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発表するのは、1年間にひとつかふたつ。
長い時間がかかっても、自分たちが納得できるまで丁寧に向き合ってつくりあげる。
そうやって世に送り出されたものは、長いあいだ多くの人に愛されていく。

絵本を中心に、カードや木工のおもちゃなどを企画・制作・販売している、戸田デザイン研究室。
今回募集するのは、制作スタッフ。書店などに置くPOPやポスター、自社のWebサイト用のバナーなどのデザインを中心に担当します。実力次第では、新企画などにも参加していく可能性も。
社員10人ほどの小さな会社なので、事務業務や店頭の設営などにも幅広く関わります。
流れの速い時代のなかで、自分たちが本当にいいと思えるものと、じっくり向き合うものづくり。
デザインに限らず、これまで得てきたさまざまな経験や視点を、活かしていける環境だと思います。
戸田デザイン研究室のオフィスまでは、都営大江戸線の春日駅から歩いて10分ほど。
駅前の商店街を抜けて、お寺のある坂道を登っていく。

この先のマンションの数部屋がオフィスとして使われている。
インターフォンを鳴らして、2階の一室へ。窓からの光が心地よい。
中央にあるテーブルを挟んで、代表の戸田靖さんに話を聞く。包み込まれるような、穏やかな語り口調の方。

「思いのほか、この場所に長くいてしまって。もう30年以上になるので、よっぽど変わり映えしないですよね」
会社のこれまでを尋ねると、そんなふうに話しはじめる。
戸田さんのお父さんである、戸田幸四郎さんが個人で書き上げた1冊の絵本が、戸田デザイン研究室の原点。
当時、幸四郎さんの本業は空間デザイナー。
ただ、店舗は入れ替わりが激しいし、展示会用に什器をつくっても期間が終われば処分されてしまう。そんな消費される商業デザインのあり方に違和感を抱いていた。
「長く残っていくものをつくりたいと、何年もかけて出版に至ったのが、文字からデザインした『あいうえおえほん』です。ひらがなの形そのもののおもしろさを伝えたいという想いが背景にあります」

息子である戸田さんは、以前は出版社や広告制作会社に勤務していた。
お父さんの本の出版を手伝ったことをきっかけに、大企業の枠組みとは異なる自由なものづくりに惹かれる。
そうして、1990年に一緒に立ち上げた会社が、戸田デザイン研究室。
「誰にも縛られずに、自分たちが本当につくりたいと思ったものを、時間がかかってもつくり上げる。納得いくものができたら、それに共感してくれる顔の見える人たちのところで売ってもらう」
「そんなやり方なので出版は年に1冊か2冊で、ときには数年間、何も出ないときもあるくらい。丁寧につくり、丁寧に売ることにどこまでも向き合ってきました」
ビジネスのベースを支えるのは、数あるロングセラー絵本たち。その上に、丹精込めて生み出した新しい作品を積み重ねていく。
ほかのクリエイターとコラボレーションすることもあるし、リングカードや木製玩具など、アウトプットのかたちも柔軟で幅広い。
ビジネスと、妥協しないものづくり。その絶妙なバランスの上に会社は成り立っている。

「僕らは絵本専門の出版社でもないし、幼児教育の専門家でもない。だから『絵本を出版するのが夢です』というような方や『子どもに関わる仕事がしたい』みたいな方は、そういう専門の会社のほうがいいでしょうね」
「ただ、世の中をもっと良くしたいという気持ちはすごくある。そのためには子どものころの経験が大事だと思うから、一番初めに見せてあげたいものをつくる。そういう表現が私たちのデザインなんですよね」
取り扱うテーマは、文字や国旗、地図、数字、時間などが多いものの、そこに込められたメッセージは奥深い。
これから社会を生きる子どもたちに、たくさんのきっかけを示してくれそうだ。
「せっかく今自分たちが生きていて、なにかの巡り合わせでデザインの仕事に携わるのなら。『少しでも社会が良くなるようなものをつくりたい』と考えていくことは、とても大切なんじゃないかと思うんです」

今回募集する制作スタッフが主に取り組む仕事として、店頭のPOPやポスターなど販促物のデザインや、自社サイトとSNSで使用する画像作成がある。
加えて、新作のリリース時には入稿に向けたオペレーション業務も。
そういった仕事を通じて、戸田デザイン研究室のデザインに対する考え方を深めてもらい、いずれは新しいアイデアも提案してくれたらうれしい。

あわせて、請求書の発行や電話対応、商品の発送手配など、日々の事務業務にも対応していく。
「いろんな仕事をするのは大切なことだと思っていて。自分がつくったものがどう売られて、どう利益が上がって自分に還元されるのか、すごくよくわかる。営業スタッフがどんな苦労をしているか、知っておく必要もあります」
「そういう感覚を磨いていくのは、つくり手として大事なこと。やっぱり我々の仕事は、芸術作品じゃなくて、実際に手に取る人をイメージしてものをつくっていくことだと思うので」
社内でとくに幅広い仕事に関わっているのが、ディレクターの大澤さん。
ECサイトのライターや広告などの企画・ディレクションを経験し、ここへやってきた。
「戸田の仕事をそばで見ていると、『子ども向けに噛み砕いてあげよう』なんて発想はなくて。私たちが感じるおもしろいも、子どもたちが感じるおもしろいも、本質的には同じという感覚なんだと思います」

