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面白くてしょうがない
努力の数だけ、前に進める
吹きガラス職人の道

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

カラフルな色であふれる、小樽ガラスや切子など。

北海道・小樽にある深川硝子工芸では、すべてドロドロの液体の状態から、一つひとつを職人さんの手でつくっています。

今回募集するのは「吹き」を担当する職人見習い。未経験でも大丈夫。

ガラスづくりのなかでも「吹き」はイメージしやすい工程かもしれません。長い棒を回しながら息を吹き入れ、ガラスを膨らませて原型をつくる。

続けていく努力と根性が必要な職人の世界。作業場は炉が並んでいるため暑く、体力仕事でもあります。

一方で最近は女性も活躍しており、より働きやすい環境にするため試行錯誤しているところ。社長とも距離が近く、相談しやすい環境です。

ものづくりに興味がある人。美しいガラスに興味がある人。ぜひ読み進めてみてください。

 

深川硝子工芸がある、北海道の小樽へ。新千歳空港から一本で行くことができ、小樽駅の一つ隣、南小樽駅が最寄りになる。

駅から歩いて5分ほど。いわゆる観光地からは少し離れた、海沿いの静かな雰囲気のまちだ。

訪れるのは3度目になる。工場の外観を撮影していると、社長の出口さんが入り口から手を振ってくれた。

中に入り、1階のショールームで話を聞く。

「遠くからありがとうございます。以前の募集では、おかげさまでいい新人が入ってくれて。吹きの現場の雰囲気もまた変わりましたね」

創業100年を超える深川硝子工芸。名に「深川」とあるように、以前は東京の深川にあった。

卸先への利便性などから数十年前に小樽へ移転。創業から今まで、原料からガラス製品をつくり、各地へ卸している。

今必要としているのが、吹き職人。

昨年の求人で増えたものの、さらに2人ほど増員したいのだとか。

「吹きの仕事は、職人仕事で技術も磨いていかないといけないし、現場も暑くて夏はとくにつらい。ただ、そのぶんものづくりのやりがいや、達成感はあると思っていて」

「今回は一番ベテランの専務と、昨年の日本仕事百貨の記事で入ってくれた新人に話してもらうので、二人の話からうちの雰囲気を感じ取ってもらえたらいいなと思っています」

工場長でもある専務は、出口さんいわく熱血漢。ずっとガラスのことを考えているような人なのだとか。

今年入った方も、ガラスに対するパッションがあり、練習熱心。まだ入社4ヶ月だけれど、どんどん成長していっているそう。

「二人とも、とにかくものづくりが好きだし、なんか楽しそうなんですよね。やらされてる感が一切ない、っていうのかな」

「今まで吹き職人は男性が多かったけど、女性の職人も増えてほしいと思っていて。たとえば重いものは先に男性が運ぶようにするとか、力仕事も工夫次第でどうとでもできるじゃないですか」

女性が働きやすく、活躍できる町工場へ。今年の夏から女性スタッフを中心に意見を集めて、働きやすい環境づくりに取り組んでいく予定なのだとか。

「やっぱりガラスが好きな人に来てもらいたいですよね。そこに尽きるのかなって。やってみなきゃわからない部分もあるけど、ものづくりに喜びを感じられる人だと、楽しく働けると思います」

「あとは最近頑張って会社的にも給与を上げてるんで。結婚した従業員はみんな家と車買うんですよ。それが一番うれしかったりします」

 

続いて話を聞いたのは、専務の日野森(ひのもり)さん。

深川硝子工芸で働き始めて29年目のベテラン。小樽に移転する前、深川に工場があったころから働いている。

「23歳から働き始めて、今は52歳になりました。吹きのなかでは一番長く働いていますね」

東京にいたときはフリーターだったそう。偶然、深川硝子工芸の募集を見つけ就職し、小樽にもついていく決断をした。

「今の妻とは東京にいるときにお付き合いしていて、小樽で結婚しました。子どもも小樽で生まれたんですが、そのときから仕事への覚悟ができたんですよね。それまでは食べていけたらいいかな、という感じだったのが、もっと責任を持って仕事に向き合おうと思うようになったんです」

「あとはね、やり始めたら楽しくてしょうがなかったんですよね」

楽しくてしょうがない。

「そう。やってみたら、面白くて楽しくてしょうがない。ひたすら練習して。いわばガムシャラですよね」

「やればやるだけ上達するし、上手くなっている実感がある。同じことの繰り返しのようで、とても奥深いのが職人の仕事なんですよ」

日野森さんのように、仕事に対して楽しいと思える人って、どんな人なんでしょう。

「そうですね… 目が違うっていうのは一つあるかもしれない」

目が違う?

