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ホテルマンのその先へ
NIPPONIAを
アップデートする

冬の澄んだ空気のなか町を歩くと、歴史を感じる家々の瓦屋根や神社が目に入る。

観光地として整えられた場所というより、今も人の暮らしが息づく、静かな生活の場。

兵庫県丹波篠山(たんばささやま)市には、かつての宿場町の面影を色濃く残す「福住」という地区があります。

今回は、このまちで古民家宿「NIPPONIA 福住 宿場町」を運営する支配人の募集です。

けれど、いわゆる「宿の責任者」を一人採用する、という話ではありません。

地域と宿の関係を編み直し、NIPPONIAというブランドのあり方そのものを現場から再定義していく。そんな立ち上げの仕事になります。

福住は、城下町である丹波篠山の中心地から、車で20分ほど東へ走った場所。

古くは京都へ向かう人たちが通る宿場町として栄えたそう。江戸から続く商家の町並みと古民家群、街道の裏手に広がる農村風景がうつくしい。

景色に溶け込むように、「NIPPONIA 福住 宿場町」が佇む。

「NIPPONIA」は、株式会社NOTEが手がけるまちづくりのブランド。各地で空き家となっている古民家などの歴史的建築物を再生し、その土地の暮らしや文化に触れる宿泊施設を軸としたまちづくり事業をつくってきた。

この7年ほどの間に、北海道から沖縄まで30ヶ所以上に広がっている。

「NIPPONIA 福住 宿場町」は2023年にオープン。今、大きな転換点を迎えている。

「ただ宿をつくるだけでなく、運営とその先のまちづくり事業まで自分たちが責任を持つ。その決意から生まれたのが、新会社『NIPPONIAオペレーションズ(NOP)』なんです」

古民家の趣がのこるレストランスペースでそう話すのが、NOPの代表を務める大山さん。やさしい口調のなかに、力強さを感じさせる方だ。

これまでのNOTEは、自治体向けの計画策定から始まり、まちづくり会社の組成、資金調達から物件の調達・企画、開発までのコンサルおよび不動産開発を中心に手がけ、その先の宿運営は別会社に委ねるサブリースの形をとってきた。

その事業モデルのおかげもあって、短期間で一気に全国へ事業を拡げることができている。

ただ一方で、大山さんはそこがボトルネックになっていると感じたそう。

「『接客は丁寧なんだけれど、地域のことをあまり知れなかった』というお客さまの声が耳に入ることがあったんです。NIPPONIAが本来届けたい価値は、まさにそこなのに」

地域の文化や暮らしに触れてもらうブランドのはずが、場所によって体験の質にばらつきが出てしまう。

運営にまで踏み込んでいなかったところに問題があると、大山さんは考えた。

「このままだと、早ければ3年、もって5年でお客さまに見放されるかもしれない。それくらいの危機感を感じたので、NIPPONIAブランドをアップデートし続けるには、NIPPONIAホルダーである自分たちで宿を運営するしかないという決断にいたりました」

以前は総合商社に20年ほど勤め、海外営業やM&A、新規事業立ち上げなどに携わってきた大山さん。

2016年に偶然観た「ガイアの夜明け」でNIPPONIAの活動や想いを知り、これからの人生は地域に資することに尽力したいと考えたそう。

「僕はアメリカで生まれ育ち、日本に帰ってきたのが12歳のころでした。生まれてからずっと都市部に住んでいたのもあって、自分に故郷や日本人としてのアイデンティティがないように感じていて」

「番組を見たとき、すごく衝撃を受けたんですよね。日本の古き良きアイデンティティともいえる建物や文化を、残して活かす。そんなことをしている人たちがいるんだと。翌日にはホームページから問い合わせていました」

商社での順調なキャリア。経済的には安泰な道を歩みながらも、「自分の望んでいた人生はなにか」という問いに突き動かされ、2年前からNIPPONIAの企画開発を手がける株式会社NOTEへ参画。

その後、NIPPONIAの理念を体現すべき現場が他者任せになっていたり、まちづくり事業であることを標榜しながらまちづくりに関わりきれていない現状に危機感を感じ、運営会社を自分たちで持つことを社内で協議。NOP設立につながった。

「空き家の再生活用を通して、宿泊事業という営みを創出するのがNIPPONIA1.0だとすれば、地域の暮らしや伝統の継承、地域ならではの宿泊体験など、本来の観光まちづくりを体現するのが2.0」

「そして3.0は、エネルギー、食と農業、環境・景観保全、芸術・技術の継承、モビリティや医療過疎といった地域が抱える社会課題そのものに貢献することだと思っていて。自分たちで運営を担っていくからこそ、これからのNIPPONIAは3.0を目指していかないといけない。新しく来てくれる人と一緒にチャレンジしていきたいんです」

たとえば、アメニティや家具什器類に地域の伝統工芸を使うことは、伝統の継承につながる。耕作放棄地があったとして、宿でそこをゲストと有効活用するプランをつくるのもおもしろい。

