再開発が進み、高層マンションやショッピングモールが次々と誕生している、豊洲エリア。
最後の大規模再開発プロジェクトが、2025年夏に誕生する「豊洲セイルパーク」です。
手掛けるのは、IHIと三菱地所。訪れる誰もが新しいライフスタイルを創造し、その可能性を広げられるような場を目指しています。
その核となるのが、インキュベーション施設「TOYONOMA」とシェア企業寮「TAMESU」。
そのインキュベーション施設「TOYONOMA」の企画と運営を担うのは、コワーキングスペースやオフィス運営を通じて働く場の可能性を広げてきた、コクヨ&パートナーズ株式会社です。
今回は、TOYONOMAのコミュニティマネージャーと、受付や事務業務を担う運営スタッフを募集します。どちらも、利用者や周辺地域の人々とつながり、コミュニティを育む仕事です。
これからどんなことが生まれていくのか、まだ誰も知らない未来を、想像をふくらませながら読んでみてください。
JR品川駅の港南口から徒歩5分。
見えてきたのは、コクヨのオフィスである「THE CAMPUS」。ショップやカフェなど、街に開いたパブリックスペースが併設する施設だ。
ひらけた印象で、とても居心地がいい。
1階の共有スペースで迎えてくれたのが、事業者である三菱地所の菅沼さん。普段は都市開発に携わっている方。
「三菱地所とIHIの代表として話すので、ちょっと緊張しています」と笑顔で話してくれた。
もともと豊洲は、IHIの造船所があったエリア。
IHIと三菱地所はこれまで、豊洲フロントや豊洲フォレシアといったオフィスビルを共同開発してきた。豊洲セイルパークは、この2社が手掛ける豊洲二・三丁目地区最後の大規模再開発プロジェクト。
「豊洲は、大企業のオフィスやタワーマンション、商業施設などが共存する『職住遊学』のまち。ビジネスと暮らしがほど近くにあるのは、都内でも珍しい特徴だと考えています」
「ですがこれまでは、働く人、住む人、訪れる人それぞれがうまく結びついていないという課題がありました。豊洲セイルパークは、多様な人々が交わり、新しい暮らしが生まれる『結節点』となるような場所を目指しています」
豊洲セイルパークは、A棟のオフィスビル、B棟には商業施設のほか、インキュベーション施設「TOYONOMA」と、シェア企業寮「TAMESU」が展開する複合施設。
建物は今年6月末に竣工予定。7月末に商業施設が開業し、そのほかの施設も、上半期中に順次オープン予定だ。
TOYONOMAは、大企業やスタートアップが地域住民を巻き込み、暮らしにまつわる新しいビジネスを生み出す場。TAMESUは、そこで生まれたアイデアを暮らしながら試せる空間として機能する。
そうしてブラッシュアップされたものが、豊洲から新しい暮らしとして発信されるよう、セイルパークと名づけられた。
「私がデベロッパーを志したきっかけも、自分が手がけたまちで、誰かの思い出やモチベーションが生まれること。この場所で生まれるコミュニケーションやつながりが、訪れた人の心に残り、新しい挑戦や日々の活力につながる。それこそが、豊かな暮らしだと信じています」
大手町や神保町といった、パッと思いつく東京の地名は、その場所でどんな人がどんな時間を過ごしているか、なんとなくイメージがつきやすい。豊洲は、まだその輪郭が定まっていないまちなんだと思う。
「その通りですね。今回のプロジェクトによって、豊洲がどんな場になっていくのか、まだ誰もわからない。これからの豊洲を定義していく、そんな未知の可能性に、私自身とてもわくわくしています」
TOYONOMAの着想は、いま話を聞いている「THE CAMPUS」から生まれた。もともとは普通のオフィスだった場所を、開かれた場に変えた実績が、IHIと三菱地所の目に留まった。
