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編集者でもあり、経営者。そして、あるときは小噺家でもある。
いろんな顔を持っているのが、団遊(だん・あそぶ)さん。
取材を通して感じた団さんの印象は、とにかく話が面白くて、人の成長を心から願っている人。
一緒にいるとワクワクする人だと感じました。
今回は、そんな団さんが代表を務めるアソブロック株式会社で、団さんのアシスタントとして働く人を募集します。
「事業にこだわりはないんです。一番はここで働く人が成長すること」と、団さんは話します。
アシスタントとしてさまざまなプロジェクトを手伝いながら、がむしゃらに働く。ひたすら考え、行動し続けるなかでこそ、見える世界があると思います。
経験は問いません。団さんと働いてみたい人や、自ら強い意志を持って成長したい人を求めています。
新宿の曙橋駅から徒歩5分。
住宅街を進むと見えてくるのが、アソブロックのオフィス。庭に植わった大きな桜の木が印象的だ。
6部屋のうち2部屋を借りてシェアオフィスにしていて、関係のある企業や、個人事業主が利用しているんだそう。
中に入ると、迎えてくれたのは代表の団さん。
10月から開講する日本仕事百貨の「文章で生きるゼミ」にも、講師として登壇してくださる予定。
「アソブロックの唯一絶対のポリシーは人が育つこと。人が育つために仕事は必要だけど、事業という大きさで語れるような仕事規模はいらないって思っているんです。事業があると、どうしても事業が主役になって、人がオペレーションに回っちゃうから、育ちづらくなる」
「でも、事業はありません、っていうのも言い飽きて。考えてみたら『応援』って言葉がしっくりきたんです。それで、去年ホームページを作り変えた時に、創業以来はじめて【事業】を記載してみました」
団さんのもとには日々、いろいろな応援要請という名の相談が寄せられる。
あるときは、地方都市にある遊休地の活用企画に着手したり、地方就職を考える若者を支援するメディアを立ち上げたり。幼稚園や保育園の記念日に園長から手渡される特別なメダルを企画することも。
やりたいことがある人の想いを応援し、形にしていく。その姿勢が仕事らしきものにつながり、今では教育や、まちづくり、出版など12のプロジェクトが立ち上がっている。
さまざまなプロジェクトを手がけているけれど、一番大切にしているのは、メンバーの成長。
2003年に会社を創業。6年後に会社のビジョンを「人の成長支援プラットフォーム」としてから、その考え方はずっと変わらない。
「僕にとっては、プロジェクトの内容よりも人の成長支援が大事。関わる人が伸びれば、結果的にプロジェクトも成功に近づくと思っています」
「成長は、自分の人生における選択肢が増えることだと定義していて。自分がこうしたいと思ったときに、躊躇なく動けるような状態」
アソブロックを卒業した人は、起業することが多い。ほかにも、保育園の先生や、ラッパー、ノンフィクション作家、鍼灸師など。ここでの経験を糧に、それぞれが自由に生き方を選択している。
成長に必要なのは、仕事に熱狂すること、と団さん。
新しく入る人は、団さんが関わる仕事から興味のあるものを見つけ、「熱狂」と言えるほどの強いエネルギーを持って関わる覚悟が求められる。
「たとえば、地域づくりに興味がある人なら、駒沢で地域活性のプロジェクトをしているから、その会議に参加してきたら?って言うと思う」
「でも、会議で何をするかはその人が自分で探すもの。興味があるなら、自分で仕事を見つけると思うし、そのほうが本人の成長にとっていいと思うんです。指示が少ない分、覚悟と主体性がないと務まらないし、成長もしないと思います」
日本でほぼ初めて「兼業必須制度」を導入するなど、人が育つ仕組みづくりを何より重視している団さん。社員の成長のため、一時は代表を辞任したことも。
「僕を含め、立ち上げ初期からいたメンバーの3人が会社の象徴的な存在になってしまっていて。良くいえば安定した状態でもあったんですが、次の世代の頑張りを止めているように見えたんです」
「思い切ってカンフル剤を打たなければと思い、3年前に一度、代表を辞めました」
安定を壊すことで、逆境をつくり成長の機会につなげたいと、後進に経営を任せて引退。
数年後、後進からの要請もあって、2023年に再び社長に就任した。
「経営を担っていたメンバーは、この経験を経て独立しました。『辛いことだらけで、楽しいことの方が少なかったけど、この経験があったから、新しく会社をつくる決断ができた。これも団さん的に言えば、成長支援になったんじゃないですか』っていう言葉をもらいました」
代表を辞めて、また戻って。どうしてそこまで人の成長に一生懸命になれるんでしょう。
「好きなんです、人の成長を見るのが。前に、『働くって必要なんですか』って面接で言った新卒の子がいて。あまりの業務量に泣きながら仕事をしていたんですけど、そのなかでも『仕事って何だ』という内省を繰り返しながら、自分の想いに辿りつけた」
「卒業後も勉強を重ねて、今は三軒茶屋で『くろねこはりきゅう院』『しろねこはりきゅう院』という鍼灸院を2店舗経営しているんです。僕は何もしてないけど、自分のことみたいにめっちゃうれしくて。すごい!やったぞ!ってね」
ほかにも、卒業生が立ち上げた京都の小さな出版社「さりげなく」の本を本屋で見かけたことや、手紙で近況を知らせてくれる卒業生のこと。社員の成長を話す姿は、本当にうれしそう。
人の成長を応援することは、団さんにとって自然なことなんだろうな。
「僕自身、大学を卒業してから売れない小説家をしていて。振り返ると、そのときに見捨てずに水をやってくれた人たちがいたんですよね」
