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自分を楽しませ上手な人は
おもてなし上手

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誰かを楽しませることが上手い人は、そもそも自分自身が楽しんでいるように感じます。

今回紹介する旅館では、目の前の仕事を全力で楽しむ人たちが働いていました。

沖縄・恩納村(おんなそん)。

リゾート地として知られるこの土地に、「海の旅亭 おきなわ名嘉真荘」という旅館があります。

女将さんはもともと歯科衛生士。宿でオーラルケアのサービスを始めました。帳場のリーダーは、宿泊業のスペシャリスト。どんなクレームも機転を利かせて解決するトラブルシューターです。そして調理場の料理長は、黙々と料理を探求し、日々新たな味を生み出しています。

お客さんの半数は海外の方。英語を話せる人もいれば、英語が苦手な人は身振り手振りで伝えたり、翻訳アプリを駆使したりして、柔軟に対応。

各々が自分の楽しみを持って、働いています。

今回は仲居、帳場、調理、それぞれを担ってくれるスタッフを募集します。

英語が話せるとうれしいけれど、より大事なのは積極的にコミュニケーションをとる姿勢です。

仕事も遊びも、まずは自分が楽しむ。そうすることで、周りにいる人にも楽しさが伝わっていく。そんな価値観の人に響く仕事だと思います。

 

羽田空港から那覇空港まで約3時間。そこから、車で北へ走ること約1時間半。海沿いに大きなホテルがぽつぽつと見えてきた。

緩やかな坂を登った先に、落ち着いた色合いの旅館が現れる。ここが「海の旅亭おきなわ名嘉真荘」だ。

この日は10月中旬。車を降りると、蝉の鳴き声と夏らしさが残った潮風を感じる。

和風の玄関から中へ入ると、「こんにちは、ようこそいらっしゃいました」と帳場の方が迎えてくれ、すぐにシャカシャカと抹茶をたててくれた。

ほっと一息ついて、案内してもらったのは食事処。

小さな暖簾をくぐると、高天井の広々とした空間。大きな窓ガラス越しに海が一望できる。

抜群のロケーションを誇る恩納村。ただ、2015年におきなわ名嘉真荘がオープンするまで旅館は少なかった。

ホテルではなく、旅館にしたのはどうしてだろう。

「沖縄って、和の文化があんまり浸透していなくて」

そう話してくれたのは、女将の富島さん。

「たとえば、宿泊先も周辺にある飲食店も、お食事は和食というより沖縄料理やお肉料理がメインで出てくる」

「恩納村に来る方は、長期滞在されることもよくあります。毎日こってりした沖縄料理だと飽きますよね。もちろん沖縄の文化も知っていただきたいけれど、同時に和の文化も味わってもらえるようにと、この旅館を立ち上げたんです」

北海道・美瑛町では、13年前から「森の旅亭びえい」という姉妹旅館も運営。現地から北海道産の魚介類などを仕入れ、沖縄ならではの食材と組み合わせて会席料理を提供している。

ランチのみの利用も可能なため、地元に住む人が足を運んでくれることもあるそう。

「来ていただいたからには、なにか持って帰ってほしいんです。うちに来てくれるお客さまは、海外の方も半数いて。言葉は完璧に通じないこともあるけど、ここで過ごす時間は思い出に残るものにしたいと思っています」

もともと、旅館の親会社が持つコールセンターの事業展開を担っていた富島さん。

「おきなわ名嘉真荘」を経営してきた旦那さんとの結婚を機に、経営に関わるように。

「女将業界では20年、30年やっている人が多いなか、わたしはまだ7年目。自分らしい女将業ってなんだろうと考えたとき、歯科衛生士を17年間務めた経験が活かせるんじゃないかと思いました」

歯科衛生士と女将。なかなかつながらないような気もしますが…。

「歯科衛生士として働いていたときも、歯の健康だけでなく、患者さんとの会話を大切にしていて。それが楽しかったんですよね」

「今でもついつい歯に目がいっちゃうんですけれど(笑)。お客さまの顔色をまず見て、クマができていたり、だるそうにしていたり。なんか調子悪そうだなって感じたら声をかけて話を聞くこともあります」

わざわざここに来てくれたのだから、過ごす時間は思い出に残るものにしたい。そして、自分らしいおもてなしを提供したい。

「とくに仲居さんは、旅館にとって大切な存在だと思っていて。帳場も調理場も男性のスタッフが活躍してくれているので、女性の華やかさを仲居の仕事で活かせたらいいなと思っていて」

「今年の3月から、宿泊のプランにオーラルケアのメニューを追加しました。これからは、マッサージとかボディケアもはじめられたらいいなと思っています」

食や体験を通じて、自分の身体と向き合う宿泊。仲居として新しく来る方も、宿業+αの部分に興味を持ちつつ接客に臨んでもらえるといい。

ただベースとなる仕事は、料理の提供や客室の清掃といった、いわゆるオペレーション業務。地味な仕事もコツコツ取り組むことが求められる。

「スタッフ用の接客や作業のマニュアルはあるんですけど、おもてなしについては個人の力に任せています」

「あんまり常識にとらわれず、自分が楽しめるよう、のびのび働いてくれたらうれしいです」

 

