデルをより強固にしていくそう。

地域への影響力を広げていくため、今回は眞壁さんと同じ視点で働く事業責任者を募集します。

メインで担当するのは、喫茶事業。

日々の接客からメニュー開発、地域の人を巻き込んだイベントに加えて、そのほか新規事業についても、考えていきます。

経験は問いません。港から島を元気にする仕事です。

 

羽田から飛行機に乗り、まずは伊丹空港へ。そこから乗り継いで隠岐空港へ渡る。

到着後、車で島内を走っていく。

島を訪れるのは2度目。

隠岐の島は、島根本土の北に位置する島。漁業が盛んで、松葉ガニや岩牡蠣の産地としても有名だ。

また、本来なら南北でバラバラの土地に分布している植物を見ることができ、その独特な景観は世界ジオパークに認定されるほど。

ずっと見ていても飽きない豊かな自然が広がっている。

しばらくして、西郷港に到着。

すぐ近くに2階建ての建物を発見した。1階は眞壁さんが運営する喫茶、2階はホテルになっているという。

この日は休業日とのことで、裏口から中へ。

はじめに話を聞いたのは、一般社団法人離島百貨店の杉崎さん。

離島百貨店は、離島の困りごとを解決するため、物流・人材・観光など、さまざまな分野で企業や行政と協働している団体。

杉崎さんは、1年半ほど前からこの島にある隠岐汽船に出向して、喫茶とホテルの立ち上げに関わってきた。

お久しぶりです。まずは喫茶の近況について聞いてもいいですか?

「今年の3月にオープンしたときは、お客さんの7割ぐらいが島民の方で、夏は観光客の方と半々って感じ。リピーターさんが半分くらいですかね」

訪れる層としては30〜40代が5割ほど、60〜70代が3割ほど。毎日訪れる地元のおばあちゃんもいるという。

「思っていたよりも順調です。予想していた売り上げが月50万だったんだけど、ふたを開けたら平均してその倍以上は売り上げているかな。リピーターのお客さんを大切に、めちゃめちゃ頑張っています(笑)」

店内は最大で30席。夏場の観光シーズンのときには、1日で200人が訪れたことも。杉崎さんもヘルプで入りながら、お店を回している。

この場所の目的は、港でにぎわいを生んでいくこと。

喫茶を利用してくれるホテルの宿泊者にも、積極的に声をかけているという杉崎さん。

「ここを定宿にしてくれている人たちがいて。独特の雰囲気があって、気になって声をかけてみたら、港周辺の再整備計画を担当している設計事務所さんだったんです」

島の多くの人がまだあまり内容を知らない西郷港再整備計画。もっとみんなが自分ごとにできれば、計画もより活きたものになると考えた杉崎さんは、喫茶でイベントを開いてもらうことを提案した。

「島の若い人たちもたくさん来てくれて。計画の内容を聞いた後に、設計者も交えてみんなで意見を出し合う会になりました」

今後も、となりの知夫村からラーメンで地域おこしを企てているお店を招待したり、海士町の有名ホテルに出張ダイニングを依頼したり、いろいろと企画中。

島外と島内をうまく巻き込んで、にぎわいづくりをしている。

「イベントの開催費は、基本は無料です。地域のためになるんだったら、無料でいいじゃんって。あとは、商業で港をもっとにぎわせたいよねって、代表の眞壁くんとも話していて」

かつて西郷港は、商業でにぎわった地域。お店の数はいまの約5倍もあり、映画館や、屋上に遊園地のあるデパートもあったという。

活気ある港の雰囲気を、また取り戻したい。

「でも、ただ昔のやり方を真似しても続かないから、何か新しいものを組み合わせて継続可能な形にしていく必要があって」

喫茶とホテルは、まさにそれを実現するもの。

「喫茶って、開けた場所としてにぎわいも生みやすいけれど、ビジネスモデルとしては弱いじゃないですか。原価率高いし、人件費もかかる。逆にホテルは原価率が低いし、工夫次第で売り上げもあげやすいけど、にぎわいは生みづらい」

「この2つを組み合わせることで、持続可能なにぎわいづくりができると思っています」

さらに、「大人の島留学」と呼ばれる就労型お試し移住制度で、ほかの3つの島から働きに来てもらっている。

人件費も公費でまかなうことができ、まわりの島とのつながりもできる。隠岐の島だけでなく、隠岐諸島全域を巻き込むことで、にぎわいも大きくなっていく。

より影響力をもって事業を進めていくためにも、杉崎さんたちとともに喫茶の運営を担う人を今回募集することになった。

新しく働く人も、ここで過ごすことで、こういった地域目線と経営的視点が養われていくと思う。

 

次に話を聞いたのは、喫茶ゆらぎを経営する眞壁さん。前回の日本仕事百貨の記事を読んで、この仕事に応募した。

「オープン前後は、大変すぎてあまり覚えてなくて(笑)」

「でも、メニューづくりはとくに大変だったと思います。この島の事情を何も知らないまま来たので、どういうテイストのものが島民の方にうけるのか、まったくわかりませんでした」

