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飲み口が薄いビールグラスに、脚の細いワイングラス、繊細な切子が施されたグラス。
暮らしのなかで使うのは、ちょっと緊張するけれど、やっぱり感じる特別感。
スーパーで買った缶ビールでも、安いワインでも、オレンジジュースでも、ただの水でも。グラスに注ぐだけで、なんてかっこよく見えるんだろう。
プロダクトとしての存在感と、凛とした立ち姿にうっとりする。
木村硝子店は、ガラス製品を中心としたテーブルウェアを販売している会社です。
主に料亭やレストラン、バーなどの飲食店に卸していて、プロの目利きたちから絶大な信頼を寄せられています。一般の方でも、セレクトショップやオンラインショップ、直営店などで購入が可能。プレゼントとしても人気です。
今回募集するのは、東京・湯島にある直営店で働く販売スタッフ。
出勤するのは、お店が営業している木金土の週3日。曜日は固定ですが、アルバイトなので、別の仕事をしながらでも大丈夫。アルバイトから正社員になった人もいます。
食べることや飲むこと、ガラスや食器が好きで、生活を楽しむことが好きな人にぜひおすすめしたい仕事です。
東京メトロの湯島駅から数分歩くと、木村硝子店に着く。
閑静な住宅街に佇む、上品な店構え。中を覗くときれいなグラスがずらり。1階はオフィスと一般向けの直営の店舗、2階が倉庫とショールームになっている。
お話を聞くのは、木村硝子店の代表、木村武史さん。
日本仕事百貨では、もう何度もご紹介している木村さん。2年ぶりの取材ですが、お変わりありませんでしたか?
「前と全然変わらないな。俺が歳食ってるだけ(笑)。コロナのときも、最初は売り上げがちょっと下がったけど、そのあとは上がっていって。会社全体としてはほとんど変わらなかったね」
上がっていったとは。どんな方が購入されているんでしょうか。
「うちのガラスを選んでくれる人って、ワインだったら有名ブランドより生産者の情熱を感じるものをセレクトする。料理も美味しくて、お店の空気も良くて、インテリアもセンスがいい。そういうレストラン経営者たちが多いみたいでね。そんなお店って、コロナのときでもかえって客が入ったりしているわけ」
「つまり普段予約しても入れないから、こういうときならって、予約が殺到するんだよね。それで、うちに注文がくる」
なるほど、そういうことなんですね。
「直営店は木金土に開けてるんだけど、最近土曜日がすごく混むようになっちゃって。今回募集する人は、今直営店にいる2人のスタッフに加わってもらおうと思ってる」
直営店では、どんなことを大切にしているんでしょうか。
「お客さまに売らないこと。見に来てくれただけの人を大事にしてほしいってよく言ってるね。お店に来て、ふわっとした『いい感じ』を持ち帰ると、ネットで同じ商品を見ても感じ方が変わるじゃない?『なんかわかんないけどいい感じ』。その空気をつくってくれるだけでいいんだよ」
なんかわかんないけどいい感じ。
スタッフマニュアルもなければ、商品を覚えなきゃいけないわけでもない。
働いていれば、商品のことはおのずとわかってくるし、木村さんは「とりあえず出勤して、起きててくれたらいいよ」と笑う。
「マニュアルがないから、どんな挨拶をしてるか知らない。でも、どんな挨拶でもいいんだよね。一人ひとり、普通の挨拶をして、お客さんが『ここいいな』って思ってくれたら、それでいいんだよ」
木村さんいわく「今いる2人がつくる空気が、明らかにショップの売り上げにつながっている。売り上げをいうと、みんなびっくりするよ」とのこと。
今いる正社員スタッフの2人、砂岡(いさおか)さんと五十畑(いかはた)さんにも話を聞いてみた。
砂岡さんは、デザインを学んでいた大学時代にたまたま開いた本で、木村硝子店のグラスを見かけたそう。
「薄いグラスが載っていたんですけど、シンプルなデザインで惹かれるなと思って。まずは実物が見てみたいと、気軽な気持ちで問い合わせをしてみました」
卒業制作でガラス関係の作品をつくりたいと思っていた砂岡さん。一切面識がなかったにも関わらず、ベテラン社員さんがショールームを案内してくれることに。
「よくわからない人間からの連絡なのに、手厚く対応してくれました(笑)。そのとき社長にも会って、そこから1年間たまに連絡をもらったりして。直営店のオープンに合わせて働くことになったんです」
働きはじめてもう7年。入ってみて、どうでしたか?
