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もっと知りたいから
聞きまくれる
ものづくり新聞の記者

「田辺くん、記事のなかで喋りすぎだよ」

日本仕事百貨の編集者として、記事の校正をしてもらうときに、よく言われる言葉です。

頭ではわかっていても、伝えたいことがどうしても溢れてしまって、限られた文字数に収まりきらない。

どんな言葉を選べば、あのときの出来事や感情を上手に伝えられるんだろう。さまざまな場所に行き、いろいろな人と出会い、日々実感することです。

そんなふうに溢れ出る熱量を、惜しみなくぶつけて働ける。そんな仕事を紹介します。

株式会社パブリカは2017年に設立した会社。

事業は大きく2つ。製造業向けのコンサルティング事業と、「ものづくり新聞」というウェブメディア事業です。

今回募集するのは、ものづくり新聞の記者。日本各地のものづくりの現場を訪ね、取材と撮影を行い、記事をつくります。

ライターやカメラマン、コンサルタントなど、さまざまな領域に関わっていくことになります。どれかひとつでも、経験があれば大歓迎です。

 

東京・清澄白河。

日本仕事百貨のオフィスから、徒歩1分。老舗の町中華「桃太楼」の横道を進むと、パブリカの事務所があるシェアオフィスNAGAYAに到着。

スタッフの方に案内されたオフィススペースは、4人分の座席が並んでいてコンパクト。机を囲う本棚には、日本各地の伝統工芸を紹介する冊子や、記者用のハンドブックが並んでいる。

現在パブリカの社員数は11名。うち正社員が5名、業務委託が6名という構成。

まずは、代表の伊藤さんに話を聞く。

「パブリカの設立前は、製造業向けのITシステムを導入するコンサルタントの仕事を中心にしてきまして」

「きっかけがあって、知り合いの方たちと一緒に会社を立ち上げたんです。いろいろな事業に挑戦しましたが、結局、製造業に特化したコンサルティング事業を今も続けています」

得意とすることのひとつが、ITコンサルティング。情報管理の改善、工程管理システムの導入などを支援している。

知り合いから数珠つなぎでお客さんを紹介してもらううちに、製造業大手からも受注できるように。

続けていくうちに、さまざまな知見が溜まっていった。それをほかのクライアントに共有できればいいけれど、秘密保持契約の関係で教えることができない。

「日本の製造業をよりよくするためには、情報やノウハウを共有することが必要不可欠。なのに言えないことがどうしても歯がゆくて」

「いっそウェブメディアと言い切れば、ものづくりに携わる人たちに共有できる。そこで、ものづくり新聞を始めてみようと考えたんです」

2021年にものづくり新聞がスタート。コンサルティングで関わる発注側の企業ではなく、下請けである中小企業を取材し、その会社の強みや特徴を、客観的な視点で切り取って紹介してきた。これまでの掲載数は100件を超える。

両者に関わるうちに気づいたことがあった。

それは、発注側と下請け側の間で、どんなものが、どの現場で、どのようにつくられているのかが共有されていないということ。

「間に立って、つなぐ人が少ないんです。これって結構大きな問題だと思っていて」

「今、とくに欧米では、サプライチェーンが一体となってものづくりをする考え方が主流なんです」

たとえば環境目標。欧米では、環境配慮やサステナビリティを達成するため、業界で守るべき基準など、枠組みを定め、必要な情報は企業の規模に関わらず共有している。それにより、受発注両者が自然とつながっている。

「日本では、互いのことを知らないし、受発注の関係性が強く、上下関係が生まれやすい。ものづくり全体を盛り上げていきたい気持ちはみんな共通しているのに、肩を並べるような関係性を築きにくいんです」

「私たちは、大企業と中小企業、両方とかかわるポジションにいる。だから、そこをフラットにつなぐお手伝いをしていきたい。日本の製造業が一丸となって、ひとつの課題を解決する方向に進んでいくときに、ぼくらが旗振り役になりたいんです」

今年の2月には、各工場で生産管理システムをつくっている管理者を集め、座談会を主催。それぞれの会社のサービスや得意分野について意見交換をする場を設けた。

「オンラインで100名ほど集まっていただけて。やっぱり、お互いのことをほとんど知らないんです。活発に意見が交わされている様子を見て、自分たちの存在意義を感じました」

コンサルティング、ものづくり新聞。両輪で知見を蓄えながら、人や情報をつなぐ機会をつくり出し、化学反応を起こしていく。その仕掛けづくりに奔走しているところだ。

「誰かとつながることで、自分の仕事を知ってもらえたり、評価されたりすることがありますよね。結局、それが働く一番のモチベーションになるんです」

「僕らがものづくりについて発信したり、人と人をつなげたりすることで、たくさんの人に思いがけない気づきや変化を与えられる。ものづくりを通してワクワクする人を増やせたらいいな、と思っています」

