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思いをとどめる
日記のようなジュエリー

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

たった1年前のことでも、忘れてしまっていることは多い。

日記を読み返すと、何気なく記した単語や、落書き、使っていたペンなど、些細なきっかけでその日に気持ちが戻っていく。

ジュエリーブランドnoguchiがこれから目指していくのは、そんなふうに、いつの間にか忘れてしまう人の気持ちを、形あるものに込めて伝えていくこと。

2004年のスタート以来、noguchiは常識にとらわれず、自由なフォルムのジュエリーを手がけてきました。

金属が波打つような表情を残したジュエリーは、光を穏やかに反射させ、人の肌に寄り添う。年齢、性別を問わず楽しめるファッションとして、多くの人に親しまれています。

またショップには、誕生日や結婚、大切な人への贈り物など、自分の人生のさまざまな節目をジュエリーに重ねて残しておきたいというお客さんも訪れます。

アクセサリーとして楽しむ以上の可能性が、ジュエリーにはあるのかもしれない。

そんな思いから、noguchiは新たな歩みを進めようとしています。

これまで多くのお客さんに親しまれてきた青山と新宿伊勢丹、ふたつのお店に加え、現在は東京駅周辺施設にも新店舗の準備を進めています。

今回は、これらのショップで働くスタッフと新店舗での店長候補を募集します。接客はもちろんディスプレイやDM作成など。多岐にわたる仕事を通じて、noguchiのブランドを一緒につくり、伝えていく役割だと思います。



表参道の駅から地上に出て、根津美術館のほうへ歩いていく。

私がnoguchiの取材に向かうのは3回目。最初は、ジュエリーショップという空間に少し緊張していたけど、スタッフのみなさんはいつも温かく接してくれる。

今回お店で迎えてくれたのは、デザイナーの野口さんと、ブランドのマネジメントを担っている佐藤さん。野口さんの姿を写真では紹介できないのですが、とても穏やかに会話を進めてくださる方です。

もともと野口さんが独学でジュエリーをつくりはじめたのが28年前。ブランドが形になったのは、その10年後のこと。おふたりは、その歩みを感慨深そうに振り返る。

ショーケースに並ぶ小さなジュエリーとは対照的に、ショップには大きな鏡が設置されている。

それは、洋服やシルエットなどのコーディネートと合わせて、自分に似合うものを見つけてほしいという思いから。

もともとデザイナーの野口さんは、ファッションを学んでいたこともあり、noguchiのジュエリーはファッションを意識してつくられることが多かった。

最近になって、その意識は少し変化してきたという。

「きっかけは、自分が親になったことだと思います。生まれたばかりの子どもを抱いたとき、その小ささがとっても愛しくて。あー、きっとすぐ大きくなっちゃうんだろうな、そしたら僕は今の気持ちを忘れてしまうのかなと思ったんです」

この気持ちを忘れず胸にしまっておくために、ジュエリーデザイナーとして、何かできることはないか。

そんな思いから野口さんは、ベビーリングをつくりはじめた。ベビーリングというのは、赤ちゃんの指のサイズに合わせてつくるリングのこと。その小ささに思わずため息が漏れてしまう。

「先日ベビーリングの製作を依頼してくださったお客さんが、『刻印でこの子が初めてしゃべった言葉を入れたい』って言われて。日本語としての意味を持たない、喃語のようなフレーズだったんですが、すごくかわいいなと思いました」

ほかの人には意味がわからなくても、家族にとってはかけがえのない言葉。

その子が物心ついてリングに刻まれた言葉を見たとき、両親の眼差しを感じられるはず。

ジュエリーには、手にした瞬間に人の表情を明るくさせる力があるけれど、時間が経つことで深まっていく価値もある。

「以前、海外の友達がおばあちゃんからもらったリングを身につけていて、素敵だなあと思ったことを思い出して。我々もそうやって人から人へ受け継がれるものをつくっていきたいと思うようになりました」

何世代にもわたって使えるように、最近は少し高価な素材を取り入れながら製作することも増えてきた。

「今まで感覚的につくってきた部分もあったんですが、たとえばダイヤって、産地によって色やカットの仕方が違っていて、そういう背景を知るのもおもしろい。これからはショップでも、素材の知識やストーリーをきちんと伝えられるようにしていきたいなと思っています」

もうひとつ、野口さんがこれから力を入れたいと考えているのが、ジュエリーに刻印を入れるサービス。

何かの記念でジュエリーを買うとき、その気持ちを言葉で残す提案をしていきたいという。

「たとえば、おばあちゃんからリングを受け継いだお孫さんが刻印を見て、『おばあちゃん、私と同い年のころにこんなこと考えていたんだ』って気づく。そうすると、歳の離れたおばあちゃんのことも、ちょっと身近に感じられますよね」

「刻印というと、ちょっと構えてしまうかもしれないけど、本当に何気ない言葉、さっき話した喃語のように、クスッと笑っちゃうような言葉をジュエリーに入れて、持っておく。そういう文化を発信していきたいなと思います」

