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やわらかく
ハレの日に寄り添う
「神社で働く」という選択肢

朝は掃除からはじまり、備品の発注や掲示物の作成、メールに電話対応。お客さまが来たら笑顔でお迎えする。

大切な日に寄り添う神社の「ふつう」の仕事です。

群馬県前橋市にある産泰(さんたい)神社は、安産・子育てのご利益がある神社。

安産祈願やお宮参り、七五三のお祝いでお参りするご家族、特にお子さん連れの参拝者が多く訪れる場所。ハレの日の神社として、地域内外の人たちから愛されています。

今回募集するのは、神主見習い。経験や資格は一切なくて大丈夫なのでご安心を。

たとえば、ハレの日に立ち会うのが好きで、ウェディングの仕事をしている人。子どもが好きで保育士をやっている人。接客が好きでカフェで働いている人。

仕事は楽しいけれど、生活も大事にしたいから、そろそろ働き方を見直してみようかな。神社で働くなんて考えてもみなかった。そんな人に、ぜひおすすめしたい仕事です。

 

東京から新幹線とローカル線を乗り継ぎ、前橋駅へ。

そこから車で20分ほど行ったところに産泰神社はある。

主祭神は、桜のように栄える美しさと、子を産む母の強さを象徴する女性の神さま、木花佐久夜毘売命(コノハナサクヤヒメノミコト)。

清々しく凛とした空気に背筋が伸びる。

迎えてくれたのは、禰宜(ねぎ)の鯉登敬紀(こいと たかのり)さん。禰宜というのは、神職の職名で、宮司の下の役職。

「この神社は、ここに鯉が彫られているんですよ。神さまをお守りする鷹や獅子、火から守る水鳥、夜を守るみみずく、当時想像で描かれた麒麟やゾウなど、鯉以外にもさまざまな動物が隠れています。じっくり見るとおもしろいんです」

敬紀さんは、大学で法律や経営を学んだあと、神職の資格を取り、神奈川にある大きな神社で修行。そして、実家である産泰神社に入った。

「もともと神社に入ることを強制されていたわけではなかったんですが、実家ということで親しみもあったし、神社自体は好きだったんですよね。大学も京都だったので、休日は自転車で神社巡りをしていました」

「最近は子どもが小さいので行けてないですが、旅行も好きで寺社仏閣は必ずチェックします。ダイナミックな感じが良いんですよね。積み重なった歴史が、今目の前にあるんだって、感動します」

毎日のスケジュールは、出社してから掃除。そこから安産祈願やお宮参りでいらっしゃった方のご祈祷を行ったり、お守りを頒布するなど参拝者への対応。備品の発注作業や、お祭りなどの打ち合わせが入るときもある。

「賑やかな日と落ち着いた日の差が激しいです。落ち着いた日は、事務仕事が多いですね。たとえば授与品の在庫を確認したり、掲示物をつくったりしています」

産泰神社は、お正月と七五三、安産祈願にちなんだ戌の日が特に忙しいけれど、残業はほとんどないそう。

働くなかで、楽しいことってなんですか?

「やっぱりお祝いの場所なので、こちらもうれしい気持ちになりますね。七五三だと、台の上からピョンと降りる『碁盤の儀』という儀式があるのですが、時間を見つけては子どもたちに声をかけに行っています(笑)」

子どもが無事に成長できたという感謝と、これからの成長を祈念するという碁盤の儀。

「ジャンプできた子に『よく頑張ったね。すごいね!』というと、とっても喜んでくれるんです。親御さんも、我が子の成長を実感できる場ですし、こちらもうれしくなりますね。うちは、特に安産と子育ての神様をお祀りしている神社なので、お祝いの場に立ち会える『明るい神社』だと思います」

来る人が基本的に笑顔で明るい、晴れやかな場。毎日働く上では、すごく良いことだろうな。

「うちは、神職になりたい方であれば、女性でも大歓迎です。今の時代になんで、と思ってしまいますが、神社の世界では男性がメイン。でもここは神さまも女性だし、来てくださる方も女性が多い。むしろ女性の神職がいた方が、安心してもらえるのではないかと考えています」

今回募集する仕事では「神職資格」が必要になってくる。

「今の時点で経験や知識、資格はなくて大丈夫です。入ったあとに、定期的に開催されている國學院大學の講習会に行って『直階(ちょっかい)』という階位を取得してもらいます」

講習会とは。一体どんなことをやるのでしょうか?

「神道の歴史などを学ぶ座学と、ご祈祷などの実習どちらもあって、1ヶ月ほど学校に通うイメージですね。受講者は、老若男女わりと幅広く集まっています」

ご祈祷は、参拝者のお願い事が叶うように神さまとの仲をとりもち、祈りを捧げる儀式のことで、神主にとって重要な仕事のひとつ。産泰神社では、ご祈祷をとても大切にしている。

「古いしきたりに則った約20分ほどの儀式で、基本的な動作や祝詞(のりと)は講習会で練習しますし、いきなり『一人でやってね』ということもないので、習ったことを間違えずに、丁寧に執り行えれば大丈夫です。最初こそ緊張しましたが、達成感ややりがいを感じられますよ」

「古い文化や歴史が好きで、一緒に神社を守ってくれる人に応募してもらいたいですね。忙しいタイミングでも、落ち着いて、朗らかに、誠実に対応できる。そういうことが大切だと思います」

