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なくしたくない、伝えたい
半田そうめんから始める
徳島の魅力発信

そうめんと呼ぶには太く、うどんよりも細い麺で、強いコシ、モチッとした歯応えのある半田そうめん。

江戸時代から手延べにこだわって製造され、「半田手延麺」という名称で親しまれてきました。

そんな半田そうめんをはじめとした、徳島県の名産品を販売するのが有限会社剣山堂。

2024年の1月に、代表を務める森さんが事業承継した会社です。

社会福祉士として福祉事業を立ち上げたり、事業承継のプラットホームをつくる会社でサポートをしたり。いろんな経験をして、地元の徳島県へ戻ってきた森さん。

これからは徳島県のまだ知られていない産品を発掘して、魅力を伝えていきたい。

今回募集するのはそんな森さんの右腕となる人。まずは商品の販売管理を担当して、ゆくゆくは徳島の魅力を伝える取り組みの旗振り役になっていってほしい。

あわせて、半田そうめんの製造担当も募集します。

伝統産業の後継に興味がある、地域に埋もれている産品を伝えたい、そんな人に知ってほしい仕事です。

 

徳島空港からバスと電車を乗り継いで、西へ向かう。

吉野川の方向を眺めながら、2時間ほどで阿波池田駅に。

ここから車に乗り10分ほどで剣山堂のオフィスに到着。1階は作業場、2階がオフィスになっている。

正面玄関から入ると、スタッフさんがそうめんの袋詰めをしている真っ最中。

100gずつ束ねられたそうめんが機械で運ばれ、最後は人の手で袋に詰められる。

黙々と手際のいい手捌き。集中している姿に背筋が伸びる。

階段で2階に上がり、さっそく代表の森さんに話を聞く。

もともとは淡路島で介護福祉や障がい者の就労支援事業を手掛けていた森さん。

工場を引き継いで3年。どうして製造工場と、販売会社の剣山堂を引き継ぐことにしたのだろう。

「当時、障がいを持つ方と初めてご一緒したとき、障がいゆえにできないことはあれど、自分たち以上にできることもあると気づきました」

「働く能力はあるにも関わらず、働く場所がない。そんな方たちを目の当たりにして、彼らが働けるサービスを増やしたいと思って起業したんです」

障がいを持つ人が働けるペンションの運営を経て、地元の徳島で障がい者福祉のサービスを立ち上げる事業者のコンサルティングに従事。

そこで、半田そうめん製麺工場が倒産するという話を耳に挟んだ。

「コンサルティング先で、たまたま倒産の話を聞いて。『300年続いてきた伝統商品がなくなってしまうのは困る。なんとか復活してほしい』というファンの想いを知りました」

「自分ならこれまでの経験を活かして力になれるかもしれないと思って。実際に工場を見せてもらったんです。話を聞くなかで、まだまだ伝えきれていない魅力があると感じて、事業を引き継ごうと思いました」

日本で製造される麺類は、外国産の小麦粉を使用していることが多い。一方で、「半田そうめん八千代」で製造している半田麺は、国産小麦粉を100%使用している。

出来上がった麺は、外国産の小麦粉を使ったものと比べて、やさしい風味や味わいが特徴的。

何より、安心安全なものを食べてもらいたいという創業当時の思いを伝えていきたいと思った。

「日本の伝統産業って、どこも後継者不足や労働者不足が課題なんです。一方で、活躍したい障がい者の方はたくさんいる。ここをうまく組み合わせられたら、お互いにとっていい影響を与え合えるんじゃないかと思いました」

現状はまだまだという森さん。両者がうまく補完し合える理想を実現するためにも、試行錯誤を重ねている。

「たとえば、半田そうめんは食べるとわかるんですが、そうめんと聞いて想像するような細い麺ではないんですよね。パスタやラーメン、焼きそばにも使える」

「今までは麺をつくって販売して終わり、というのが基本でしたが、これからはお客さんにもっと知ってもらって、食べてみたくなる仕掛けをつくっていきたいです」

剣山堂でも看板商品となっている半田手延麺。それらを含めた徳島の魅力をもっと外に伝えていきたい。でも一人では限界も感じている。そのため、今回新しい人を募集することにした。

いま剣山堂で働いているのは森さんを含めた10名。うち8名が女性で、20代から60代まで幅広い年代の方が働いている。

メインとなるのは商品の袋詰めと出荷作業。全員で分担してテキパキと作業を進めている。

森さんは、毎月の発注数を見込んだ生産計画の策定、従業員のシフト作成、顧客クレームや需要が上ぶれた場合の対応など。管理職としての仕事に追われている状態。

今回右腕として働いてくれる人には、その仕事を引き継いでもらいたい。

「まずは販売会社である剣山堂の事業をしっかり回してもらうこと。そこが安定化したら、ご自身の興味関心や能力に応じて、たとえばほかの企業の事業承継に関わってもいいし、半田そうめんを海外に広げていくことに力を入れてもいい」