大澤さんの役割のひとつは、書店や百貨店、雑貨店などに向けた制作物のディレクション。
営業スタッフと一緒に取引先のもとに出向き、要望を吸い上げ、デザインの方向性を決めて制作スタッフにつないでいく。
新しく入る人も、大澤さんとコミュニケーションをとりながら進行していくことになる。
「たとえば、そのお店で実施するフェアが、とにかく本をたくさん売ることが目的なのか、コンセプト重視でいくのか。デザインは柔らかいイメージなのか、そうではないシャープなものなのか」
「いろんなことを汲み取って咀嚼して、弊社ならではの提案をする必要があります。私はもちろん、実際に手を動かす制作スタッフも、しっかり理解したうえでベストな形を見つけていきます」
戸田デザイン研究室の考え方やデザインに共感し、大きく取り扱ってくれているお店のひとつが、コレド室町テラスにある「誠品生活 日本橋」。
2022年には、クリスマスシーズンのメインデザインを任された。

『PLAYFULNESS』というテーマをもとに、戸田さんがキービジュアルを描き起こし。
店頭に飾られたクリスマスツリーのオーナメントや大きなポスター、カタログなど、フロア全体を戸田デザイン研究室のクリエイティブが彩った。
「折りに触れてこういうお話をいただけるのは、とてもありがたくて。多くの方に知ってもらうきっかけになるのはもちろん、読者の方に『ここの本、持ってる!』と思ってもらえるのも、うれしいですよね」

大澤さんはどんな人と一緒に働きたいですか?
「与えられたテーマに対して、デザインで応える力が必要になる仕事です。これまで自分のなかに蓄えてきた感覚や、なにを美しいと思うのかという視点。そういう積み重ねのなかから、適したものを見極めてそっと出せる。そんな方と働けたらいいなって」
デザインで応える力。
相手ありきで考えていくとはいえ、これまで自分が培ってきた感性を問われるようなむずかしさがある気がする。
「自分自身を主張しても、仕事にはなりません。いかに的確で豊かなアウトプットができるかが問われます。ジャンルは何でもいいですが、いろいろなものを見て、感じてきたこと。その質と量が、そのままアイデアの豊かさにつながると思います」
「今まで手がけてきたデザインの表現がうちとは違っていても、違うからこその化学反応を期待したい。まずは戸田デザイン研究室の感覚がどんなものか、しっかり見て、吸収してもらえたらと思います」
現在2名いる制作スタッフの一人が、入社5年目のアシスタント・山口さん。

これまで、雑貨店での販売や売り場づくり、ウィンドウディスプレイのデザインなどを経験。
前職のディスプレイ制作の仕事で、夜間の勤務が多かったこともあり、健やかに長く働ける環境を探していた。
「戸田デザイン研究室の、シンプルなデザインに惹かれました。どの絵本もスッキリと洗練されていて、自分が絵本に抱いていた可愛らしいイメージとはいい意味で違っていましたね」
入社の決め手のひとつは、面接が複数回あったことだったそう。
「人間を見る会社なんだなと思いました。面接でも、わたし自身がどんな考えを持っているのかを聞かれましたね。なるべく長く働き続けたかったので、表面的な部分でなく中身を見てくれるところがいいなと感じました」

小さい会社なのでルールが少なかったり、事務業務にも協力し合って対応したり。そういった部分は面接を通じて理解できていたので、入社後のギャップはなかったそう。
むずかしさを感じるのは、デザインへの向き合い方の部分。
「以前ではコスメや家電の機能を伝えるためのデザインが中心でした。みずみずしさとか、おいしいとか便利とか、そういうものをわかりやすく表現していて。なので絵本のように、人によって感じ方が違うものをどう表現するのかという複雑さはありますね」
「このデザインを見た人が、どんな印象を持つのか。どんなふうに我々の商品や想いを見てくれるのか。知識や技術は勉強すればいいだけですが、そうでない部分はとてもむずかしい。だからこそ、ピタリとハマったときがうれしいんですけどね」

前職では時間に追われながら、リクエストにあわせた制作をひたすら続けていたという山口さん。きっと同じような境遇のデザイナーも多いのではと思う。
「いまこの会社にきて、やっと自分は何がやりたいのか、向き合えた感じがしています。やりたいことを考える、それを形にするって、こんなに大変なんだなって。もっと世界や世の中のことをしっかり知りたいと、あらためて感じているところです」
社会に対して、なにかを伝えられるものをつくる。それを生み出す側には、それ相応のエネルギーがいるもの。
常に本質を考え続けていく大変さがある環境だと思います。
ただ、その先にやっとできあがったものが、これからの社会を生きる人たちの心を揺さぶるものになるかもしれない。
そんなデザインにじっくり向き合っていける喜びを、ここで味わってくれたらうれしいです。
(2025/07/29 取材 増田早紀)


