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同じ商品をいいなと感じたり、好きな飲食店が似ていたり。
波長が合う人たちといると、心地いい。
木村硝子店のみなさんは、そんな感覚を大切にしている人たちです。
主にレストランやバーなどの飲食店に、自社でデザインしたグラスなどを卸しています。
極めて薄いグラスは、まるで液体をそのまま持ったような感覚。口当たりが繊細で、バーテンダーの大会では、7割の人が使うほど、プロの目利きたちからも絶大な信頼を寄せられています。
今回は、プロ向けに商品を展示しているショールームのアルバイトスタッフを募集します。
東京・湯島の店舗で週に3〜5日、午前9時から午後1時までの勤務。ガラスを拭いたり、お客さんを案内したりする仕事です。
接客が未経験でも大丈夫。アルバイトから正社員になった人もいます。
木村硝子店のグラスを見て、「なんか、いいな」と感じた人は、読んでみてください。
東京メトロの湯島駅から歩いて5分。
大通りから一本奥に入った住宅街に、木村硝子店はある。
歴史を感じる建物の1階は一般のお客さん向けの直営店。2階はプロ向けのショールームになっている。さらに建物の奥は、本社の事務所や倉庫につながっているんだそう。
木枠の入り口を抜けて、そのまま階段で2階へ。
黒を基調とした壁一面の棚には、木村硝子店が扱うグラスがずらり。
息を吹きかけるだけで割れてしまいそうなほど、繊細で薄いグラス。
引き寄せられるような不思議な魅力と、緊張感がある。
見入っていると、ショールームの奥から明るい声が。
「やあ!どうもどうも」と代表の木村武史さんが話しかけてくれる。
日本仕事百貨の取材は今回が6回目。8年前からお付き合いのある方だ。
「日本仕事百貨のオフィスビルに入っている、なんだっけ。なんとかドンキーっていうレストラン」
ブラインドドンキーですか?
「そうそう。このあいだ、社員のみんなと食べに行ってさ。僕、ああいう店、大好き」
the Blind Donkey (ブラインドドンキー)は、全国の農家さんからオーガニックな食材を取り寄せて、季節に合わせた料理を提供しているレストラン。
「ああいう店が好きな人が、うちで働いてくれたらいいなって思ってる」
レストランの趣味が採用の基準になるんですか?
「僕にとっては大事なこと。どこの大学を出たとか、何ができるかとかは関係なくて。それよりも、一緒にご飯を食べに行って楽しめるとか、うちのグラスをなんとなくいいなって思うとか。そっちのほうが大事だと思うんだよね」
過去には、好きなレストランが一緒というのが決め手になって採用した人もいたんだそう。
「波長が合うっていうのかな。もちろん完全に合うことはないけど、大体向いている方向が同じ。そういう人たちが集まっていたほうが、話が通じやすいし、一緒に仕事をしていて楽しいって僕は思うんだよね」
「その部分が共有できていたら、あとは、本人のキャラクター丸出しでいい」
キャラクター丸出し。なんだか面白い響き。
たとえば、どういうことでしょう。
「名刺のもらい方とか、お客さんとの話し方とか。そういうのは好きにしてくれていい。挨拶も、したくなければしなくていいわけ。その人のキャラクターで、自然にやってくれればいいんだよ」
「もう一つ大事なのは、目標が共有できていれば、そこに行くまでの方法は自由でいいってこと。自分の仕事をしてくれていれば、寄り道しちゃダメとか、おしゃべりしちゃダメとかは全然なくて」
「疲れたら、昼寝してくれてもいいよ」と言って豪快に笑う木村さん。
木村さんは、世間の常識や当たり前に惑わされずに、自分の中で一本筋の通った考え方を貫いているように感じる。
そんな木村さんが代表を務める会社だからか、木村硝子店で働く人たちは自然体でのびのびした雰囲気がある。
今回の募集は、ショールームのスタッフ。どんな仕事をするんでしょう。
「商品を綺麗にする仕事だね。すぐにホコリが溜まっちゃうし、お客さんがグラスを触ると指紋がつくから、しょっちゅう拭かなきゃいけない。綺麗にしておくのが大変だから、人を増やそうと思って」
これまでは、午後にアルバイトスタッフが掃除をしたり、月に2回全社員が朝早く出社して、グラスを拭いたりしていたそう。そんななか、社員の負担を減らそうと、新しくアルバイトを募集することにした。
今回募集するスタッフは、掃除のほかにも、商品を見に来たお客さんの簡単な対応も担当することになる。
「うちではね、『いかがですか?』とかって聞かなくていいし、無理に売らない。買わない人が安心して帰れる店にしたいんだよね」
「だって、欲しかったらインターネットで買うでしょう。お店で買わなくても、『なんかいい感じ』っていう感覚だけ持って帰ってもらえれば、同じ商品を見ても感じ方が変わるじゃない? その空気をつくってくれるだけでいいんだよ」
接客のためのマニュアルもないし、ルールもない。
売上のプレッシャーもないから、接客する人も、される人も、純粋に会話を楽しめるし、商品の良さを語り合うことができる。
そんな気軽さが、木村硝子店の魅力の一つなのかもしれない。
「やってくれてるうちに、なんとなく仕事を覚えられるから。それでいいんだよ。あとは自分のキャラクター丸出しでやってくれたら大丈夫」
木村さんの話を笑顔で聞いていたのは、ショールームのアルバイトを続けて10年目になる中野さん。
木村硝子店の近くのラーメン屋で働いていたところを、木村さんにスカウトされた。
