求人 NEW

ふつうに生きる
を支える人
想像しながら創造する

北摂杉の子会は、主に自閉症や発達障がいのある人たちの支援をしている社会福祉法人です。

大阪・高槻市を中心に24の拠点を運営。子どもから大人まで、障がいのある人たちが暮らしたり、働いたりするための支援を行っています。

「地域のなかでふつうの生活がしたい」という想いからはじまった活動は、個人個人の特性に合わせた支援をすること、そして地域で必要とされることに応えながら広がってきました。

今回募集するのは、各拠点で生活支援員として働く仲間を探していく採用と、 よりよく働けるサポートをする人材育成を担う人。

相手の状況を想像すること。たくさんの人と話し、関わりながらよりよい方法を探っていくような仕事になると思います。



新幹線が通る新大阪駅で乗り継ぎ、10分ちょっとでJR高槻駅に到着。

商店街が賑やかなロータリーで待っていると、理事長を務める松上さんが迎えに来てくれた。

ふだんは各施設を回ったり、厚生労働省と制度を考える打ち合わせに出席したり、海外の施設へ視察に行ったりと、あわただしく活動しているという松上さん。

「まずはお昼でも食べましょう」と、北摂杉の子会で運営している「Cafe Be」に連れていってもらうことに。

併設している「高槻地域生活総合支援センターぷれいすBe」に通う利用者さんがお昼を食べる場所であり、地域の人も飲食店として立ち寄れるお店として運営しているそう。

「定食もあって、挽きたてのコーヒーも飲めます。けっこうお昼どきはいっぱいになるんですよ。利用者さんのなかには、大きな声を出したりウロウロしてる人もいるけどね。まあみなさん気にしないで、ふつうに過ごしていってくれるんです」

「ふつうのサービスをちゃんと提供するっていうのが大事なんです。いろんな人が同じ空間にいるっていうだけ。障がい者だということを付加価値にはしません」

松上さんが障がい福祉に関わりはじめたのは50年前。

学生時代にボランティアとして自閉症をもつ人たちと関わるなかで、疑問を感じることがあったそう。

「利用者さんは家と施設を往復する毎日。なんだかこれじゃあ、点と線の生活だなと思ったんです」

「施設から歩いて4分くらいのところに下宿してたんで、休みの土曜日に私の部屋を開放して、おいしいものを食べて過ごそうと。みんなで集まって、今日はお好み焼きにしようか?ビールは誰が買いに行く?キャベツは?って。一緒にたのしむ場づくりをはじめてみたんですね」

支援する・されるという関係よりも、一緒にたのしむ。そんな時間を過ごすなかで、ある利用者が「家に風呂がなくて、もう3ヶ月も入っていない」と打ち明けてきた。

病気の関係で背中が変形していたその方は、1人では銭湯に行きにくく困っていたそう。そこで『みんなで風呂に行く会』を開催。5人ほどの仲間が集まって、銭湯に向かった。

「そしたらね、うれしくてすごい大きな声出しちゃう人もいれば、ヒゲを剃ったらそのまま湯船に流しちゃう人もいて。言葉でのコミュニケーションがむずかしい、ルールがわからないからね。地域のなかでふつうに暮らすことの大切さと、そこに支援が必要だということを知りました」

松上さんが大切にしてきたのは「地域で生きる」という言葉。

子どものころは知的ハンディを持っていても、学校に通ったり友だちをつくったり、地域のなかで暮らす機会がある。ただ、大人になっていくと利用できる施設やサービスが限られてしまう。

どんな年齢でも、どんな障がいを持っていても。自分が育ってきたまちでふつうに暮らしていける社会のほうがいい。

「運営で困ってるって施設に行ってみたら、昼間はエネルギーの発散だとかいって、みんなしてランニングしたり散歩したりしてるわけですよ。それ、本当にその人がやりたいことなの?その人の強みを活かしてできること、その人の役割、意味のある活動をつくろうよって」

両親たちと協力しながら生活の場を用意し、外に出て働ける作業所を建てたり、企業と協力して仕事をつくったりもした。

重度の障がいがある人を家で支えるのが難しいと相談を受け、施設を増やしたり。利用者の方々の年齢が上がってきたからと、高齢者も受け入れられる施設の準備も進めている。

支援を続けるなかで出会うニーズや課題に対応 するなかで、運営する施設がどんどん増えてきた。

「ニーズベースでいろいろな支援をつくってきたわけですよね。とにかくやってみて、あとから制度つくってきた。利用者さんそれぞれの特性を知るためにはどうしたらいいのか、どう関わればいいのかを試していく。この仕事は、すごく創造的やと思いますよ。」

目の前にいる人たちが、その人らしく暮らせるように。

松上さんは当然のことのように話してくれるものの、簡単ではないと思う。

そのエネルギーは、どこから湧いてくるんだろう。

「やっぱり自分の成長じゃないかな」

自分の成長。

「そう。この仕事をしていると、利用者さんたちから気づきをたくさんもらえるんですよ。乱暴な行動をとってしまうのは、自分の関わり方が問題だったんだとか。自分の態度とか声の調子とか。身振り手振りが相手の行動を変えてしまうってことを教えてくれる」

「利用者さんと1対1で面談したことがあるんです。そしたらね、人生でこんなに真剣に私の話を聞いてくれた人は松上さんがはじめてだって言うんですよね。えーって。ふつうに暮らしてたら、人に話聞いてもらうことってあるでしょう。だけどその人は、障がいのある人ってだけで機会がなかった。そうかーって、はっとすることばっかりなんです」

