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「パウダースノーが降ったら、出社前にスノボで一滑りするとか、仕事終わりに庭で焚き火とか。田舎暮らしを楽しみながら、しっかりビジネスをする。そのバランスが、自分にはすごくしっくりきています」
そう話してくれたのは、株式会社アースボートの代表、吉原ゴウさん。
アースボートは、2022年に設立された長野県信濃町を拠点とするスタートアップ企業です。
Earthboat と呼ばれるサウナ付きトレーラーハウスを開発・製造。「使われていない土地を活用したい」と考えている宿の運営会社などと一緒に、全国でEarthboatを使った宿づくりをしています。
今回は、初期メンバーとして一緒に事業を広げていく仲間を募ります。
職種は2つ。一つ目のディレクターは、宿を開業するための関係各所とのやりとりや、プロジェクト全体のマネジメントを担当する仕事。開業拠点の空間づくりにも携われます。
建築に関する経験は問いません。今いるスタッフも、ゼロから学んで活躍しています。
二つ目は、プロダクトマネージャー。Earthboat の製造管理や、開業拠点のランドスケープデザインを中心に、新商品の企画などを担います。
こちらは、施工管理や建築設計の経験者など、建築の知識がある人が対象です。
建築士や施工者、Web担当など外部のパートナーを含め20人以上でプロジェクトを動かしていきます。
社員は8人とまだまだ少人数の体制。だからこそ、初期のコアメンバーとして広く事業に参画することができるタイミングです。
長野での暮らしを満喫しながら、スタートアップメンバーとして大きなビジネスに挑戦する。そんなライフスタイルを実現できる仕事だと思います。
車窓から見えるのは、ひたすら続く山と空。
長野駅からローカル線に揺られること30分、信濃町にある古間駅に到着する。
無人駅を出ると、雨上がりのむわっとした空気と一緒に、草の香りが鼻を抜ける。
地図を見ながらしばらく歩くと、この辺りでは珍しい4階建てのビル。外側には、まったく違う建設会社の名前が書かれている。
戸惑いつつも、ビルの中へ。
「びっくりしました?看板もないからうちのオフィスだって分からないですよね。使われなくなった建設会社のビルを間借りして、そのまま使っているんです」
笑顔で迎えてくれたのは、代表の吉原さん。社員からはゴウさんと呼ばれて親しまれている。
自然が似合う人だなあ。
「このまちで両親がアウトドアスクールを経営していたんです。自分も小さいころから、カヌーやスキー、キノコ狩りとかをして遊んでいて。自然の中での生活が当たり前でした」
10代の頃は家業を手伝って、アウトドアのインストラクターをしていた吉原さん。田舎暮らしの反動から上京、25歳でウェブメディアなどを運営するLIGを創業した。
40歳のときに、地元の信濃町にUターン。ゲストハウス「LAMP野尻湖」を立ち上げる。薪を使ったフィンランド式のThe Saunaが人気となり、サウナブームの火付け役に。長崎県の壱岐島や、大分県にも出店した。
「たくさんのお客さんが来てくれるようになったけど、ゲストハウスはスタッフの確保や教育、設備投資のコストが大きくて。全国展開していくのが難しいなと感じていました」
「僕は田舎に引っ越したけれど、せっかくなら全国規模のビジネスをしたいと思っていて。そこで考えたのがEarthboatなんです」
Earthboat は、『自然に飛び出すきっかけをつくる』というコンセプトのサウナ付きトレーラーハウス。
8×3メートルのコンパクトな室内に、シャワールームやサウナ、キッチン、ベッドなど宿としての機能が詰め込まれている。
山小屋のような雰囲気がありつつも、洗練されたデザイン。大人の隠れ家みたいでかっこいい。
「キャンプの考えをベースにしていて。Earthboat も、キャンプのように外での時間を重視して開発しました」
外で過ごすための宿、ですか。
「たとえば、サウナ。普通に楽しんでもいいけど、僕が推奨しているのは『着衣サウナ』です。冬の寒い日に外で焚き火をして、寒くなったら服を着たままぬるめのサウナに入る。温まったら、また外に出て夜空を見ながら焚き火を囲ってビールを飲んだり、語らったり」
「着衣サウナって、馴染みがない人が多いけど最高ですよ」
自然やサウナで遊び尽くしている吉原さんだからこそ、できる提案。
着衣サウナ、面白いなあ。
雨が降れば室内に避難できるし、寝るときは空調の効いた部屋の中、ふかふかのベッドで寝ることができる。
「アウトドアはハードルが高い、と感じている人は多い。そういう人たちでも、気軽に泊まれて、楽しめる。自然にアクセスするきっかけとして、Earthboatを広げていきたいんです」
BtoB向けのトレーラーハウスの製造販売だけでなく、宿として運営するための環境整備や、予約システムなどをセットで提供。
フランチャイズのようなモデルで、全国の事業者と一緒に拠点をつくっている。
「全国に広げるには、直営だと難しい。人手もいるし、その土地に長年コミットする必要がある。だったら、『地元盛り上げたい』って思っている全国の事業者さんとコラボするのがいいんじゃないかって」
国内には、魅力はあってもうまく活用できずに放置されている土地がたくさんある。そういった土地に導入すれば、宿として人を呼ぶことができる。
多くの事業者に導入してもらうために意識したのは、きちんと利益を上げられる持続可能なモデルであること。
「チェックインやチェックアウトはすべて無人。基本はセルフサービスだから、運営に必要なのは清掃のスタッフだけなんです」
「それに、トレーラーハウスは普通の宿より建築費が安いし、元々活用されていない土地なら、コストも低く抑えられる」
設立から2年で、信濃町や、北軽井沢など6箇所でEarthboatを設置。今年は、数億円規模の資金調達にも成功したんだそう。
ゴウさんは、どんな人と働きたいですか。
「一番は、田舎が好きとか、アウトドアに興味がある人。あとは、Earthboatをかっこいいって思ってくれる人かな」
「仕事のスキルはいくらでも教えられるし、後からついてくる。でも、何をいいと思うかは教えて変わるものじゃない。だからこそ、感性が合う人がいいなと思います」
「田舎で暮らしながら、思いっきり働けるっていうギャップがいいんです。会社が東京にあったら、私は働いてないかも」
そう話すのは、ディレクターの小野さん。
仙台市の大手フリーマーケットサイト運営会社で働いていた小野さん。キャリアを考えて移住を見送っていたけれど、田舎暮らしを諦められず信濃町に移住。
移住後、たまたま紹介されたのがアースボートだった。
「田舎でバリバリ働ける環境って無いなって痛感していた時期だったので、すぐに入社しました。そしたら、初めに任されたのが2億円のプロジェクトで」
2億円!