現在、ものづくり新聞への掲載は無償で受注している。あくまで収益の柱はコンサルティング事業。主に伊藤さんやほかのスタッフが担っている。

これから入る人は、最初は記者としてスタートして、少しずつコンサルティングにかかわっていくことになる予定だ。

はじめは、ほかの記者の取材へ同行して、記事にするまでを一通り学ぶことになる。

慣れてくれば、取材先は自分で決めることもできるため、日々のインプットが欠かせない。SNSで調べたり、書籍を読んだり。いろんなチャネルから情報収集をする。

気になる会社があれば、どんな切り口で記事を書けばおもしろくなるのかを考え、企画書をつくる。社内で打ち合わせを重ね、企画を磨いてアポ取りをする。

取材許可が下りれば、取材先へ事前のヒアリング。その後、やっと取材にのぞむことができる。取材先では、相手の話に耳を傾けながら、写真も撮影する。

いくつかの会社を同時進行で進めるため、次々と取材に行き、文字に起こして執筆して、また取材、という流れが続いていく。

企画してからサイトに公開するまで、約2〜3ヶ月の行程を、ほとんど一人でこなす。

なんだか、聞いているだけで大変そうです。

「最初はしっかりとサポートをしつつ進めるので、安心してください」

「インタビューは先輩スタッフの取材に同行してやり方を覚えたり、カメラも講座を受けたり。怖がらずやってみる心持ちのある人だとうれしいかな」

コンサルティング案件は、担当スタッフのサポート業務からはじめることになる。プロジェクトのスケジュール管理や、会議の設定、議事録の作成など、事務的なことが多い。

「記者でもコンサルタントでも、一通りのプロセスを体験していただいたうえで、得意不得意に応じて一緒に働き方を決めていきたいと思っています」

 

「私も入社するまでは、ものづくりの知識は全くありませんでした」と話すのは、記者の佐藤さん。

入社のきっかけは大学時代、スウェーデンへ留学した際に話した友人との会話だった。

「『日本って、金継ぎの国でしょ?』って言われて。何のことだかわからなくて、とても恥ずかしかったんです。そこから日本のものづくりとか伝統工芸をもっと知りたいと思うようになりました」

SNSでものづくりについて調べていたときに、ものづくり新聞を見つけた。

「人になにかを伝えることはとても好きだったし、ものづくりの勉強ができる! と思って。直接、伊藤さんにメールを送りました」

縁あって、去年の8月に入社。

「いろんな人に会ったり、いろんな場所に行けたり。新しいことに触れるのが好きなんです」と佐藤さん。写真を見返しながら、直近の取材について教えてくれた。

「三和電子さんっていう、ボタンなどをつくる会社に取材に行って」

「ボタンと言っても、主にゲーム機器に使われるボタンで。実は、ゲーマー界隈では知らない人がいないくらい、有名な会社なんです。熱狂的なファンもいて、ボタンを付け替えて自分専用のコントローラーをカスタマイズする方もいるほどなんです」

写真を見返しながら、取材のあれこれを思い出す。新しいことを知る喜び。自分が取材をしていてもよくわかるので、大きく頷いてしまう。

「取材では、とにかく聞きまくれる力が大事です」

聞きまくれる。

「限られた時間で、目の前の相手のことを知り尽くそうとか、仲良くなりたい! って気持ちを持つと、たくさん質問したくなるんです」

「入社経緯や業務内容など、決まった質問だけでなく、休日は何してるんですか、とか。ちょっとした雑談から、人となりが見えてくることがあって」

たしかにものづくり新聞の記事では、仕事についてだけでなく、その人の生い立ちや価値観など、表面的な質問では聞き出せないことまで、丁寧に書かれている。

「自分の親友に書いてもらった気持ちになりました、って言われたことがあって。すごくうれしかったです」

取材先に合わせて、服装も変えている。三和電子の取材では、取材先の鯖江でつくったメガネをかけたそう。

とても楽しそうに振り返る佐藤さん、けれど最初のうちは聞くことの難しさを感じていた。

「話のなかには、業界や会社特有の言い回しがあったり、周辺の地域の名前がぽんぽんと出てきたり。知らない言葉が出ると、理解が追いつかないときがあって」

「そんなときは『勉強不足なので教えていただきたいです』と正直に伝えるようにしています。取材後、記事を書くうえで補足として聞きたいことがあれば、お電話やメールで教えていただくこともあります」

わからないことを素直に受け入れながら、広く、深く知っていく姿勢が大切なんだな。

佐藤さんは、実際にものづくり体験へ足を運ぶこともあるという。

「彫金とか鋳物、金継ぎとか。職人さんがされる仕事のほんの一部ですが、自分の手で体感しようと心がけています」

現場で働いている人の目線に少しでも近づくことで、よりリスペクトを持って取材ができるようになった。

「伝統工芸品が、高価な理由がわかったんです」と見せてくれたのが、江戸切子。江東区の工場で体験した。

「真っ直ぐにガラスを削ることの果てしない難しさを知って。それから、いくつもの線で描かれた江戸切子を見て、そりゃこの値段になるわ…って納得したんです」

入社したばかりのころは、記者の仕事に専念していた佐藤さん。去年の10月ごろから、コンサルティング事業にも少しずつ関わるようになった。

コンサルティングの大まかな流れは、強みや課題をヒアリングするところからはじまる。相手の話に耳をしっかりと傾けて、整理したり、話を遡ったり。

取材を通して鍛えられる頭の使い方は、きっとコンサルティングにも役立つと思う。

 

パブリカが次に企画しているのが、場づくり。

そのひとつとして、訪日外国人向けに伝統工芸のものづくり体験と、工場見学のツアーをパッケージ化している真っ最中。

人や情報をつなぐ機会をつくり出し、いい未来をつくっていく。

ワクワクした気持ちを出発点に。

記者やコンサルティングに縛られず、自分自身の働き方も広げていける場所だと感じました。

(2024/04/26 取材 田辺宏太)

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