たとえば、大切な人に伝えたい思い。

いきなり短いフレーズにまとめるのは難しくても、お店でスタッフにその人の話をしているうちに、ふと浮かんでくる言葉があるかもしれない。

お客さんから素直な言葉を引き出すためにも、お店の空気づくりはとても大切。

「接客やディスプレイの仕方には、スタッフ一人ひとりの感性が表れていて。デザインや製作は僕が担っているけれど、noguchiというブランドは、本当にみんなでつくってきたものだと思います」



ショップで働く白須賀さんは、とても柔らかな雰囲気の方。「白須賀さん、いますか?」とお店に遊びに来るお客さんもいるという。

普段はどんなふうに、お客さんと接しているんですか?

「はじめての方には、今日は青山でお買い物ですか?みたいな質問から、好みやライフスタイルを探ります。何度か来てくださる方とは、ジュエリー以外の、たとえば最近食べたおいしいものとか、そんな話をすることもありますね」

お客さんがどれにしようか迷っているときは、その時間も尊重する。一人で考えたい人なのか、意見を求められているのか、相手の表情などを見ながら接していく。

「どっちがいいですか?って聞かれたときは、それぞれの印象を伝えて相手が選びやすいように。でも思わず『これ、似合いますね!』って、私から言っちゃうこともあります(笑)。その人が前からつけていたみたいに、ジュエリーが馴染んで見えることもあって」

「そういうときは、お客さまも『そうですよね!こっちにしよう』って、意見が合うことが多くて。一緒にうれしくなっています」

スタッフが本当に感じたことを素直な言葉で話すからこそ、お客さんも心を開いてくれる。

ディスプレイを考えるときも、まずは、自分で「いいな」と感じる気持ちが出発点になる。

noguchiのショップスタッフは、接客だけでなくディスプレイや写真撮影なども担う。4年前、新卒で入社した白須賀さんは、ここで働きながらカメラの扱いやフォトショップの使い方を覚えてきた。

最近もちょうど、クリスマス用のDMを完成させたばかり。

「一回でOKになることもあれば、何度もやり直すこともあって。今回は、完成まで1ヶ月半くらいかかりました」

野口さんからは、どんなアドバイスがありますか。

「最初に撮った写真を見せたら、もうちょっとクリスマスらしい感じを出そうって言われたので、赤い布を敷いたんです。そうしたら、ジュエリーの印象が変わってしまって。そこから何度かやり直したあと、最終的にOKが出たのは、光がやさしく見える印象を意識して撮った写真でした」

「やり直しが続くと焦る気持ちもあるんですが、一つひとつすり合わせていくことで、noguchiらしさってどういうものなのか、自分のなかで理解が深まっていくような気がします」

伝え方ひとつでブランドの印象も大きく変わる。センスは続けるうちに磨かれていくものだから、まずは妥協せずに粘り強く取り組む姿勢が大切なのかもしれない。



とはいえ、お客さんと丁寧に向き合いながら、写真も撮りながら、次のディスプレイを考えながら…と、このゆったり時間が流れるお店からは想像もできないほど、noguchiのスタッフはマルチタスクを抱えることも。

これからはもっと働きやすい環境を整えていくために、働き方を見直そうとしているところ。あらためて佐藤さんに、その思いを聞かせてもらう。

「今までスタッフは次から次へとタスクに追われて、大変だったと思います。これからはもっとみんなが日々の業務に落ち着いて向き合って、休むときはしっかり休めるようにしていこうと社内の体制を整えようとしているところです」

noguchiのお店では、時季ごとのディスプレイ変更や写真撮影、DM作成、他店でのポップアップ、展示会など、さまざまなプロジェクトが並行して進んでいる。

個々で時間をかけて取り組む仕事も多いので、誰が何をどれだけ担当しているか、見えづらい面もあった。

本来ショップスタッフは、ブランドのお客さんを一番よく知るコミュニケーター。これからは、その役割に集中できるように、マネジメントなどはバックオフィスでサポート出来るように、変えていこうとしている。

そうすれば新しく入る人も、まずは落ち着いてショップの基本の業務に慣れていけるはず。接客やディスプレイ、野口さんとのやりとりなどを通じて、ブランドの世界観やお客さんとの関わり方を、自分のものにしていく。

「ブランドとしても今、『人が思いを込めて受け継ぎたくなるようなジュエリーをつくっていく』という価値観をもとに、新しい一歩を踏み出そうとしていて。それをどうお客さまに伝えていくか、一緒に考えていけたらなと思います」



音楽や匂いによって、昔の気持ちが蘇ってくるように、ジュエリーを通して大切な思いをそばにとどめておく。

お客さんがジュエリーを選ぶ時間は、自分の内面と向き合う時間。その傍らにそっと寄り添うように、noguchiのお店は続いていくのだと思います。

(2021/11/10 取材 高橋佑香子)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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