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人との接点は
やさしさの起点
支え合う地域づくり

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「ボランティア」というと、どんなイメージを持ちますか。

ゴミ拾い、子ども食堂、高齢者や障がいがある方のサポート、自然災害での被災者支援など。

活動を通して、社会参加や自己成長を後押しする側面もあれば、自ら課題解決に動く人たちが地域に増えることで、暮らしやすさや安心感が高まっていくこともある。

無理なくできる小さな支え合いでも、ボランティアの考えが広がっていくことで、だれもが住みやすい社会をつくることにつながっていくのだと思います。

舞台となるのは、福島県、会津美里町。

およそ400年前からまちの産業としてつくられた「会津本郷焼」があったり、県内でも有数のぶどうの産地として、ワイナリーがあったり。地域にある観光資源を活かして、新しいまちづくりに取り組んでいます。

今回は、会津美里町で地域おこし協力隊を募集します。担ってほしい仕事は、地域のニーズを把握し、さまざまなボランティア活動を企画すること。

地域のお年寄りが集まって行うクラブ活動を企画したり、冬には地域の高校生に協力を仰いで、雪かきをしたり。地域に暮らす人たちが、日々互いを支えあうようなコミュニティを育てていきたい。

3.11で被災した過去のある、会津美里。記憶を薄れさせず、教訓をつないでいくという意義もあります。

これまでに21人が活動してきた会津美里の地域おこし協力隊でも、はじめて募集する業務内容。

行政と、協力先となる社会福祉協議会など、さまざまな人のサポートを受けながら、仕事を進めていきます。

日々、困っている人の視点に立ったり、一緒に活動する人と話したりすることで、社会課題と向き合っていく。まずは、自分の身近な場面と結びつけながら読んでみてほしいです。

 

東京駅から郡山駅まで新幹線で1時間ちょっと。そこからワンマン鉄道に乗り換える。

1時間ほどで乗り換え、さらに10分ほど電車に揺られると、会津高田駅に着いた。

向かったのは、会津美里町社会福祉協議会の運営する、ふれあいセンター「あやめ荘」。

中からは、丸めたヨガマットを持った年配の人たちが次々と出てくる。大広間で、ヨガ教室が開かれていたみたい。

社会福祉協議会事務局長の安達さんが迎えてくれた。

社会福祉協議会は、地域の福祉を支えている団体のことで、全国の自治体に設置されている。

高齢者や障がいがある方などの生活を支援するための、訪問介護や配食サービス、サロン活動など。地域住民の「ちょっとした困りごと」を解決する機会や場をつくる、さまざまな活動に取り組んでいる。

今回の地域おこし協力隊は、会津美里町役場健康ふくし課に所属し、社会福祉協議会の方と協力しながら活動に取り組むこととなる。

「会津美里町もほかの地方自治体と同じく、少子高齢化や人口減少など、さまざまな社会課題に直面しています」

「そんなときこそ、住民同士が支えあい、住みやすいまちづくりを行なっていく。そのために、地域でのボランティア活動に力を注いでいきたいんです」

会津美里町の社会福祉協議会にボランティアセンターが設置されたのは、2005年のこと。

それから6年後。このボランティアセンターの重要性を実感した出来事がおこる。

「まさに、3.11がきっかけでした。当時、被災をされた避難者の受け入れをあやめ荘で行なったんです。多くの方があやめ荘に避難に来られまして」

「給食センターから炊いたご飯を持ってきて、ここのロビーで炊き出しをしました」

地震や津波による被害だけでなく、原発事故で避難指示地域が拡大したことにより、会津美里町にもおよそ1,000人が避難してきた。あやめ荘でも、200名弱の避難者の受入を行った。

「ここの建物すべてが避難スペースとなって、ぎゅうぎゅうに人が集まっている状態でした。あのときの光景は、今も思い出しますね」

生活に必要な物品も限られていて、助け合わないと生活がままならない。当時はボランティアセンターとしての経験も浅く、役場の職員は通常業務の合間を縫うかたちで、十分な対応ができなかった。

必要だ、という声にあわせて、有志のボランティアが立ち上がる。高校生や大学生が小学生に勉強を教えたり、体力のある人は炊き出しや運搬など、手を動かして生活を整えたり。

「当時を振り返ると、もっとできることがあったんじゃないか… と後悔して、ついもどかしい気持ちになります。避難に来られた方たちに、『会津美里町にはもう行きたくない』という風には思われたくなかったんです」

「今後、このような有事が起きた際に迅速な対応を取るために、町に暮らす人たちがふだんから防災への意識を持ち、日頃からのボランティア体制が整っていることが重要だと思い、今回の募集に至りました」

ライフスタイルも多様になるなか、生活にボランティアの意識を根付かせるのは簡単なことではない。現在、社会福祉協議会でボランティアに関する業務を担当しているスタッフは1名いるけれど、ほかの仕事との兼任などで十分に力を割けていない状況だという。

