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人と富士とファブリック
3776mに続く一本道で
文化のハーモニーを紡ぐ

懐かしい色合いの提灯と軒先のテント。背景にはどんと構えた富士山と、そこへつながる一本道を歩く多国籍の人たち。

ありふれた商店街のようだけど、たくさんのものが関わり合って新しいハーモニーが生まれている場所があります。

山梨・富士吉田市は1000年以上の歴史を持つ機織りのまち。中心街の本町通りは、地元の商店や古民家を活用した新しいホステルやカフェが並んでいます。

そんな富士吉田の風景やものづくりを織り交ぜて伝えているのが、株式会社DOSO(ドーソ)。

古民家を改装した「SARUYA HOSTEL」をはじめ、アーティスト・イン・レジデンスや、世界中に拠点を持つクリエイティブコミュニティ「FabCafe」の拠点の一つ「FabCafe Fuji」の運営などをしている会社です。

社名の由来は、「道祖神(どうそじん)」という甲信越地方に多く見られる旅や交通安全の神さま。

宿を起点として、訪れる人を迎え入れたり、送り出したり。送り出すまでの間、まちごと楽しんでもらう。そんな場所をつくっています。

今回は、FabCafe Fujiで働くカフェスタッフを募集します。地元の八百屋さんから仕入れた食材を中心にメニューの開発や提供、イベント運営をおこないます。

あわせてSARUYA HOSTELのスタッフ、企画・デザインスタッフも募集します。興味があれば、カフェで働きながら宿の運営について学ぶこともできるとのこと。

出身もバックグラウンドも異なるけれど、同じ場所に引き寄せたれた人たち。まずはその人たちの話を読んでみてください。

 

東京から高速バスに乗車。海外から来た観光客のみなさんで、車内はあっという間に満員に。いろんな言語が飛び交うなか、富士山駅に向かう。

一駅前の富士急ハイランドを過ぎると… 富士山が見えた!近いなあ。

2時間ほどで富士山駅に到着。ここからは徒歩で緩やかな坂道を下っていく。15分ほど歩くと、だんだんと人の姿が増えて、賑やかになってきた。

赤と黄の軒下テントが続く道。ここが本町通り。

通りのちょうど真ん中にあるのがSARUYA HOSTEL。長くて白い暖簾が目印だ。

そばの交差点は撮影スポット。信号待ちの間にカメラを構えて撮影している人たちがたくさんいた。

暖簾をくぐり中に入ると、木のあたたかみがある吹き抜けの空間が広がっている。

入り口横のラウンジで話を聞いたのは、DOSOの代表、八木さん。じっくり考えて言葉を伝えてくれる方。

静岡県出身、東京でデザインの仕事をしていた八木さん。そのころから、移住促進を目的に活動する「みんな貯金箱財団」にグラフィックデザイナーとして携わっていた。

富士吉田市に拠点を移したのは2015年のこと。

「ここは、裏地をつくってきたまちなんです」

「静岡側と比べてここから見る富士山は北側のほう。影というか裏側なんですよね。そして、このまちは機織り産業で栄えてきました。洋服の裏地のようなそんな場所なんだと感じていて。裏地があるとおしゃれですよね。富士山の裏側も輝かせられるんじゃないかって。そこに可能性を感じました」

そのころの本町通りは、人通りも少ないシャッター街。可能性を感じつつ、どう活かせるか、まちの人たちと議論を重ねてきた。

「足りないものは何だろうって、みんなで考えて。話し合いのなかで出てきた一つが、魅力を発信するための拠点がいるということ」

「当時はシェアリングエコノミーが流行し始めたころで。人と交流して、情報を得てつながっていく手段として、まずはホステルをつくろうと思いました」

SARUYA HOSTELの立ち上げをきっかけに東京から移住。同時に個人事業主となった。

「もともと洋服屋さんと美容室が隣接している建物で、30年以上空き家だったんです。これまでのつながりもあったから、大家さんがぜひ使ってほしいと言ってくれて」

「サラリーマン時代の貯金を全部投げ打って(笑)。お金がなかったというのもあるけど、なるべく自分たちでつくろうと、地元の大工さんにも手伝ってもらいつつ、セルフリノベーションしました」

ホステルの本館改修後、裏手にあった別の空き家も別館としてリノベーション。

SNSやAirbnbなどを利用することで、徐々に海外から人が訪れるように。宿以外にもできることがあるのではないかと、2020年に株式会社DOSOを設立。

「僕自身、伊豆の三島出身で。たとえば伊豆は、川端康成や三島由紀夫といった文豪が宿に泊まって作品をつくるっていう文化があったんです。なので宿には、芸術家を支援するという役割もあっていいんだなと思っていました」

アーティストレジデンスとしての活用や、地元名産の織物を使ったアートイベントの企画など。宿を軸にしたまちの活性化からさらに、富士吉田ならではの文化や芸術に関する事業にも枝葉を伸ばしていった。

シャッターが降りていた場所にも、あかりが再び灯っていく。

「とくにコロナ禍が明けてからは、訪れる人も新しいスタッフも増えていて。いい流れができているんじゃないかと思っています」

「お店をできるだけ長く富士吉田に残すことで、まちに貢献する。そんな老舗のような場所になるといいなと思っています。今はその基礎をつくる時期。これまでの歴史や文化、そして今働いてくれている人たちとのハーモニーを大切にしてくれる人が来てくれるとうれしいですね」

 

