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0歳から100歳まで
街のジェラテリア

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「イタリアってジェラート屋さんが街のいたるところにあるんです。お年寄りも子どもも関係なく、お客さんが食べに来て、すぐに帰る。街のハブ的な、リフレッシュできる空間が、すごく心地よかったんです。誰でも気軽に立ち寄れる、そんな街のジェラテリアを目指しています」

ジェラテリアシンチェリータの中井さんは、お店についてそんなふうに話してくれました。

シンチェリータは、阿佐ヶ谷にお店を構え、今年で14年目を迎えるジェラート屋さん。

今回は、ここで働く販売スタッフと、ECサイトの担当スタッフを募集します。

アイスが好きなら大歓迎。そのうえで、働く人それぞれの「好き」を受け容れてくれる。そんな場所だと思います。

 

JR中央線・阿佐ヶ谷駅。

北口ロータリーの向こう、短いアーケードを抜けた先。曲がりくねった道に商店街が続いている。

ちゃきちゃきと仕事をこなすおばあちゃんが店頭に立つ豆腐屋さんや、おいしそうなコロッケが並ぶお肉屋さんなど、昔ながらのお店がたくさん。

のんびり散歩しながら進むと、10分ほどでシンチェリータが見えてきた。

店外には人の列が。カップルに、自転車から降りるおじいちゃん、女性3人組など。老若男女が訪れる人気のお店だ。

店内に入ると、シンプルで清潔感がありながら、手描きのメニューや灯台を模したレゴブロックが飾られている。中央にはショーケースがどんと構えていて、その後ろではジェラートの仕込みをする厨房がガラス越しによく見える。

厨房の奥から出迎えてくれたのが、店主の中井さん。落ち着いた口調で、おおらかな方。

ガラス張りの厨房に入り、話を聞く。

「取材に合わせて、テーブルを使う仕込みは事前に済ませておきました。お客さんに見られるのは、もう慣れましたね」

シンチェリータは今年で14年目を迎える。

「お店を開くまでは、興味のあることに手当たり次第アタックしていたんです」

外国語大学に在籍中、雑誌でたまたま目にした空間デザインの仕事。掲載されていた設計事務所に片っ端から手紙を書いて、インターンとして働くことに。

大学卒業後は西洋のアンティークに興味を持ち、イタリアへ留学。ミラノのアンティークショップで家具の買い付けや修復に携わった。ビザの期限に合わせて帰国し、インターンをしていた設計事務所へ入社。インテリアデザイナーとして働いた。

ジェラートへ進むとは思えない道のりですね。

「そうですよね(笑)。きっかけは、27歳のときに挫折したことで。デザイナーとしてすごく実力のある方と仕事していたんですが、自分がそのレベルになれるイメージがまったく浮かばなくて」

「気を取り直して、好きなことにもう一度チャレンジしようと思ったんです」

そこで思い出したのが、留学中のイタリアで食べたジェラート。

本場であるイタリアでは、老若男女みんなが気軽に立ち寄る、生活の一部になっていた。

「当時は日本にジェラート屋さんは少なくて。いろんなジェラート屋さんを巡って、渋谷にあった美味しいと思うお店に、働きたいですって得意のアタックをしました(笑)。そこでいろんなことを学ばせてもらいましたね」

興味の方向へと突き進む。その推進力におどろくばかり。

さらには、会社のつながりで声をかけられ、自分でお店を始めることになった。

「ラッキーと思うより、本当に急なことで。びっくりしました」

「場所はいくつかの候補があったんですが、自宅が近かったのと、街の雰囲気が気に入って阿佐ヶ谷に出店することを決めました」

未経験で飛び込んだ中井さん。

ジェラートづくりのノウハウはどう学んだのだろう。

「仕事の流れは教えてもらえたんですが、なぜこの配合にするのか、どうしたら美味しくなるのか、みたいなことは、本で調べて自分で勉強しました。専門的な材料もあるので、扱っている卸の会社に問い合わせて教えてもらうこともありましたね」

「とにかく勉強しながらつくってみることを永遠と繰り返していました。だから、すべて我流なんです」

正解がないから、自分で正解をつくる。今では、年間に200種類もの新作をつくるようになった。

人気の定番メニューが、“メルノワ”というフレーバー。

森のはちみつを加えたミルクジェラートに、食感良く刻んだピーカンナッツを混ぜ込んでいる。お店を始めて1年目のとき、イタリアで開催された国際ジェラートコンテストで3位に入賞したフレーバーだ。

「毎日食べたい、そう思ってもらえるジェラートを目指しています」

そのこだわりは、ジェラートに使う砂糖にも表れている。グラニュー糖やブドウ糖だけだと甘すぎるため、国産の和三盆とはちみつを用いることで、やさしい甘さに仕上げている。

「イタリアのジェラートは甘い味付けなので、1個食べて満足することが多くて。控えめな甘さなら1個食べても、もう1カップ食べようかってどんどん食べたくなる」

「毎日来てほしいから、リピートしても楽しいお店にしたくて。毎日来ても違う味があったらうれしいじゃないですか。それが街のジェラテリアだとぼくは思うんです」

今回募集する職種はふたつ。店頭でジェラートを販売するスタッフと、オンラインを担当するECスタッフ。EC担当には、新しい働き方を期待しているという。

「コロナ禍を経て、オンラインでの売り上げが4倍ほどに増えたんです。店頭もいそがしいので、兼務することに限界を感じてきて」

注文の受付、伝票の発行、梱包して発送するところまで。オンラインでの注文を一通り対応する。

また、オンラインショップの商品画像やバナー、テキスト、全体のレイアウトまで、購入ページを整える、ECデザインの領域に携わる。Web上でも、シンチェリータのジェラートを楽しんでもらえる仕組みをつくっていく。