「入社前に社長にも会っていたので、ギャップみたいなものはありませんでしたね。学生時代に販売のアルバイトをしていたので、そのときの感じと変わらず、楽しく働いています」
販売の仕事は、具体的にどんなことをやっているんだろう。
「お客さまが来たら対応をして、購入することになったら、上の倉庫から販売用の商品を運んできます。場合によっては、全商品が揃っているショールームをご案内することもあります」
ガラスの製造方法や、商品ができた経緯など、スタッフから積極的に説明するわけではないけれど、聞かれたことには真摯に答える。
そんな砂岡さんの姿には、ちょうどいい距離感と、ガラスに対しての確かな愛情が感じられる。
「食事に行っても、グラスが出てきたら『どこのグラスだろう』って見ちゃいますね。知っている商品なら『ここのだな』って分かるし、知らない商品だったら『どこのだろう?』って気になって調べたり」
「木村のグラスを見つけると、『使ってくれているんだな』ってうれしくなって、一緒に行った友だちに自慢してます(笑)」
お店に立つ上で、意識していることはありますか?
「うーん、社長に『笑え』とかもいわれたことないし、グイグイ話しかけるわけでもないし…。社長の教え通り、できる範囲で、気付いたことを自然体でやってますかね」
「最近海外のお客さまも増えてきたんですけど、私も五十畑さんも英語ができなくて。翻訳機能を使いながら、なんとか対応しています。あとはもう、ニコニコする(笑)」
あくまでも、今いる砂岡さんと、五十畑さんが自然にできることを、背伸びしないでやっていく。
きっと、それがこのお店の「いい空気」をつくるんだろうな。
日々一緒に働いているのが、生活雑貨の販売やパン屋さんでの製造を経験し、木村硝子店に入った五十畑さん。
スタイリストとして木村硝子店の商品を扱っていた叔母に誘われて、東京ドームのテーブルウェア・フェスティバルでアルバイトをしたのがきっかけ。入社して9年になった。
「立ち仕事には慣れていたので、入ってからの違和感はありませんでした。待機中は座っていて、お客さまが来たら立って挨拶をして、っていう感じなんですけど、意外と待つことも多い仕事ですね」
ちなみに五十畑さんは、3年ほど前に社内結婚をしたそう。おめでとうございます!
「穏やかな2人みたいで、ケンカがないんだって」と、すかさず口をはさむ木村さん。
「ありがとうございます。社長はなんで知ってるんですか(笑)」
社内では定期的に食事会が開かれていて、部署が違うスタッフや、ガラス職人さんなどとも交流があるそう。
「私は食べるのが好きなので、毎回参加しています。でも、行きたくない人は行かなくて大丈夫。スタッフ同士の仲は、ほどよくいいと思います」
接客をしていて、印象的だったお客さまはいましたか?
「この間、まだ二十歳前の男性が、彼女のためにグラスを買いに来てくれました。自分は未成年だからまだ飲めなくて、一足先に飲めるようになった彼女にグラスをって」
お酒のことはわからないからと、五十畑さんに相談しながら、脚付きのワイングラスを選んだ男性。
「彼女に1個買う予定が、『自分用にもおそろいで買ってジュースを飲んだら、一緒に楽しめますね』って勧めたら2個買ってくれましたね」
一緒に選んでもらって、うれしかっただろうな。
販売スタッフには、どんな人が向いているんだろう。
「荷物を運んでの階段の上り下りがあったりするので、体力は多少あった方がいいですかね。よく話すタイプでも、静かなタイプでもいいと思います。英語も話せたらありがたいけど、喋れる人に来てほしいというわけでもなくて」
リピーターも多い木村硝子店。お客さまとの距離感についても聞いてみる。
「なかには顔見知りになる方もいますが、基本的には気付いているとも、気付いていないとも、っていう距離感ですかね。最後に『いつもありがとうございます』って言ったりしてます」
自分は出しすぎないほうがいいのかな。
「それがナチュラルな人だったら受け入れますよ。コミュニケーション力がどうというよりは、迷っていたり、どれにしようか決まってそうなお客さまがいたら、一声掛けられるか。気遣いができるどうかが大切だと思います」
「あとは、生活を楽しんでいる人がいいですかね。別にお酒が飲めなくてもよくて。同じ用途なのにコップを何個か持っている人とか、ガラス製品を家で使っているような人だと、働いていてつらくないというか。お客さまの買い物に付き合っていて、楽しいかもしれません」
最後に、印象的だった木村さんの言葉を紹介します。
「お客さまに寄り添うもへったくれもなくて。普通の一人の人として接してくれればいいんだよね。お客さまも、スタッフも、一人ひとりにキャラクターがあって、絶対に同じ接客にはならないから。そのキャラクターを丸出しにしてやってくれたらいいんだよ」
キャラクター丸出しで、普通に、自然に、接客をする。
木村さんは当たり前のように話すけれど、このお店ならではの接客のありかたに感じる。
飲み物とグラス、料理とお皿の組み合わせを考えたり、季節やシチュエーションに合わせて食事やお酒を楽しむのが好き。
ピンと来た方は、ぜひ木村硝子店のみなさんに会いにいってみてください。
(2023/7/25 取材 今井夕華)