求人 NEW

【オープンハサミ】
ものづくりも会社も
新しい形はないだろうか?

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

餅は餅屋という言葉があるように、分業化することのメリットはいろいろある。

似た作業を繰り返していくことで、仕事の精度も効率も上がっていく。個人に適した仕事に特化して腕を磨けるので、いろんな得意・不得意を持った人を受け入れ、雇用の裾野を広げることにもつながる。

ただ、分業化によって失われやすいものもあると思う。

隣の人はどんな仕事をしているのか。つくったものを、どんなお客さんが手に取っているのか。自分の仕事の前後がなかなか見えにくい。

長年分業制で焼き物をつくってきた産地、長崎県波佐見町。

このまちで100年以上続くメーカー・中善(なかぜん)4代目の中尾善之(よしゆき)さんは、分業を追求する過程でこぼれ落ちてきたものを見つめ直し、メーカーとしての新しいあり方を模索しはじめています。

さまざまな分野で活躍するクリエイターのアイデアを活かして器をつくったり。商社依存の体質を見直して、つくった器を売るところまで考えたり。

ともに働く人に対して、「“ここだけ”の人になってほしくない」と中尾さんは言います。

今回募集したいのは、商品企画や新規開拓の営業など、中尾さんが現在一手に担っていることを一緒に進めていける人。社内外のつくり手と密にコミュニケーションを重ねて、商品を形にしていく役割です。

とはいえ、入社したらまずは現場に入り、焼きもののリアルを知ることからはじめます。一段跳びに「商品企画やデザインがしたい」という人には合いません。

あわせて、焼きものづくりの各工程に携わる職人も募集しています。

なぜ現場がそれほど大事なのか。話を聞きに行きました。

中善は、滞在型インターンシッププログラム「オープンハサミ」の参加企業です。波佐見町に1週間滞在し、さまざまな企業の仕事を実際に体験することができます。

詳細は下記ページよりご覧ください。

波佐見の観光拠点として多くの人が訪れるエリア「西の原」。

そのすぐ近くに中善の工場とファクトリーショップはある。

通りに面した看板には、工場の絵が描かれている。象徴的な3つの煙突がかわいらしい。

車を停めて、事務所スペースへ。代表の善之さんが迎えてくれた。

カメラを構えたら「ぼくはいいんです。社内とか工場の風景を撮ってください」とのこと。言葉で伝えるなら、ちょっとシャイで、やわらかな雰囲気の方です。

「うちは1917年に初代の中尾善太郎さんがはじめた窯です。最近はあまり聞かなくなりましたけど、半陶半農のスタイルで、個人商店みたいな感じですね。戦後の高度経済成長期に中尾山っていう地区からここへ下ってきて、ぼくで4代目になります」

2017年、創業100年の節目に代表を引き継いだ善之さん。

当初は、商社からの要望をもとに焼きものをつくるOEMの仕事がほとんど。「商社さんに“おんぶに抱っこ”の状態だったんです」と振り返る。

焼きものの売り上げが年々下がるなかで、同じ産地内で案件を取り合っている限り、いずれ産地全体が落ち込んでしまう。

既存の商流も尊重しつつ、自分たちらしい商品をつくって販売していこう。

そんな想いから自社ブランド「zen to」を立ち上げた。

zen toがユニークなのは、クリエイターとコラボレーションして器をつくっていること。

デザイナーだけでなく、モデルや文筆家、ミュージシャンやカフェオーナーなど、さまざまな分野の人たちのアイデアを形にしてきた。

たとえば、インドの打楽器「タブラ」奏者のユザーンさんとつくったのは、仕切りが取れるカレー皿。

「技術的にできはするけど、それ必要なのかな?と最初は思いました。汁物は完全には仕切れないから、シリコン貼る?って話もあったんですが、そういうのはやめようとか。話しながらつくってみて」

いざ販売してみると、予想を上回る反響があった。ユザーンさんのファンや、ほかにない器を求めている人の購入につながっているという。

機内食の容器を模した器や、ざらりとした質感のコーヒーマグ、それ一枚でランドスケープを表現したお皿など。ほかにもユニークな商品が並ぶ。

製作中の器も含めると、この3年間で共同開発してきたクリエイターの数は30人にもなる。

「かっこよく言うと、焼きものってその時代を表す文化だと思ってて」

文化。

「こんな器が流行ってるらしいぞってわかったら、似たものはすぐできちゃうんですよ。ただ、zen toの器は一つひとつに人が紐づいている。ほかの会社さんが『仕切り取れますよ』っていったところで、同じものにはならないんです」

その時代を生きる人とコラボレーションしてつくれば、その器は唯一無二のものになる。オリジナリティが生まれるし、ずっと続けていけるやり方なんじゃないか、と善之さん。

「2040年のカレーの考え方は変わってるかもしれないし、スパゲッティーの定番も今とはまったく違うかもしれない。俯瞰したときに、その時代ごとの文化が器を通じて見えてくると思うんです。これをずっと続けていけば、群になったときにすごくおもしろいんじゃないかなって」