「TOYONOMAは、単なるスタートアップのオフィスではなく、地域住民やワーカーが気軽に立ち寄り、暮らしにまつわる新しい挑戦を試せる『ライフスタイルラボ』を目指しています」
そう続けてくれたのが、コクヨ&パートナーズの鷲見(すみ)さん。
THE CAMPUSや、コクヨ初の生活実験型集合住宅「THE CAMPUS FLATS」など、さまざまな用途のシェアワークスペースの立ち上げに携わった経験豊富な方。今回のプロジェクトでも、運営設計と企画に関わっている。
鷲見さんの役割は、TOYONOMAの運営を軌道に乗せること。開業後は、新しく加わるスタッフに半年ほど並走しながら、コミュニティづくりをサポートしてくれるとのこと。
「TOYONOMAは、コクヨ&パートナーズがこれまで培ってきたノウハウをすべて注ぎ込んだ、我々としてもチャレンジングなプロジェクトです」
コンセプトであるライフスタイルラボとは、「食」「健康」「学び」「住まい」の4つのテーマで、豊洲らしい新しいライフスタイルをつくり出すことを目指している。
「インキュベーション施設って、スタートアップが集まるオフィスというイメージが強いですよね。でもTOYONOMAは、暮らす人、働く人、訪れる人、属性の違うさまざまな人たちが自然と出会えるような、開かれた場所を目指しています」
鷲見さんがパースを見せながら、施設の説明をしてくれる。
2階ワンフロアに広がるTOYONOMAは、「暮らし」をテーマにした設計が特徴。
リビングのような広々としたラウンジ「HIBI NOMA」は、ゆったりとした居心地で、誰でも時間単位で利用可能。しっかり集中して働ける、月額会員専用のエリアもある。
50〜100人収容可能なホール「HONNOMA」は、ライフスタイルをテーマに選書された本が楽しめるライブラリーの機能も備えている。
シェアキッチンは、菓子・惣菜製造と飲食店の営業許可を施設側で取得しているため、食品衛生責任者の資格があれば1日からポップアップ店舗を始められる。
ほかにも、配信設備付きの個室、ヨガやダンスレッスンに使える一面鏡張りのスタジオなど。働くだけでなく、暮らしの興味を自由に試せる環境が整っている。
「暮らしにまつわる挑戦なら、どんなことでも試せる場にしたい。それを応援できるような場として、機能させていきたいんです」
豊洲の「職住遊学」という特性を活かし、イベントを通じて地域とのつながりを深める取り組みも進めていく予定。
その一つが、ピッチコンテスト。
スタートアップや新規事業開発部門から、これからのライフスタイルを生み出すためのビジネスアイデアを幅広く募集。
最終のピッチコンテストでは、企業審査員による評価だけでなく、一般枠も設け、参加した人が生活者視点での応援を形にする投票制度も設ける予定だ。
「ピッチコンテストは、クラウドファンディングのリアル版のような。目の前で、新しいアイデアやサービスが生まれる瞬間は、きっとわくわくするはず。訪れた誰もが、その一部になれる場をつくりたい」
「生まれた製品やサービスがブラッシュアップされ、訪れる人が新しい暮らしを取り入れる。そんな循環が、TOYONOMAで活性化することを目指しています」
そんな地域との循環を生むきっかけをつくるため発足したのが、「TOYOSU GoodNeighbors」というコミュニティ。
働く人も暮らす人も、大人も子どもも、働くと暮らすをよりよくする学びや探求ができるイベントを定期開催している。
今年2月には、豊洲の複数企業と豊洲公園と一緒に、「Good Neighbors Week」というイベントも開催。
キッチンカーやランニングイベント、ワークショップを通じて、豊洲の企業で働く人から、地域住民まで幅広く参加できる企画だ。
2025年2月の開催には、期間中に1000人ほどが訪れた。過去に2回開催していて、完成後も定期的に開催する予定だ。
