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一つ、きっちり続ける
二つ、変化を楽しむ
老舗材木店の日常

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

佐久間木材の朝は早い。

7時半までにはみんな集まり、ミーティングと掃除。毎日続けているから、たくさんの木材が積まれた倉庫にもおがくずひとつ落ちていない。

重い木材を運んだり、お客さんと話したり、事務仕事をしたり。身体も頭も両方使いながら仕事をして、あまり残業はせずに帰路につく。

当たり前のことを丁寧に続けて、120年が経ちました。

明治38年から浅草で続く、佐久間木材株式会社。角材や合板のほか、さまざまな木質材料を仕入れ、販売してきました。

木材の梱包・配達や営業まわり、オンラインショップの対応など、社員全員で横断的に取り組んでいます。その一員となるメンバーを募集します。

先輩たちが一つずつ仕事を教えてくれるので、経験はまったく問いません。

腰を据えて、健やかに働いていきたい人や、なにより木が好きな人へ。老舗でありながら、軽やかに変化し続ける、佐久間木材のあり方を知ってください。

 

台東区・元浅草。

ものづくりの工房や問屋が並ぶ、下町らしいエリアだ。

蔵前駅から大きな通りを歩くこと、10分ほど。佐久間木材の事務所は、中学校がある角を曲がったところにある。

現在外壁工事中で、足場が設置されている。

これから配達に向かうようで、フォークリフトが倉庫と車を行き交う。電気自動車みたいに音が静かで驚いていると、「電動バッテリーを使っているんですよ」と教えてくれた。

2階の会議室で、まずは代表の佐久間さんに話を聞く。

以前、私たちがオフィスで使う木材を購入したときも、自ら持ってきてくれた。そんな温かさのある方。

佐久間さんは、4代目代表として20年以上会社を守ってきた。

「ここ最近の事業は3本柱で安定しています」

一つ目が、いわゆる材木屋さんの仕事である、建築現場で使う建材の卸売り。二つ目は、海外からも注文があるというオンラインショップの事業。こちらは木質材料専門と合板専門、木の雑貨専門と、サイトを3つ持っている。

そして、利益の半分を占めるという、抜型(ぬきがた)用合板の卸売り。

合板に溝を掘り、金属製の刃を埋め込むことで、プレスして紙などを切り抜く型になる。

金型のイメージが強いけれど、土台を木材にすることで、比較的安価で使い勝手のいいものができあがるという。

「これまで自分たちは卸業だけでしたが、今後は加工もやっていこうと思って。新しくカッティングの機械も入れました」

「僕らのライバルはホームセンターでもあるんですけど、そこに置いてあることも多いんです。建築現場は人手不足で、加工まで求められることが増えているし。お客さんの要望に応えていきたいと思っています」

時代の流れに合わせて、会社をより良く変えていきたいと話す佐久間さん。

社内には何十年も働くベテランスタッフも多いそう。

老舗でありながら、佐久間さんの考え方は軽やか。こういう姿勢が根づいているからこそ、働く人も心地いいし、会社も長く続いてきたんだと思う。

さらに近年は、組織体制にも大きな変化があった。

仕事内容も商材も異なり、交流があまりなかった、建材・オンライン・抜型用合板の3事業部。

ベテランの方の退職を機に、手薄になった建材事業部にほかの部からサポートが入ったことがきっかけで、横断的に仕事を担うようになった。

「やっと入り混じってきたって感じ。きっとみんな、勝手が違って大変なんじゃないかな。ただ、ずっと同じ仕事をするのは、僕はつまんないと思うし、変わっていったほうがいいと思っています」

エリアで分けていた営業担当も2年前にシャッフルし、それぞれが新たな担当を持つように。

お互いにお客さんの顔が分かるようになり、「このお客さんのことはあの人に聞かないと」ということがなくなった。

「属人化せずに、システムで回していくような経営に変えていっています。僕は4代目として会社を預かっている感覚。時代が変わってもきちっと利益が出る会社にして、次の世代にバトンタッチしていきたいですね」

「卸売業っていう業種は、あんまり面白くないんですよ」

面白くない?

「だって、仕入れて売るだけなんだから。それをいかに社員にやりがいを持ってもらって、楽しく仕事してもらうか。考えるのが僕の役目なんですけど、なかなか難しいです」

20年前、オンラインショップをはじめた理由のひとつも、そんな気持ちから。

エンドユーザーに直接販売することで、完成した作品の写真をわざわざ送ってくれたりと、生の声を聞く機会が増えた。ホームページには、そんな作品が並ぶページもある。

「『お客さんからこんな感想もらったんですよ』と、社員が喜んでいるのを聞くと、ものすごくうれしい。これから自分たちの手で加工もやるようになると、より一層商品に愛着も増すだろうし、仕事を面白いと思える機会も増えていくんじゃないかと思います」

「ただ、前提にあるのはやっぱり、きちっとやることだと思っていて。整理整頓や掃除はすごく大事だし、当たり前の仕事を当たり前にやるのも、もちろん大事。そのうえで、もうひと手間、愛情を持って仕事ができるかが大事だと思います」

