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消えゆく古民家の価値を
発掘し、活用する
まちづくりのプロ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

都会でも田舎でも。誰も住んでおらず、放置されている空き家が増えています。

国の調査では、2023年10月時点で、国内の住宅総数に占める空き家の割合は過去最高の13.8%。空き家の数も5年間で50万戸増の899万戸と、過去最多になっているそう。

人口も減るなかで、空き家問題をどうするか。

その解決法の一つとして、古民家を活用したまちづくり事業で成果をあげているのが、株式会社narrativeです。

募集するのは、主に古民家を活用したまちづくりプロジェクトを進めていくプロジェクトマネージャーと、改修に関わる設計士。あわせて、経理・労務・総務を統括するスタッフも募集します。

古民家を起点に、持続可能な営みをつくる仕事。きれいに聞こえるかもしれませんが、関係者の調整や補助金関係のことなど。泥くさく地道に、そして根気強く関わり続ける気概も必要です。

そのぶん、これからの社会に必要かつ、いい影響を与える。その手触りを感じられる仕事だと思います

 

narrativeのオフィスがあるのは、近鉄奈良駅から南に10分ほど歩いた場所。

観光地から少し離れた閑静なエリア。蔵をリノベーションしてつくったオフィスが建っている。

中に入ると、「おひさしぶりです」と浦山さんが迎えてくれた。

取材するのは3年ぶり。プロジェクトマネージャー兼経営管理部と、役割が広がっているそう。

蔵らしい急な階段を上がり、2階のミーティングルームで話を聞く。

「プロマネの仕事だけだったのが、経営管理の仕事も引き継いで。経理とか人事とか総務とかをやりながら、プロジェクトも見ている状況ですね」

「優秀なアルバイトさんの助けを借りて、なんとかやらせてもらってます。以前はまだ途中だった若草山と今井町のプロジェクトは、もう完成していて。最近は奈良県外のお仕事をいただくことも多いんですよ」

奈良のプロジェクトの一つが、若草山のオーベルジュ事業。

若草山の麓にある古民家を改修し、全5室のオーベルジュ「VILLA COMMUNICO」として昨年の9月にオープン。

「もともと奈良の東生駒でお店をしていたシェフと出会って。薪火料理を提供しています」

「宿泊だと1泊2食付き、2名で12万円から。これまで奈良エリアに少なかった、価格帯の高いオーベルジュをつくり、わざわざ訪れる価値のある奈良の食に特化したお店をめざして運営しているところです」

床を貼り替え、窓や障子などはそのまま使っているそう。昔の雰囲気が感じられる工夫を凝らしている。日本人だけでなく、海外のお客さんもいるそう。

「食界隈で有名な人たちが口コミでつながって来てくれる。賞や星を狙っていくお店を目指しています。それだけ奈良の食とこのお店にはポテンシャルがあるので」

一方でこの若草山の物件は、最初に声がかかってから着工するまで、かなりの年数がかかっている。その経緯や資金調達することの難しさをnarrativeのメンバーはわかっているけれど、後から来たシェフやスタッフに、それをすべて伝えるのは難しい。

「私たちは全部わかっているからこそ、振る舞いが難しいです。いくらでもお金をかけられるわけではないけど、シェフにはいい仕事をしてほしい。メンバーとの関係性とか経費の部分で、気にしないといけないことがオープン後もすごく多いですね」

今回の募集の背景は、こうした奈良の案件のほかに、県外の案件も出てきたことで、人手が足りなくなってきたことから。

既存の施設運営と、住居系の小さな案件はなんとかなっているものの、ほかのエリアの案件はすべて対応していくのがむずかしい状況。

加えて、奈良市の南にある御所(ごせ)市での銭湯を中心としたまちづくり事例がさまざまなメディアに出て、全国からnarrativeへ相談が来るようになったのも大きい。

「まだ小さい会社なので、なんでも揃っているわけじゃなくて。最近はプロジェクト担当を一人じゃなく複数人体制にしています。主担当が休んでもいいように。ふつうの会社で考えたら当たり前のことなんですけど」

「ただ、属人化がだめかっていうと、そういうわけでもなくて。私たちのプロジェクトって、担当する人の個性が光る仕事でもあるので、担当者の意思を尊重する姿勢は大切にしています」

浦山さんはどんな人と一緒に働きたいですか。

「最近思っているのは、ものごとを大局的に見れる人。鳥の目、虫の目、魚の目って言うじゃないですか。そんなふうに視点を変えられる人がいいのかなと思っていて」

「目の前の業務だけに目を奪われてもよくなくて、それが全体の中でどの位置にあるのか、一歩引いた目線で見ることがプロマネには必要だと思うんです。それができると、仕事に追われる感覚じゃなくなるんじゃないかな」

プロジェクトが大きいからこそ、引いた目線も重要。

加えて、たとえばほかのスタッフのメールとかチャットから、メールをこう返すと相手が返事しやすい、というのを学ぶなど。少数精鋭で動いているからこそ、自分からノウハウを吸収していく姿勢も大切だ。

「あとは関係者の人間関係とか、お金をどこから取ってくるかとか。ひたすら調整ごとがあるんですよね。どうするべきかの引き出しはアドバイスできても、やるのは自分なので。地道で大変だと感じる仕事にも、丁寧に明るく取り組める人じゃないとむずかしいんじゃないかな」

 

次に話を聞いたのは、新人のプロジェクトマネージャー、小井沼さん。昨年の5月からnarrativeで働いている。

「最初は今井町っていうところの古民家を改修したお店の開業準備を手伝って。その後若草山のオーベルジュの開業。それぞれ落ち着いてきたので、今は事業企画も担当させてもらっています」

カラッとした笑顔で話してくれる小井沼さん。

前職では電機メーカーに勤めており、プロダクトデザインやサービスデザインの仕事をしていた。

「日本仕事百貨さんはずっと見ていて。いろんな働き方があるし、いろんな人もいるし、面白いなって。たぶん心のどっかで、自分がいる環境って、なんかちょっと違うよなと思ってたんですよね」

なんか違う、というのはどういうことでしょう?