そのうえで、自分の「好き」や「得意」を活かしてお店の販促にも注力してほしい。

「たとえば、周年ごとに行なっている企画があるんです。そこでアイデアを出してくれたりする人だといいですね」

10周年のときには、ミュージシャンをしている元スタッフが店内で流すコンピレーションアルバムを作成。カセットテープとして販売・配信をした。

「最近だと、ハンカチ好きなスタッフがオリジナルハンカチをつくってくれました。お店を盛り上げるアイデアはできるだけ形にしたいと思っているので、やりがいになればいいなと思っています」

店頭に飾られている手描きのメニューも、イラストが得意なスタッフが担当している。

各スタッフの自由な表現が散りばめられていて、ひとつのお店の雰囲気が出来上がっているんだなあ。

 

「店舗スタッフは、船木をお手本にしてもらえれば」

そう紹介してくれたのが、製造を担当している船木さん。以前は販売を担当していた。

新卒でシンチェリータに入社し今年で5年目。大学生のときに接客の仕事に触れ、大好きだったアイスと掛け合わせて、ジェラート屋さんで働くことを決めたそう。

「ジェラートは、こだわりが強いイメージがあるし、お店の数は少ない。けれど、未知の世界にわくわくしたんです」

4年生に上がる前にアルバイトとしてシンチェリータに入社し、卒業後に正社員となった。

約1年半、販売員として接客を覚え、現在は将来自分の店を持つことを夢に、ジェラートづくりに携わっている。

「この仕事していて一番うれしいのは、心が動く瞬間かなと思います」

心が動く?

「この前、中で仕込みをしながらお客さんのほうに目を配ったとき、店内でジェラートを食べている人が、こっちに向かってグッと親指を立ててサインを送ってくれたんです。ありがとうって気持ちで返しました」

「大好きな音楽を聞いたとき、みたいな感覚で。お客さんとの関わりは、言葉にしづらいけれど、じんわりと心が温まることが多いです」

日々いろいろなお客さんと接すると思いますが、なにか気をつけていることはありますか?

「『0歳から100歳まで』というフレーズを大切にしています。ただ、はちみつを使っているので、実は食べられるのは1歳からになっちゃうんですけどね(笑)」

「小さい子がぶどうのフレーバーを頼んでくれて、次におじいちゃんが和のフレーバーを頼んでくれて。いろんな方が来てくれるのが、ぼくは接客していておもしろいです」

毎日食べたくなるジェラートのように、年齢や性別を問わず、日々流れるように人が来てくれるお店だからこそできるコミュニケーション。販売スタッフには、決まりきったマニュアルはない。

「接客って、言われたことに決まったフレーズで返すものではない気がしていて。疲れてる日があったり、元気な日があったり。いろんな状態の人が来ると思うんです。ふとした表情とか、話してくれる雰囲気とかを見て、接客の仕方を変えています」

「仕事をしようと思って接客をしているんじゃなくて、僕らのアイスを食べて、少しでも元気になってほしい。そう素直に思える人が来てくれればうれしいです」

お客さんの数だけ、接客のやり方がある。それが満足感につながって、また来たいと思えるお店になっているんだろうな。

 

「常連のおじいちゃんおばあちゃんに支えられてやってこれました。阿佐ヶ谷の人たちは常にみんな応援してくれていて」

そう続けるのは、長さん。オープン当初から、販売員としてお店をつくってきた。

「馴染みのない阿佐ヶ谷という場所でお店をはじめたので、どうしたら地域の方と仲良くなれるんだろうって、いつも考えていました」

オープンして1、2年は、お店を知ってもらうところから。売り上げも振るわない時期が続いた。それでも、お店の前を行き交う街の人とのささやかな交流を大切にしていくなかで、少しずつお客さんが増えていった。

「お客さんの来ない時間帯に、周辺の掃除や、店頭の植物のお世話をしているとき、道でよく挨拶を交わすご近所の方がいたんです」

「顔を合わせることが増えていって、娘さんやお孫さんと一緒に来店してくれるようになったんです。そんなふうにお付き合いが増えていきましたね」

街にお店を開く。すると、街に住む人が来てくれる。自然なように見えて、その流れをつくることは難しい。

お隣さん、お向かいさんとの関わりなど。お客さんだけでなく、ご近所づきあいにも気を配りながら、街に馴染んでいけるといいのかもしれない。

「ジェラート屋の特徴として、夏と冬の売り上げの差が激しいことがあります。寒くなると売れにくくなる。そうなると、お客さんが足を運ばないから、気持ちが下がっちゃうこともあって」

「でも気にしなくていいんですよ。夏に頑張って売ればいいし、冬が暇なぶん好きを生かしてお店づくりを楽しむ。そんなふうに考えていける人がいいかな」

あとあと! と思い出すように続けてくれた。

「最初は腕と手が疲れます。なので、体力も必要です」

「日曜日とか、疲れて辛いですっていう子もいるし。そんなときは、家で筋トレしてって言うんです(笑)」

 

帰り際、ジェラートをいただきました。

スタッフの方におすすめを、とオーダー。

メルノワ、ピスタチオ、和梨の3種類。

すっきりとした甘さで、ついおかわりしたくなる。明日はどんなフレーバーがあるんだろうと、つい想像してしまう。

0歳から100歳まで。街の日常に溶け込んで、ささやかな幸せを届けるお店です。

(2023/09/26 取材 田辺宏太)

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