今回、地域おこし協力隊が取り組む仕事は、地域のニーズを調査し、地域の人が参加できるボランティア活動を企画・運営すること。

まずは地域に入り込み、地域を知るとともに、ボランティアを通して解決できそうな地域の課題を調査するところからはじまる。

調査は、安達さんや役場の担当者のサポートを受けつつ、町の公益活動を行う団体に聞き取りをして行なっていく。

すでに町には10数種類の団体があって、枯れ木や倒木の処理、公園や小学校への花植え活動といった環境保全や、老人ホームでの読み聞かせといった福祉のことまで、ジャンルはさまざま。

さまざまな立場にいる人の話を聞くことになると思う。「これがあったら助かるのにな」という小さな困りごとに、ボランティアの種は隠れているかもしれない。

「まだまだ、地域にはボランティアの力で解決できる課題がたくさんあると思っています」

先入観を持たずにまちを観察してみることで、活動のアイディアを見つけていってほしい。

今年、社会福祉協議会が独自で企画したボランティアが、町近くの豪雪地帯での除雪活動。地域の高校生が、多く参加したという。

「参加してくれた学生も、地域のために役に立つことにやりがいを感じつつ、楽しそうに参加されている様子をみて、意義を感じましたね」

「子どものうちからボランティアを体験していただくことで、大人になってからもボランティア精神を持った方がひとりでも増えてほしいと思っています」

また、ボランティア団体同士のつながりをつくることも仕事のひとつ。

団体への聞き取りをしていく先で、勉強会や情報交換会など、団体同士横のつながりができるような機会をつくっていってほしい。

「東日本大震災のような有事のときに、すぐに町民が手を取り合い、迅速に支援体制がつくれるように。災害時の支援者組織をつくったり、支援者間の連携を促進するような取り組みも一緒に実施していきたいですね」

「ひと口にボランティア活動と言っても、かたちはさまざまなので。ボランティアという言葉に引っ張られなくても大丈夫ですよ」と、安達さん。

「たとえば、あやめ荘にある大広間を使って、住民向けの運動会やイベントなどを企画するのもありなのかな、と思っています」

「地域の人が試しに参加したいと思えるような活動を企画して、少しでもボランティアについて考えたり、行動につながるきっかけになってくれれば」

隣の人を知る、助ける・助けられる喜びを共有する。地域内でお互いを助けあう空気を醸成するには、小さな積み重ねが欠かせない。

まずはこの地域での暮らしと仕事に慣れながら、自分の得意なことを活かしたり、興味が向くものを見つけていけたらいいと思う。

「住んでいる我々が気づいていないような視点が欲しいんです。ボランティアに関して幅広い知見や熱意を持った方が来てくれたらうれしいですね」

 

なんでもできる、となると幅が広くて困ってしまうかもしれない。

そんなとき、頼りにしてほしいのが役場の佐藤さん。今回の協力隊の担当でもある。

「役場では、健康ふくし課の係長をしておりまして。生活保護や障がい者支援といった、多様な方々の暮らしを支えるセーフティーネットのような立場で働いております」

今回の募集で隊員になった人は、基本的に社会福祉協議会の事業所で活動することになる。

安達さんともに、地域の聞き取り調査などといった業務のサポートをしてくれる、身近な存在。日々の暮らしについても、相談に乗ってくれると思う。

「いろんな人と関わって、一緒に巻き込んでいく仕事だと思います。地域のおもしろいところも面倒なところも、まるっと引き受けるので、大変なこともあると思います。担当として安心して活動していただけるよう全力でサポートします」

協力隊を受け入れはじめて8年、会津美里ではこれまで21人が活動してきた。

「月に1回、ほかの受け入れ先で活動されている地域おこし協力隊の方々と役場職員との集まりがあります。そこでほかの協力隊と親交を深めていただければと思いますし、仕事についてぜひ意見交換もしていただけたら」

町内には、卒業後も会津美里町で暮らすOBOGが何人もいて、協力隊に携わったあと、自分でぶどうを栽培してワインを販売したり、地域と行政をつなぐ中間支援組織として多方面に活躍をされる方もいる。

現役の協力隊や、移住者としての先輩にも、暮らしのことも仕事のことも相談できるといいと思う。

佐藤さんは、どんな人に来てほしいですか。

「まずは3年間、会津美里町での暮らしを楽しんでいただきたい。それが一番伝えたいことです」

「コミュニケーション能力があって、人と話すのが好きな人に来てもらえたらうれしい。少しでも興味を持っていただけたら、勇気を持って飛び込んできてほしいなって思います」

 

つながりあうことで、これまで手をつけられていなかった困りごとにも気づける。支援から漏れている人たちに手を差し伸べられる。

自らが地域でどんなふうにすれば過ごしやすくなるかを考えながら、自由に事業をつくっていける面白さがある仕事だと感じました。

人とのつながりがまちの未来をつくっていく。つながりを大事にしたい人にとっては、やりがいのある仕事だと思います。

(2024/06/26 取材 田辺宏太)

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