次に話を聞いたのは、カフェスタッフとして加わる人の先輩になる伊藤さん。飲食店で働いたのち2年前に三重県から移住してきた。

「一度、観光で山梨に来たことがあって。そのときの印象がよくて、一生のうちに富士山の麓で暮らしたいと考えていたんです」

「食べることが好き。でも飲食店とは別のことに挑戦したいなと思っていて。自分のプラスになるような仕事ってなんだろうと考えた先が、宿泊業でした」

ホテルよりカジュアルなおもてなしができる、ホステルやゲストハウスに興味を持った伊藤さん。

「山梨、富士山、ホステルってネットで調べたんです。デザインとか自分のセンスをもうちょっと磨きたいし、いろんな人のセンスを知りたいなって思っていたこともあって、アートにも力を入れているここで働いてみたいなって」

「インスタグラムを見ていたらSARUYAが少し前に求人していたみたいで。どんな場所か知らなかったんですけど、とりあえず連絡してみようって(笑)。実際に泊まらせてもらって、八木さんと面談して入社が決まりました」

ちょうどその時期は会社としてFabCafe Fujiを始めようとしていたころ。経験を踏まえ、伊藤さんはカフェのオープニングスタッフとして働くことに。

開業する前の数ヶ月間は挑戦してみたかった宿の業務を担当したり、カフェの本店FabCafe Tokyoで研修を受けたり。

「カフェを開業するときにみんなで考えていたのが、八木さんがSARUYAを始めたときみたいに『下吉田で何が足りないんだろう』ということ」

老舗の喫茶店も新しいコーヒーショップもある。ないものってなんだろう。ここに必要なものってなんだろう。

考える軸になったのは、多様性を地域にもたらすこと。海外の人に富士吉田の文化を知ってもらうだけでなく、地域住民にも異なる文化を体験してほしい。

たとえば、カフェで開発されるメニュー。初期からレギュラーとなっているホットドックやコンブチャは、欧米のカフェでは定番のもの。

ほかにもベジタリアン対応など、さまざまな食スタイルを取り入れることでどんな人でも立ち寄りやすい。

「自分たちで食材の仕入れ先も見つけているんです。周辺地域で無農薬の野菜を育てている方から仕入れたり、ご近所のおじちゃん、おばちゃんが育てたものをいただいたり。そうやってあるものを活かしてメニューに落とし込んでいきます」

「自分自身、できるだけ自然にやさしく生活したいと思っていて。オーガニックのものを使ったり、ゴミをできるだけ出さないように気をつけたり。スタッフもそういう人が多いですね」

レジ、接客、キッチン、メニュー開発など。幅広い業務を担ううえ、お客さんは海外から来る人が多い。

そのぶん成長するスピードも速い。これまで英語をほとんど話せなかったという伊藤さんも、この2年で日常会話程度まで習得できたそう。

「大きい会社ではないので、まだシステム化されていない部分もあって。臨機応変さが必要な場面も多いです。アルバイトやパートの方もいるので、業務の質を担保するためにもマニュアルとかを整えていきたい。新しく加わる人とも一緒につくっていきたいと思っています」

訪れる人、住む人、働く人。一人ひとりがこのまちのハーモニーをつくっている。

 

そんな実感を持って働いているのは入社2年目、SARUYA HOSTELスタッフの石川さん。以前は河口湖のリゾートホテルで企画・営業の仕事をしていた。

「日常的に地域の人と関わったり、アートイベントの運営で市役所の人ともやり取りしていたり。まちを動かす先端にいるんだなと日々感じます」

人口減少に悩む地元の山梨県。そんな地元に賑わいを取り戻したいと、地域に密着した事業に取り組むDOSOに入社した。

「まちにお金を落とすというか、もらうべき人のところに私たちがちゃんと支払うっていうことはすごく大切なことだなと思っていて」

「ベッドリネンや客室のカーテン、ブランケットなどは、地元の機屋さんに依頼してつくっていただいたオリジナル製品を使用しているんです。備品なども、ドラッグストアに行けばそろうけれど、あえて近くのお店で買っていて。お互いに心地いい関係性を築いていくことも心がけています」

働いているスタッフは、海外をバックパックした経験がある人がいたり、近所の牛乳屋さんも関わっていたり、いろんなバックグラウンドを持った人たち。

訪れる人は、アーティスト・イン・レジデンスに宿泊した作家さんや、海外から来たお客さんを宿へ案内をしたという近隣の方など。SARUYA HOSTELの宿泊客以外にもさまざま。

誰がスタッフでお客さんなのか区別がつかないくらい、いろんな人が混ざり合う拠点になっている。

「毎日清掃してスタンダードにリセットする。その繰り返しって美しいことだなって感じるんです」

「毎日違うお客さまをお迎えすると、同じ場所にいるけれど、新しい空気が流れるというか。それが宿の面白いところだし、スタッフみんながお客さまに心地よく過ごせる空間を提供したいという想いで働いてほしいと思っています」

そう話す石川さん。隣で聞いていた八木さんも続ける。

「この宿を起点にいろんな人たちが集まっている。だから自分たちが手を抜いちゃえば『富士吉田ってこんなもんなんだ』となってしまう。けれど、頑張れば頑張るほど良さは伝わる」

「宿もカフェもサービスだけでなく空間も。富士吉田の印象をつくるのは自分たちなんだって思いながら活動していますね」

 

今年の4月にオープンしたばかりの新館 KIKU。5年前に本館に宿泊したドイツ人の方が先日宿泊したそう。

日本といえば富士吉田。富士吉田といえばFabCafe Fujiや、SARUYA HOSTELを思い出す。人と富士とファブリックのハーモニーは続いていく予感がしました。

(2024/05/02 取材 大津恵理子)

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