「社長の言うとおり、本当に好きなようにさせてもらっていて。マイペースにできますよ」
繊細なグラスだから、拭くのにもコツが必要そう。割ってしまうことはないんでしょうか。
「あります! 本当に衝撃だったんですけど、グラスを握り潰しちゃったことがありました。それで、すごく注意しないとって学んで」
「いろんな種類のグラスがあるし、汚れてたものがピカピカになるとやっぱり気持ちいいんですよね。綺麗にしてもすぐにホコリが溜まっちゃうんですけど(笑)」
掃除をしても、数時間後にはホコリが溜まってしまう。ショールームには約1800種類のグラスがあるから、綺麗にするのにも体力が必要。
掃除以外にも、お客さん対応も大切な仕事の一つ。
ショールームを訪れるのは、レストランのオーナーやシェフなど食のプロたち。食器へのこだわりも強いから、木村硝子店のファンも多い。
「本当に目をキラキラ輝かせて、舐めるようにグラスを見ている方もいらっしゃって。お客さまの感動というか、大好きな気持ちが伝わってくるのが楽しいんです」
デパートや花屋など、さまざまな職場で接客の仕事をしてきた中野さん。木村硝子店での接客は、特別に感じるそう。
「こちらからお勧めしたりはしないんです。質問に答えることはあるけれど、みなさんそれぞれ自分の感覚がある。せっかくお店に来ていただいているので、自分で見て、触って、好きなものを選んでもらえたらいいなと思っています」
取材中も、お客さんが自由にグラスを出して、机に並べてみたり、お水や氷を入れてみたり。グラスと向き合って、じっくり選んでいる姿が印象的だった。
「お話がしたいっていうお客さまもいらっしゃるので、そういうときはお料理のこととか、いろんなお話を楽しく伺っています」
「昨日は、麻布でレストランをされている方がいらっしゃいました。器が好きで木村硝子店のグラス専用の棚をお店につくりたいって話で盛り上がって。『今度お店に遊びにきてください』って名刺を頂いたんですよ」
食にまつわるいろんな話が聞けるから、食べること、飲むことが好きな人には面白い仕事だと思う。
「こんなに素敵なものに囲まれて、お客さまも、うちの商品が好きな人しか来ない。これって、すごく恵まれているなって感じています」
中野さんは、どんな人に来てほしいですか。
「ここでの仕事って、マニュアルがないんです。だから、わからないことを人に聞けたり、自分で考えて動いたりするのが好きな人にはピッタリだと思います」
続いてお話を聞いたのは、1階の直売店でスタッフとして働く星野さん。
日本仕事百貨の記事を読んで半年前にアルバイトとして入社。今は正社員として働いている。
おすすめを聞くと、ショーケースの中から、最近買ったというお気に入りのグラスを選んで見せてくれる。
「このサイズがすごく使いやすくて。猫のイラストと、うしろには煮干しの絵が小さく描いてあって可愛いんです。お茶とか色付きの飲み物を入れると絵が浮き立つんですよ」
ほかにも、切子の技術で模様が入ったグラスや、くびれがついていて握りやすいお猪口など。
うれしそうに説明してくれる星野さんの話を聞いていると、こちらもついつい買いたくなってくる。
「ここで働くまでは、ガラスにこだわったことはなくて。でも、器が好きだったし、なにより社長の接客に関する考え方に惹かれて応募したんです」
飲食店を中心に接客業を経験積んできた星野さん。入社のきっかけになったのは、日本仕事百貨の記事に出てきた木村さんのこの言葉。
「お客さまに寄り添うもへったくれもなくて。普通の一人の人として接してくれればいい。お客さまも、スタッフも、一人ひとりにキャラクターがあって、絶対に同じ接客にはならないから。その人のキャラクターを丸出しにしてやってくれたらいい」
「接客をするなかで感じていたことを、社長が言葉にしてくれて。これだ!って思ったんです」
働いてみて、どうですか。
「やっぱり、それぞれのキャラクターに応じて、みんなが自然体で接客しているのがいいなって思います」
お酒の話でお客さんと盛り上がるスタッフや、静かに見守るスタッフなど。
それぞれが、個性を活かして接客をしている。
「私はお客さんとたくさん話しながら商品を一緒に選ぶのが好きです。プレゼントを選んでいるなら、渡す相手がどんな人なのかとか、どういうふうに使って欲しいのかとか。いろいろとお話を聞きながら、一緒に考えることが多い」
「このあいだは、韓国から女性のお客さまが来て。一緒にグラスを選んでいたら、別の若い男性のお客さまがプレゼントを探していて。気づいたら3人で彼のプレゼントについてゲラゲラ笑いながら一緒に考えてました。そういう接客って、自分だからできたのかなって」
キャラクター丸出しで、一人の人として、普通に、自然にお客さんと接する。それが木村硝子店ならではの接客のあり方。
「あと、飲食店の取引先が多いから、おいしいお土産をいただけたりして、それもうれしいです(笑)」
しばしば代表の木村さんが、おやつを買ってきてくれたり、ご飯に連れて行ってくれたりすることもあるんだとか。
「ここで働く人たちもいい人ばかりで。程よい距離感がちょうどいいし、食べたり飲んだりするのが好きな人ばかりなので、一緒にご飯に行っても楽しい。そういうのが、私にとってはすごくいいなって感じています」
せっかく働くなら、気の合う人たちと、いいなと思えるものに囲まれて。
木村硝子店の商品や人、雰囲気に惹かれるものがあったら、まずは木村さんに会いにいってみてください。
(2024/6/4 取材 高井瞳 )