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薪ストーブ、というと知っている人も多いと思います。
一方でおなじように薪を使ってエネルギーをつくるのが、薪ボイラー。
温浴施設でお湯を温めるために使われたり、公共施設や一般家庭で暖房のエネルギー源として使われたり。
今回紹介するのは、薪ボイラーを輸入することに加え、自社で設計・工事・販売・メンテナンスまでおこなっている株式会社森の仲間たち。
現場に行って設置工事やメンテナンスをするエンジニア職を募集します。未経験でも構いません。
薪ボイラーは地域の木材を使ってエネルギーをつくるもの。うまく稼働できれば、地域内で資源とエネルギーの良い循環を生み出すことができる仕事です。
森の仲間たちの事務所があるのは、岐阜・大垣の飛び地である上石津町(かみいしづちょう)…初めて聞くまちだ。
名古屋駅で在来線に乗り換えて、関ヶ原駅へ。駅からは車で30分ほどということで、代表の森さんが迎えにきてくれた。
「途中にうちの薪ボイラーを導入している現場があるので、見ていきましょうか」ということで、途中にある公共施設へ。
ちょっと待ってくださいね、と森さんが鍵を取ってきてシャッターを開けると、大きな機械があらわれた。
「これが薪ボイラーとタンクですね。薪を燃やした熱を利用してお湯をつくって、そのお湯を冬場の暖房に活用しています」
「シーズン中は、一日に2回から3回くらい薪を入れます。1年に1回はメンテナンスをしていて、夏は使わないので置いとくだけ。」
メンテナンスっていうと?
「まずは掃除ですね。結構灰が入っているので、それを掃除する。あとは裏の管のところをブラシで掃除したり、いろいろなパーツやセンサーが稼働するか試験をしたり」
「メンテナンスは稼働の前後にするので、春先か冬前にします。ここは暖房用に使っていますけど、温浴施設でお湯を温めるために使っているところも多いです」
この薪ボイラーの仕組みを支えているのが、地域にある「木の駅」。地域の人が山に間伐材をとりにいき、それを木の駅に持っていくと、地域通貨が支払われるという仕組みで、民間団体が中心となって全国に設置している。
この施設でも、木の駅から購入した薪が使われている。
「木の駅は、プロじゃない人が林業をするように、っていう視点もあるんですよ。専業でするのは大変だけど、晩酌代をちょっと稼ぐみたいな感覚で、自分の山を手入れする人もいる」
「そうするといろんな人が山に入るじゃないですか。ほったらかしにしていた山をどうしようかなっていう意識が出て、山に目を向けるきっかけになる」
地域の人が山を手入れすることで、森林環境が良くなる。それによって生まれた木材で少しのお金を手に入れることができるし、その木材がエネルギーとなって地域に還元される。
地域のなかで循環が生まれているのがいいですね。
「そうなんです。木の駅はいろんなところにできているので、その地域を中心に薪ボイラーの注文があって。うちって営業はしてないんですけど、需要は増えていますね」
話が一区切りしたところで、現場から事務所へ。
昔、郵便局として使われていた建物を改修した事務所。
まわりも民家がほとんどで、いわゆる田舎という雰囲気。
中に入り、あらためて森さんに話を聞く。
「大学が農学部で。そこではランドスケープとかを学ぶ研究室に入って、公園とかまちのにぎわいづくりとかも学びました」
「薪ボイラーって設備っぽい仕事なんですけど、さっき話した木の駅みたいに、必ず地域の人の手が介在しているんですよ。まちづくりとかコミュニティづくりみたいなものが必ず入ってくる」
薪ボイラーのことを知ったのも、卒業後に働いたNPOで木の駅の仕事がきっかけだった。
「まちづくり的なソフトの部分も面白いし、施設や設備で薪ボイラーを設置する、機械的なハード面も個人的に面白くて。僕にとっては天職だと思いましたね」
NPOでは全国に100ヶ所以上あるという木の駅を回り、薪ボイラーについても学んでいった。
そして岐阜の恵那市の温泉施設にボイラーを導入するという話のなかで、森さんに大きな出来事が。
「導入を手伝うなかで、薪ボイラーの先進国であるヨーロッパに、みんなからお金をもらって行くことにしたんです。今でいうクラウドファウンディングみたいなことですね」
ヨーロッパに渡り、オーストリアの会社でボイラーを購入。さらには、代理店として日本で販売できる契約をして帰国した。
帰国後の2013年の暮れに森の仲間たちを設立。今年で創立10年を迎えることができた。
「はじめは、ぼくとパートのおばちゃん2人でスタートして。3年後くらいにはスタッフが2人増えたのかな」
「そのころからはボイラーの自社開発もはじめて。国産でつくりたいっていうのが、この会社をはじめたときからの夢だったんです。ようやく形になってきて、今は出願すれば特許が取れるくらいのものになっています」
会社としては、開発・メンテナンスをおこなう部門と、新規で設置する工事の部門がある。
仕事の流れとしては、まず薪ボイラーを導入したいという施設から問い合わせがあり、森さんが中心となってコンサルティングをする。
建物の設備はどうなっているのか、設置後はどう運用していくつもりなのか。詳しくヒアリングした上で、設計を考える。
そしてボイラーを注文し、設計図に従って現場で設置するのが工事担当の仕事。
遠方での仕事も多いという工事担当。どんなふうに働いているのか、下出さんに話を聞く。
