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定期テストをなくした学校で
あたらしい高校像を
ともにつくる仲間募集

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

公立高校数が日本一の都道府県、北海道。

そのなかでも近年注目されている高校が、鵡川(むかわ)高校です。

鵡川高校は、2017年度から独自の魅力化プロジェクトに取り組みはじめました。

地域課題に対して、生徒が情報収集や分析に取り組み、自分なりの解決策を考えてプレゼンテーションまでをおこなう「むかわ学」では、町の大人が積極的に高校生に関わっています。今年度も、前期だけで100人以上の大人が高校生に協力しました。

また、2022年度には定期テストを廃止。生徒の意見や発表を重視する評価に切り替えています。

さらに進路に合わせたコース選択、短期海外留学、公営塾など、さまざまな取り組みが動く高校です。ある先生は、「生徒も変容していくなかで、これがいいんじゃないかって思うことをやっていく」と話していました。

既存の高校像にとらわれないこの学校で、高校魅力化コーディネーターと公営塾スタッフを兼ねるメンバーを募集します。

 

11月下旬、北海道。日中はあたたかい日が続いて、初雪もすっかり溶けている。

とはいえ、夜はぐっと冷え込む日も増えてきた。札幌から高速で1時間ちょっとの場所にあるむかわ町も、冬を間近にした静かな雰囲気がある。

待ち合わせ場所は、町の中心部にある鵡川高校。

それぞれの教室では、20人ほどの生徒が授業を受けている。

どの授業でも手慣れた様子でタブレットを使っていて、自分たちの高校時代から進化しているんだなあと感心する。

一方で、カメラに向かってはしゃいで、先生に「集中!」と言われる生徒がいるのは、今も変わらないみたい。

授業終了のベルが鳴ると、生徒が一斉に廊下に飛び出してくる。

大きなバッグを背負ってぞろぞろ歩く野球部員たち。友だちとじゃれ合う生徒。音楽室から吹奏楽の音も聞こえてきた。

先生を呼び止めて話し込む生徒も、ちらほらいる。

「うちは生徒と先生の距離が近くて。私が学生だった25年くらい前から変わらないですね」

「そうそう。『先生、ジュース買ってよ』みたいな距離感で生徒が来ます」

そう話すのは、高校魅力化コーディネーターであり鵡川高校OGでもある阿部さんと、魅力化プロジェクト全般を担当している山岸先生。

鵡川高校はどんな学校なんだろう。この学校に勤めて7年 になる山岸先生に教えてもらう。

「過去40年のあいだ、学習指導要領は座学を重視するカリキュラム構築 で、鵡川高校もそれにのっとっていました。それが大きく変わって、2022年から『主体的・対話的で深い学び』が提唱されて。鵡川高校はそれを先取りするかたちで、2017年から本格的に学校づくりに取り組みはじめました」

今では全国各地で取り組まれている高校魅力化プロジェクト。

その多くは自治体が主導して学校を巻き込む構図をとるなかで、鵡川高校は学校から取り組みが始まっている。

「むかわの中学生は、『鵡川高校は、自分の意見を発表しないといけないからイヤだ』って言うんですって。それくらい自分の意見を発表する機会が多いんです」

「うちは2022年度から定期テストをなくしました。テストの点数評価から、学習の理解度や取り組み姿勢をABCの三段階で評価する方式に切り替えています」

山岸先生の英語科では、単元ごとに「パフォーマンステスト」を採用しているそう。お題の写真を英語で説明できるか競うゲーム感覚のテストもあれば、英語でプレゼンするテストもある。

「助動詞を3つ使えばB、5つ使えばAといった感じで、単元ごとに基準を明確にしているので、どの子もプリントを引っ張り出してなんとか頑張るんですよね。一夜漬けして定期テストが終わると忘れるなんてことも起きにくいですし、勉強が苦手な生徒もいい評価をとれるようになりました」

偏差値や点数だけでなく、生徒自身の意見や発表を重視する。その姿勢は、オリジナルの探究型学習「むかわ学」にもよくあらわれている。

「むかわ学」は、3年間かけて町を学び、最終的には町への提言をおこなうプログラム。

1年生はフィールドワークに出かけて、町の歴史や産業、観光について学ぶ。2年生は役場職員や議員とのディスカッションを通じて行政の視点を知り、3年生は連携する大学生の力も借りながら、ゼミごとに自分たちの提言をブラッシュアップしていく。

そういえば、今いる会議室のホワイトボードにも、“交通の課題、バスの時間が合わず不便”“ライドシェアは? やりたいこと複数あり”といった走り書きが残っている。

「これも、放課後に先生と生徒が活動したときのメモだと思います。“やりたいこと複数あり”か…。なんでしょうね(笑)。こういうことが自然に始まっています」

「今、鵡川高校には多くの大人が関わってくれています。基幹産業の方、役場の方、企業や団体、連携する大学の生徒や教授たち。今年は前期だけで100人を超えました。町をより良くしようとする高校生に付き合ってくれる大人がこれだけいるって、なかなか面白いことだと思うんですよね」

実は、かつての鵡川高校と町の交流は、進路行事や学校行事への招待に限られていたそう。

プロジェクトが立ち上がって以来、先生たち自身が地域のイベントや、ときには居酒屋に出かけて町の人と交流するなかで、何年もかけて少しずつ学校と町がつながってきた。

「僕自身、町のことをやるのが好きなんですよね。我々教員が町の人と話すのを見て、生徒もいろんな人と関わるのが当たり前なんだって思うようで、自然と町の人と話せるようになっていくんです」