次に紹介する下(しも)さんは、いくつかの施設の運営管理を統括しながら、人材育成を担う部門の室長も兼務している方。

とてもやわらかい口調で話をしてくれる。

「障がいのある人って、自分たちよりできないことが多いっていう見方をしていたところがあったんです。だけど実際はすごくおもしろい。みんな個性も強いしユニークで。関わることで気づかされることがたくさんありました」

学生時代のアルバイトをきっかけに福祉の世界に関わった。おもしろさを感じはじめたとき目にしたのが、北摂杉の子会が最初につくった「萩の杜」という入所施設のオープニングスタッフの募集だった。

「一人ひとりに寄り添った支援をする、自分たちでやり方を考えていけるんじゃないかと思いました。実際はほとんど手探りで、めちゃくちゃ大変で。今振り返ると、利用者さんには迷惑をかけてたし、僕らも無茶な働き方をしていたと思います」

大変だったことを包み隠さず、正直に話してくれる下さん。

当初は大きな声を出したり、人に手を出すという行動に出てしまう利用者の人たちに、困惑していたそう。

「生活していた自宅から連れてこられて、混乱しているわけですよ。困った利用者さんだっていう見方をしてしまうけれど、その状況に利用者さん自身が困っていたんですよね。自分の言いたいことが表現できなくて困っている。それが行動に出てしまっているだけなんです」

グループホームの立ち上げに関わったときには、開設後に 非常ベルを押してしまった利用者さんがいた。消防車が来る大騒ぎになり、翌日は近所へ謝りに回ったそう。

その後は現場を担当している職員たちと、なぜ利用者が非常ベルを押したのかを話し合った。

「非常ベルを押すことでなにか訴えたかったんじゃないかって考えてみる。利用者さんに押したらだめだと知ってもらうことも大切だけれど、なぜ押したのか、 その行動の背景を考えることがより大切だと思います」

「知的に重い障がいがあることで、実際にわからないことやできないことも、もちろんあるんです。一方で、 その行動に至った原因を探して環境を変えたり、僕らの関わり方を変えれば行動が変化する 。そうすれば、地域のなかで一緒に暮らしていくことができるわけですよね」

たとえば文字で理解するのがむずかしい人と外食をするときには、写真を用意しておく。写真では理解がむずかしい 人には、イラストで伝えられるようにする。

北摂杉の子会ではそうやって、一人ひとりの行動を観察し、特性を理解することを支援のベースにしている。

「その人にはどうしたらいいのかを常に考えるんです。部屋に閉じこもっていた人が、あるきっかけで外に出られるようになる。少しでも生活に広がりがでるというか、幅が出るというか。ちょっとしたことかもしれないけれど、たのしいことが増えるといいなと思うんです」

「アセスメント、利用者さんをちゃんと評価するということですね。もちろん簡単にできることではないので、理解するための研修は大切にしています。それぞれの施設で実践していることを発表して共有する機会もつくっているんですよ」

施設が増え、職員は400人を超えている。

日々利用者の方々に向き合う職員自身にとってもいい環境をつくるため、研修や制度を考え、つくっていくのも下さんの役割。

「日々目の前のことだけに追われていると、なんのために働いているのかわからなくなってしまうこともあります。利用者さんが一人ひとり違うように、職員のみなさんも大切にしているもの、考え方、価値観が人によって違う。お互いに違うことを尊重しあえる関係になれたらいいなと思うんです」



最後に紹介するのが、採用を担当している松本さん。

「私、忘れん坊なので。話すことを忘れないように、メモをとってきたんです」という一言で、ぐっと親近感が湧いてくる。

学生に向けた説明会を開催したり、採用イベントに参加したり。施設の見学への案内や連絡、面接の調整など。今は採用に関わることをすべて担当しているという松本さん。

15年前にぷれいす Beの管理栄養士として働きはじめたところから、施設全体のマネジメントや経理 を経て、昨年から採用を担当することになった。

「まさか自分がこういう仕事をすることになるとは思ってなかったんです。天職ってほどじゃないけれど、一番たのしいんですよ」

「私がしゃべることで、学生さんたちがちょっとでも杉の子会のことを好きになってくれる。その学生さんにとっては、就職って一大イベントですよね。その人たちの人生に私が関われる、大事なときに寄り添って支援できるって、すごくいい仕事だなと思うんです」

1人で動くというよりは、職員を連れて大学へ行ったり、見学先の施設の担当者とやりとりをしたり。人と関わる機会がとても多いそう。

「外にも内側にもたくさんコミュニケーションをとって、いろんな人にアピールをするのが私の役割かなと思っているんです。この仕事をはじめてから、うちの法人のなかで知り合いがすごく増えたんですよ」

「いいなと思う瞬間は、自分が卒業した大学の説明会に、職員を連れて行くことなんです。1、2年目の職員でも、みんな堂々と仕事の魅力を生き生きと語ってくれるんですよ。そんな場面に立会えるのは、この仕事の特権だと思っています」

福祉の業界全体がそうであるように、北摂杉の子会でも、採用は年々むずかしくなってきているそう。

杉の子会らしい採用を、新しく仲間になる人と一緒に考えていきたい。

「なにせ私も採用担当歴は1年なので。私が考えている採用戦略が成功しているかといえば、そうとはいいきれないと思うんです。どうしたらこの法人のやっていること、魅力が伝わるのかを考えて、工夫しながら続けていきたいですね」

相手の状況を知り、想像する。どんな関わり方をすると居心地がよくなるのか創造する。

取材を通して出会った人たちと話していると気持ちがいいのは、人との関わり方について考え、工夫し続けている人たちだからなんだと思います。

どんな人たちと一緒に生きていくことになるのか、ぜひ確かめに行ってみてください。

(2024/9/18 取材 中嶋希実)

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