自分の仕事を楽しむ。その姿勢は、帳場スタッフの吉田さんからも伝わってくる。

沖縄のさまざまなリゾートホテルでフロントスタッフとして20年近く経験を積んできて、今年の8月から名嘉真荘で働きはじめた吉田さん。ここでは帳場のリーダーを任されている。

「いろんなホテルでお客さまの対応をしてきました。たとえば、300室ほどのホテルでのクレーム対応とか。トラブルシューターのような役割でした」

「きついこともたくさん言われます。でも、わたしの場合は『よし来た!』って思うんです」

一般的に、旅館よりもホテルのほうが部屋数も多く、規模も大きい。同じ宿泊業でも、それまでの当たり前が通用しないこともあると思う。

吉田さんの場合、そのギャップを感じることってありました?

「そうですね…。ホテルだと、お食事やお休みになるところを準備して、『あとはご自由にお過ごしくださいね。なにかあったら聞いてくださいね』っていうスタンスで。部屋数が多いぶん、機械的になってしまうところがあったかもしれません」

「一方で旅館は、『なにかご要望事はございますか』ってこちらからお伺いするんですね。帳場の仕事はシンプル。“お出迎え、おもてなし、お見送り”この3つなんだけれど、ホテルより直接関わる時間が多いのかな。そこが大きな違いだと思います」

そうは言っても、お客さんと接する時間は滞在中に数時間ほど。限られた時間のなかで、恐れず飛び込む姿勢を大切にしているという。

あるときは、海外から観光で訪れたお客さんが、広島にスーツケースを忘れたまま名嘉真荘にやってきてしまったことがあった。そのなかには常備薬など、大事なものが入っていて、どうにかしたいとのこと。次の目的地は北海道だった。

そこで吉田さんは、駅の荷物預かり所へ連絡。荷物が北海道までちゃんと届くように手配したそう。

「広島の旅館の方も、最初は少しめんどくさそうにしていたんです。ただ、話していくうちにほぐれていって、最後には『そこまでやるってすごいですね』と言われました(笑)。自分にとっては、全部楽しいことなんですよね」

チャレンジする姿勢はほかの業務でも。

「これまで名嘉真荘では、帳簿を手書きでつくっていたんです。それだとミスもリスクもあるので、すべてパソコンで管理できるように変えました」

帳場は現在3名で担当している。部屋数は25室だけど、今は人手不足のため、半分ほどしか稼働できていない状況。

新しく仲間を募って、まずは稼働率をあげることが目標。また、吉田さんのように旅館の運営で改善できるところは、どんどん見つけて改善していってほしい。

どんな人と働きたいですか?

「ある程度クレーム対応ができる方がいいかもしれないです」

「人それぞれ考え方は違うと思いますが、自分を楽しませることが好きな人。そうでないと、お客さまも楽しめないと思うんです」

 

直接関わる接客の裏で、黙々と腕をふるう。それもおもてなしのひとつ。

最後に話を聞いたのは、料理長を務めて5年半の永井さん。札幌のホテルで10年ほど料理人をしていた方。

「クオリティを落としたくない、手を抜きたくないって日々思いながら料理をつくっています」

「こだわっているのは、出汁で。自分の尊敬している料理人の先輩から受け継いだものなんです」

名嘉真荘で提供する会席料理の基本の出汁は、北海道の羅臼(らうす)で採れる昆布。

その昆布に鰹を加え、吸い物に使うこともある。出汁にこだわることで、料理のアレンジの幅はぐっと広がる。

せっかくなので、お料理をいただくことに。

この日の献立は9品。松茸やゆずなど、どの料理にも秋らしい食材が使われていて見た目も楽しい。

「季節を味わってもらうことを大切にしていて。春夏秋冬に合わせて献立を変えています」

「本当は、毎月変えたいんですけどね。人手不足というところも正直あって。献立も出す料理も増やすと、クオリティが落ちてしまう。それだけは絶対にしたくないんです。新しく来てくれる人と協力しながら、提供できる料理数もクオリティも高めていきたいと思っています」

今いる調理場のスタッフは永井さんを含めて3人。

「一番忙しいのは夏と年末年始。常連のお客さんもいらっしゃって、チェックアウト時に次の予約をしてくださる。ありがたいですね」

どんな人に来てほしいでしょう?

「調理師免許をこれから取りたいならば、全然その辺はサポートします。ただ、調理師免許が必要かって言われると、僕は全く必要ないと思っています。覚えたい、つくりたい、できるようになりたい。そんな向上心のほうがよっぽど大事ですね」

 

ここで働く人たちは、一人ひとり「自分はこうしたい」という意思を持って働いているように感じました。

しきたりや風習を重んじるというより、問われるのは自分の軸や意志があるかどうか。

料理や接客のほかにも、恩納村の自然に触れてみたいとか、和の文化を身近に感じる仕事をしてみたいというのも、立派な理由になると思います。

この旅館でやりたいことが見えてきたら、一度皆さんと話してみるといいと思います。

(2023/10/17 取材 大津恵理子)

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