「今年の夏なんか、教員が突発的に『学校の駐車場で肉フェスだ!』って言ったら、観光協会の方が焼きそばを焼いてくれて、農家さんがお米を40kgくれて、パブのマスターが肉を焼いてくれて。それを生徒が好きに食べて(笑)。町の大人が気にかけてくれることに気づいているから、生徒たちもボランティアや手伝いを頼まれたら素直に行っています」

北海道内でも注目されている、地域に根ざした鵡川高校の学校づくり。

初期は先生たちも試行錯誤で、中学校までの学び直しなど、学力向上支援に重きを置いた時期もあったそう。

「けれど、生徒がよろこんだのは、僕ら大人が話を聞くことだったんです。こんなに大人に真剣に話を聞いてもらったことはなかったって言うんですよね」

「たとえば生徒が天体観測をやりたいと言ってきたとき、『おっ、やるか?』と言える環境と土壌があることが、生徒の自己実現にとってすごく大事なんじゃないかと思っていて」

土星って本当にわっかがあるんだ!って、僕も驚いたんですよ、と山岸先生。

正解を教えるのではなく、生徒と対話しながら一緒に答えを探していこう。今の鵡川高校にはそんな雰囲気がある。

「教育も生徒も変容していくけど、自分が経験した以上のことってしゃべれないじゃないですか。入学当初は発表がイヤだって渋っていた生徒も、3年生になって面接練習をしたときに『自分ってこんなに話せるんだ』って自信をもっている」

「その顔を見ると、いいなあって思うんですよね。テストで評価するこれまでの学校観を壊してもらえたし、この町に来て大正解だったなって感じるんです」

 

鵡川高校は野球部が有名で、全道から生徒が入学している。近年は、「地域みらい留学」の仕組みを利用して全国からも生徒を受け入れているそう。

今年は、首都圏から2名の生徒が一年間やってきている。地域みらい留学担当として、留学生のサポートや募集を担当するのがコーディネーターの阿部さん。

「一人は超大規模校、一人は超進学校から来ています。町を歩くと知り合いに会うのがすごく新鮮らしくて。同じ日本にいながら、こんな場所あったんだ! ぐらいのインパクトを感じているんじゃないかな」

「冬用ブーツを買うために電車に乗って隣町のイオンに行くとか、放課後に後輩を引き連れて公営塾に遊びに行くとか。この8ヶ月で、むかわっ子になってきたなと思います」

保護者のもとを離れて暮らす留学生にとって、阿部さんは相談しやすい人。ほぼ毎日顔を合わせるほか、LINEでも連絡を取り合っている。

「一番近い場所にいるからこそ、一歩引いて見守るようにしています。困ったときもできるだけ友だちや先生、生活の面倒を見てくれる町親さんに相談できるようになったらいいなって。私はときどき助け船を出す係ですね」

今回募集する高校魅力化コーディネーターの一人は、阿部さんと一緒に地域みらい留学に携わることになる。

コーディネーターは、保護者と学校、学校と地域、生徒と学校など、多くの人の間に立つ。「こんなことをやりたい」「困っていることがあって」などの相談が真っ先にくるから、バランサーや緩衝役として調整に回ることも多い。

10仕事があれば、9は大変なことだと、阿部さんは話す。

「とくに苦労するのは、留学生の保護者との関わりです。いろんな考えの方がいるし、自分の子どもを預けている以上、熱量は高いですよね。今後、受け入れる留学生が増えていくなかで苦労は増えると思います」

そのなかで出会う1の感動が、大きな報酬になっているという。

「この間、留学生が新聞社の取材で『ここに来てはじめて、ありのままの自分を認めてもらえた』って言っていたんです。もう私、それにすごく感動して、やってきて良かったって。これがあるから続けられるんだって思いました」

今回募集するコーディネーターは、公営塾スタッフを兼ねることになる。

す でに塾は設置されていて、今は高校生の英語の学習支援と、中学生向けの学習指導をしている。中高生の学習支援という軸は継続しながら、新たに人を募集するこのタイミングで、塾のあり方を一緒に考えてみたい。

つまり、鵡川高校らしさを塾に取り込んで、さらに進化させていく仕事だ。

「私の考えですが、『塾=勉強場所』というイメージを一度外してもいいと思うんです。これからは学校の先生や私たちコーディネーターとさらに連携して、探究活動をサポートするのもいいかなって」

山岸先生もうなずく。

「定期テストもないので、いわゆる勉強だけを教える塾では、スタッフの方々も難しさを感じると思うんです。今後は、生徒のやりたいことを、我々教員にも、阿部さんにも、塾にも相談できる環境が必要で。そのために力を貸してほしいと思います」

同時に、生徒からは「塾では5教科をしっかり学びたい」という声もある。

どうバランスをとるかは、これから決めていく段階。思うように進まず、想定外のことが起こる場面もきっとある。

けれど「生徒や町のことを一生懸命考えて、感情をむき出しにしてくれる仲間がほしい」と話す二人なら、一緒に新しい塾のあり方を考えてくれるはず。

そうやってできた塾は、生徒にとって大切な居場所になっていくと思う。

全校生徒130人の、小さな高校。この場所だからこそ目指せる教育があると思います。

従来の高校像にとらわれずに走り続ける先生やコーディネーターとともに、新たな風を吹かせてくれる仲間を待っています。

(2023/11/28 取材 遠藤真利奈)

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