こうした器の企画や開発は、現在は善之さんひとりが手がけている状況。

これから右腕として一緒に動ける人を募集したい。

どんな仕事内容なのかというと、まずはコラボレーションする人がどういうものを求めているかのヒアリングから。

最初は抽象的なアイデアからはじまることも多い。器の形に落とし込めるよう、要望を噛み砕きながら話を進める。

今度は、型屋や生地屋といった上流工程の職人さんに、そのアイデアをどう伝えたらいいか考える。

基本的にはブランドディレクターとして携わっている陶磁器デザイナーの阿部薫太郎さんが図面を引き、石膏型に落とし込む。その前に模型が必要なら模型屋に頼みにいくし、ラフなスケッチをもとに、直接職人さんと話しながら進めることも。

つくる量や工数、職人さんの忙しさ具合などを鑑みながら、ケースバイケースで柔軟に対応していく。

「案件によって引っ張る側にいったり、段取り側に回ってみたり。考えることはいろいろあります。プロデューサー的でマネージャー的、ディレクター的でもあるような役割ですかね」

いずれにしても、焼きもののことを知らなければ進められないことばかり。これから入る人には、どんな役割や働き方を志望するとしても、まずは工場での経験をしっかりと積んでもらいたい。

「焼きものに関心のある方が来られて、たとえば勤務初日から釉がけしたいんです、と。まあ練習はできます。でもいきなり商品にはかけられません。そこの認識のすり合わせができていなくて、『思ったのと違う』と言って入社してすぐ辞めていく方も過去にはいました」

「全体を知ってから取り組むのと、いきなりピンポイントで特定の仕事に携わるのだと、その後の広がり方が全然違うと思ってるんですよ。“ここだけ”の人になってほしくないんです」

“ここだけ”の人になってほしくない。中尾さんはその言葉に力を込める。

背景にはどんな想いがあるんだろう。

「先代の父親は、社員だけでなく社外の生地屋さん型屋さんも、ミスがあると呼び出して怒鳴りつけていたんです。『お前ら考えなくていいから、言われたことだけやっとけ』みたいなスタイルだった。それが見ていていやだったので、自分はやめようと思いました」

「ぼくからしたら、何かトラブルが起きたとき、その原因を知ろうとする『なんで?』の人になってほしいんです。『なんで?』がないと、先にいけないじゃないですか」

善之さんが代表になってからは、昼礼の時間をつくってみたり、一人ひとりと話す時間をつくったり。現場の声を活かしてものづくりをしようと、さまざまなことに取り組んできた。

とはいえ、「考えなくていい」から「一緒に考えよう」への転換は、いきなり進まない。これから少しずつマインドを切り替えていく必要があると感じているそう。

今は給与体系やコミュニケーションの場づくりなど、会社のあり方を一つひとつ見直しはじめたところ。

「かっこいい商品をつくるのは大事です。ただ、それだけだと続かない。続いていく会社になるためにも、堂々と雇用したい。従業員50人で売上10億円が当面の目標です」

現在の従業員数は40名で、売上は年間4億円ほど。

単純計算だと目標まではまだ距離があるけれど、利益率の高い自社ブランドの売上が増えていることに加え、生産体制が整えば伸び代はまだまだある。

 

営業担当として半年前に入社した長嵜さんも、中善のこれからに可能性を感じて転職してきたひとり。

前職は商社で、営業や貿易にも携わってきた。

「自分がこれまでやってきたことを活かせる会社じゃないかなと思いました。かつ、会社の将来性を感じて」

「今の時代、伸び代が見える会社ってなかなかないんですよね。中善は、目標を持って筋道立てて取り組んでいけば、これからが本当に楽しみな会社だと思います」

好調な自社ブランドに加え、海外からの問い合わせも入りはじめている。

とはいえ、課題も多い。たとえば、中善には3基の窯があるものの、そのうち2基しか今は活用できていない。

かつてよりも働き手が減っているので、今のままのやり方では3基を稼働させるのはむずかしい。たとえば週に1〜2日、納期が迫っているときだけでも、3基を動かすには何をすべきか。

現場も営業も一緒になって考えていく必要がある、と長嵜さん。

「お客さんに対しても、社内に向けても、信用と信頼を積み上げていくためにはコミュニケーションが大事だと思うんです」

器を焼く過程で、一定数どうしても出てしまうB品。その背景を説明したうえでお客さんに提案すれば、売値を抑えつつ買い取ってもらうこともできる。

つくる人は売る人のことを。売る人はつくる人のことを。お互いによく理解して、連携できるチームをつくっていきたい。

長嵜さんは、どんな人と一緒に働きたいですか。

「時代がこれだけ変化しているなかで、自分たちはどう変わっていかなくちゃいけないの?って考える必要がある。その過程では、異業種の経験が活きる場面もきっとあると思います。固定観念を持たずに、柔軟に考えられる人がいいですね」

 

お話を聞きながら、中善がメーカーであることを少し忘れて、商社のような会社だなと感じる場面が何度かありました。

これから先も、波佐見焼の分業ならではの強みは残っていくと思う。同時に、メインの持ち場がありつつほかの領域にも広がっていくような働き方や、分業した先で生まれるコラボレーションの機会は増えていくんじゃないか。

会社のあり方も、ものづくりの方法も。新しい形はないか、問いを立てて実践しはじめているのが、この中善という会社だと思いました。

(2023/10/23 取材 中川晃輔)

インターン内容について

商品開発に関しては、常に複数の案件が動き続けています。インターン期間中に取り組んでいる案件にもとづいて、どんなふうに企画を立て、形にしていくのか、関心のある方は善之さんに尋ねてみてください。現場を大事にしている会社なので、実際に手を動かす時間もあります。

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