「やりたいことはあるけれど、まだまだ固まり切っていないことが多いので、一緒に考えながら、新しいチャレンジをしていけたらいいなと思っています」

1日の仕事の流れとしては、朝に出社し、前日に入った発注数と在庫を確認。

在庫が足りないときは、製造した製品を早めに納品してもらえるよう工場と調整したり、商品を滞りなく梱包、発送できるように従業員のみなさんと状況を確認したりする。

百貨店のお中元フェアなど、夏の繁忙期を迎える前は、既存のお客さんに向けて商品のラインナップや、おすすめの食べ方をまとめたカタログを作成して送付する。

ほかにも、展示会や商談、マルシェでの接客など、半田そうめんのおいしさをお客さんに直接伝える機会もあるかもしれない。

「いまは個人のお客さんが7割、飲食店への卸売が2割、ネット販売が1割くらいです。そうめんを知らない海外のお客さんに向けた輸出も始めようと思っていて。もし英語が話せたら、そういった部分を担当してもらっても良いですね」

「半田そうめんの製造工場を、まったくの第三者が継ぐのは、実は僕が初めてなんです。だけど、当事者じゃないからこそ固定観念にとらわれない発想ができる。知らないことはむしろ強みなんです」

事業承継をして今年から運営を始めたこともあり、固まっていないことも多いけれども、まずはチャレンジしてみる。その結果を活かせば何事もうまくいく、と森さん。

決まっていない状況でも前向きに、新しいチャレンジを楽しめる人であれば、得られるものは大きいと思う。

 

続いて話を聞いたのは、3年前に森さんが引き継いだ工場で、半田そうめんを製造している畠中さん。

剣山堂で販売する半田そうめんは、畠中さんたちが丹精を込めてつくっている。

「10年ほど働いたころ、工場の倒産が告げられて。どうしようかと思っていたときに森さんが引き継いでくれました。工場がまた再開すると聞いたときは、やっぱりうれしかったですね」

創業当時から変わらずつくり続けられている手延べ麺。

一般的にはグルテン量や粘度などが麺づくりに適した海外産小麦を使うことがほとんど。そのなかで国産小麦100%、鳴門のうず塩、こめ油という厳選した3つの原料のみを使用した製造にこだわっている。そのぶん、製麺はすごく難しい。

「毎日製麺をしていても、気温や湿度、素材の状態が異なるので、同じ状態の生地はほとんどない。生地の伸び方などは、経験を積むことで予測できますが、いまでもまだ勉強中です。うまくいったときは『やったね』ってみんなで喜びあっています」

もっと多くのお客さんに安心して食べてもらいたい。そんな思いから、全部で23ある半田そうめん製造工場のなかでは初となる有機JAS認証も取得。100%オーガニック素材にこだわった半田そうめんの製造もはじめている。

「百貨店の催事で試食販売をしたとき、お客さんが気に入って買ってもらえたことがうれしくて。おいしいと言って喜んでもらえる、安心安全な手延べ麺をつくり続けていきたいです」

 

続いて話を聞いたのが、畠中さんと同じく半田そうめん工場で働いている田守さん。

業務領域は異なるものの、森さんの側で働いている先輩。なんでも相談できる頼もしい存在になると思う。

森さんが過去に募集した求人を読んで、埼玉から移住してきた。そうめんの製造をしながら、工場全体の生産管理も担当している。

「もともとは14年間、高級食パンの会社で店舗のマネージャーをしていました。コロナで多くの会社が立ち行かなくなる姿を見ていて、もどかしい気持ちがあったんです」

「自分の両親も自営業で、まちの中華屋をやっていたんですよね。小学生のころから、自分も出前の手伝いをしていたこともあり、後継者の問題について考えるようになりました」

そんなときに偶然知ったのが、森さんの取り組み。

自分自身の問題もあり興味を持った田守さん。森さんに直接電話をかけて連絡を取り、お子さんをはじめ家族で移住を決めた。

縁もゆかりもない土地に、家族で引っ越してくることにハードルはなかったんでしょうか。

「正直、給料面は不安でした。ただ徳島の食材は安くておいしいし、家賃も安い。生活水準はそこまで大きくは変わっていないかな」

前職では土日も働いていた田守さん。週末に家族で遊びに出かける機会も増えた。

「ここで働くなかで、いいなと思えることがあったらいいですよね。自分の場合は実家が大阪なので帰りやすくなったし、何よりも今後の日本では後継者問題は必ず出てくる。ここでの仕事は将来性があるんじゃないかって考えています」

田守さんが徳島に来てからの1年でも、県で唯一のみりん屋さんや、200年続いた和菓子屋さんが廃業。後継者問題は、より現実味を帯びてきている。

「300年もの間、商品をつくり続けているって本当にすごいことだと思うんです。それが今後の100年、200年も残っていくように。まずは半田そうめんの魅力を伝えていきたいと思っています」

 

300年の伝統を守り、まだ知られていない徳島の魅力を発掘し、未来に残していく。ここに右腕として加わってくれる人がいれば、この未来が今よりもっと現実になっていくように感じました。

少しでも気になったら、まずは森さんと話してみてください。

伝統産業を残していきたい、徳島を盛り上げていきたい。そんな思いを持つ人であれば、きっとより良い未来をつくっていけると思います。

(2024/11/06 取材 櫻井上総)

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