「偉そうには言えないけれど、そういう人に僕もなりたいし、そんな仲間を増やしていきたい」と、真っ直ぐに佐久間さんは話していた。

 

次に話を聞いたのは、入社18年目の中堅スタッフの方。

顔とお名前は伏せたいとのことなので、作業服の胸元についていたエンブレムを撮らせてもらう。気さくに、いろいろなお話をしてくれる。

「これ、社長がつくったんです。お客さんからたまに『いいですね』って言われるので、それを伝えると、社長もうれしそうですよ」

「小さい会社なので、倉庫作業もあればフォークリフトにも乗ります。配送も営業もするし、2トン車も軽も運転する。なんでもやらなきゃいけません」

毎日7時半には出社。その日の納品予定などを確認するミーティングからはじまる。

分担して掃除をしたあと、当番の人を中心にみんなで配送する荷物を準備する。荷物は配送当番がその日必要とするお客さんに届けていく。

オンラインショップのメール対応なども含め、あらゆる業務が当番制。これも仕事を属人化しない工夫のひとつ。

当番の入らない週3日ほどは営業まわりへ。17時の定時にはほとんどの人が仕事を終える。

「営業に行っても仕事の話を全然しないで、雑談ばかりのことも多いんです。そのなかで、うちが卸した木材の最近の調子を、不満点も含めて伺っていく。大規模な会社から、数人でやっている小さなところまで、お客さんはいろいろ。相手に合わせて対応していきます」

入社して18年間。どんなことにやりがいを感じてきたのだろう。

「うちの仕事は基本的に、間違いなく安定供給するってことが当たり前で。あくまで、人のものづくりを手助けする仕事。派手にわかりやすく、楽しい!っていう瞬間があるわけではないんです」

「なんか、足湯みたいな感じで、じんわり楽しいのかな。ふと気づくと悪くないなって。腰を据えてじっくり仕事をするにはいい環境だと思います。でも、もちろん、ぬるま湯にいるようにゆったり働けるわけじゃないですよ」

長年抜型を扱う事業部にいたところ、働き方の変化にともない、建材事業部にも関わるように。

最初は抵抗があったのかと思ったけれど、ご本人としては前向きに変化を捉えているという。

「新たな商材を学ぶきっかけにはなっています。今後何十年って仕事していくなら、いろんなことに幅を広げたり、やり方を変えたりする必要はあると思うので、新しいことを覚えていくのもいいかなって」

「我々は老舗ではあるんですけど、やり方や商材は、どんどん変わっているので。ここで働くなら、新しいことを覚えるのに興味がある人、変化をいやだと思わない人がいいんじゃないかな」

 

入社2年目の吉田さんは、会社で一番若手の36歳。以前は家具職人として働いていた。

「木が好きなんです。触ったときのぬくもりというか。同じ木でも生えている場所の環境によって、曲がり具合や木目の出方、色味も変わってくる。生きている素材だなって思うんですよね」

家具をつくる素材に興味を持つようになり、合板を扱う仕事がしてみたいと、地元も近い佐久間木材で働きはじめた。日本仕事百貨の記事がきっかけだったそう。

「記事を読んで、コミュニケーションをとりやすそうな雰囲気を感じて。実際に入っても、わからないことをすんなり聞けるので、イメージ通りでしたね」

入社して半年ほどは、週替わりでさまざまな部署を経験。事務仕事から、営業や配達の同行など、会社全体の仕事の流れを理解することができた。

配達のときは、1枚の重さが20キロほどの木材も一人で運び込む。試しに持たせてもらうと、びくともしない重さで驚く。

「最初のころは、毎日どこかしら筋肉痛になっていました。急がなきゃって無理な体勢で運んでいたら、先輩は『身体が大事だから、ゆっくりでいいから』って優しく言ってくれて。教えてもらった持ち方にすると、3ヶ月くらいで痛むことはなくなりました」

ほかに大変だったことはありますか?

「今も課題なんですけど、倉庫にある板だけでも結構な種類があって、覚えるのが大変なんです。置いてあるものをパッと見ただけじゃわからないこともあって。効率よく荷造りをするためにも、一日でも早く覚えないといけません」

「合板って一言で言っても、本当に奥が深い。それぞれ何が違うのか、木が好きで、木への探究心がある人だとやりやすいんじゃないかなと思います」

入社して丸1年。自分の営業担当も持つようになり、日々の仕事にも慣れてきた。

現場によっては、朝一番に電話があって『今日の午前中に届けてほしい』と、急ぎの注文を受けることもある。

「うちの強みは23区の真ん中あたりにあって、どこでも行きやすいこと。無事に届けて、『今ちょうどほしかったところ』『本当にいいタイミングだった』って言われると、急いでよかったなと思えますね」

「お客さんも、『佐久間さんならすぐに持ってきてくれる』っていう期待を持ってくれているんです。それに応えられるように、できる限りの対応をしたいなと思っています」

 

当たり前の仕事をきちんとやるのは当たり前。そこに、愛情を持ってひと手間加える。

そんな姿勢が佐久間木材のみなさんには通じているように感じました。

木にも人にもじっくり向き合いながら、できることの幅を増やしていける仕事です。

(2024/3/7 取材、9/3更新 阿部夏海、増田早紀)

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