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今日も気分よく
繊細かつ大胆な
noguchiのジュエリーと

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

求人記事の「求める人物像」の欄でよく見かけるのは、スキルや社会経験、人の性格を表す言葉。

ジュエリーブランドnoguchiの場合は少しユニークで、1行目にまず「毎日気分よく過ごしたい人」がくる。

「気分よく過ごしたいって当たり前すぎるかもしれないけど、すごくnoguchiらしい価値観だから、それだ!書いちゃおう!と思って。もともとジュエリー自体が、生活必需品ではなく心の栄養というか、人の気分に密接に関わるものなので」

そう話すのは、ディレクターの佐藤さん。noguchiは、2004年に日本で生まれたブランドで、ファッションの一部として楽しむ、日常のジュエリーを提案しています。

デザインの特徴は、有機的なフォルムがとても繊細な陰影をつくり出すこと。均一すぎない質感が人の肌によく馴染み、幅広い年代にファンがいます。

デザイナーが独学でジュエリーづくりを始めたブランドなので、従来のセオリーとは一線を画した自由さも魅力のひとつ。以前の取材では、そのスタイルを「反逆的な精神」と紹介してくれたスタッフもいました。

そうやって、感じたことを一人ひとりが自分の言葉で伝えられる空気感や関係性もまた、noguchiらしさだと思います。

今回は、販売スタッフを募集します。接客からディスプレイ、DMの写真撮影や文章作成、オンラインコンテンツまわり、イベントの企画運営と業務は多岐にわたります。だからこそ、ひとつのブランドをつくりあげるとはどういうことか、丸ごと体感できるはず。

店長職を希望する場合は経験者が望ましいですが、そのほかのスタッフは未経験、新卒でも大丈夫。20代から50代まで年齢層も幅広い職場です。

 

東京・青山。日本を代表するファッションブランドの本店が集まるエリアの一角に、noguchiのショップはある。

店内には大小さまざまな観葉植物があり、アンティーク家具のような什器のなかにジュエリーが並んでいる。

空間全体に統一感があり、手入れが行き届いていて、落ち着く雰囲気。でもよく見ると、スツールとケースを組み合わせてキャビネットのようにしつらえていたり、シルバーのトレーを裏返してジュエリーの台座にしていたり。

単にデザイン性のある既製品を集めてきたのではなく、ときにはDIY的な要素も交えた工夫で空間が成り立っていることがわかる。

「日中は天井のライトを落として、窓から入る自然光とスポットライトだけを使います。照明が眩しい空間は気分も落ち着かないし、ちょっと暗めのほうがジュエリーもきれいに見えるから」

お店を案内してくれたのは、店長の山田さん。

以前は医療機器の営業というまったく異なる仕事をしていたものの、ファッションへの興味が高じてnoguchiに加わったのが9年ほど前。現在は、青山だけでなく、新宿伊勢丹、丸の内にある3つの店舗に横断的に関わっているという。

山田さんが最近担当したのが、1ヶ月ほど前に発表された新作のディスプレイ。

「SQUARE」をテーマとしたコレクションで、事前に写真で見たときはアールデコのようなクールな印象を受けたけれど、実物はやっぱり独特の柔らかさがある。

「僕は最初に見たとき、黒い背景のなかに置いたらかっこよさそうだなと思って。DMの写真はそのイメージで撮影しました。ただ、お店に出すのは8月のまだ暑い季節だし、ディスプレイは、もう少し明るいイメージでつくり直したんです」

noguchiでは、デザイナーがかたちにしたジュエリーをもとに、ショップスタッフがディスプレイをつくる。それをさらにデザイナーがフィードバックをする、というやりとりを通して、みんなで伝え方を考える。

ジュエリーの陰影が一番きれいに見える角度を求めて、「あと1mmずらそう」という細かい話になることもしばしば。理屈ではなく、人の感じ方を頼りに考える場面も多い。

同業の経験がある人は逆に、今までの知識や常識を一度リセットすることになるかもしれない。

「最初はみんな戸惑うと思います。僕もディスプレイは結構苦戦して、遅くまで一人で残って作業することもありました。『このくらいでいいか』と思っちゃうと、うまくいかないんですけど、『これで、見た人の気分が変わるかな?』という発想で考えていくと、だんだんコツが掴めてきます」

気分の変化というと、人に新鮮な驚きを与えることを想像しがちだけれど、緊張していた気持ちがなんだか安らぐ、という場合もある。

ジュエリーのディスプレイだけでなく、お客さんに出すドリンク選びや椅子の配置など、見た人がどう感じるか、手を動かしながら探っていく。

「一回自分で納得するまでやってみると、だんだんと判断も早くなってきます。スキルが上がるまでの“熟成期間”はある程度必要だったけど、おかげで他の人が同じことで悩んでいるときに、共感的なアドバイスができるようになったと思います」

かっこいい見せ方にこだわる粘り強さは、どこからくるんだろう。山田さんは、日常生活でも何かこだわりってありますか。

「そう言われると、たとえば家を出るときに靴下が洋服と合わないなって気づいたら、玄関で靴を履いた後でも、部屋まで戻って履き替えることはあります。結構ギリギリの時間なのに、そっちを優先してしまう(笑)」

