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多摩の編集はおもしろい

東京都西部、30の市町村からなる多摩地域。自然豊かでありながら、東京都心へのアクセスもよく、独自の文化も残るエリアです。

けやき出版は、多摩エリアに根づいて43年の出版社。

自社で制作している情報誌や、市民が執筆した自費出版の書籍、クライアントワークのフリーペーパーなど、幅広い媒体を手がけています。

今回募集するのは、出版物全般の編集に関わるスタッフ。企画から取材、原稿作成や校正、ページレイアウト、進行管理など、プロジェクトマネージャーとして全体をまとめていく仕事です。

あわせて募集するのはエディトリアルデザイナー。こちらもあらゆる出版物の装丁やページレイアウトなどを担当します。

地域のあたたかさを感じながらも、プロとしてしっかり仕事に取り組んでいく。そんなあり方に共感する人なら、きっと活躍できる環境だと思います。

 

東京・立川駅。たくさんの人で賑わう駅構内を出て、南口直結の歩行者デッキへ。

下に広がる市街地を覗くと、飲食店やカラオケが入ったビルが立ち並んでいる。わたしも学生時代を多摩で過ごしたので、遊ぶといえば立川だったなあ、とちょっと懐かしい気持ちになる。

3分ほど歩いたところに、真新しいガラス張りの空間が見えてくる。

中に入ると、大きな本棚にさまざまな出版物や地域のフリーペーパーが並んでいる。

「このスペースの運営を立川市から委託されていて、オフィスも兼ねているんです」

そう教えてくれたのは、代表の小崎さん。

ここ「BALL. HUB たちかわ」はイベントスペースでもあり、地域情報や行政情報の発信場所なのだそう。

「インターネットがない時代に、多摩エリアから“出版”という形で情報発信をしたいと、地域の有志の方々が出資してつくったのが、けやき出版です」

今年で創業43年。まちの人たちには「本といえばけやき出版」というイメージも根づいている。

長年の事業の軸は、一般の人が自分の資金で本をつくる自費出版。関東の動植物を紹介する生きもの図鑑や、経営者が若者向けに執筆したビジネス本、市民の里山保全活動をまとめた本など、ジャンルはさまざま。

けやき出版は、著者の想いを明文化して、より読者に届く原稿に仕上げるほか、装丁やページのデザインをしたり、書店に流通するまでサポートしたり。市民が自分の言葉を世の中に発信する手伝いをしてきた。

もともと雑誌の編集に関わっていた小崎さん。子育てをしながら、自宅の近くで編集ができる会社を探して、18年前に入社した。

「4代目の代表になったのは、入社9年目のときです。自費出版を中心にずっとやってきたのが先代まで。私が代表になってからは、新しい仕事にも挑戦するようになっていきました」

たとえば、京王電鉄と制作している「セイセキZINE」。

聖蹟桜ヶ丘エリアで活躍する人たちに焦点を当てたフリーマガジンで、市民ライターやデザイナーと連携して、ひとつの冊子をつくりあげている。

「地域密着の仕事は、相手の気持ちを考えられることがとても大切です。どんな言葉を添えたら、気持ちよく仕事をしてくれるのか。ビジネスライクな付き合い方だと、冷たいと思われてしまうことも多いです。地域とのかかわりを面倒ではなく、おもしろいと思ってほしいですね」

以前は、新しい仕事に消極的な社員が多く、外部の編集者やクリエイターの力を借りて出版物を形にしていた。

ただ、それでは社内にノウハウが蓄積しないし、小崎さんが編集の仕事にかかりきりになってしまう。

「社内スタッフで、しっかりクリエイティブな仕事をできる体制をつくりたいと考えて、採用に動き出したのが1年前。担当や役割分担を見極めながら、この1年は土台づくりに試行錯誤して、ちょうど今、生まれ変わったタイミングです」

「やっと土台ができたので、今回またメンバーを増員して、より強固にしていきたいと思っています」

今は小崎さんに加えて、経理や財務・全体のマネジメントなどを担う取締役が一人、そのほか正社員の編集者とデザイナーのほか、契約社員やアルバイトなども入れて10人以下のチーム。

今回募集する編集スタッフは、編集の実務経験があると好ましいものの、未経験の人でも挑戦可能。

それ以上に求められるのは、プロジェクトマネージャーのような立場で、案件を取りまとめた経験。それを出版物に応用できれば、編集に求められる仕事はきっとこなしていけるはず。

「多摩エリアに縁がある人じゃなくても、全然いいんです。仕事をすることでこの地域を知って好きになって、それをみんなに伝えたいと思ってくれることがうれしいので」

「でも、都心で疲れたからほどよく仕事をしたいっていう人は違うかな。モヤモヤじゃなくて、ウズウズしている人にきてほしい」

モヤモヤじゃなくて、ウズウズ。

「いろんなことをやってみたいのに、今の会社だとチャンスがないとか。仕事への欲求や想いが強い人にはうってつけだと思います。けれど、言われた仕事だけをやっていたい人や、ほどほどに楽しくやりたいっていう人にとっては、きっとハードで続かないと思います」

 

「出版にまつわる全部に関われるのがこの会社です。企画から編集、書店営業まで、分業制が当たり前の仕事も全部一貫してやる。それが楽しいと思える人には、本当におもしろい環境だと思います」

