※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
歴史ある江戸切子。
ガラスに施された文様や色合いには、芸術として、そして使うモノとしての美しさを感じます。
一方で、切子づくりの業界では職人が少なくなっているという課題も。
切子の未来を守るために。現状を維持するだけではなく、自分たちで課題に向き合う。そんな想いを持って行動しているのが、株式会社タブローです。

タブローはガラス工芸品の卸売会社。
3年ほど前からは卸売に加え、切子職人の減少という課題に立ち向かうために自社で職人を育てる仕組みと施設を整えてきました。
職人見習いとして昨年に一期生が、今年は二期生が入り、だんだんと土台ができてきた3年目。新たに三期生となる切子職人を募集します。
一期生と二期生は、ともに日本仕事百貨を通して入社。4人とも未経験ながら職人に学び、自ら手を動かして知識と技術を習得してきました。
切子づくりの経験はなくて大丈夫。必要なのは、職人として切子をつくりたいというハートと、続けていく根気。
あわせて、商品管理担当、EC・WEB管理担当も募集します。
先輩たちの背中を見ながら、ともに切子の未来を切り開いていく人を求めています。
タブローがあるのは、東京・江戸川区。
総武線の平井駅から歩いて5分ほどの住宅街に事務所と工房がある。それぞれ歩いて3分ほどの距離。
工房の中に入ると、一期生と二期生が手を動かして作業している。

1年前はまだ工房が完成したところで、物の置き場所も整っていない様子だったけれど、今は機械の配置から掲示物まで、きっちりと整えられている。
「おかげさまで、みんな順調に育っていて。今回も、二人くらいきてほしいなと」
「今後は高齢化もあって、従来の切子職人さんがこれまでと同じようにものづくりすることがむずかしくなっていくことはわかっているので。そうなるとうちは人数でカバーするしかない。二期生を採用したばかりなんですが、新しい職人をさらに育てていきたいんです」
そう話してくれたのが、タブロー代表の竹田さん。

竹田さんとはもう3年以上のお付き合いになる。
最初に話を聞いたとき、今後の構想として語っていた「自社で切子工房を持つ」ことを、数年で実現させた。
とはいえ、入社したのは未経験で入ってきた人ばかり。職人さんのもとへ通うのと並行して、切子づくりの基礎を学べる学校にも通い、学んでいったそう。
「去年の9月に工房ができてからが本当のスタートって感じ。やっぱり学校の練習用の機械とプロ用の機械では馬力が違う。そういうところは、職人さんに来てもらって、扱い方やメンテナンスの仕方をあらためて教えてもらって」
「そして去年の年末くらいに、二期生が入ってきたわけですよ。今は二期生の二人にも学校に行ってもらいながら、工房で働いてもらっています」

切子づくりは、いくつかの工程に分かれている。
初心者はまず簡単な工程からスタートして、徐々にできることの幅を広げていくのがタブローでのやり方。
「たとえば削る目印になる線を引く作業があるんだけど、削るのは別の人がやっていて。分業なんです」

「最初は一人で縄跳びしてもらって、途中から大縄跳びに加わってもらうイメージですね。今は一期生も二期生も全部の工程を一通りできるようになっているので、大縄跳びを四人で回してる。これがあと二人増えたら、並行して複数の種類のアイテムをつくれるようにしたいと思っています」
生産の仕組みは、整いつつある。一方で、クオリティ面はどうなのだろう。
「最初のほうは、私が見て弾くものも結構ありました。会社としての基準があるから、見極めも大事で。逆に良すぎても作業効率がわるい場合もあるから」
「一個に対して時間をかければ、いいものはできる。だから、このレベルのものをできるだけ短時間で、っていうのはちゃんと指示しています。ただ、時間をかけているけどできないことがあるわけ。それはなんかね、道具の感覚が腑に落ちてないのよ」
道具の感覚?
「ちゃんとやってるんだけど、なんかうまくいかない。それって道具の使い方とかメンテナンスによって仕上がりが変わってくるからなんです。包丁と一緒で、研がないと切れ味がわるい」
「『道具立て』って言うんですけど、それもベテランの職人さんに教えてもらいました。その上で『これで良しとしてんのか』と、私も結構ダメ出しをしたので(笑)。見る目を養うのも時間がかかったかな」
だいぶ苦労してきたんですね。
「そのぶん、基礎はちゃんとできてきました。今この波に乗ってきてもらう三期生は、社内で教えてもらえる人がいるという意味で、めちゃくちゃタイミングがいいと思う」

切子づくりと聞くと、趣味の延長のような気持ちで応募する人も多いそう。
趣味ではなく、本気で仕事としてチャレンジしたいかどうか。そこが問われる。
「みんなそれぞれ性格も年齢も違うけど、他愛もない話をしてるときのびびっとする感じを個人的に大事にしてます。恋愛と一緒(笑)」
「あとはハート、やる気。経験がどうとかは関係ないです。職人として仕事をしたいか。そこは一期生のときから変わらないです」
今後は、工房を増やすことも計画中。卸売の会社が自社で職人育成をするという、業界的にも初の試みは、着実に実を結びつつある。
続いて話を聞いたのは、一期生の佐々木さん。