「何にこだわるかはそれぞれ違っても、誰でも似たような部分は持っている気がします。僕の場合は、ファッションが気分に与える影響が大きくて。今までにない洋服の組み合わせをしてみると、いい気持ちで1日をスタートできる。そういう気分の変化は、必ず周りの人にも伝わるものだと思います」

仕事が大変なときでもnoguchiのリングをはめた自分の手元を見て「は〜、きれい」と思うことで気持ちがリセットされて、また頑張れる。お店を訪れるお客さんからも、そんな話を聞くことがあるという。

ジュエリーは結婚や誕生日など、人生の節目に合わせて購入することも多いもの。noguchiでは、子どもの指の大きさに合わせたベビーリングも扱っている。子どもが着けるのではなく、その成長を記憶に留めておくためのもの。

接客のなかで、思いがけず人の大切な想いに触れることもあるという。

 

「こちらから聞き出すというよりは、ふとした瞬間に話してくださる感じです。お店に来て、楽しく会話ができたっていう体験が加わると、もともと何かの記念で買ったジュエリーに、もっと愛着を感じられますよね。だからスタッフには、対話的な関わりを大切にしてほしくて」

そう話すのは、ブランド発足時からデザイナーに伴走してきた佐藤さん。いつも明るく迎えてくれるので、数年ぶりでも、すぐ打ち解けて話してしまうというお客さんの気持ちはよくわかる。

「うちのお店では、『何が流行っているの?』とか『売れ筋はどれ?』といった質問を受けることはほとんどありません」

「予算に合わせて念入りに調べて考えて、これにしようって決めてから来られる方もいらっしゃいますが、お店でいろいろ見ていくうちに『やっぱりこっちのほうが似合いそう』と、自分で納得したものを選び直される方が多いです」

未経験で入社する場合は特に、働きながらジュエリーの扱いに関する知識を身につけていく必要があるけれど、それと同じくらい、目の前の人と向き合って「あ、似合う!」と思える直感も欠かせない。

noguchiでは流行や戦略を意識するよりも、デザイナーが「今、つくりたいもの」をかたちにすることで、20年ブランドが続いてきた。

ショップも、スタッフ一人ひとりの感性のようなもので成り立ってきた部分が大きい。

そのぶん、どうしても各々の感覚に頼って仕事を進めることが多く、スケジュールや予算などの仕組みを論理的に構築していくことは、後手に回ってしまったと佐藤さんは言う。

「今までは、家族経営のようにしていた期間が長かったんです。新人研修もなくて、『とりあえず、やってみて!』って、みんなに任せて乗り切ってもらうような」

「山田くんのように、それを全部受け止めて成長してくれた人もいるけれど、大変だったと思います。イベントとポップアップが重なったりしたときは、本当に心がギューってなるような。もっとみんなが安心して働ける会社になるために、3年くらい前から新しい体制づくりを進めています」

現在は、接客や空間づくりに携わるスタッフや店長とは別に、みんなの相談役のような形でゼネラルマネージャーがいる。10人ほどいるショップスタッフ全員と年に4回面談を行い、目標に対する進捗の確認をしたり、業務上の困りごとの解決策を探ったり。スモールステップで、成長を実感できる仕組みづくりに取り組んでいる。

さらに今後は、業務上の判断がしやすくなるように、ブランドのあり方などを言語化してまとめていく予定。

「何が正解かわからない、誰に相談していいかわからない状況で働くのは、誰でも不安ですよね。組織の土台をしっかりすることで安心感が生まれたら、みんなのクリエイティブな部分がより発揮しやすくなると思います」

会社の体制づくりとあわせて、ここ数年で動き出しているのが、ジュエリーの新しい楽しみ方を提案する取り組み。

新たに生まれたVSLというラインは、ダイヤをふんだんに使った華やかな雰囲気のもの。従来のnoguchiのデザインに比べると、かなりボリュームがある。

「私自身ずっと、ダイヤの輝きが強いリングは似合わないと思ってきたけど、歳とともに馴染むようになって。普段使いするのもかっこいいと思うようになりました」

「このVSLのシリーズも華やかな雰囲気だけど、たとえば、ジーパンにTシャツにビーチサンダルみたいなファッションにも似合う。そういうスタイルも面白いと思うんです」

もうひとつスタートしたのが、香りのプロジェクト。オリジナルの練り香水を開発し、ポケットに入れて持ち歩くための専用のケースもつくった。香りは3種類。それぞれ、「知」「情」「意」という人の心の動きに関する名前がついている。

「ジュエリーもそうだけど、香りも、人にアピールするためにつけるんじゃなくて。たとえば、今日は意志をしっかり持って行動したいから、“意”の香り。ちょっとリラックスしたいときは“情“の香りっていうふうに。今日はどんな気分?って、自分に問いかけて選ぶと楽しいですよ」

 

人の気分は日々移ろっていくもの。だからこそ、忙しく何かに追われていると、自分の気分のことは蔑ろになりがち。だけど、好奇心やアイデアなどの原動力は結局、気分のいい状態があってこそ生まれるものです。

毎日気分よく過ごすって、大事なこと。

それを再確認したnoguchiのみなさんは、以前より肩の力が抜けて軽やかに見えました。

(2025/9/11 取材 高橋佑香子)

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