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九州と谷中銀座を食でむすぶ
ちいさな百貨店はじまる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

九州の「おいしい」に囲まれながら、九州の話をする。そこは、東京にありながらまるで九州でした。

代表の後藤さんの九州が好きで、九州をもりあげたいという思い。

そこから「おいしい」をつうじて、九州と東京をむすぶ株式会社九州堂をはじめました。

2017年に東京・千駄木(せんだぎ)に構えたSHOP&CAFE九州堂は、6年のあいだに、たしかなつながりを育んできました。200社以上の食品会社さん、約50軒の農家さん。そして毎日通う常連さん、スタッフとしてお店を支えるひと。

SHOP&CAFE九州堂は建物の老朽化に伴い、2023年12月31日をもって営業終了。3ヶ月の充電期間を経て、2024年4月末に2つの新店舗「九州堂 谷中銀座店(仮)」と「CAFE&BAR奥路地 九州堂(仮)」がオープンします。

今回は、新店舗で働くひとを募集します。

九州のおいしいものを自身で味わいながら、お客さんに届けていく仕事です。だんだんとお店の顔になり、ゆくゆくは店主に。将来的には、九州のバイヤーとして食材の発掘もお任せしたい。

フルタイムでは働けないけれど、関わりたいという人も募集します。

経験は問いません。「ごはんが好き」「地元九州に関わることができたらな」「東京にちいさな九州をつくれたら」という思いを活かせる機会だと思います。

 

東京の下町、谷中銀座。

60店舗ほどが建ち並ぶ商店街が暮らしでにぎわいつつ、アジアや欧米からの観光客も訪れる。東京にありながら、どこか懐かしいエリア。

ここに、SHOP&CAFE九州堂がある。

14時の店内では、アジアから訪れたひとがゆずこしょうを手にとり、もの珍しそうな表情。語学に明るいひとであれば、コミュニケーションの幅も広がりそう。

「ぎんなんある〜?」

とやってきたのは、近所で日本酒バーを営む山田さん。

あわせて佐賀の味噌も買っていく。味がまろやかで、お酒のアテに好評。都内では他に取り扱いがないんだとか。

「ありがとう〜」

山田さんが店をあとにすると、代表の後藤さんが飲みものを出してくれた。

鹿児島南さつま市のみかん農家さんの手づくりジンジャエールだそう。

きび砂糖の甘い香りがじんわりと鼻に残るまま、インタビューをはじめる。

どうして、九州堂をはじめたんですか?

「九州が好きで、おいしいを通じて九州をもりあげたいんです」

話は、大分県にある後藤さんちの食卓に遡る。

「大分には関サバ、関アジというブランド魚がありますが、地元のひとはなかなか食べられない。子どものころ、よく自転車で海に行って、釣り糸をたらしました。かなり小ぶりですが、名無しのアジがバケツいっぱいに釣れる。ほんと100匹とか釣れる。それを父がさばいてくれるのがおいしくて」

竿を投げれば小さいブリなんかも釣れた。出世魚で九州では小さいのは“ヤズ”と呼ぶ。

「唐揚げも!専門店が何店舗も、めちゃめちゃあって。そのなかには後藤家のいきつけもあります。夕方になると母が『1000円分買ってきて』と。帰ってくると、おじいちゃんの育てた野菜と米が食卓に並んでるんです」