昨年、日本仕事百貨を通して入社した方。前職では機械の工場で働いていた。
「僕ら一期生は二人とも未経験から入ってきて。先輩もいなかったので、わかんないことは職人さんに聞きに行くっていう感じで。今は二期生も入ってものづくりの基礎的な流れができてきました」
「工程を整理して、手の動きも慣れてきたので、仕上がりが安定してきた。そうすると製作時間のばらつきが少なくなるので、安定して製品を供給できる。それが形になってきました」
主につくっているのは、カタログに載っている定番商品。在庫の状況をみながら、つくる商品を決めていく。定番のほかに、特注品を手がけることも。

製作工程のスケジュールは、竹田さんの指示をもとに佐々木さんが組んでいる。
それぞれの作業スピードを考慮してスケジュールを組むところは、前職の工場勤務の経験が活きているそう。
「つくるスピードが速くなったと思います。記録もとっているので、前より数をつくれるようになったことを実感できる」
「カットの精密さとか、磨きのツヤ。どれくらい磨けば適正レベルなのかも、社長のフィードバックのおかげでだんだんとわかるようになってきました」

磨きなどの作業は、感覚的に覚えていくものなんでしょうか。
「たとえば機械の回転数とか、力を加える強さの塩梅がわかってきたという感じでしょうか。こういう音がしているときは調子がいいとか、あとは手の感覚。回転する機械にガラスを当てたときの抵抗感というか。それを頼りにできるようになってきましたね」
機械のセッティングも毎回手動でおこなっている。いい条件を出すことも難しく、セッティングで作業の8割くらいが決まるのだとか。
「道具も消耗していくので、手入れもしているんですが、そこはまだまだ素人で。教えてくれる職人さんや先生もいっぱいいるんですけど、人によってやり方が違うんです。ようやく基礎がわかってきたので、自分の考えもミックスした虎の巻をつくっているところです」
今回入る三期生にとって、一期生の佐々木さんは頼りになる存在だと思う。
感覚的なことが多いなか、二期生にもできるだけ言語化して伝えようと努力しているところ。社内に気軽に聞ける先輩がいるのは心強い。

「できたものを見てアドバイスすることもあるんですが、それも感覚なんですよ。美的感覚っていうのかな。たとえば線がシュッとしたほうがいいか、力強く入ったほうがいいかって、人によって違う。そこはすり合わせして、うちの基準を肌で感じてもらうのが大事だと思っています」
「毎日同じものをつくる、繰り返しの作業なんですけど、日々レベルアップしている実感があるのが面白いところで。飽きないですね。まだまだ良くできると思ってます」
最後に話を聞いたのは、今年の4月に入社した二期生の彦坂さん。前回の日本仕事百貨の記事を見て応募した。

「もともとものづくりが好きで。美大でもガラス製作をしていました」
「職人としてチャレンジしてみたいなと思っていて。黙々と手を動かすことが好きだったのと、未経験でもいいっていうのが大きかったです」
実はすでに内定が出ていた会社もあったそう。そこを断り、タブローで切子職人として歩む道を選んだ。
「入って意外だったのは、結構力がいる作業があること。腕とか手首とか首の筋肉を使う作業が多いんですよ」
「ガラスを削るのも、ぐっと手前に力をかけないとしっかり模様が出なくて、最初は大変でした。今はコツは掴みましたね。単純に筋力がついたのもありますけど(笑)」
最初は、削る前のガラスに目印となる線を引く「割り出し」から。それに慣れてきたら、削ったもの洗う「洗い」を経て、機械を使った作業に触れていく。

許可をとれば、業務時間外に自主練をすることもできるので、そうしている人も多いそう。
働き始めて、ちょうど半年ほど。職人としての仕事はどうですか?
「やることが多いというか… なんだろう、できることが半年で増えたからかな。ありがたいことに、自分は飲み込みが早いほうみたいで。できることが増えるとうれしいし、時間が経つのがあっという間だなって感じます」

「面白かったのは、夏くらいに、東京都の記念品をつくるお仕事があって。難しい模様の切子だったんですけど、それが楽しかったですね」
「難易度が高いぶん、自分がレベルアップしているのが実感できてうれしかったです」

最後にどんな人に来てもらいたいか聞いてみる。
まずは一期生の佐々木さん。
「割り出しとか洗いとか、基礎の作業にも真面目に向き合える人だといいですよね。機械はあいている時間に使って練習できるので、主体性を持って取り組んでくれる人だと、僕もうれしいしやりがいになります」
続いて二期生の彦坂さん。
「明るい人。今が暗い人が多いわけじゃないんですけど(笑)。個人作業だけどチームワークが大事なので。コミュニケーションをしっかりとれる人だといいなと思います」
「あとは繰り返しですが、自分の技術を上げるための努力を惜しまない人かな。その積み重ねが、いい仕事につながると思うので」

未経験でもかまいません。必要なのは、手を動かしながら学ぶ覚悟と、続けていく力。
切子の輝きを自分の手で生み出したい。そんな人であれば、この場所で職人として成長できると思います。
(2025/09/26 取材 稲本琢仙)


