身体がぬくもると、心もぬくもる。
家族や、ご近所さんと。よく知る顔とぬくもった心身で話せば、自然と笑顔になる。
地域に気軽に行ける温浴施設があるというのは、わたしたちの暮らしを自然とあたためてくれるものだと思います。
多くの人の願いに応えて、役目を終えかけていた一つの温浴施設を復活させる。そんなチャレンジの最中にいるのが、株式会社さんびるです。

さんびるは、島根・松江に本社がある、ビルメンテナンスを本業としている会社。
ほかにも、学童塾や介護予防教室、さまざまな施設の指定管理事業など、松江を中心に活躍しています。
今回募集するのは、「大森の湯」という温浴施設で支配人として働く人。
施設は現在リニューアルのための工事中で、2026年の4月にオープンする予定です。
経験はなくて大丈夫。「おふろcafé」など、関東を中心に温浴施設を手がける「温泉道場グループ」が全面的にサポートしているので、業務の面でも学ぶことができます。
さんびるの本社がある松江へは、出雲縁結び空港が近い。
空港からレンタカーを借りて、宍道湖(しんじこ)を左手に見ながら約30分。さんびるの本社があるビルに到着。
エレベーターで3階に上がると、フロアで作業していた人たちが「いらっしゃいませ」と迎えてくれる。
社長室で迎えてくれたのが、さんびるの二代目社長を務める田中さん。

1977年に法人化して会社を設立したさんびる。
当初から現在まで会社を支えているのが、清掃や設備管理といったビルメンテナンス事業。島根県でも大きなシェアを誇っていて、知名度も高いそう。
2006年に田中さんが社長になってから、事業の多角化を進めていった。
「最初にチャレンジしたのは、21年ほど前にスタートした介護予防教室です。指定管理制度にも手を挙げて、いろいろな施設の運営を受託してきました」
参加者2人から始まった介護予防教室も、今では松江市内で年間約4万3000人の高齢者が利用するまでに成長。
「社長も現場もひっくるめて、絶対にうまくいくと信じて行動する。応えてくれるスタッフがおったけん、今があるんだろうって思います。人が持つ力が、何かを成し遂げるための基礎にあるんだって、実感してますね」
人が持つ力、ですか。
「いわゆる熱意って言うものですよね。僕は社内で『マグマ』と伝えているんですけど、地球のど真ん中に熱い熱い何千度のマグマがあるように、我々も心に熱いものを持たないけん。そう思ってます」
マグマにたとえるほど、熱い想いを大切にしている田中さん。
だからこそ、新しい事業にも諦めずチャレンジして成功するまで続けてこれたのだろうな。
今回の温浴施設も、その思いからチャレンジすることを決断した。
人件費や修繕予算、そしてコロナ禍もあって赤字が続き、行政も耐えきれずに2020年で一度閉業した大森の湯。
しかし、地元の人たちにとっては憩いの場所であり、暮らしに結びついた大切な場で、市に陳情が出ていた。

「何度も市と話し合ってね。行き着いたのが、基本は無償譲渡で10年間は続けるという条件付き。修繕費も約半分は補助金でまかないました」
さらに再建のために協力を頼んだのが、埼玉県を中心に温浴施設の再建事業をおこなっている株式会社温泉道場。
「決め手は埼玉の温泉施設に見学に行ったことですね。OparkOGOSEとか、おふろcafé白寿の湯とか。田舎にあるのに人がたくさん来ている」
「駐車場も満車で、中の空間のつくり方や導線もすごく工夫されていて。若い子からお年寄りまでリラックスして過ごしているのを見て、これを大森の湯で実現したいと思いました」

今は温泉道場の監修のもと、リニューアル工事が進行中。2026年の4月にオープンする予定だ。
新しく入る人は、温泉道場のノウハウを学びつつ、大森の湯の運営に関わっていく予定。

「経験はいらないと思っていて。人と話すのが好きで、相手に強い関心を持てる人。人を大事にして、人とともに生きる。目の前のスタッフのため、そしてお客さんのために熱くなれる。原点はやっぱり熱意だろうと思いますね」
さんびるはグループ会社も多く、若くして社長になっている人も多いそう。支配人として働く人も、支配人がゴールではなく、その先の挑戦につながるかもしれない。
新しくリニューアルされる大森の湯。どんな場所になるのだろう。
改装の設計から運営までサポートしている、温泉道場の鎌田さんに聞いてみる。

大森の湯は、さんびる本社から車で20分ほどで到着する。地図で見ると、宍道湖から南側、少し山間部に入った位置だ。
「今回わたしは温泉道場の社員として、開発と立ち上げのお手伝いをさせていただいています。いつもは埼玉にいるので、松江には行ったり来たりしていますね」
温泉道場が関わり始めたのが、2024年の冬ごろ。
施設を見ての印象は、どうだったんでしょう?
「こだわりを持ってつくられた施設で、風情があり魅力的に感じました」
「食事処のいろり茶屋には本物の囲炉裏があって、お風呂は群馬県にある法師温泉をイメージさせるような素敵なつくりをしていて。館内全体の雰囲気が統一されているので、手を加えずとも魅力的な施設だなぁという印象でしたね」
バックヤードも綺麗に管理されており、従業員にもお客さんにも愛されてきた施設。
適切な価格設定と運営力で経営していけば、これからも長く愛される大森の湯に生まれ変わらせることができる。温泉道場の代表とも、そう話していたそう。