「信濃町の黒姫っていうエリアなんですけど、ゴウさんから『この土地に村をつくるぞ』って言われて(笑)」
山に囲まれた広々とした敷地に、Earthboat10台を設置することに。
設計や製造などは外部に委託しているから、社員が担当するのは、プロジェクトの進行管理や方向性を考える業務。
「まずは、どんな空間にしたいのかを考えて。街灯とか案内の看板、植栽についてどんなものをどこに置くかを協力会社の人に相談しながら決めていきました」
エリア全体のプロデュースも、アースボートの仕事。実際に現場に足を運び、お客さんにどんな体験をしてほしいのかを考えながら、全体をデザインしていく。
「あとは、ちゃんと利用できるように、インフラ工事のマネジメントもします。水道や電気が通っているかを確認して、必要なら井戸を掘ってもらうとか。ほかにも予算やスケジュール管理、宿を運営するオペレーターさんとの情報共有などいろんな業務があって」
ディレクターは、たくさんの外部の事業者さんと密に連絡をとりながら、プロジェクトを管理していくことになる。
建築の専門知識が必要になりそうだけど、未経験でも大丈夫なんでしょうか。
「私も最初はまったく知識がなくて。現場の人の話が全然理解できませんでした。でも、勉強しているうちに覚えられる。大事なのは『なんとかする力』だなって思います」
「実際、職人出身でパソコンも使えなかったスタッフもいるんですよ」
建築や空間づくりに興味があるけど、専門知識や経験がない。そんな人にとっては、挑戦できるいい環境だと思う。
「オープンしたときはめちゃくちゃ嬉しかったです。たくさん人が来てくれるような場所をつくれて、泊まった人からも喜んでもらえて。社会人になって、一番やってよかったなって思いました」
自分で裁量を持って、空間のコンセプトを決められたり、デザインできたり。大きなプロジェクトに挑戦できるのはスタートアップならでは。
でも、ここで働く人は、ビジネスだけじゃなくて信濃町での暮らしに魅力を感じている人が合うんだろうな。
COOとして働く春日井さんは、仕事と暮らしの両方に惹かれて3ヶ月ほど前に東京から移住してきた。
「東京では、部屋も小さいし、一生懸命歩いてようやく小さな公園にたどり着くみたいな生活。でも今は、一軒家ですごく広い庭がある。こういう自然に近い生活って、やっぱりいいなって思います」
ここでの暮らしを満喫している春日井さん。近々、自分で信濃町に家を建てる予定なんだそう。
プロダクトマネージャーはどんな仕事をするんでしょう。
「仕事は大きく3つあって。製造管理と、実際に設置する拠点の環境づくり。あとは、新しいEarthboatの企画です」
組み立ては、製造拠点がある千葉県の工務店が担当しているけれど、材料の調達や、製造フローなどを管理するのはプロダクトマネージャーの仕事。
「普通の建築だと1回つくって終わり。でも、Earthboatは何個も製造するものだから、つくりながら何度も改良を続けていて。今はVer1.4.9です」
そんなに変わってるんですか。ソフトウェアの開発みたい。
「一度納品して終わりじゃなくて、施工側とかお客さんからいろんなフィードバックが来るんです。それをもとに、よりよいものにするために改善を重ねていく。製品を磨き上げる面白さもあります」
階段の段数を増やしたり、換気扇の位置を付け替えたり。製造効率を上げるために材料の切り出し方を変えることも。大きなものから小さなものまで、改良を重ねている。
製造管理に加えて、重要な仕事がエリア全体のデザイン。
「今は、その部分に手がまわってなくて。職種に関わらず、みんなで担当しています。新しく入る人には、経験を活かして、ランドスケープデザインにも関わってもらいたいと思っています」
「設計や施工の仕事の多くは、クライアントが希望するものをつくるのが一般的だと思うんです。でも、ここでは自分がおおもとの事業者として、どんな空間やサービスを届けたいかから考えられるのが、面白いんじゃないかな」
取材の最後、春日井さんに会社の好きなところを聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「みんなが楽しそうなところですかね。趣味のアウトドアが、仕事のインスピレーションにつながったり、仕事でいろんな地域にいくこと自体が旅になったり」
「好きなことがベースにあって、仕事につながっている感覚が、いいなって思います」
仕事も暮らしも。切り離さずに、つながっていて、しっくりきている。
ここで働く人たちの、そんな様子が素敵でした。
大きなビジネスに挑戦しながら、田舎で暮らす。
そんな選択肢が、ここにはあります。
(2024/7/1 取材 高井瞳 )