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仕事か、家族か。ライフステージが変わって、家族や自分の時間を大切にしたいと思うと、どちらの時間を優先すべきか、二択を迫られる状況があると思います。
どちらも人生のなかで大切な時間。だからこそ何かを犠牲にして働くのではなく、ワークライフバランスを大切にしながら、やりがいを持てる仕事をしたい。
そう思う人におすすめしたいのが、今回紹介するビジネスコンシェルジュという仕事です。
ビジネスコンシェルジュとは、コクヨアンドパートナーズ株式会社が提供するサービス。
文房具やオフィス家具の製造・販売、オフィスの空間設計などを行うコクヨ。2016年に分社化し、オフィスワークのアウトソーシング事業を展開してきました。
具体的には、提携するクライアントのオフィスに常駐し、従業員から寄せられる問い合わせに対応したり、会議室や備品の管理をしたり。その会社で働く人たちをいろんな形でサポートするだけでなく、働く人たちがまだ気づいていない困りごとの種を見つけ、改善していきます。
仕事内容は多岐にわたりますが、残業時間はほとんどありません。仕事とプライベートのバランスが取れるよう、チームで協力して業務を進めています。
「ありがとう」や「助かった」。そんな声が日常にあふれる仕事だと思います。
東京メトロの霞ヶ関駅で降り、5分ほど歩く。コクヨアンドパートナーズの本社が入る霞ヶ関ビルが見えてきた。
この辺りは緑も多く、広場でたたずむ人もいて、オフィス街ながらどこか安らぐ雰囲気がある。
ビルに入ってエレベーターで18階に上がり、総合案内で名前を告げる。
ほどなく迎えに来てくれたのが、採用担当の下瀬さん。「今日はよろしくお願いします!」と、はつらつと挨拶してくれる。
さっそく、ビジネスコンシェルジュの仕事について聞いてみる。
「一言で言うと、常駐先のオフィスで働く社員さんたちが快適に働けるよう、環境を整える仕事です。総務の方と連携しながら、備品の管理や発注、郵便物の発送などを担当しつつ、社員さんの困りごとの一次対応もしています」
クライアントの多くは、数百人〜数千人の従業員を抱える企業。
規模が大きいと備品の貸出だけでも頻度が高い。また、なにか困りごとがあるとき、まずは総務に問い合わせる人も多い。
「そういうノンコアな業務に時間を取られて、本来自分がやるべき業務に時間を割けないという状況が多く発生していて。クライアントの方々がコアな業務に集中できるようにと、導入いただいています」
現在受託しているクライアントは70社ほど。その多くは霞ヶ関をはじめとする都内各地のオフィスで、それぞれの拠点に2〜3名のコンシェルジュが常駐している。
実は下瀬さんも、ビジネスコンシェルジュの経験者。
コンシェルジュ時代、意識していたのは「できるだけコミュニケーションをポジティブに図ること」だったという。
「あれしちゃダメ、こうしてくださいっていう注意書きって、増えていくとなんだか気分よくないじゃないですか。じゃあ、そういうコミュニケーションをとらずとも問題を解決できる方法ってないかな? と考えるようにしていて」
「自分ではなくて、ほかのコンシェルジュの話なんですけど…」と、教えてくれたのは備品管理の話。
ある企業では、備品の収納場所に、はさみやホッチキス、テープなど、オフィスで貸出している道具の形が型取られたスポンジのケースを採用している。
型にあわせて置くだけで収納できるので、使用後は綺麗に収納してください、と指示する必要もない。使用中の道具も一目でわかるので、よく使われる道具があれば先を見越して増やすこともできる。
「これはもともとコクヨが制作していたツールで。コンシェルジュ同士で、どうしたら備品管理が楽になるだろう?と相談するうちに、これを導入してみようという話になったそうです」
お金のかかるものについてはクライアントの合意を得ることが必要だけれど、お金のかからないポップやポスターなら、コンシェルジュがその場で作成することもある。
「私たちが大事にしているのは、『一歩先ゆく 気づき・くふう』という行動指針。現場で働くスタッフは自然とそういうホスピタリティを持っている人が多いように感じますね」
たとえば、バックオフィスの仕事をしていた人なら、問い合わせの多い事項についてのマニュアルをつくったり、営業サポートだったら、営業の人がほしい情報をあらかじめ集めてさりげなくフォローするのが好きだったり。
そんなサポートが得意な人なら、きっと能力を活かせるはず。
「営業サポートの仕事だと、評価って営業の売上が基準だと思うんです。一方でビジネスコンシェルジュって、どうしたら目の前の人たちが快適に働けるだろうと考えて、工夫を重ねていく仕事。『ありがとう』って声が、ダイレクトに成果につながるんです」
もちろん、社員さんの顔と名前を覚えたり、常駐先のルールや独自システムを覚えたり、大変なこともあると思う。
最初は苦労するかもしれないけれど、身に着けることができれば、困りごとに応えられる範囲も広がっていく。
「人と話すのが好きとか、ちょっとおせっかいな人が合うと思います。なにか困りごとを抱えているメンバーがいたら、一緒になって最適解を考えてくれるような人。チームワークが大切な仕事なので、そんな人だとすごく活躍できると思うんです」
