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静岡県の三島と熱海の真ん中あたり。四方を山に囲まれた、一周3kmほどの小さな盆地があります。
山からの風が通り抜けることから、風の谷とも呼ばれる、丹那(たんな)盆地。
酪農の里として知られ、この地でつくられる「丹那3.6牛乳」は、70年ものあいだ学校給食で提供され、地域の人々に根づいてきました。

この土地の酪農文化を伝えていくため、牛乳製造工場の隣に28年前につくられた施設が「酪農王国 オラッチェ」。
丹那牛乳を使った乳製品づくりや、動物たちとの触れ合い、野菜の収穫など、大地の恵を感じられる体験ができる場所です。
このオラッチェの運営に携わる、マネージャーを募集します。スタッフのマネジメントや収支管理が主な仕事ですが、施設と会社をよりよくしていくための取り組みに広く関わってほしいそう。
店長やチームリーダーなどのマネジメント経験があると役立ちますが、絶対ではありません。経験が浅くても、興味を持ったらまずは一歩踏み出してほしいです。
あわせて、アルバイトの事務スタッフも募集します。
自然や生きものを身近に感じられる仕事がしたい、自分の働きで会社がよくなるという手応えがほしい。そんな人に届いてほしいです。
東京駅から新幹線に乗り、三島までは50分。あっという間に到着するので、新幹線で通勤する人が多いというのもよくわかる。
三島駅から車で30分ほど、熱海方面に戻りながら、山を登っていく。
木々の間からは、小ぢんまりとした丹那盆地が見える。右側にある赤い屋根の建物群がオラッチェだ。

「この盆地内には、信号がないんですよ。のどかでしょう」
車でここまで連れてきてくれたのは、オラッチェを運営する酪農王国株式会社代表の伊藤さん。
オラッチェがある函南町の隣町、三島市の出身の44歳。入社10年目で、今年代表に就任したばかり。
今回は伊藤さんの右腕として、さまざまな取り組みに関わっていく人を募集する。

「この盆地は、もともとわさび田があるほど、水が豊かな地域でした。でも1918年からの、大規模な丹那トンネルの地下工事で水が枯れてしまった。だから地域の主産業を、あまり水を使わない酪農に転換することになったんです」
「酪農を中心に盆地内が栄えるようになると、牛の堆肥で土が再び豊かになって、農業も復活。この地域は、全部循環しているんです」

このエリアに工場を構える丹那牛乳は、静岡県東部地区のシェアナンバーワン。酪農家と工場の距離が近く、鮮度のよさが自慢だ。
この生乳から生まれた加工品が、オラッチェ内の売店で販売されたり、ソフトクリームやヨーグルトとなって提供されたりしている。
「オラッチェは、丹那牛乳の製造元であるJA函南東部、函南町、それといくつかの会社が出資してつくられた第三セクター。ここは、丹那盆地の営みを伝えていくための場なんです」

「かつて100軒以上あった酪農家は、今は9軒ほど。酪農家を守らないと牛乳はつくれないし、オラッチェは成り立たない。この豊かな自然をどう残して、地域を守っていくか。そのためにしっかり稼いで、自分たちも酪農家も豊かになることを目指していきたいんです」
地域や施設のこととあわせて、ぜひ聞いてみたいのが、伊藤さん自身のこと。
どんな経緯で、今に至るのだろう。
「僕、東京で6年間大学に通ったんだけど、卒業してないんですよ。ボウリングのアルバイトに夢中になっちゃって、そのまま就職したんです」
そのボウリング場は、偶然にも静岡の会社。途中地元の店舗に移り、支配人までつとめ、計16年働いたものの、最終的には倒産してしまう。
同僚がオラッチェに移ることになり、誘われたのが入社のきっかけ。前職から一緒に働いてきた人たちが今も3人いるという。
「酪農とか食とか、もともとはまったく興味なかったんです。でも、やっぱり丹那牛乳のブランドは大きかったですね。子どものころから馴染みがあるし、全然知らない会社に行く感覚ではなかった」

「ボウリングって、ボウリング場に来なければできない。でもここは商品があるから、来られない人にはものを売ればいい。最初はすごく新鮮でした。こんなこともできるんだ!外に行ってお金をつくれるんだ!って。その感覚はずっと変わりません」
一通り現場を学んだ後、任されたのは集客の強化。
第3セクターが運営する入場無料の施設なので、赤字経営が当たり前。伊藤さんは旅行会社に営業をかけ、バスツアーの団体客を呼び込んだ。
「急にいそがしくなっちゃって、現場のみんなからは、余計なことしないでって言われましたよ。それまで穏やかに働けていたのにって」
その後コロナ禍でダメージを受けるも、道の駅のショップを立て直したり、会社全体の経営に関わるようになったりと、中枢として動いてきた伊藤さん。
そして今年、代表に。
逆風があっても、歩みを止めなかったのはどうしてなんですか?
「前の会社が一生懸命がんばっていたのになくなっちゃったから、2回目はいやなんです。続けたいっていう気持ちが一番ですね」
「そのために、お金儲けもしっかりしたい。ただ気持ちだけでがんばるんじゃなくて、きちんと数字を上げて持続していきたい。経営状況も組織づくりも、よくはなっているけれど、まだまだ全然です。できる限りのことをやったって思えないと、自分も納得できませんから」

