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地球を救うために
愛着を修理しよう

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

パタゴニアは、アウトドア製品をつくって販売するブランドです。

ペットボトルをリサイクルしてつくったTシャツや、植物由来の素材でできたウェットスーツ、どの工場でつくったかわかるバックパックなど。店頭に並ぶ商品は、どれも地球の環境課題に配慮してつくられています。

今、パタゴニアが力を入れていることのひとつが、製品を循環させていくサーキュラリティを加速すること。より長く製品を使うための取り組みが続々とはじまっています。

募集しているのは、循環の中心となるリペア部門で、手を動かして修理をするテクニカルスタッフです。

やることはシンプルに、地球を救うこと。

地道に修理し続けながら、世界を変えようとしている人たちと会いました。



向かったのは鎌倉駅。

平日でもにぎわう小町通りを背に、海に続く大通りを進んでいく。

ランニングやサイクリングをする人に追い越されながら、10分ほど歩いたところに、「新品よりもずっといい」という言葉が掲げられたパタゴニアのリペアセンターが見えてくる。

「こんにちは、どうぞ!」と出迎えてもらってなかに入ると、色とりどりの生地、服を手に話している人たちの姿、ミシンの奥に立て掛けてあるサーフボードが目に入る。

「真面目に話してるのをみんなに聞かれるの、恥ずかしいですね」と、ちょっぴりはにかみながら話を聞かせてくれたのは、マネージャーの林さん。

以前は別のスポーツメーカーでアパレルの商品企画を担当していたそう。トレイルランニングが趣味だったこともあり、パタゴニアの製品には馴染みがあった。

「ここでも最初は新品を扱う部門で仕事をしていました。8年ほど経ったタイミングで、サーキュラリティ部門が発足することになって。パタゴニアのチャレンジに私の経験を活かしてみたいと思って、このポジションに手をあげたんです」

パタゴニアは、ロッククライミング用品の製造と販売からスタートしたアメリカのアウトドアブランド。

自分たちが製品をつくればつくるほど、環境に負荷をかけてしまう。その事実に向き合いはじめたのは50年も前のこと。

今では“私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。”というミッションを掲げ、素材や流通、利益の使い方まで、すべて環境に配慮したものづくりを続けている。

1年前、日本支社では世界ではじめてサーキュラリティ部門を発足。

壊れたものを修理して使うリペア、中古品を買い取って販売するリセール、修理がむずかしいものをあらたな素材に変えるリサイクル。

製品の寿命を最大限に伸ばすことで、あたらしいものをつくる資源やエネルギーを抑えることができる。製品を循環させていくビジネスに、今後はさらに力を入れていきたい。

「アパレル業界は服をたくさん廃棄するという現状があって。リサイクルといっても、燃料として燃やしてしまうことも少なくないんです。それは地球にとってすごく負荷になることで。直して使い続けるというカルチャーを、楽しく育んでいきたいですよね」

新品を売っているブランドなのに、修理を推進していく。

ちょっと野暮だとは思いつつ、なぜそこまでするのか聞いてみる。

「このまま行くと地球が滅んでしまうかもしれないし、私たちも生きていけなくなってしまうかもしれない。積極的に行動していかないと、間に合わないという危機感があるんです」

「と言うと、ちょっと説教臭くなっちゃうんですけど。アウトドアや自然が好きなメンバーが集まっていて。自分が住んでいる、大好きな地球のためにできることをしたいって、本気で考えているんですよね」

「地球を救う」のが働く理由。

シンプルであり力強い言葉を、林さんが心から信じているのが印象的だった。



次に話を聞いたのは、3年前から縫製を担当するテクニカルスタッフとして、アルバイトで働いている佐藤さん。

みんなからは「パンチ」という愛称で呼ばれている。

「気に入ったものをずっと使い続けるのが子どものころから好きなんです。修理の仕事がしたくて、パタゴニアに入る前は6年、スーツのお直しをする仕事をしていました」

「日常的に着る洋服から競技のプロが使うもの、カバンなどすべての製品が修理対象としてやってきます。生地が薄いもの、厚いもの、耐水のものもあって、すべてが一発勝負。それぞれ担当がいるというよりは『それは私やるよ』って感じで、お互いに情報をシェアしながら修理をしています」

ジッパーが外れてしまったり、袖口が破けてしまったり、大きな穴が開いてしまったり。

それぞれの状況に合わせて、新品のときと同じ場所に針を通す繊細な作業もあれば、握力がなくなるくらい力を使って硬い素材を縫うこともある。

なかには、自分が生まれるより前から大切に使われてきたような製品も。修理するためのパーツは、同じ形や色のものが手元にあるとは限らない。

「以前担当したダウンベストは、広範囲が溶けてしまった状態でした。同じ色の生地がなくて、オペレーションの人がお客さんとやりとりしながら、合わせる生地を決めたんです。だけど、元のものとぜんぜん違う色なんですよ」

「パタゴニアの製品は機能を戻すのが最優先ではあるものの、きっと、それぞれに愛着のあるポイントがあるだろうと思っていて。どこで色を切り替えしたら変ではないか、どういう形になると希望通りになるのか、すごく考えながら修理しました」

修理というか、つくり直しているというか。思っていたより想像力が求められる仕事なのかもしれない。

修理品のなかには「息子からもらったプレゼントで」とか、「救急隊に運ばれたときやむを得ず切られてしまったけど、まだ着たい」というメッセージが添えられて届いたものもあったそう。