おいしいごはんを囲んで、味わって、みんな笑顔になれる。それが大分の日常だった。

大学卒業までを大分で過ごした後藤さん。ヨット部の4年の夏の大会が終わって、卒業後の仕事を考える。

「食で大分を盛り上げたいと思いました」

鮮度ばつぐんの魚に珍しい海藻。あごやいりこの出汁文化。農家さんが真心込めて育てる野菜。お酒や醤油や味噌といった発酵文化も豊か。

海でも山でもおいしいものをつくっているけれど、生産者には共通の困りごとがあった。

「みんな売り先に困っていたんです」

自分が東京で販路を開拓することで、生産者のみんなに喜んでもらいたい。

新卒で就職したのは、飲食店の情報を扱うぐるなびだった。在職中には、九州の生産者と東京の飲食店をつなげることも。

鹿児島県の鹿屋(かのや)市役所への出向も経験することで、九州全域の魅力にふれていく。

「醤油一つとっても、福岡、佐賀、大分、宮崎、長崎、熊本、鹿児島。ぜんぶ違うんです」

仕事を続けるなかで、「面白いね」「珍しいね」「変わっているね」と、九州が消費されてしまう歯がゆさも感じた。

自分で九州じゅうのおいしい食材が並ぶ店を東京につくれないかな。自分が店頭に立って九州の声を届けていけたらな。

株式会社九州堂がオープンしたのは2017年のこと。現在は、後藤さんを中心に、社員2人、パートアルバイト3人で切り盛りしている。

話を聞いていると、九州の一皿が差し出される。

もちもちということばを、そのまま料理にしたような食感。

「鹿屋の“だっきしょ豆腐”っていいます」

だっきしょとは、鹿児島弁で落花生のこと。地元産の落花生をつかった落花生のお豆腐だそう。

賞味期限はその日じゅう。鹿児島県外には出回らず、現地だけで食べられてきた味。

「鹿屋のひとに愛されている小松食堂さんの手づくりです」

この味を東京でも提供したい、と頼みこんだ後藤さん。ひと昔だと実現しなかったけれど、真空パックにすることで、現地にかぎりなく近い味を提供できるようになった。

台風に強く、やせた土でもおいしく育つ落花生は、鹿屋で育てられてきた。収穫を迎えると、各家庭でこしらえたのがだっきしょ豆腐。

食材を紐解き、見えてくる気候風土や地域の暮らしを伝えるのも九州堂。

「九州出身のひとも訪れる店なので、背景にある食文化も知っておきたいんです」

ここで、後藤さんと徒歩3分ほどに位置する新店舗の予定地を歩く。谷中銀座に面した元洋服店で物販を行う「九州堂 谷中銀座店」。

そして路地裏にあり、飲食もできる「CAFE&BAR奥路地 九州堂」。

今回は、この2店舗で働くひとに来てほしい。

店主候補のひとはおもに「九州堂 谷中銀座店」を担当。オープンして半年間ほどは、後藤さんやスタッフのみなさんと店頭に立っていき、九州堂 谷中銀座店の店主としてお店を任せていきたい。飲食の経験がある人ならば、店舗を行き来することもできる。

フルタイムでは難しいけれど関わりたい、という人にも気軽に問い合わせてほしい。

どんなひとに来てほしいのだろう。

「接客業の経験はあったほうが望ましいけれど、必須じゃないです。それよりも、『やってみたい!』という気持ちを優先したいです」

ゆくゆくはバイヤーとして、自ら九州の食材も発掘してほしい。お客さんから問い合わせを受けて、はじめて知る商品もある。

「どうしても地元の“南関あげ”が食べたくて…!九州堂さんに置いてもらえませんか?」

食べものをあつかう仕事だからこそ、おいしいごはんを好きなひとがいい。

 

自分がごはんを食べるのも仕事のうち。そう気づかせてくれたのは、後藤さんの妻のるなさん。社員でいまは産休中だけど駆けつけてくれた。

「わたし、おいしいごはんが大好きなんです」

茨城県出身で、近所に上京したことをきっかけに、九州堂で働きはじめた。

「“ごまだし”ってなんだろう。まかないで五島列島のうどんにかけてみる。菊芋ってどう料理したらおいしいのかな。社割で購入して晩ごはんにきんぴらにしてみる。それでおいしいなと思ったら、お客さんにおすすめします」

ポップを書くことで食材の声をお客さんへ届けてみる。食材をじっと見つめるお客さんがいれば、「きのうの晩ごはんで食べたんですけど…」と声をかけてみる。

「食材のこともお客さんのこともよく観察して、食材とお客さんのコミュニケーションをちょっとお手伝いするのが役割だと思っています」

九州に興味や縁、そして愛着がある人だとなおよさそう。常連さんも多いから、後日ふたたび感想を伝えてもらうこともある。店主とお客さんという関係だけじゃなく、同じ食材を食べるもの同士という関係もここにはある。

 

ルーツが福岡にある常連さんにも話を聞いた。

はじめて九州堂を訪ねたのは、6年前のことだそう。生後間もない愛犬の麦さんの散歩中だった。

「お店のみんなが、麦をとてもかわいがってくれたんです。ひとの温度が感じられた。それでもうこのお店が大好きになって」

晩ごはんの買い出しもすれば、友人へのお裾分けをすることも。関係性をバトンしていくことで、九州堂がよりよいコミュニティへと煮つまっていく。

「もともと、九州のアンテナショップによく行っていました。でも、お店のひとと話すことはほとんどなくて。九州堂は、ひとに会いにいく感じです」

買いものの仕方が、どんどんオンラインへと変わっていく時代。お金さえあれば、いつだって、どんな食材だって手に入れやすくなったけれど。「寒くなりましたね」「そろそろおでん食べたいですね」といった何気ないやりとりがあるから、九州堂にはひとが集まってくる。

ここで、取材に同行してくれた麦さんがやや興奮ぎみ。すると後藤さんが熊本県産の焼き芋を差し入れた。麦さん、いつまでも後藤さんの手をぺろぺろなめている。

その様子を見て、常連さん。

「麦が味を一番わかっているひとなのかも!よその芋だとこうはならないんですよ」

常連さんは、今回の移転をどう考えているのだろう。話を聞いてみる。

「ここにものすごく愛着があったので残念な気持ちもあります。でも、どこに移っても九州堂は九州堂。ここも最初は何でもないところだったと思うんです。ひとを大事に、食材を大事にすることで、九州堂っていうオンリーワンの存在になったんだと思います」

「また新しいところではじまる、新しい九州堂が楽しみ!」

現在のお店の営業は2023年12月31日まで。間に合うようなら、一度訪ねてみては。

ちなみに入社時期は、応募するひとの希望に合わせたい。2024年の1〜3月の間に入社できる場合は、新店舗のレイアウトやポップを後藤さんたちといっしょに考え、九州をまわることもできそう。

最後に、後藤さんに質問をする。

新店舗をこれから働くひとに任せるとして、後藤さんはどんな活動をしていくのだろう。

「実は、2025年に新事業をはじめる計画も動き出しています。これから実現したいことはいろいろとあるんです。たとえば、九州のおいしいものを集めたギフト事業にも取り組んでいきたくて」

いろいろな未来が待っているんですね。

「九州をいろいろな形で切りとって、九州をより魅力的に感じてもらいたい。九州堂が取り組んでいきたいのは、もっと九州を元気にしていくことなんです」

インタビューが終わると、すっかり日も暮れておなかがすいた。常連さんに聞くと「こういうときはかしわ飯の素がおすすめですよ」とのこと。晩ごはんの食材を買いこんで、九州堂を後にした。

九州の「おいしい」に囲まれながら、九州の話をする。そこは、東京にありながらまるで九州でした。

(2023/11/15 取材、2024/3/12 更新 大越はじめ)

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