「うーん… なんていうか。大量生産、大量消費よりも、まちの小商いみたいなほうが素敵だと思ってたのもあるし、効率性よりも丁寧な暮らしに憧れもあって」

「資本主義社会のなかで、その1ピースになってしまっていることに気持ちのミスマッチを感じていたんですよね。そんなときにnarrativeの記事を読んで。文化財をまもる、いかす… これだ!って(笑)」

最初は浦山さんに付いて仕事を学ぶところから。新しい事業を担当するだけでなく、繁忙期は既存のお店を手伝うなど、現場に行くことも多い。

「目の前にゴールがいつもあって。結果は失敗だったり成功だったり、いろいろなんですけど。自分が手がけたことの結果を直に感じられるので面白いです。」

プロマネのメインの仕事は、新しい事業を進めていくこと。外部から依頼が来ることもあるし、自分たちで活用する物件を見つけることもある。

活用方法が決まったら、補助金などを利用しての資金集めと、地域を巻き込んでの関係づくり。自分たちが主役ではなく、あくまで黒子として主役となる人たちをサポートする。

たとえば、補助金一つとるにしても、いくつもの書類を書き、工期を頭に描きながら年度内に終わるようにと考えなければならない。

加えて現地に行き、古民家の持ち主や関係者との関係づくりも大切。ときには腹を割って、厳しい話をしなければならないときもある。古民家をどう活用したいかという未来を共有していくことが、お互い折れずに走り切る力になる。

「ずっと私、お金のことは避けて生きてきたんですよ」と、小井沼さん。

「お金って怖いと思ってて(笑)。自分はぜったい経理とかできないなと。それでも自分の能力で貢献できればいいと思っていたんですけど、ここではお金も見なくちゃいけない」

「たとえば新しい宿泊施設をつくるとすれば、1部屋あたりいくらで、この商圏ではどのくらいの人が来そうで、計算してみて足りないなら何かしらアイデアを加えないといけない。そんなふうに、お金で具体的な数字を考えたほうがいいアイデアが出るということに気づきました」

小井沼さんはどんな人に来てほしいですか。

「朗らかな人かな。楽観的な人のほうが、たぶん合っていると思っていて。真面目すぎてもつらいと思うんですよ。いろんな想定外が日々起きるので」

「地域のためとか、建物のオーナーさんのためとか。もっといえば、日本社会のため、くらいの意義深さがある仕事だと思うんです。自分のため、っていうより、社会貢献意識が高い人だとより面白く働けるんじゃないかな」

プロジェクトマネージャーは、あくまで黒子の存在。無事オープンが決まってからも、スタッフを集めたりなど、サポートが必要

陰ながら、誰かを支えたい。そんな人にとってはやりがいが大きいのだろうな。

「ちなみに奈良に越してから、QOLは爆上がりですね(笑)」

「空も広いし、どこに行ってものどかで、山が見えて。豊かだなって思います」

 

最後に話を聞いたのは、設計士の英武(ひでたけ)さん。

一級建築士の資格を持っていて、3年ほど前に入社した。

これまでの話に出てきた今井町や若草山のオーベルジュも英武さんが設計を手掛けている。

「今井町は長屋が連なった建物でかなり空き家の期間が長く放置されていたので状態がかなり良くなかった案件です」

「今井町は重要伝統的建造物群保存地区なので、外観にもルールがあって。橿原市の担当の方に古写真を見せてもらい、細かくやりとりしながら復原・改修の内容を決めていきました。そんな制約があるなかで、内部も建てられた当時の雰囲気を感じられ、古民家らしさが活きるようなお店を意識しています」

古民家の設計はどんなところが独特なんでしょう。

「使える梁や柱は残したり、どこまで直すのかを見極めて、予算のなかで仕上げないといけないのが一つ。あとはnarrativeの事業の多くは、自分たちが施主であり、お客さんであり、建物を使う事業者でもある。だからぜんぶの立場から考えないといけなくて」

「工事のことも考えるし、使い勝手も相談するし、トータルコストのお金も考える。ストレスを感じることもあるけど、それが逆に面白いところでもあるのかなって思います。いろんな立場から考えないといけないっていうのは、いい経験になっていますね」

英武さんは、どんな人と一緒に働きたいですか。

「むずかしいな…。仕事は楽しいんですけど、回り道が多いんですよね。古民家には虫もいるし、床を踏み抜くこともあるし、柱はグラグラやし。ふつうの家で当たり前のことが当たり前じゃないぶん、考えることが多い」

「古民家楽しそうとか、古民家を改修した古い空間が特徴のカフェがおしゃれとか。きっかけはそれでもいいと思うんです。けれど、職業として続ける難しさも感じるし、建て直したほうが早いって思うときもある(笑)。でも、今井町みたいに残さなあかん場所も奈良には多いですし、残したいっていう人がいる限り、この仕事を続けていく意味はあると思いますね」

 

奈良という場所は、いつも不思議と心地よく感じます。

歴史があり、ほどよく都会で自然もある。そして、残すべき建物もたくさんある。

そんな土地だからこそ、narrativeのみなさんのようなまちづくりのプロが活躍する余白があると感じました。

さらに成長していく今が、加わるのにいいタイミングだと思います。

(2024/12/20 取材 稲本琢仙)

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