たとえば、お宮参りの方に産着をかけてあげるなど、お祝いの場をお手伝いする「気遣い」が大事なのだそう。

 

次にお話を聞いたのは、敬紀さんのお父さまで宮司の鯉登茂行さん。

「これは、抜けびしゃくといって、安産祈願のひとつです。底の抜けた柄杓で水をくむとそのまま抜けてしまうように、楽にお産ができるようにと願ったもので、産泰神社では江戸時代から奉納されてきました」

茂行さんのお父さまの時代には、今ほど参拝者が多くない神社だったというこの場所。どうやって活気を取り戻してきたのだろう。

「文献を見ると、江戸時代にはかなりたくさんの参拝者が来ていたようですが、父の代になるころにはほとんど無人の神社でした。経済的に成り立たないので、父は会社員として働きながら、神主としてお祭りや神楽をやっていましたね」

「私も神社を継ぐことは強制されず、建設会社の技術者として会社員をしていましたが、今から41年前、『導かれた』というと大袈裟だけど、仕事を辞めてね。実家に戻って神社のことをやってみることにしたんです」

歴史や文化がある場所にも関わらず、何もしなかったら、どんどん廃れてしまう。茂行さんは、産泰神社をなんとかしたい、と考えた。

「神職の講習会に行ったとき『一に掃除、二に掃除』と習いました。神社は『清浄』をとても大切にしているんですね。それで、まずは掃除から取り掛かることにしました」

「近所の人に『きれいになりましたね』って言われるとうれしくて。じゃあ次はあそこをやってみようかな、って。その繰り返しでした」

清浄じゃなかったものが、少しずつ綺麗になっていく。そうするうちに、だんだんと来てくれる人が増えたそう。

今でも朝は毎日1時間半ほど、茂行さんみずから落ち葉ひとつ無いようにブロワーで掃除している。たしかに地面も屋根も、とってもきれい。

意識して見ると、かなり手が行き届いていることがわかる。

「必要があれば梯子に登って、折れた枝や蜘蛛の巣など一つひとつ払っています。枝は落ちてくると危険ですし、女性やお子さんは虫が苦手だったりするので、なるべく安心して参拝してもらえるように意識しています」

さらには、安産と子育て祈願に焦点を当てて、リブランディングをしている真っ最中。

数年前、さまざまな企業のブランディングに伴走しているエイトブランディングデザインに相談し、社紋をはじめ、ご祈祷の授与品やお守りなどをつくり直していった。

やわらかく可愛らしいデザインで、評判も良いそう。

神社って、勝手に硬派なイメージを持っていたけれど、こんなに柔軟に変わっていけるんだな。



自分にできることをすればいいだけ。そう話す茂行さんが「よかったら森も見ていってください」と、神社裏手にある森へ連れていってくれた。

「ここ、実は僕がどんぐりから育てた人工林なんです」

どんぐりから…?一体どういうことだろう。

「20数年前、この辺りにあった木が切り倒されて、赤城山からの風が一気に来るようになってしまったんです。神社内には、県の指定文化財も多くあるのですが、風のダメージがすごい。そこで『鎮守の森』として、ここに木を植えることにしました」

「『鎮守の森』とは、神社を守るためのもの。昔から日本人は、木や川など、自然のあらゆるものに神さまが宿ると考えていて、木の生い茂った森は、神さまが降り立つ神聖な場所とされてきました」

森をつくる、といっても、苗木を購入するには莫大なお金がかかる。そこで茂行さんはどんぐりを拾い集めることにした。

「休みの日にいろんな所でどんぐりを拾ってきて、ポットに入れて育てるんです。育ったら植え替えて、雪が降ったら払ってあげて。全部で2000本くらいかな」

「最初は種類も分からないので、調べながらね。植えた木同士が競争して、残った木が育っていく。20年やっていったら、今やっと森らしくなってきました」

神社をきれいにしたい、という思いから、森までつくってしまうとは。

もともと建設会社で働いていた茂行さん。広い駐車場に植えてある木も自分たちでチェーンソーを使ってメンテナンスするし、駐車場のコンクリート舗装や大きな石の階段の積み直し工事にも指示を出す。

宮司ってここまでやるんだと思ったけれど、茂行さんにとっては自然なことのよう。

「土木のことと、神社のこと、やっぱりどっちも好きなんですよね。一見、土木は神社とあまり関係ないけれど、私にとっては神社を守る一つの方法です」

駐車場をコンクリート舗装すれば、ベビーカーや車椅子にもやさしく、着物で来た人の衣装も汚れづらい。「昔ながらの神社」を守りながら、参拝しやすい環境を整えているのだ。

「神社にはさまざまな仕事があるので、たとえば子どもと接することや、文章を書くこと、デザインをすることだって、活かせるスキルだと思いますよ」

「実際に今働いている人は、前職が建築塗装工で手先が器用なので看板台をつくったり、高所作業車の免許をいかして木の剪定をする人も。デザインが好きな巫女には、授与品のデザインをしてもらったこともあります」

神社という文化に惹かれ、掃除や接客、事務作業が好きなら。誰かの大切な日、ハレの日に立ち会うことが好きなら。

神社で働くという選択肢も、意外とありかもしれませんよ。



(2023/11/22 取材 今井夕華)

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