「従来のインキュベーション施設は閉じたイメージですが、TOYONOMAは地域に開かれた場。大人が働く横で、子どもが宿題をするみたいな場面が、豊洲は似合うと思うんですよね」
「これからの未来の暮らしや働き方は、そういった生活者が主役。TOYONOMAでワクワクするサービスや商品に出会い、自分のライフスタイルも豊かになっていく、それをみんなで応援し、共感しあう。そんな共創コミュニティを育む場を目指しています」
「包容力があり、人や地域が交わる場づくりが根っから好きな人。まさに、適任なんです」と鷲見さんが紹介してくれたのが、コクヨ&パートナーズの武田さん。
ふだんは、複数施設のサービスマネージャーを統括するグループリーダーを務めている。また自らもコミュニティマネージャーとして活動しながら、コミュニティ醸成に特化したチームを立ち上げて、サービス開発を推進している。
今回の豊洲セイルパークでは、現場には常駐しないけれど、日々連携し、サポートをしてくれる存在。
さまざまな施設を運営してきたコクヨ&パートナーズだけれど、コミュニティマネージャーを専任で配置するのは、TOYONOMAがはじめてだそう。
「コミュニティマネージャーには、とくに利用者と積極的にコミュニケーションをとってほしくて。利用者の要望や課題を拾って、『こんなイベントがあれば解決する』『あの会員とこの会員をつなげば新しいアイデアが生まれる』といった気づきから、企画や交流の場につなげられるといいと思います」
たとえば、仕事の合間に利用者同士の交流を深めるイベントを取り入れてみたり、地域住民とワーカーをつなぐマルシェなどのイベントを企画したり。
アイデアがあれば、どんどん形にしていくのがよさそうだ。
もう一方の運営スタッフは、利用者が快適に過ごせる環境を支える人。
受付での来客対応、ドロップイン利用者や月額会員のサポート、会議室やシェアキッチンの予約管理、施設メンテナンスなどの事務作業を担当する。
ときにはコミュニティマネージャーと連携し、イベントやマルシェの運営を補助することも。それぞれが得意なことを活かして、互いに補い合えるような、チームワークが鍵になると思う。
「そうですね、個人というよりチームで働くイメージです。運営マニュアルもありますし、経験豊富なサービスマネージャーを現場に配属することも決定しているので、安心して業務に取り組める環境だと思います」
「経験やスキルだけではなく、『地域の人に愛される場所となって、豊洲というまちをもっと豊かにしたい』という本来の目的をきちんと理解していれば、考えるヒントも自ずと出てくるはず」
TOYONOMAは、豊洲のまちづくりを体現する場。一人ひとりの暮らしに寄り添うことで、まち全体を活性化させる可能性を秘めていると思う。
「コミュニティもまちづくりも、正解はないですよね。新しく加わる方が、利用者と関わりながらいろいろと試すなかで、私が並走できればいいなと考えています」
キャリアアップを目指す人にも、TOYONOMAはチャンスの機会。
「5年10年と同じ場所で働くのは難しい時代。将来地元でまちづくりやコミュニティづくりをしたい人は、貴重な経験を積めるはずです」
過去には、コクヨ&パートナーズが運営するほかの施設で働いたあと、地元で自治体と連携し地域活性に取り組むために卒業した人もいる。
ほかの施設と連携したり、スタッフ同士で交流して新しい取り組みを模索したり、イベントで登壇したりする機会もある。
「業務を単なるルーティンとしてこなすのではなく、刺激として捉えられる人だと、たのしく仕事ができると思います」
関わる人みんなで1からつくる、豊洲セイルパークという新しいチャレンジ。
日々、いろんな会社の風土を知り、新しい人と出会い、地域を知ること。その経験は、ほかにはないおもしろさがあるはず。
ここで過ごしたら、自分はどんなチャレンジをしたくなるんだろう。そんな想像が湧いてくる場所だと思います。
(2025/05/01 取材 田辺宏太)