たとえば、と教えてくれたのは、オープン当初お店で提供していたパスタ。

「オープンしてからはじめの1ヶ月はパスタを提供したんですよ。ただパスタの注文が入ったら、パスタに集中しないといけなくて、ほかの作業が滞ってしまった」

「あと、うちは港の近くなので、スムーズな客席回転のほうがいいと思っていて。麺類って人気だけど、オペレーションは大変だし時間もかかる。うちのお店には向いていないってことが、1ヶ月かけてわかりました」

観光客に寄せて島の特産品ばかりを使ったメニューは、島民にはつまらない。一方で、島民に寄せて島にはないメニューばかりでも、かえって観光客には刺さらない。

まだ島のことについてわからないことも多いからこそ、何を新メニューで出すべきか、毎回頭を悩ませるという。

島に来てから、島内を回ったり島前地域に足を運んだり。着々と島の人たちと関係を築くことで、どんなところに需要があるのか、少しずつわかってきた。

たとえば、「船ペチーノ」と呼ばれるフローズンドリンク。

「最近まで山陰にスタバはなかったし、これまで島にフローズンドリンクってなかった。僕もスタバで働いていたことがあって、死ぬほど売れるのは知っていたので。あとは、島民の方と外から来る人、両方が頼むものとしてちょうどいいかなって」

7月末から始めて、1ヶ月で300杯ほど売れているとのこと。また予想外に、島民のおじいちゃんやおばあちゃんから人気だという。

苦悩もありつつ、売り上げは順調に伸ばしてきた喫茶ゆらぎ。

そして、別会社が経営する2Fホテルの経営も担うことに。

「チェックインが簡素化されていて、稼働率も常に8割を超えるようなものを目指しています。基本は喫茶とホテルを2〜3人体制で回していく予定で考えていて、フロント業務も喫茶で働く人が兼任するような感じ」

「客室の清掃は、専門でアルバイトの方に入ってもらう予定です。人件費のバランスをとりながら、高い収益をあげるようなビジネスモデルです」

また、喫茶閉店後にバーの営業も考えているという。

「ここら辺って入りやすいお店が少ないから、夜もオープンできると宿泊者の対応も手厚くできるし、経営的にもより強固になるかなって思っています」

今回新しく入る人は、主に喫茶事業を担うことになる。

キッチンや接客、新メニューの開発、にぎわいづくりを目的としたイベントの企画など。眞壁さんと杉崎さんと一緒にお店をつくっていく。

「やりがいは大きいと思っていて。雇われ社員じゃなくて、事業責任者として来てもらえると嬉しいです」

 

最後に話を聞いたのは、殿西さん。

殿西さんは島留学生のひとりで、普段は、留学生たちのサポートをしつつ、となりの西ノ島で留学生の受け入れ先の事業所を開拓している。

週に一回ほど、西ノ島から喫茶ゆらぎの手伝いに来ているとのこと。

「選択肢を広げることが今の僕の仕事の一つ。仕事があるだけで島に移住するハードルを下げることができるので」

殿西さんは、杉崎さんと眞壁さんの活動をどんなふうに思っていますか?

「僕がいる西ノ島は、隠岐のなかでも観光資源が豊富にあって、島の基幹産業の一つとしても観光に力を入れています。今のところ、何もしなくてもある程度島を訪れてくれる人はいるんです。だから、島の人たちも積極的に地域を盛り上げていく雰囲気ではなくて」

島の多くの人は、生活を優先しているため、観光シーズンのお盆休みにお店を開けないこともある。

「でも、やっぱり経済がまわらないと人手不足は解消しないし、このままだと島全体の活気もなくなる一方なんじゃないかと思っていて」

「ここのふたりを見ていると、地域の人を巻き込んでみんなで島を盛り上げようと活動しているので、とても刺激を受けています」

 

取材で印象に残っているのが、杉崎さんの話。

「ここを運営していると、生々しいマーケティングをしている感覚があって」

生々しいマーケティング?

「画面上のマーケティングとは違って、お客さんの反応がすぐに見られる。この新メニューは、おばあちゃんたちにうけるだろうと思ったら、全然売れなかったり、接客を丁寧に続けるとリピートしてくれたり」

ほかにも、港という立地でお店を構えているからこそ、島の状況がわかる。

たとえば、お盆の時期は10人ほどの家族連れが6、7組訪れた。

「親戚も入れて家族みんなで昼から集まれる喫茶って、これまで島になかったから。そういう人たちが居場所を見つけて楽しそうにしているのを見ると、やっててよかったって思うし、ニーズが存在することに気付かされた」

「あとは、イベントを主催したい人たちが多いこともわかって。何かくすぶっていた人たちが、自己表現やチャレンジできるような場所になってることも、すごくうれしいかな」

隠岐の未来に向けて、喫茶とホテルのほかにも、できることはたくさんあるはず。ビジネスモデルを確立させながら進んでいく。

ここでの経験はかけがえのないものになると思います。

(2023/09/14 取材 杉本丞)

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