まっすぐに言葉を紡ぐ伊藤さん。
やるべきことをやり切るための力になってくれる人を、今回は求めている。
「今、この施設のマネージャーのポジションが空いていて、日々の運営まで僕が見ています。一方で、根本的な仕組みの見直しや新規事業開発のような、中長期的な取り組みもやっていくべきで。任せられる部分はどんどん任せていきたいんです」
新しく入る人は、基本的には、まず施設のマネージャーを目指してもらう。
6ヶ月の試用期間中は各セクションをまわり、現場の仕事を体感し、スタッフとコミュニケーションをとり、土台を固める。
その後、パートスタッフも含めた30人ほどのマネジメントと、施設の収支管理などが主な役割になっていく。
より経験豊富な人は、新規出店計画を練るなど、早い段階で経営戦略に関わる可能性もある。
どんな役割を担うかは、その人次第。まずはじっくりコミュニケーションをとって、どんな仕事から取り組むか、話し合いながら決めていきたい。

「まずは現場に入って、知る、見る、感じることから。スタッフと信頼関係をつくることも大事です」
「そこで、最初に感じたことを改善していく。たとえば、掃除がされていないとか、挨拶の声が小さいとか、そういうこともあるかもしれない。気づいたことからどんどん解決していってくれたらいいなと思います」
新しく入る人は、伊藤さん以外のスタッフと過ごす時間も長くなる。
まだまだ保守的な考え方の人も多い組織だけれど、若手メンバーは、新しく入る人とほかのスタッフとをつなぐ役割になってくれると思う。
磯野さんは、入社8年目。動物のお世話や畑作業、接客、イベントの運営などを幅広く担当している。

「もともと動物が好きで、農業にも興味があったので、県内で唯一畜産を学べる農業高校に入りました。高校生のときに、オラッチェにも来たことがあります」
就職先の候補に上がったのは、オラッチェと愛知にある牧場だった。ここが地元だから就職したわけではなかったんですか?
「全然、エリアにこだわりはなくて。ただ、自分が楽しいと思えるところで働きたいという気持ちでした。動物も農業も、それと子どもも好きで、オラッチェにはそれが全部揃っている。お客さんと話すのは楽しいですよ」

スタッフは20歳から70代前半まで、夏には短期アルバイトで高校生も来るので、年齢層はかなり広い。
お客さんは家族連れが多く、土日や夏休みはとくにいそがしいそう。
社員は、パートスタッフのシフトが空いているところに入ったり、来客状況に応じて事務仕事から接客に切り替えたりと、日々臨機応変に対応している。
磯野さんから見て、伊藤社長はどんな人ですか?
「見ていてくれる人だなと思います。いいところだけじゃなくて、ミスしたら厳しく怒られるし、マイナスな部分も見ている。社長に注意されることって、ストンと自分の中に入ってくるんですよ」
「イエスマンにならないというか… 集客が見込めなそうなイベントならやめるとか、厳しい判断もときには必要だと思うことがあって。マネージャーとして入ってくれる方も、そういう客観的な視点がある人だといいのかなと思っています」
「オラッチェって、子どもが行きたがるスポットなんですよ。うちの子たちも、アイスが食べたいってことあるごとに言います。昔から、このへんの子どもにとっては、そういう場所なんです」
そう話すのは、入社3年目の相原さん。施設内のビール工房で働いている。

前職は、広告代理店。幼いころから馴染みのあったオラッチェでビール製造の仕事があると知り、転職してきた。
「もともとクラフトビールが好きだったので、自分でつくることに興味があって。前職では、自分でつくるというより手配する側だったので、なにかをつくり出す側になりたいという気持ちもあり、30歳になるタイミングで転職を決めました」
まだ下積み期間ではあるものの、気づいたことは積極的に提案している。
たとえば、今取り組んでいるのが、ビールラベルのリニューアルプロジェクト。
「うちで製造しているビールのラベルって、何十年と変わっていなくて。地名や施設名が入っていなくて、お土産としての機能が少し弱いんです」
「仕事の話をすると、『オラッチェってビールつくってるの?』って言われることも多くて。もっと知ってもらいたいと、提案書をつくって社長に決裁をいただき、今は印刷を進めているところです」

新しいラベルはまだ公表できないものの、ポップで柔らかいイメージのものだそう。
「気づいたことを自ら解決していく」という相原さんの姿勢は、伊藤さんが新しく入る人に求めているものと近いように思う。
「社長との距離が近いのはいいところだと思います。決断と行動が早い方なので。がむしゃらな要望は通らないけれど、ちゃんとプロセスまで明確にして筋道立てた提案ができれば、OKが出て進めていける印象です」
相原さんは、どんな人がマネージャーに来てくれたらうれしいですか。
「オラッチェの仕事は、毎日スーツで働くような一般の会社とは違うと思います。山に囲まれた場所で、ゆったりとした時間が流れて、動物もいてビールもあって」
「いいと思ったところは伸ばしてほしいし、おかしいと思ったら正直に改善の提案をしてほしい。社長のスピード感についていきながら、どんどん動いてくれる人が来てくれたらありがたいですね」

今のオラッチェが好き。でも、きっともっとよくできる。みなさんのお話からは、そんな気持ちが滲み出ているようにも感じました。
今ある営みを大切にしながら、それを長く続けていくために。ともに挑戦したいと思える人を待っています。
(2025/06/27 取材 増田早紀)


