求人 NEW

直感を証明する

清澄白河の名所といえば、東京都現代美術館。

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展や、デイヴィッド・ホックニー展。つい先日まで行われていた「坂本龍一|音を視る 時を聴く」では、34万人を超える人が訪れるなど、展示が変わるたびに、まちもにぎわう。

そんな現美の目と鼻の先にある、真っ白なお店が今回の取材先。

2025年3月15日にオープンしたばかりのカヌレ専門店「MM Canelé」。

パン屋さんやケーキ屋さんで見ることはあっても、カヌレだけのお店って珍しい。それに、なんだかパッと見は、セレクトショップのように見える。

いったい、どんな人がお店を運営しているんだろう。

中に入ると、オーナーのリョウジさんが迎えてくれた。学生時代は、柔道部に所属していたそう。がっしりとした身体つき、それでいて優しい雰囲気を感じる。

—- リョウジさんのお仕事について教えてください。

ブランド開発からデザインまでワンストップで行う会社を経営しているのですが、クライアントとの対話のなかで、「もっとこうした方が良いのではないか」と感じたり、提案したことが、一度は採用されそうになっても、最終的に予算の都合で実現せず、尻すぼみになってしまうことがあります。

このような経験から、自分たちが課題に感じていることや、良いと信じていることを実現するために、新たに株式会社BEUYS(ボイス)を設立しました。MM CANELÉは、そのBEUYSから生まれた自主事業なんです。

—- なるほど。では、ここはどんなお店なんでしょう?

わたしたちMM CANELÉは、店内で焼き上げたカヌレに、自家製のクリームソースをディップする新しいスタイルで提供しています。

カヌレ専門店でありつつ、カヌレ屋さんとして見られないように設計しています。大人になると、昼間に出かける選択肢が意外と限られているなと思い、おでかけのきっかけにしてもらえるような場所を目指しました。

なので、ファッション性のある店舗設計・世界観をつくることを重視しています。カウンターに使用している棚も、古家具をアップサイクルするブランドのものを置いて、自分たちで企画したTシャツやステッカーなどの商品もいろいろと展開しているんです。

清澄白河に出店しようと思ったのも、そうしたポイントがあって。まちの落ち着いた雰囲気と、アートやコーヒー文化が融合した独特の魅力に惹かれたのが理由です。われわれのコンセプトにぴったりだなと。

—- どうしてカヌレ屋さんをやろうと思ったんですか?

カヌレとの出会いは大学生のころ。もう15年ほど経つのですが、そのときに食べたカヌレがすっごく美味しくて。手土産を持って行く際には、必ず購入するくらい好きになりました。

カヌレってプリンと近い材料でつくるんですけど、プリンよりも約2倍から2.5倍ぐらいの価格設定ができるほど、高付加価値商材。加えて、この15年でカヌレブームの波が2回ほどあり、コンビニスイーツになるレベルまでメジャー化しました。

ミルクティー、あんバター、ショコラ、抹茶などカヌレ自体に材料が練り込んであるものや、外側にイチゴがトッピングされているもの。いろんな味や、見て楽しめるものも増えてきているんです。

多くの人に特別なものとして認知されている一方で、カヌレと聞いて想起されるブランドはまだ存在していない。そこにビジネスチャンスを感じて。MM CANELÉでは、「カヌレを国民食に。」をビジョンに掲げ、大人から子どもまで、みんなが楽しめる選択肢としてカヌレを広げていきたいと思っています。

それから、クリームを外づけにしたのも、カヌレにたっぷりと塗りたくって食べたら、もっと美味しそうと思ったから。それを試したい、みんなにも食べてもらいたくて、今のディップスタイルでの提供に辿り着きました。

だから、ビジネス的な視点はもちろん、カヌレ好きの自分の視点もけっこう入っているんです。

—- オープンから2週間。お店を初めてみてどうですか?

いまはもう、めちゃめちゃ楽しいです。

「このまえ美味しかったから、また来ました」とか、「友だちにプレゼント用として買っていきたいんです」とか、「おしゃれですね」とか。お客さまのレスポンスの速さが1番のうれしいポイント。

あとはなんだろう、実際にお店に立ってみると課題や難しさも感じますね。うちはテイクアウト専門でやっていて、効率よくさばこうと思ったら、スマホで注文も決済も完了させて、レジでは商品を渡すだけ、みたいな。でもそれって、従業員との触れ合いがないし、やっぱりお店の雰囲気も摂取できない。

レジ前で悩んでもらえるから、ちょっと話が生まれるとか。そうしたコミュニケーションが発生すること自体がお店のチャーミングさにもつながったりする。自分でお店を運営しているからこそ、本当に必要なものと必要じゃないものが、見えてきてるなって思います。

—- 今後の展開はどんなことを考えているんでしょう。

1店舗だけでなく、2店舗目、3店舗目と出店を広げていきたいので、このお店の地盤をつくっていただける責任者候補の方を募集したいです。

仕事内容はカヌレの製造から販売、新商品の開発、店舗マーケティング、スタッフの採用や育成、顧客体験UXの改善など。多岐にわたりますが、一緒に壁打ちしながらアイデアを出し合い、地域に根付くいいお店づくりをしていきたいです。

あと、うちがチャレンジしたいこととして、従業員の満足度を上げたいというのがあります。やっぱり働いてる人が自社のことを好きでいれば、自発的に改善しようと動いてくれたり、商品のことをまわりに伝えてくれると思うんです。

実際にオープンしてからの数週間で、たくさんのアイデアがスタッフから出てきていますし、ご来店いただく方々への気配りや心遣いなんかも感じます。なので、社員に愛される会社は、お客さんにも愛されていくのはやはり正解だろうなと。

条件面については、都内の同じ業態と、この辺りの条件を調べて、一番高い金額で設定しました、業績がよければ、雇用形態に関わらず、賞与も出したいと思っています。

それからみんなでドレスコードを決めて、都内の一流ホテルで食事をするとか。もちろん費用は会社持ちで。世の中のいいサービスを体験したことが、日々の接客に活きたり、日々の業務のモチベーションにもつながると思うんですよね。

—- 最後に、上田さんにとっての「自分の仕事」ってなんでしょう。

うーん…証明というか。「答え合わせをするのが自分の仕事」だと思います。

数学で図形の証明ってやったじゃないですか。問題文が虫食いになっていて、AならばBという正しい主張をする。先に答えがあって、その答えになる過程を説明するという問題。

数学なのに解答欄を文章で埋めるというのが衝撃的だったんですけど、日常生活でもこういうことがあると思うんです。自分だったらこうするのにとか、こうしたほうがみんな喜ぶのになって。

そういう考えが浮かんだときに、多くの場合は、それを実践せずに流してしまっていると思います。でも、その直感が正しいかどうかを僕は実践したい。

たとえば、従業員を大切にしたら、結果的に会社が伸びるってことを証明したい。ボイスを立ち上げたのも同じ理由ですよね。

直感から入るから、間違っていても気持ちがいいです。間違えてた〜!になるんですよ。それでみんなにすぐごめんなさいって言って、意見やフィードバックを受け入れて反映していく。

努力と成果の繋がりが見える、その答え合わせがしたくて僕は仕事をしているんだと思います。

(2025/03/28 取材 杉本丞)

このコラムは、わたしたちのオフィスがある東京・清澄白河でさまざまな人に会いに行き、「自分の仕事」のヒントをあつめる企画です。

問い合わせ・応募する

おすすめの記事