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アートがひらく
福祉と地域

天気がいい日は近所をさんぽします。

商店街で買い物をしたり、喫茶店でコーヒーを飲んだり。

何気ない日常が、かけがえのない時間です。

愛成会は、そんな日常を、だれもが安心して過ごせる社会づくりに取り組んでいます。

障がいのある人の暮らしに寄り添う福祉事業と、芸術文化を通じて多様な人が出会い、地域社会と関わる事業を行っています。

今回は、多様な芸術文化活動を支える共創推進スタッフの募集です。

障がいのある人のアート活動をサポートしたり、障がいの有無にかかわらず誰もが参加できるアトリエを運営したり、展覧会やワークショップなどを通じて、人と人、そして人と地域が出会う場をつくっていきます。

イベントやプロジェクトの運営経験があれば歓迎ですが、美術や福祉の専門知識がなくても大丈夫。

アートや福祉を通じて、多様な人の表現や価値観に触れ、その個性や魅力を人に伝えることが好きな人に知ってほしい仕事です。

 

中野駅から徒歩10分。

飲食店が並ぶにぎやかな中野サンモール商店街を抜けて、閑静な住宅街の一角に、愛成会の事務所を見つけた。

緑が多く、鳥のさえずりが聞こえてくる。

事務所の隣にある建物「メイプルガーデン」へ。

理事長でアートディレクターの小林さんが出迎えてくれた。

「愛成会は地域とのネットワークを広げながら、多様な人たちが暮らしやすい社会を目指しています」

小学生のころ、夏休みに障がいのある人たちが暮らす入所施設のワークキャンプに参加していた小林さん。

大人や子ども、障がいのある人、ない人が協力し合いながら、農作業をしたり、キャンプファイヤーをして過ごす。

炎天下の中で草むしりをしていたら、座って休んでいる利用者さんに気づく。暑そうと思い、小林さんは自分の麦わら帽子を貸すことに。

「その日から会うたびに『麦わら帽子、ありがとう』って言われるんです。翌年も3年後も。こちらにとっては小さな出来事でも、その人にとって嬉しかったことや、誰かへの感謝をずっと大切にしている。そういう姿勢に、人として尊敬する気持ちを持ちました」

ワークキャンプでの原体験は、障がいの有無に関わらず、多様な人が出会う大切さを教えてくれた。大人になった今でも、その根っこは変わらない。

「人は出会うことでお互いを知り、それぞれ個性があることを学び合う。違いを越えて理解し合える世界になったら、だれもが生きやすい豊かな社会になると思うんです」

「障がいのある人たちの暮らしは、施設だけでは完結しません。利用者さんの日常は、地域の中にもあります」

「でも、地元の人たちと関わる機会が少ないと、知らないことから障壁や偏見が生まれやすくなります。地域との共生を大切にしていくために、愛成会ではアートを切り口に、さまざまな事業やイベントを行っています」

そのひとつが「アトリエpangaea(ぱんげあ)」。障がいの有無や年齢に関わらずだれもが参加でき、自由に創作活動ができるオープンな場だ。

さらに年に一度「NAKANO 街中まるごと美術館!」を開催。

中野のまちなかを美術館にみたて、中野ブロードウェイ商店街をはじめとする商店街や公共施設など、日常の風景の中にアール・ブリュット作品を展示している。

アール・ブリュットとは、専門的な美術教育を受けていない人々が、独自の発想と表現によって生み出す芸術作品のこと。「生(き)の芸術」とも呼ばれている。

今年の「NAKANO 街中まるごと美術館!」は1〜2月に開催し、全国各地の作家の作品が展示された。

色鮮やかな点描で描いたスフィンクス。まるで音楽を奏でるような緩やかな曲線で表現された楽譜。本物の切り株をキャンバスにした絵画や、刺繍に至るまで、さまざまなアート作品がある。

「開催期間中は、通勤・通学、まちの人、観光客を含めていろいろな人の目に留まります。16年続けることで、それが中野のまちの景色になっていきました」

事業を通じて、地域の人と関係が育まれ、愛成会の活動を応援してくれる人も増えている。

「コロナ禍で利用者さんが外に買い物に行けなくなったとき、職員が発案して、『会いたかったよプロジェクト』という企画を行ったことがありました」

アート事業を通じて、まちの人たちと関係性があったからこそ、愛成会の困りごとにも協力してくれる。

地域と関係性を築きながら、多様な人の表現や活動の場を広げていく。

それが、今回募集する共創推進スタッフの役割でもある。

どんな人に来てもらいたいですか。

「新しいことを面白がれる人だといいですね。イベントだったら自分のアイディアも入れながら、事業を動かせる楽しさがあると思います」

 

隣でうなずきながら話を聞いていた、共創推進責任者の玉村さん。新しく入る人にとって一番身近な先輩になる。

共創推進スタッフの仕事は、障がい者の芸術活動の普及支援やアトリエの運営、イベント企画・実施などさまざま。まちの人と話したり、展示の現場に行くこともある。

通年で取り組んでいるのは、「東京アートサポートセンターRights(ライツ)」の運営。

「作品を発表できる場所を探している」「商品化して仕事にするにはどうすればいいか」など、障がいのある人たちの芸術活動にまつわるいろいろな相談の窓口となり、支援を行う。問い合わせは、本人からの場合もあれば、家族や施設の職員から来ることもある。

