求人 NEW

大切な人を家に招くように
心温まるおもてなしは
一人ひとりの本心から

足元がじんわりと冷える冬は、お客さんの靴をストーブで温めておく。

味の好みを記録に残して、その人にあった味付けの料理を用意する。

そんな一人ひとりのお客さんと向き合う姿勢は、お客さんに喜んでもらいたいという純粋な気持ちから生まれてきました。

アンシェントホテル浅間軽井沢。軽井沢の国立公園内にひっそりと佇む、15部屋の小さなホテルです。

今回は、2つの職種を募集します。

1つ目のホテルスタッフは、フロント業務や、レストランサービス、館内掃除など、お客さんをおもてなしするための幅広い業務を担当します。

2つ目の調理スタッフは、料理長のサポート役として仕込みや盛り付けなど簡単な料理の補佐をする仕事。

経験は必要ありません。目の前の人を喜ばせる仕事がしたい。接客を愛する人が、何よりも輝けるホテルだと思います。

 

東京から北陸新幹線に乗り、軽井沢へ。

3月にもかかわらず、この日は低気圧の影響により全国で大雪。新幹線が一時停止するなどのトラブルに見舞われながらも駅についた。

雪がめったに積もらないと言われている軽井沢も一面の銀世界。

タクシーで15分ほど。観光名所「白糸の滝」へと続く道沿いに、アンシェントホテルを見つけた。

入り口に近づくと、スタッフのみなさんがわざわざ外で待っていてくれていた。

笑顔で声をかけられ、トラブルで不安だった気持ちがやわらいでいく。

中に入ると、吹き抜けのエントランス。2階の天井まで届く大木のオブジェから、優しい灯りが漏れ出ている。

「寒かったですよね」と言って温かいコーヒーを出してくれたのは、女将の三ツ井さん。

相手の心を自然と開いてしまうような不思議な魅力を持った方。

2011年のオープン時に入社し、アンシェントホテルらしさを積み上げてきた。

「オープン当初はどんなおもてなしをするかも全く決まっていなくて。お客さまの反応を見ながらいろいろなことを試して、どうしたら喜んでもらえるかを考えてきたことが、今につながっていると思います」

もともとは家族経営の旅館だったこの宿。経営が傾き、閉業を考えていたところに手を差し伸べたのが、宿の常連客であり、現在の親会社・株式会社カクイチの先代だった。

製造業などを中心とするカクイチにとって、宿泊業は未知の領域。オープニングスタッフの三ツ井さんたちが中心となって、今のサービスをつくりあげていった。

その一つが、お客さんの情報を詳細に記録したカルテ。

見てみますか?と三ツ井さんがカルテを持ってきてくれる。

「本日の献立、ご主人に大好評」「アウトレットで買い物。スーツを新調」「カメラを向けると緊張で顔が強張る」などなど。

お客さんと交わした会話や、お客さんの好きなもの、滞在中の様子などがA4の紙にびっしりと書き留めてある。

「たとえば、はじめてここでお食事をされたときにお味噌汁が少ししょっぱいとおっしゃっていたら、それをメモに残しておく。そうすることで、次にいらしたときに薄めのものをお出しすることができるんです」

一人ひとりのお客さんに向き合い、その人に合った接客を考えていく。カルテに残しておくことで、お客さんとの関係性も深まっていく。

「ほかには、新しいお客さまでも、ホテルに着いた瞬間から、お名前をお呼びして出迎えるようにしています。そのほうが、歓迎されている感じがしてうれしいかなって」

初めてのお客さんは顔もわからないはず。何組もお客さんが来るなかでどう見分けているんでしょう。

「そう!どうやったら分かるだろうって考えたんです。それで、予約のときに車種を聞いてリストにしておけば、エントランスに来た車を見て判断できるって思いつきました」

喜んでもらいたいという純粋な気持ちを突き詰めて、ほかにはない価値を提供してきたアンシェントホテル。2021年には、旅行予約サイト「トリップアドバイザー」の小規模ホテル部門で、アジア2位、世界9位に選ばれた。

もともと、ビジネスホテルやリゾートホテルなどで接客をしていた三ツ井さん。アンシェントホテルで働き始めた理由はなんだったんでしょう。

「お客さまの重い荷物を持ってあげたかったんです」

以前働いていたホテルは、約500室の大型ホテル。ハイシーズンには、チェックインのためにフロントに長蛇の列ができ、業務をこなすので精一杯だった。

「お客さまのなかには、足が悪い方や、高齢の方もいて。重そうにしているのに、フロントから抜けて手伝うことが許されない。それがもどかしくて。小規模なホテルだったら、荷物を持ってあげられると思ったんです」

13年たった今でも、その気持ちは変わらない。

「いろいろなホテルを経験してきたけれど、ここに来てから転職したいって考えたことはないですね。お客さまとの距離が近いし、ほかのホテルではできない接客ができる」

「お客さまが今日は何を求めているんだろうって考えるのが楽しい。それがやみつきで、気づけば13年経っていました」

 

三ツ井さんの話を、楽しそうに聞いていたのは代表の奥田さん。

アンシェントホテルの母体である株式会社カクイチから派遣され、2024年夏から代表に就任。現在はカクイチの業務とホテルのマネジメントを並行して担当している。

「実は、代表としてアンシェントホテルに関わる前に、ホテルの『おもてなし読本』をつくったことがあるんです」

アンシェントホテルでは、お客さん一人ひとりに合わせた接客をするため、あえてマニュアルをつくっていない。そのなかで、ホテルが大切にしている価値観の指針となっているのが「おもてなし読本」。