大学生のとき、インターンとして働いていた下出さん。
卒業後は東京で2年ほど働いていたけれど、退職し再度大学院へ戻るタイミングで、森さんから働いてみないかと誘われたそう。
「労働力が足りないからバイトしてって(笑)。週4くらいで入っていましたね。最初は暇だったんですけど、社長と一緒に施工管理士の資格をとって、会社としても建設業を取得したんですよ。そこから忙しくなってきて」
建設業を取得することで、大きな額の工事も自社で受けることができるようになり、元請けとして、設計から販売、設置工事、メンテナンスと一通りのことができるように。
国内で設計から一通りの作業を単独で請け負えるのは、全国でも森の仲間たちくらいしかないのだとか。
「出張はすごく多いです。多いときだと月20日とか。最近だと宮城に行きましたし、熊本にも行きましたね」
「今は一人で回っていることが多くて。基本的に、ボイラーがある程度の大きさで、現場が平坦であれば工事も難しくないので。ただボイラーが大きかったり、搬入が難しい場所だったりすると、専門の搬入業者さんとか、配管業者さんにお願いすることもあります」
業者にお願いするときは、その確認や試運転などが主な仕事になる。
「工事って段取りが大事。そういった面では、僕は工事担当にうまくハマったんですよね。あとは運転が好きとか、出張先で穴場の宿を探すのにワクワクできるとか(笑)。そういうのもいいですね」
遠いところだと5、6時間かけて運転することもよくあるそう。そのため工事は一人ではなく、二人体制にして、交代で運転できるようにしていきたい。
「この日に何を持ってきて、次にこの業者さんにお願いして、この部品をつけて、みたいな。だんだんと段取りができるようになっていくのが面白いですね」
森さんが作成した設計図があるため、慣れれば配管の工事の仕方はすぐ覚えられると思う。
ただ、現場に行って地形が想定外だったり、部品が届かなかったりすることもある。柔軟に対応できることが求められそうだ。
「意外と引き渡してからが大変なこともあって。想定していた熱量が出せなかったり、煙が多く出たりすると、すべてのお問い合わせがうちに来るんです」
「こちらで直せることもありますけど、木を燃やすのはどうしてもムラは出る。どこまで対応して、どう納得してもらうかというのもあります。日本でそんなに数のない機械を入れているので、手探り感が強くて判断がつかないこともあるっていうのが、大変なところかもしれないですね」
新しく入る人は、基本工事担当として入ることになる。ただ本人の資質などによっては、開発やメンテナンス担当に回ることもあるんだそう。
最後に話を聞いた国峯さんも、働きはじめてから開発担当になっていったという経歴の持ち主。
自社製の薪ボイラーの開発を担っている。
「以前は水質調査とか土壌調査とかの分析をする会社にいました。学生のときから環境のことやりたいと思っていて」
「ただ、あるとき環境の部署がなくなって、医薬品の分析の仕事に変わったんです。環境のことをしたいのになぁって思っていたので、転職を考えて。そのときにこの本に出会っちゃったんですよね」
「エネルギーの世界を変える。22人の仕事」…。これに森さんが?
「そうなんです(笑)。たまたま図書館に行って、環境のことやるなら何がいいかしらって背表紙を眺めていて。この本にふと目が止まって」
「この本のなかで、唯一、NPOとかじゃなく株式会社で活動しているのが森さんだったんですよ。一度メールして、ここに来て話して。専門外でしたけど、やっぱり環境のことに携わっていたかったので、来ちゃいました」
入社してからは前の会社での経験も活かして、ボイラーの開発を進めるのが主な仕事に。7年間、開発とメンテナンスを続けてきた。
「燃焼って面白いんですよね。ボイラーだと火が見えないんですけど、酸素量や、温度などの数字を見てどんなふうに燃えているかを想像するのが楽しい」
7年続けてこれた理由はあるんでしょうか。
「たしかに、何で続いたんだろう(笑)。続けるとか続けないっていうより、目の前にずっと課題があり続けているので、それを追いかけていたらここまで来た、っていう感覚はありますね」
国峯さんは経験豊富な方なので、新しく入る人もいろいろと頼れると思う。また移住者でもあるから、移住に関する相談も気軽にしてほしいとのこと。
「住むところは、空き家があるので何かしら紹介できるんじゃないかなと。家賃は二万円くらいですね。一番近いコンビニが車で10分で、スーパーが30分。ほどよい田舎生活ができるんじゃないかな」
最後に、どんな人に来てもらいたいか、代表の森さんにも。
「指示を待つんじゃなくて、自分で何かするっていうことが苦じゃない人が向いているんじゃないかな。あとは出張をたのしめる人ですね。正直運転が好きっていうだけでもありがたい(笑)」
薪ボイラーを使うことによる自然の循環もそうだし、単純に機械に興味がある、出張多めなのがいい、などなど。共感しうる要素はいろいろある仕事だと思う。
「10年間やってみてよくわかったのは、お客さんそれぞれが地域なり世の中なり、何かしら現状をもうちょっと良くしたい、と思っている人たちなんですよね。そのきっかけづくりが薪ボイラーで」
「ぼくらが仕事をすることで、世の中が少しは前向きに変わっていく。そんなことを想像してくれる人だったらいいんじゃないかな。次の10年で、もっと世の中をいい方向に持っていきたいです」
(2024/7/31 取材 稲本琢仙)