たとえば、平日は施設に通って休日は自宅で絵を描いている人。描いた作品を誰かに見てもらう機会があまりなく、作品を見てもらえる場がないか、発表できる機会はないかと相談を受けた。

「ご希望に沿った展示の機会やアトリエを紹介します。話していくなかで、作品をどうやって応募したり送ったらいいんだろうと相談を受けることもあって。主催者に確認しながら、応募方法や梱包の仕方などをお伝えすることもあります」

不安に思うことは人それぞれ。一人ひとりの状況や困りごとに合わせて対応するようにしている。

実際の展示につながると、素直にうれしいと玉村さん。

「これまで1人でやっていた創作活動が、展示をきっかけに人との関わりが増え世界が広がっているように感じます。それが、本人のやりがいや創作意欲につながっていると、この仕事をしていてよかったと思いますね」

新しく入る方も電話やメールでの相談支援を行う。最初は先輩スタッフのサポートを得ながら徐々に仕事を覚えていく。

「常にいろいろなプロジェクトが並行して動いているので、状況に合わせて柔軟に切り替えながら進められる人だと合っていると思います」

たとえば、「NAKANO街中まるごと美術館!」は、商店街や行政、コラボしている学校との打ち合わせから、申請書などの書類作成、チラシづくり、作家との連絡調整やイベント後の報告書まで、一連の業務を担う。準備は約1年かけて調整していく。

見た人からは「もっとほかの作品も見てみたい」「ポスターで紹介されている作品についてもっと知りたい」などの声も寄せられる。

「いろいろな人に見ていただけるので、作家さんはもちろん、そのご家族の方もすごく喜んでくださる姿を見ると、実施してよかったってうれしい気持ちになりますね」

作家、地元の人、観光客など、さまざまな人が交じり合う、交差点のような場になっている。

これまでは全国の作家の作品を中心に展示してきたが、これからは愛成会の利用者さんも参加したり、中野区の観光大使をはじめ、中野にゆかりのある人たちとも連携したりしながら、地域とともに活動の幅を広げていきたいと考えている。

「最初は、関わる人の多さや年齢の幅広さに驚きました。私はコミュニケーションが得意というわけではなかったので、それを先輩に相談したんです。そしたら、目の前の人を大好きになることが大切と教えてもらいました」

それから玉村さんも、目の前の人を好きになることを心がけるように。

「そしたら気持ちが楽になったんです。相手への興味や関心も自然と生まれて。厳しいことを言われることがあっても、この人なりの考えがあるのかなとかと考えたり、伝え方を工夫してみたりするようになりました」

人それぞれに考え方や価値観がある。

相手を知ろうという気持ちを大切にしていることが伝わってくる。

 

「無関心というのが、1番つらいですね。いろんな人たちと交流して、知ってもらうことが、関係づくりのスタートラインだと思います」

そう話すのは、4月から共創推進スタッフに移った小内さん。

「私の娘は障がいがあるんですが、幼稚園まではみんなと一緒のクラスでも、学年が上がるにつれて、ほかのお友達と離れてしまうんですよね。成長しても共に生活できる環境があると良いと思いました」

娘さんが成長し、福祉の仕事を探していたところ、愛成会に出会う。

「愛成会はだれもが安心して暮らせる場所をつくっていることに、感動しました。子どもの将来を考えたとき、もっとインクルーシブな世界になってほしいと願っていて、愛成会の一員としてそれを実現したいと思ったんです」

共創推進スタッフになってすぐに担当したのが、「インクルーシブな学び」プログラム事業。

特別支援学校に出向いて、いろいろな素材で創作を楽しむアートワークショップを提供している。

自由に創作活動ができることを大切にしているため、表現方法を教えることはしないという。

「いろいろな表現を楽しんでほしいので画材の選定は大切にしています。ベーシックなのだとクレヨンや色鉛筆、水彩絵の具とかですが、重度の障がいのある生徒さんがいる場合は、指絵の具や握りやすい太い筆を用意したり。生徒さんの状況に合わせて、どういう画材を持っていくか工夫しています」

業務の幅広さや、関わる人の多さを心配に思う人もいるかもしれない。

愛成会が大切にしている人に対しての思いやりは、仕事の中でも感じていると小内さん。

「仕事が詰まっているときに『大丈夫?』と、みなさん声をかけてくれるんです。だれかが助けてくれる環境って安心感があります。だから私もだれかが困っていたら声をかけます。そういうコミュニケーションが取れる関係なのが、愛成会のいいところです」

 

だれに対しても思いやりの心を忘れない。

それは、68年つづいてきた愛成会の中で、育まれてきた文化なのだと思いました。

人とのつながりや思いやりを大切にするからこそ、いい関係が築けるし、働きやすさにもつながっていると感じます。

愛成会は多様な人たちのアートをきっかけに、人と地域、社会のつながりを生み出し続けています。

だれもが暮らしやすい日常を一緒につくっていきませんか。

(2026/05/13取材 小菅綾香)

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