そう続けるのが田村さん。けやき出版に入社して1年ほど。

「偶然流れついた多摩エリア初心者で、新鮮なことばかりです」

もともとは名古屋で地域情報誌の編集を16年経験。一旦その仕事を離れたものの、やはり地域に根ざした編集の仕事がしたいと、けやき出版へやってきた。

今は小崎さんとともに、編集全般を取りまとめている。

「進行管理は、常に同時並行で3〜4本ほど。自費出版の著者の方や、クライアントともやりとりをして、スケジュール通りにタスクが完了するようにコミュニケーションを取りながら進めていきます」

「お客さんがいる仕事と並行して進めているのが、自社媒体の『BALL.(ボール)』です」

年に2回発行しているBALL.は、多摩エリアの仕事と暮らしについて伝える情報誌。

毎号「◯◯のしごと」としてテーマを組み、地域で働く人たちの営みや想いを発信している。

ターゲットは、都心で働いているような、まだ多摩エリアの魅力を知らない人たち。ベッドタウンとしてではなく、「多摩ではたらく」という選択肢を伝えていきたいと考えている。

今回入る人も、企画や取材、進行管理など中心メンバーとしてBALL.にも関わっていく。

「昨日入稿が終わったところなんです」と見せてくれたのは、5月15日発売の最新号の一部。

今回から新たに各市町村にフォーカスした特集を入れる予定で、最初は拠点のある立川市からスタート。

このイラストは、田村さんと小崎さん?

「はい。この特集は、自分を出すように、と社長に言われていて。まだまだ足りないらしいですけど」

読み進めていくと、誌面にはお酒好きだという田村さんのキャラを活かした企画も。自社媒体だからこそ、自分たちの色をしっかり出すことで、ファンを増やすことにつながっていく。

「これからは毎号、わたしが日々飲み歩いた店を紹介するページが出ることになっています(笑)。自分のキャラクターを活かして、自分の言葉で読者にまちの良さを伝えていく。そんなふうに、好きなことを仕事にできるのはやっぱりおもしろいですよ」

「もちろん、誰に何のために伝えたいのか、読んだ人にどう感じてほしいのか、きちんと説明できる必要はあります。でもコンセプトに合っていて、ターゲットがおもしろがってくれそうな企画なら、基本的にはOKが出るので。新しく入る人も、自分の興味がある企画をどんどん提案してくれたらと思います」

長年編集の仕事をしてきた田村さん。この仕事のどんなところに魅力を感じているんでしょう?

「いろんなものを見られて、いろんなところに行けて、いろんなことを考えられる。それが全部できる仕事って、わたしは編集しか思いつかないんですよね。ずっと座って作業をするのは向いてないと思うんです」

「取材先の方と気が合って友だちになっちゃったり、そこからまた別の人を紹介してもらって仕事につながったり。そういう地域のつながりって大事だなって、あらためて感じますね」

 

デザイナーの小林さんは、多摩出身者。都心での仕事を経て、同じ多摩エリアの制作会社へ転職、約1年前にけやき出版に入社した。

「子どものころからけやき出版は知っていて、立川に出版社があるっていうイメージはずっと持っていたんです。小崎さんのことも知っていて、一緒に働いてみたいと思っていたので、求人を見かけてすぐに応募しました」

前職では編集全般に関わっていたものの、クリエイターとして手を動かすほうが向いていると感じ、デザイナーとして応募。デザインソフトの使い方は、入社前に自力でマスターした。

現在は、デザインのほか、趣味のカメラの腕も活かして写真撮影も担っている。

「もともと、地域愛がすごく強いわけではないです(笑)。でも多摩で仕事をするようになって、地域ってやっぱり人なんだって思うようになりました」

「住んでいる人の顔が見えて、持っている考えに触れて。その一人ひとりが集まって、コミュニティになっている。ビジネスというより人として付き合っている感じがして、多摩っていいなと思うことが増えました」

思い入れのある仕事をたずねると、BALL.最新号の「福祉のしごと」の特集について教えてくれた。

取り上げたのは、みずき福祉会という社会福祉法人。想いを持って利用者に向き合う姿勢が、BALL.の価値観とマッチし、今回特集が実現した。

小林さんは 誌面のデザインを 担当した。

手にとって読んでみたくなる明るくポップな 誌面からは、多くの人に届いてほしい、という想いが滲み出ているように感じる。

「 先方の考えをしっかり落とし込みたい、という気持ちを強く持ってデザインしました」

「地域に根づいた仕事をするようになってから、こういう気持ちで仕事に向き合うことが増えましたね」

けやき出版には、どんな人が合うと思いますか?

「仕事が好きな人ですかね。真剣に仕事をしていれば、付き合う地域の方々にその姿勢って伝わるはずだし。そういう方から僕も学びたいですし」

「自分は編集者とは逆で、同時並行で仕事をするのは苦手なので…。そこは任せてしまうけれど、カメラやデザインでは一切妥協せず、ちゃんとしたものをつくらなきゃと思っています」

 

隣で聞いていた小崎さんが続ける。

「向いてる、向いてないは、うちにとって結構重要なんです」

「得意な仕事は伸ばして、向いてない仕事はほかの人に頼んでいい。みんな完璧じゃなくていいから、助け合っていいものをつくっていきたいと思っています」

取材中、お互いに相槌を打ちながら話を広げていく姿から、普段のいいコミュニケーションが垣間見えたように感じました。

自分はウズウズしている。みなさんの言葉を読んでそう気づいた人がいたら、ぜひこのチームの一員になってほしいです。

(2024/4/5 取材 増田早紀)

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