休日は遠方集客を強め、平日は地元のお客さんに来てもらえるように。
コンセプトは、「発酵・湯治・工芸」。
宍道湖の水産物を発酵させた食品もあるし、松江周辺には醤油蔵などもあるので、発酵に関係する食材は候補がいくつかある。
湯治は温泉を楽しんでもらうこと。サウナも増設するので、サウナ好きの人も取り込んでいきたい。
「工芸は今回いろいろなところに起用しようと思っていて。この地域には『来待石(きまちいし)』という石があるんです。出雲大社の灯籠に使われていたりする石で。それを装飾として使ったり、工芸品を飾ったりしたいなと」
入り口にも、来待石でつくられたタヌキの石像が。
触ってみると、砂岩系のざらざらとした感じ。

このようにコンセプトを形にしていったり、課題や改善点を一緒に解決したり、イベントなどの企画を考えて新しいことを打ち出したり。
支配人として入る人は、温泉道場の力も借りながら、大森の湯らしい運営方法や企画を考えてほしい。
そのぶんの裁量はしっかり与えられる予定だ。
「支配人には経営者に近い視点で運営してもらいたいと思っていて。予算の作成や売上管理、スタッフの育成など、できることはたくさんあります」
「最初は予算のつくり方もわからないと思うので、それもフォローしながら成長していってもらえたらいいですね」

鎌田さんは、どんな人が支配人としていてくれたらいいと思いますか。
「これだけチャレンジできる場が整っている機会はすごく貴重だと思っていて。自分で事業をやってみたい方が挑戦する場としては、すごくいいと思うんです」
「一方で、このあと話してくれる中倉さんたちのように大森の湯に詳しいスタッフがすでにいるので、うまく指揮するのが課題でしょうか。ただそこは一旦考えずに、チャレンジしてみたい、面白そうっていう自分の想いファーストで来てもらえたら、あとは温浴運営のプロとしてフォローさせてもらうので、安心して来てもらいたいですね」
「詳しいぶん、わたしもフォローしたいですね」と続けてくれたのは、閉業前から大森の湯で働いていた中倉さん。

閉業したあと、さんびるが施設を引き継ぐ話があり、大森の湯で働き続けることを選んだ。
現在は開業準備などに携わっていて、新しく入る人とも一緒に働くことになる。地域との関係づくりや施設運営において、頼りになる存在だ。
「いろいろ変わるかもしれないですが、今まで来ていたお客さんにも会いたいですし、私のほかにも残るスタッフもいるので。一緒にがんばりたい気持ちが強いです」
「お客さんも常連さんとかがよく話してくれたのが楽しくて。今思い返しても、やっぱりお客さんに支えられていたなぁと思います」
お客さんは近隣の方が多かったんでしょうか。
「地元の人もいましたし、松江のほうからくる人も多かったです。あとは出張とかで県外から来る人もいて」
「人が温かいっていうのかな。年配の方が多めだったので、スタッフと話したい人とかもいてね。アットホームな雰囲気でした。それは新しくなってからも大事にできたらなと思います」

中倉さんはどんな人と一緒に働きたいですか。
「スタッフのことをしっかり見て寄り添ってくれる人でしょうか。何かあったとき、よし一緒にがんばろうって、隣で走ってくれるような人がいいなって思います」
「とはいえ、お尻を叩いてくれるくらいの勢いというかきびしさも必要だと思うので。率先して行動できる人だといいですね。求めすぎかな(笑)」
中倉さんの話を隣で頷きながら聞いていたのが、清水さん。
7年前から大森の湯で働いていた方で、中倉さんと同じくさんびるに入社し、リニューアル後も働く予定だ。

閉業前は、温泉に隣接する飲食店「いろり茶屋」で働いていた。松江出身で、大森の湯は地元だそう。
「いろり茶屋は居心地が良かったですね。まわりの方がみんな優しくて。自分のおばあちゃんくらいの年齢の人が多かったかな。当時18歳とかだったので、あんたはいろり茶屋の孫だねって言われて甘やかされてました(笑)」

お客さんからもよく覚えられていたという清水さん。下の名前で「ゆづちゃん」と呼ばれていた。
「楽しかったですよ。最初はホールをずっとやっていて、そのあと厨房にも入るようになりました。開業後は温泉かいろり茶屋か、どっちの配属になるかわからないけど、オープンが楽しみです」
「別の道に進むことも正直考えました。でもやっぱり慣れ親しんだところがいいなっていうのもあったし、わたしにとっては地元の居心地がいいんですよね」
大森の湯がある場所は、山や田畑に囲まれたところで、自然豊か。
少し車を走らせれば宍道湖が広がっていて、松江にも近い。西のほうに足を伸ばせば、出雲にも比較的すぐ行くことができる。
住む場所はさんびるも探すのを手伝ってくれるので、安心してほしい。

「わたしたちの意見も取り入れた上でいい感じにしてくれるみたいな(笑)。柔軟な人と一緒に働きたいですね」
「鎌田さんとか、温泉道場さんがフォローしてくれるのは心強いと感じているので。新しく来る人と一緒に、地域を盛り上げていけたらと思います」
心身をぬくもらせる場づくり。
チャレンジングな事業である一方、裁量を持って、プロの力も借りながら自分の成長にもつなげられる。そんな機会だと感じました。
温泉が好き、事業をつくってみたい。そんな人は、一度松江を訪れてみてほしいです。
(2025/11/26 取材 稲本琢仙)