さらには宿泊料を次の空き家の開発だけでなく、環境保全などにも充てたり、医師が泊まりたいと思う滞在場所をつくることで、医療過疎の解消にも貢献できる。

NIPPONIAだからこそ、共感を持ってくれるアライアンス企業と積極的に連携することで、そのような世界観をつくっていきたい。

宿の存在が地域課題の解決にもつながるようになれば、NIPPONIAが丹波篠山にある意味が生まれる。

求めているのは、こういったビジョンに共感して、宿の現場を回すプラスαのことができる人。

NIPPONIAが掲げてきた理念を、接客や地域との関係づくりのなかで、現場に落とし込んでいきたい。

今回の支配人は、その最初の実践者でもある。

「支配人は、ホテル内にずっといなきゃいけないとは思っていなくて。たとえば地域の人と飲み歩いて、関係性を築くとかね」

「いざというとき、『NIPPONIAのあの人の頼みなら聞くよ』と言ってもらえるような存在になるのが理想ですね。僕も拠点は愛知県なんですが、月の半分くらいはこっちにいるので、全力で一緒につくり上げていきたいと思っています」

一人で抱え込まないようにする環境は、大山さんたちが整えているところ。困ったときには壁打ち相手になってくれるので、そこは安心してほしい。

そして運営面で大きな力になってくれるのが、飯田さん。

普段は東京からリモートで働いている。新しく入る人とはオンラインでコミュニケーションしつつ、必要に応じて福住に来てサポートしてくれる予定だ。

中学二年生のころからホテルマンを志し、新卒でディズニーホテルへ入社した飯田さん。

「小さいころ、ホテルで働く人たちを見て、こんなにかっこいい仕事があるんだと思ったんです。宿泊業への憧れと愛情は、今も変わっていないですね」

ただ、働くなかで業界の課題も見えてきた。

接客の現場で学べることはたくさんある一方で、そこから先の仕組みや事業そのものを変えるには別の経験も必要だと感じ、ほかの業界へ転職。

ITや営業の仕事にも挑戦するなかで、仕事を通じて知り合った大山さんに誘われて、NOPに加わった。

飯田さんは、ホテルで働く人の可能性を広げることを、今あらためてNIPPONIAで実現したいと思っている。

「NIPPONIAの支配人はゼネラリストなんです。経営も見るし、現場で顧客とも対面するし、地域にも出て関係性をつくる。三方向を見るのがおもしろいところでもあり、大変なところだと思います」

まずは現場のホテル業務をしっかり構築・遂行する。その土台があってこそ、NIPPONIAの強みであるまちづくりや地域活性にもつながっていく。

宿の現場でお客さんを迎え、滞在を整える。予約や備品、清掃、スタッフとの連携といった日々の細々とした運営も担う。

そのうえで、地域の人と関係を築き、このまちでどんな体験を届けられるかを考えて、形にする。裁量はかなり与えてもらえるので、自分の動き方次第でいろんな可能性を実現できる環境だと思う。

宿の内と外を行き来しながら、まずは自分の興味が湧くところからはじめて、だんだんと宿のため、地域のためと広げていき、少しずつ場の価値を高めていけたらいい。

「たとえば、ここには元茶室を活かした客室もあるので、近所でお茶ができる人にお願いしてお茶会をひらくとか。アメニティで使っている藍染の作家さんの工房見学を企画するとか」

「地域を巻き込んで、いろんなことを形にしていってもらえたらと思うんです」

加えて飯田さんが宿の現場で大切だと話すのが、「誠実さ」と「なんとかする力」。

「誠実さって、人に伝わるものなので。それはお客さんに対してもそうだし、地域の一員として宿を運営していくためにも、真摯に人と接することはすごく重要です」

「あとは急な修繕や人の入れ替わりみたいに、想定外のことはどうしても起きる。そのときに、ずっとファイティングポーズを取っていられる人だと強いと思います」

会社自体が立ち上がったばかりで、制度も仕組みも今まさに整えているところ。

足りないことを悲観するよりも、「じゃあどうするか」と前向きに考えられる人がこの環境には合っていると思う。

「私はよく“死ぬこと以外かすり傷”って言ってしまうんですけど(笑)。それくらいの感覚で、変化を面白がれる人だと、働きはじめてからのギャップが少ないと思います」

大山さんや飯田さんが描く支配人像は、いわゆる「宿の責任者」の範疇にないように感じる。

宿という場所が、地域を伝達するためのメディアであり、ハブであるために。自分という存在も、地域を伝えるコンテンツの一つである、そんな捉え方ができる人だといいかもしれない。

「NOPは今後、福住を皮切りに、全国各地のNIPPONIAの運営も担っていく予定です。その意味でも、今回の募集はひとつの宿の支配人を探すだけではなく、これからのNIPPONIAを現場からつくっていく仲間を探すものと思ってもらうのがいいかもしれません」

最初の舞台は福住だけど、希望があれば、ほかの地域のNIPPONIAの運営に関わっていく道もある。

まずは福住という土地の魅力を知り、活かすこと。そして、NIPPONIAオペレーションズという新しい挑戦の存在意義に共感すること。

一見別のことのようで、その二つは深くつながっている。

福住のまちを歩くと、道端の花や古い町家、素朴な商店、すれ違う人たちの何気ない挨拶に心が動かされました。

この土地が守ってきた日常の美しさは、派手ではないけれど、たしかにある。

100年先、この景色や営みが残っているかどうか。

それは今日、目の前のお客さんにどんな物語を手渡すか。明日、地域の人とどんな関係を築くか。その小さな積み重ねにかかっているのだと思います。

効率や合理性だけでは測れない仕事だからこそ、手触りのある人生を求める人には、深く届くはず。

その第一歩を、福住から踏み出してみませんか。

(2026/03/11 取材 稲本琢仙)

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