「ギラギラしてる。なんて言うんですかね、簡単にいうと一生懸命すぎて、休みなさいってこっちから言っちゃうくらいの人」

「そういう人って伸びも早いから、まわりの職人たちも育てようっていう気持ちになるんです。次に話してくれる子は、まさにそんな感じですよ」

頑張る理由はなんでもいい、と日野森さん。お金がほしいからでもいいし、職人として技術を高めたいからでもいい。

技術が上がっていけば評価も上がり、給与も増えていく。逆に現状に甘んじて努力せずにいる人は、成長していくのは難しい。

「センスとかもあるけど、それ以上に努力できるかどうか。失敗したっていいんですよ、それが経験になるから。どれだけ経験を蓄積して記憶に残せるかが大事なんじゃないかな」

 

それを体現しているのが、入社4ヶ月の寺島さん。

「私、日本仕事百貨すごく好きで、愛読者なんですよ。入社のきっかけも昨年の記事だったので、感謝しかないです」

出身は札幌。小樽は距離的にも近かったこともあり、記事を読んで応募した。

「もともとは人材紹介の会社で事務をしていました。正直、前の会社でもけっこう楽しく働いていたので、別に転職したいとかは思っていなかったんですけど。偶然あの記事に出会ってしまった、という感じですね(笑)」

「あと、30歳を超えたぐらいから、何をして生きていくのがいいのかな、みたいなことをぼんやり考えていて。そのなかにものづくりへの憧れがあったのも大きかったです。0から形のあるものをつくるってほんと魔法みたいじゃないですか。それってめっちゃかっこいいなって」

未経験から挑戦できるというのも寺島さんの背中を押した。

最初はどんな仕事からはじめたんでしょう。

「最初は『運び』からですね。吹きが終わったガラス製品を徐冷炉に入れる作業で、新人はそこからはじまります。今は役割が変わって『下玉づくり』を任されています」

「下玉づくり」とは、ガラス製品をつくるために必要な量の小さいガラス玉を、炉から出したガラスで竿の先につくること。

「できることを増やしたくて、とにかくがんばってます。まだまだ完璧ではなくて。その後の工程で先輩方がうまく仕上げてくださっている状況なので。修行あるのみですね」

もう必死ですよ、と繰り返しながらも笑顔で語ってくれる寺島さん。

「必死ですけど、すごく楽しいんですよ。難しいなっていうのと、楽しいなっていうのが両方ある感じ。入社してから毎日楽しくて。できない苦しさもあるんですけど、できるようになる楽しさもあるというか… とにかく楽しいです本当に(笑)」

「1本の竿をリレーして、玉をつくって色をつけて…。そうしてドロドロのガラスの種が、一つのグラスになるって、すごいことだと思うんです。一人ひとりが自分の持ち場にプライドをもって真剣に仕事をしているのが、めちゃくちゃかっこいいんですよ」

全員が真剣に向き合っているからこそ、成功もあれば失敗することもある。寺島さんも「トラウマエピソードが…」と話してくれた。

「運びのときに、商品がまっすぐ置けるようにグラスの底を平らに加工するんです。それができていないものはゴロゴロして立たないから『ゴロ』って呼んでるんですけど」

「私が運びをした100個以上のぐい呑みをゴロにさせちゃったことがあって。最後に底をちゃんと撫でられてなかったんですよね。ほとんどの商品がダメになって、めちゃくちゃへこみました。先輩たちは僕らも確認できてなかったねって、寛大に言ってくれたんですが。今でも思い出したら心がキュッてなります」

失敗も成功も、両方の経験を積み重ねていくことで技術が成長していく。

「もともと体力にあまり自信がなかったんですけど、意外にできました。夏をまだ経験してないんですが、普通に倒れず仕事ができているので、少しずつ体が慣れていくと思いますよ」

炉が並ぶ現場は室温が高く、夏場はかなり暑くなる。体力仕事であるということは覚悟したほうがいいと思う。

ちょっと気になってしまったんですが、腕が…?

「あ、すいません、これも恥ずかしくて。火傷ですね。上手い人は竿にガラスをつけてすぐ炉の前から離れるんですけど、私は下手でずっと炉の前で竿を回しちゃって。長時間いると火傷につながっちゃうんです」

「痛いとかはないし、私は跡が残っちゃうのも別に気にしないのでいいやって思ってるんですけど。でもみんな気にしてくれますね。女性っていうのもあって、気をつけなよって」

体調を気遣ってくれたり、成長を見守ってくれたり。深川硝子工芸では、先輩の職人さんたちが新人を大事に育てていこうとする雰囲気がある。

「玉をつくる練習をずっとしていて。最近みなさんから良くなってきたねって言ってもらえることがちょこちょこ増えてきたんです。それはすごくうれしいですね」

「全然まだまだなんですけど、自分ができるようになってきているのがうれしいのもありますし、新人のことをすごく気にかけてくださるんです。先輩方の温かさを感じますね」

そういう言葉をちゃんとかけてくれるっていいですね。

「そうなんですよ。練習してたらちょっと見に来てくれて、アドバイスくださったりとか。わからないことも、1聞いたら10ぐらい答えてくれたりとか」

「職人の世界って全部見て覚えろみたいな感じなのかなって思っていたんですが、そんなことはないんだなって。ありがたい環境だなって思います」

空き時間には必ず練習しているという寺島さん。そういった姿勢も、まわりの先輩が気にかけてくれる要因なのだろうな。

「新しく入ってくれる人も、私は後輩というより同期だと思っているので。一緒に練習したりとか、相談しながらやったりとか。お互い楽しみながらやれたらうれしいなって思います」

 

努力しないと上手くならない。

当たり前だけれど、すごくシンプルでわかりやすいこと。話を聞いていて、その努力を一生懸命している人たちと、それを真剣に応援してくれる社風がある場所だと思いました。

ここでの時間を心地よく感じる人は、必ずいると思います。

(2025/06/05 取材 稲本琢仙)

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