次に話を聞いたのは、コンシェルジュの足立さん。コクヨアンドパートナーズの入るオフィスで、コンシェルジュと受付を兼務している。
新しく加わる人は別の常駐先になる可能性が高いけれど、働き方は共通する部分も多い。きっと参考になると思う。
2年前、島根から上京するときに初めてビジネスコンシェルジュという仕事を知った足立さん。「女性も働きやすい職場」というフレーズに惹かれたそう。
「私自身、将来結婚したり、子育てをしたりとライフスタイルの変化を考えたときに、プライベートと仕事、両方充実させられる環境がいいなと思っていたんです。前職はウェディング関係だったんですけど、ハードワークで残業も多く、長くは続けられないと感じていて」
「コクヨアンドパートナーズでは、子育てをしているさまざまな年齢層の方も働かれていて、福利厚生もしっかりしている。心強いと思って応募しました」
コンシェルジュ業務がメインの日は、コーヒーマシンのセッティングや備品の貸出対応、補充、発注管理などをしつつ、オフィスを巡回。そのなかで「これ、困ってるんだけど…」と声をかけられることもあれば、日々の業務での気づきが仕事につながることもある。
「ウォーターサーバーがあるんですけど、空のボトルを替えてくれる人が少なくて。それって在庫の場所がわからないからじゃないかなと思って、在庫の場所を示すポップをつくってみたんです」
ほかにも、コーヒーマシンの操作方法が複雑そうなのを見て、ポップをつくったことも。
不便な状況を減らせるよう、先回りしてできることがないか考える。そんな姿勢が、行動指針の「一歩先ゆく 気づき・くふう」につながっているんだと思う。
とはいえ、頼まれたことをすべて引き受けるわけではない。業務を効率化する努力はしつつ、できる範囲で仕事を引き受けることも大切。
足立さんの働くオフィスでは、コンシェルジュ業務は17時半までと周知しているため、社員さんから無理に仕事を頼まれることはあまりない。
「ときには終業間近にご依頼をいただくこともあって。簡単なものであればその場で対応することもあるんですけど、時間がかかりそうだったら、『ちょっと確認が必要なので、明日の対応になります』と、正直にお伝えします」
「業務時間の設定もそうだし、ちゃんと説明をすれば社員さんもわかってくださる。どうしても急ぐなら総務の方と連携することもできるし、翌日でもよければ次のコンシェルジュに引き継ぎをする。私たち自身も、残業しなくていい働き方ができるようにと、日々工夫しています」
足立さん自身、残業したのはこの1年で片手で数えるほどだそう。
終業時間だから引き受けられない、と突き放すのではなく、できることをまっとうする姿勢が伝わるからこそ、残業のないコンシェルジュの働き方が前向きに受け入れられているのだと思う。
「迷うことがあれば必ずチームに相談して、勝手に仕事を引き受けないよう意識しています」
勝手に引き受けない。
「コンシェルジュって私一人でなく、ほかのメンバーと一緒にしている仕事なので。イレギュラーな相談事も、私ひとりが受けてしまうと、依頼した社員さんにとってはレギュラーになってしまう」
「その場は良くても、無闇に仕事が増えていく可能性もあります。それって、クライアント、私たちコンシェルジュのどちらにとってもよくないことだと思うんです。チームで仕事を請け負っているという意識は大切かもしれません」
いつもと異なる依頼があれば、その依頼は本当にコンシェルジュが引き受けたほうがよいのか吟味する。その上で対応するのであれば、誰が担当でも同じ対応ができるように、マニュアルをどんどん更新していく。
個人の裁量に偏ることなく、できる限り仕組み化することで、クライアントも、自分たちも気持ちよく働ける環境をつくっている。
また、ビジネスコンシェルジュたちの上司として、複数拠点をマネジメントしているサービスマネージャーもいる。月1回の定例会議だけでなく、いつでも相談できる存在なので、心強いと思う。
「当たり前の仕事ができている前提で、なんですけど」と前置きしながら、足立さん。
「最近、コーヒーマシンの横に設置しているスリーブに、thank youとかお疲れさまですとか、ちょっとコメントを書いてみたんです。業務としてやらなきゃいけないことではないんですけど、仕事の合間にさっとできるし、ほっと一息ついてもらえたらなって」
「それに気づいた社員さんがわざわざ私のところに来てくれて、ほっとしたとか、感動したとかコメントをくれて。自分のやったことが誰かの「ありがとう」って言葉につながるんだって実感を持てて、うれしかったですね」
ふだんの仕事ができていれば、そういうちょっとした気遣いも仕事に活かしていける。
コンシェルジュがいることによって、仕事だけでなく、心の余裕を持つことができている社員さんもいるんだろうな。
足立さんはどんな人と働きたいですか?
「コンシェルジュって、働く人のことを考えて、自分にできることを考えていく仕事だと思うので。人を喜ばせるのが好きで、仕事もプライベートも充実させたいって考えている人がいたら、本当におすすめの仕事です」
話を聞いたふたりの、いきいきとした表情が印象的でした。
仕事も暮らしも心地よく。そんな働き方が、ここなら実現できると思います。
(2022/10/31 取材 阿部夏海、2023/10/24 更新 長島遼大)
※撮影時はマスクを外していただきました。