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伝統と現代の
心地いいバランス
香りの世界へようこそ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

平安時代、貴族にとって「香り」は、自己表現の手段だったといいます。

相手の記憶に残るように、自分だけの香りを調合する。

目には見えないし、言葉で説明するのはむずかしいもの。でも、誰かとつながる手段になる。

香りを通じたコミュニケーションは、現代にも受け継がれていると思います。

「麻布 香雅堂(こうがどう)」は、和の香りの専門店。

日本の伝統芸道「香道」の歴史を汲みながら、化粧品やアート、飲食物など、さまざまな分野とコラボレーションして、香りを開発。伝統と現代を柔らかに交えながら、香りの可能性を追求してきました。

今回、さまざまなコラボレーションプロジェクトの進行・運営を担うディレクター候補を募集します。

香りのことは、これから学べば大丈夫。まずはお店での接客を中心に、少しずつ仕事の範囲を広げていきます。

あわせて、店舗での事務作業や接客を主に担うパートスタッフも募集中。

歴史や文化に触れることが好きな人。せっかく仕事をするなら、自分の好きな世界に関わっていたいと思う人は、ぜひ読み進めてみてください。



東京・港区。

麻布十番駅から歩いて5分ほどの静かな通りにあるのが、麻布 香雅堂。

どこか懐かしい和の香りが漂う店内には、お線香やかおり袋などが丁寧に陳列されている。

「どうもどうも!」と、代表の山田悠介さんが迎えてくれた。

フランクでとても話しやすい方。IT業界を経て2011年に家業の香雅堂に入社し、代表を継いで8年になる。

香雅堂は、京都の歴史ある香木店出身である悠介さんのお父さんが、1983年にオープンしたお店。

香木(こうぼく)とは、主に東南アジアで産出される、香りを発する天然の樹木のこと。

小さくカットされた香木のかけらを、炭で温めた灰の上で焚く。ほのかに漂う香りをたのしむのが、茶道・華道と並ぶ日本三大芸道のひとつ「香道」だ。

身も心も、空間も、静かに落ち着いた状態で、深く香りを感じていく。

「香雅堂のことを伝えるとき、大きく2つの側面があります。一つは、伝統的な香道の流れを汲んでいるという側面。日本に数少ない老舗の流れをもつお店だからこそ扱える最高峰の香木があって。そういった良質な素材を活かした商品のラインナップが特徴です」

「もう一つは、伝統的な要素を持ちながらも、オルタナティブな面があるところ」

オルタナティブ?

「香りの老舗の多くは、本場の京都にあります。そこにリスペクトは持っているけれど、同じことをやってもしょうがない。東京にあるからこそ、いい意味で伝統を意識しすぎず、この文化をみんなに楽しく伝える役割を担っていきたい」

立地だけでなく、悠介さんや、副代表を務める妻の真理子さんのフットワークの軽さも、香雅堂の雰囲気をつくっている。

「僕らはもともと香道に触れてきたわけではないし、いまだにお香の世界にどっぷり浸かっているわけじゃないんです。だからこそ、こだわりを持ちすぎず、素直にお客さんの要望を受け止められる。いろんな人と風通しよくつながって、いいものをつくれているんじゃないかな」

近年増えているのが、さまざまな業界とのコラボレーションプロジェクト。

根津美術館のミュージアムショップで販売するお香や、セレクトショップ・ブランドのARTS & SCIENCEのサシェなど、オリジナル商品を開発。インスタレーションの演出や、大学の研究室での実験に協力することもある。

さまざまな領域と交わりながら、香りの可能性を探ってきた。

2022年には、三浦半島の海沿いにあるgallery naguからの依頼で、「うつろひ」をテーマにお香を開発。現地では、香道の体験イベントも実施した。

「ギャラリーが持つ雰囲気、静かな穏やかさや透明な光をイメージして香りをつくりました」

「五感って抽象的なもので、答えがないですよね。対話しながら理解を深めていく過程は、いつもおもしろいなと思います。場の雰囲気を感じたり、イメージする景色の写真を見たりしながら、共通認識をつくり上げていきます」

今回入る人は、将来的にはディレクターとして、悠介さんやほかのスタッフと協力しながらプロジェクトを進めていく。

さまざまな業界の人と日々接点が生まれるなかで、自分の感性もきっと磨かれていく仕事だと思う。

「これから、香雅堂2.0がはじまるというか。会社は新たなフェーズに入ろうとしています」

先代から続いてきた伝統的な事業は、時代の流れに合わせて一部整理。一方で、コラボレーションなどの新たな取り組みを、さらに増やしていこうとしている。

たとえば、展示会に出展したり、さまざまな業界の人との対談を発信してみたり。

香りの楽しさを伝えながら、つながる機会をどんどん生み出していきたい。

「これまでの時代と同じビジネススタイルを、ずっと維持し続けるのはむずかしい。でも、形を変えて文化をつないでいくことには、すごく価値があると思っています。僕らは、いろんな方々と一緒に可能性を広げながら、これからの形でお香の文化を伝えていきたい」