スタッフ一人ひとりへのインタビューを通し、大事にしている価値観を言語化していった。

なかでも印象に残っているのが、料理長へのインタビュー。

「どんな仕事を目指しているか、という質問をしたときに『人生最後の晩餐に、アンシェントホテルの料理を食べたいと思ってもらえる仕事をしたい』って話してくれたんです」

料理長がつくるのは、地域で取れた旬の食材をつかったコース料理。コースというと特別なイメージがあるけれど、アンシェントホテルで提供しているのは、ホッと心があたたかくなるような、何度でも食べたくなる料理。

「料理長の言葉は、ホテル全体に通じることだなって思ったんです。料理に限らず、お客さまが何度でもこのホテルに来たいと思える。人生のふとした瞬間に、また帰って来たいと思える場所でありたい」

ホテルの価値をつくっているスタッフが、働きやすい環境づくりにも力をいれていきたい、と奥田さん。

「カルテを書いたり、お出迎えをしたり。丁寧に向き合っているからこそ、長時間労働になっている部分もあるんです。みんなやりがいをもって働いてくれているけれど、やっぱりしっかり休める時間も大切にしたい」

「だから今回、求人をしようと思って。今後は人を増やして、まずは早番と遅番の仕組みをつくっていきます」

お客さんに対して向き合う時間は変わらず大切にしながら、それ以外の業務の効率化を進めている。

最近では、AIを活用したシフトの自動作成システムを導入。新しい技術を積極的に取り入れながら働きやすい環境づくりが進んでいる。

「奥田さんと同じように、私も忙しい現状はどんどん改善していきたい。でも、それを差し引いてもやっぱり、やりがいのある仕事だなと思います」

 

隣で聞いていたのは、ホテルスタッフの藤沢さん。

ホテルの専門学校を卒業後、リゾートホテルなどを経験し、4年前にアンシェントホテルに入社した。

「本当にすてきなお客さまが多いんですよね。みなさん、余裕があるというか、ここでの滞在を楽しみに来てくださる方が多いなと思います」

アンシェントホテルでは、リピートのお客さんが全体の3割ほど。わざわざ手土産を持って来てくれるお客さんや、スタッフに会うのを毎年楽しみにしてくれるお客さんもいるんだとか。

接客スタッフとお客さんという役割を越えた、あたたかい関係ではなく、人と人としての交流が生まれている。

「ご家族で年に1回泊まりに来てくださるお客さまがいて。小学生の女の子と、ホテルの庭に来る野鳥を一緒に見たんです。それが、彼女にとってすごく大切な時間になったみたいで」

「次に会ったときに、『自分のお小遣いで図鑑を買ったんだよ』って教えてくれたんです。ここで過ごした何気ない瞬間が、その人のかけがえのない思い出になったと思えると、本当にこの仕事をしていてよかったなって感じます」

接客を通して、だれかの人生に影響する。お金には変えられない価値を大切にし続けているアンシェントホテルだからこそ、できるおもてなしだと思う。

藤沢さんがもう一つ魅力に感じているのは、挑戦できることの幅広さ。

「母体のカクイチは、社内のDX化などいろんな挑戦を推奨していて。ほかの部署のチャレンジを知れるし、自分がやってみたいことにも挑戦しやすいのがいいなと思います」



ガレージ・倉庫、工業用ホースの製造などを手がけるカクイチ。藤沢さん自身、カクイチの本社とチームを組んでホテルの部屋をNFT化する方法を考えたことも。



「ホテルマンって、ホテルにこもっているので外に出ないんです。けど、ここでなら接客以外の業務も挑戦できるから、飽きないなと思います」

 

ホテルスタッフの増山さんも、自分の強みを活かして挑戦をしてきた人。

「中学生のころから星に興味があって。大学も天文部にはいっていて、ずっと星を見るのが趣味だったんです」

「この場所はすごく星がきれいに見えるので、お客さまに案内しましょうかって提案したのが始まりで。それ以来、ずっと星の観察ツアーをやっています」

国立公園のなかにあるホテルからは、降ってきそうなほどの満点の星を臨むことができる。増山さんはガイド役として星座の説明や、望遠鏡の使い方のレクチャーをしている。

「今でも忘れられないのが、ある年のイブとクリスマス。2日連続で星がものすごくきれいだったんです。宿泊しているお客さまのほとんどがいらっしゃってくれて」

「初めて望遠鏡を触る方は、大人も子どもみたいに喜んでいて。その姿がずっと印象に残っていますね」

お客さんから「ホテルの星の王子さま」と呼ばれている増山さん。普段はゆっくり落ち着いたペースで話しているけれど、星のツアーになると別人になるんだとか。

「自分でも、宇宙から別の人が来たのかなって思うくらい(笑)。本当に星を見るのが好きなので、みなさん一緒に観ませんかっていう気持ちなんです」

新しく入る人も、たとえば鳥が好きだったら野鳥ウォッチングを企画してもいいし、植物の散策をしてもいい。自分の趣味や個性を活かして活躍していけると思う。

 

取材の最後、女将の三ツ井さんがこんな話をしてくれました。

「ホテルの仕事って、お家に大切な人を迎え入れることと一緒だと思うんです。掃除をして、料理をして、おしゃべりをして、一緒の時間を楽しむ。それがたまたま仕事になっているだけだと思うんです」

大切な人を、家でもてなすように。

本心から丁寧にお客さまと向き合っていく。その積み重ねが、誰かのかけがえのない思い出をつくっていくんだと感じました。

(2025/03/19取材 高井瞳 )

問い合わせ・応募する

おすすめの記事