「それほど想い入れがあるなら、応えたいですよね。自分がリペアをすることで喜んでくれる人がいる。だからこそ、どの修理方法が最適なのかじっくり話し合うこともあります」

「修理方針でぶつかることもあるくらい、みんな真剣なんですよ。知識や経験を惜しみなく共有して、お互いに相談しあえる関係はいいなって思ってます」

そんな話を聞いていると、「久しぶりにやりましょうか?」とラジオ体操の音楽が聞こえてきた。

身体を動かそうと集まってくる人もいれば、その様子を微笑ましく眺める人、黙々と仕事をしている人もいる。

団結してるけど人それぞれ。そんな感じが心地いい。

各ストアに持ち込まれたり、直接ここに送られてきたりする修理品の数々。

佐藤さんのように手を動かしてリペアをしているのは、鎌倉と横浜にいるスタッフ合わせて20名。

加えて、ここ数年はパートナー企業に依頼することも増えてきている。

外部の会社に具体的な修理内容を伝える役割を担っているのが、パートナーチームの中島さん。

個人でカバンづくりを行いながら、6年前からパタゴニアにアルバイトとして勤務。それまでもずっと、服飾の仕事に携わってきた。

「つくって売るのと直すとでは、ぜんぜん視点が違うというか。服が好きじゃないと続けられないかもしれません。自分が指示したものが、思い通りに直って戻ってくると、ニンマリしちゃいます」

オペレーションチームから預かった修理品を確認して、わかりやすく指示を書き、パートナーに渡すのが中島さんの仕事。

自分で修理するわけでなくても、できる範囲のことで妥協はしない。

「あてる生地ひとつでも、もっと合うものがあるはずだって自分で探します。修理して終わりではなくて、着てもらってなんぼ。直したはいいけど、気に入らなければ着ないですよね」

「着てもらうことができれば、新しいものを買わなくて済む。僕らの仕事は、直接的に環境負荷を軽減できるんですよ。たった1着でも、その積み重ねです。こういう会社に共感してくれて、修理を依頼していただける方への期待には応えたいですよね」

中島さんがチームに所属した当初はわずか2社だったパートナー。現在10社になり、今後も増えていく可能性は高いそう。

地球を救うためには、周りも巻き込んで活動を大きくしていく必要がある。

「もちろん自分たちも儲けをつくらないとやっていけないけれど、技術を自分たちで囲っていてもしょうがないというか。修理して使うという意識が広がっていかないと、会社の目的は達成できないんですよね」

一緒に働くのは、どんな人がいいですか。

「技術は入ってから覚えられると思います。そうですね。地球のことを考えて、主体的に動いていける人。新人でも声をあげて、いろいろなことを変えてきたという土壌があるので。臆せず、自分からやりたいことや疑問に感じたことを話してくれる人だといいですね」

  

最後に紹介する藤原さんは、経験が少ないながらも、自分で考えて行動している一人。

ふだんはオペレーションチームの一員として、ストアの担当者やお客さんと、修理の内容を確認する仕事をしている。

大学時代、気候変動対策を求める運動に参加していたという藤原さん。

テクニカルスタッフのアルバイトを希望していたものの、縁あって担当することになったのは、オペレーションスタッフだった。

「修理品を見て、修理内容を判断して、お客さまに連絡して。メールと電話でやりとりするのが仕事の大部分を締めています。製品知識もないし、どう修理するべきなのかわからない。正直、最初の半年くらいは大変でした」

手元に届くのは、1点1点違う対応が必要なものばかり。

複雑な修理の内容を丁寧に説明したり、ときには画像を送ってお客さんと相談したり。

機能やデザインに満足してもらいながら、いかに短い納期で返せるかというのも大切なポイント。

「なかにはどうしても修理ができないものもあるんです。直して使いたいって楽しみにしてくれている方も多いので、コミュニケーションのとり方については今でも勉強中です」

そんな藤原さんが率先してはじめたのが、自分自身がストアに立つこと。

直接お客さんと話したり、修理の受付に立ち会うようにしているそう。

「お願いしてやらせてもらえることになったんです。お客さんはもちろん、ストアのメンバーとも、会って話せたほうがいいことってたくさんあるんですよね。修理のやり方を共有したり、細かいけど、伝票の入れ方が変わるだけで仕事がすごく楽になったりする。対面で話せる機会は、もっと増やしていきたいです」

ほかにやりたいことを尋ねると、夏が来るのを楽しみにしている様子。

「暖かくなったら、お昼休みの30分は海で泳ぐんです。そうやって、時間をうまく使う人が多いというか。自分の仕事が環境を守ることにつながっているというのは気持ちがよくて、私にとっては居心地がいいんですよね」



取材を終えた日暮れ前、せっかくなので歩いて5分の由比ヶ浜に寄って帰ることに。

砂浜で海を眺める人、犬と楽しそうに歩く人、気持ちよさそうに波に乗る人。

ここに海があるからこそ流れている時間があるような気がする。

一つひとつの仕事は地道でも、愛着の詰まった1着を修理することは、地球を救うことにつながっている。

そんな実感を持って働く人たちがいることを、とても心強く感じました。

(2023/4/19 取材 中嶋希実)

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