「未だに会うと、多少は大きくなれた自分を見て喜んでくれる。そうすると、自分も頑張らなあかんなと思うし、自分も誰かに水やらないとだめだなって思うんです」
今、団さんからたくさんの水を注いでもらっているひとりが、今年の4月からアシスタントとして働く、熊谷さん。編集者のアシスタントを兼業しているんだそう。
「仕事は楽しいです。今は、団さんが持っている案件をいろいろと担当させてもらっています」
現在アソブロックでアシスタントをしているのは、熊谷さん含め2人。
熊谷さんが担当しているのは、世田谷区・駒沢の地域活性をめざす「駒沢こもれびプロジェクト」や、地方企業への就職活動を応援する学生向けのウェブサイト「LO活」での記事の編集執筆、イベントの企画運営など。
あるときは、関連会社の雑貨屋さんで店番をすることもある。
「私は、ここで編集を頑張りたいと思っていて。編集は、物をつくるだけではなく、誰かが困っているときに、その人を助けられる可能性を培う能力だと思うんです」
助けられる能力が、編集。
「たとえば、私の友達に素敵な絵を描く人がいて。描き続けてほしいって思うけど、そのためにはお金や仕事が必要で。団さんは、誰かのやりたいことを続けられる形にしていくことのプロ。その能力を全部自分にインストールできたら、目の前の人のことも助けられる可能性が出てくるかもしれない」
「早くそうなりたいっていうのが、今のモチベーションになっています」
アシスタントとして、一緒に打ち合わせに参加したり、企画や原稿を書いたり。考え方や仕事ぶりを間近で見られるのは、すごく勉強になると思う。
「団さんが私に対して一番に求めていることは、成長すること。日々、めちゃくちゃ見られているなって思いますね」
相談に乗ってくれたり、気にかけてくれたり。自分の成長を心から願って、接してくれていると感じる。
「先日、学んだことを自分なりに活かして、友達へ向けて冊子をつくったんです。とっても喜んでもらえて。ああ、これを見るために、この仕事をやっているんだなって」
「活版印刷の工房を営む60歳くらいの友達で、以前からある詩集の復刻に挑戦していて。ようやく成功して、展覧会をすることになったんです。その人に、『おめでとう』と言いたくて考えたのがこの冊子でした」
テーマは、「繰り返す」。7人の作家やデザイナーに協力してもらい、冊子を編集。300部を印刷した。
「アソブロックで学んだ技術も役に立ったのだと思いますが、それ以上にここで学んでいるのは、人のためになるための力。それが少しはできたのかなって思いました」
「人のためになりたいと思えるのは、すでに自分がたくさんのものを貰っているからだと思うんです。団さんたちから貰ったたくさんのものを、アソブロックに関係ない人たちにも返していきたい。それはきっと巡っていくと思うので」
最後に話を聞いたのは、浅岡さん。
2020年に入社し、アシスタントを経て、今は業務委託という形で関わっている。
「アソブロックでは、地方就職を応援するメディアの編集や、アパレル向けの採用支援メディアのライターなどをしています」
ほかにも関連企業であるノラ猫に関する社会的企業『ねこから目線。』の経営企画や、中高生向けの海外研修、オンライン英語塾の運営など。
教育と事業という2つを軸に、全部で8つの事業に関わっているという浅岡さん。なんだか、いそがしそう。
「暇ではないです。でも、プロジェクトも時期ごとにいそがしさの濃淡があるので、うまくやりくりしてますね。時間も自由なので、午前中は髪を切ってきましたよ」
アソブロックはコアタイムなしのフレックス制度。自分で時間を調整しながら、それぞれが働きたいだけ働くスタイル。
深夜まで仕事をする人もいれば、自分のペースでコツコツ働く人も。
どの人も、やらされているんじゃなくて、やりたいからやっている。納得しながら仕事に取り組んでいるように感じる。
「ずっと、面白いんです。事業がどうやったらうまくいくだろうって考えるのも好きだし、実際にうまくいったらうれしい。人の役に立てているという喜びもあります」
アソブロックでは、自分が熱中できることがしっかり見えていて、それに向かって取り組んでいる人が多い。
最初からやりたいことが明確だったんでしょうか。
「入社したころは、そうでもなくて。やりたいことって、存在はしているんだけれど、自分でも明確に認識していないし、輪郭もぼんやりした感じで。ここに来てから解像度が上がってきた気がします」
「この会社に入ると、本当にいろんなことをやるんです。何をやって何をやらないかっていう選択を積み上げるうちに、好きなものが見えてきたんだと思います」
浅岡さんがアソブロックに関わり続けている理由ってなんでしょう。
「やっぱり、団遊っていう人が面白いから、ですかね」
「面白いことや人が集まってきて、いろんなものに出会えるというか。新しいことが在り続けているから、ここにいることを選んでいるんだと思います」
最後に再び、団さんの話。
「最近、若い人の育成を社会が拒否している流れがあると思っていて。即戦力採用と言ってみたり、ハラスメントになるからって若い人に関わらなかったり」
「でも、本来は若い人の成長を応援するのが社会の役割だと思うんです。そういう流れをこの10年で生み出していきたい。そんな想いで、自分たちのことを『アソブラック』と呼び始めました」
ブラック企業が良いというわけじゃない。ブラックやハラスメントという言葉によって、本来会社が失うべきではなかった機能まで、失なってしまった部分があるんじゃないか。
自分のために一生懸命になってくれる誰かがいるからこそ、人は自分を大切にできるし、成長もできる。元来、人が働く場所にあるべきその力を、後世に残していきたい、と団さん。
まずは、自分が伸びるところから。育ててほしいではなく、自ら育ちたい。そう願う人は、団さんと話してみてください。
(2024/09/11 取材 高井瞳)