新しく入る人は、1〜2年は店舗での接客を中心に、特殊な香りの世界について知識を身につけていく。

企画やプロジェクト運営などの経験がある人でも、まずは基礎となるお店の仕事を大切にしてほしい。

「重視したいのはスキルや経験よりも、伝えたことをちゃんと理解して、素直に吸収できること。結構な頻度で新しいことが起きるので、柔軟に前向きに、一緒に取り組んでくれる方が来てくれたらと思っています」



プロジェクトの進行管理と店舗での接客を担っているのが、入社3年目の磯山さん。

これから入る人の一歩先をゆく先輩、というイメージで、同じような仕事に取り組んでいくことになる。

普段お店でどんなふうにお客さんと接しているのか、磯山さんと会話しているとイメージが湧いてくる。

「月に一度お届けする、お香の定期便サービスがありまして。今月の香りは、広々とした海のイメージでつくられた『海の原』というお香です」

「ためしに焚いてみましょうか」

そういって、棚の奥から道具を取り出し、お線香を焚いてくれる。

最初は、なかなか香りが感じられない。しばらくすると、あまり嗅いだことがない、印象的だけれど落ち着く香りが身体に入ってくる。

「この子は個性派なので、好ききらいが分かれるかもしれません。香料のひとつに、『貝香』という巻貝の蓋が使われていて。潮っぽさを感じられる仕上がりです」

普段からよく試し焚きをするんですか?

「よくおすすめしますね。見かけはどれも同じ茶色でも、複数を焚き比べていただくと、全然違うことがわかるんです。お客さまの好きな香りを、一緒に探していくようなつもりで。『これが好き』と言ってもらえるものが見つかると、やったー!って思います」

訪れるお客さんは1日平均10組ほど。落ち着いて業務を覚えていける環境だと思う。

アートや歴史、日本に限らず西洋のものも。広く文化に触れることが子どものころから好きだったという磯山さん。美術館や博物館に足繁く通い、図録も端から端まで、じっくり読むという。

「もともとは長くホテルのフロントで働いていました。10年ほど前、麻布十番のカフェで香雅堂のフリーペーパーを見つけて、お店を訪れたのが最初です」

初めて触れる香りの世界はもちろん、悠介さんたちの人柄に惹かれたという。

数年後、スタッフ募集のタイミングでご縁があり、入社することになった。

「香雅堂が目指すお香業界のこれからを見てみたい。自分もチームの一員として取り組むことが楽しい、というのが一番の原動力です。伝統文化の世界の一翼を担えているのも魅力ですね」

ただ、業界は特殊ではあるものの、接客や仕事の組み立て方など、実務内容はホテル時代とは大きく変わらないそう。

たとえばプロジェクトを進める場合、磯山さんは主に製造の進行管理を担っていく。

悠介さんがクライアントと決定した香りをもとに、線香職人や調香師に発注。お客さんとの納期や支払いの調整など、関係する人たちと丁寧にコミュニケーションをとりながら、スケジュールを管理していく。

「リピーターさんからの、パッケージを一部変更したいという依頼に、わたしだけで取り組んだこともありました。自分のアイデアが通ったり、自由度も高い環境です」

「直属の上司が社長なので、ダイレクトなんですよね。会社の方針が急に変わって、臨機応変に対応することもある。そういうときでもすんなり受け止められる方のほうが、フィットする環境だと思います」



新しく入る人の指導役になるのが、入社7年目の松本さん。

学生時代は日本美術史を研究。日本仕事百貨の募集を見て、新卒で香雅堂に入社した。

1年間の産休・育休を経て、子育てをしながら働いている。来年からは、フルリモートワークになる可能性もあるとのこと。

今はECサイトの運営や受発注対応など、事務方の仕事が中心の松本さん。

とはいえ、代表夫妻のほか正社員2名の小さなお店。

接客や開店準備、軒先の金魚や植物の世話まで、いろいろな仕事をみんなで分け合っている。

「小さな組織でマルチタスクなので、柔軟さが求められますし、自分で考えて動くことも大事です。お願いされた仕事を、どんな手順やスケジュールで終わらせるか、自分自身で組み立てる必要があるので」

「もちろん最初からはむずかしいですし、少しずつで。いっぱいいっぱいになりそうだったら、周囲に相談することも大切だと思います」

香雅堂には、どんな人が合うと思いますか?

「そうですね… 香雅堂のよさは、伝統を引用しながら、現代の生活に馴染むものをつくっていること。ほどよい距離感で伝統と現代のあいだにいられるので、働く人も『こうあるべき』という思考は持たず、フラットに向き合えると働きやすいと思います」

「残業もないに等しいですし、メリハリのある職場です。仕事はきっちりやりながら、プライベートの生活も大切にしたい人には、とても向いているかなと思います」



香雅堂のみなさんから感じられるのは、地に足がついた柔らかさ。

自分らしく、いいバランスで香りの世界と関わっていけると、長く心地よく働いていけると思います。

伝統と新しさ、どちらにも丁寧に向き合いながら、香雅堂からどんな香りが生まれていくのか。これからをつくる一員になっていくことは、きっとおもしろいはずです。

(2025/04/18 取材 増田早紀)

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