「僕らのやっていることは、どこを切り取っても矛盾がない。やっていることを正直に、隠さずに話すことができる。そういう健全さが、やわらかいコミュニケーションにつながっているのかなって思っています」

パノコトレーディングは、オーガニックコットンの原糸の輸入、生地の企画や販売をしている会社です。
インドやタンザニアから届くコットンは、すべて、だれがどこで育てたかわかるもの。
そんなコットンを使ったブランドSISIFILLE(シシフィーユ)で、営業や広報など、外に伝え、届けていく役割を担う人を募集します。
経験は問いません。
やわらかく、正直に働いていきたい人に似合う仕事だと思います。
パノコトレーディングのオフィスがあるのは、東京の小伝馬町と人形町のあいだ。
百貨店で賑わう大通りから1本入ると、古くから続く店舗や低い建物が並んでいて、落ち着いた雰囲気がある。
レンガ色のオフィスビルの3階に上がり、突き当りにある扉をよく見ると、とても控えめに記された「パノコトレーディング」の目印があった。

扉を開けて目に入ってくるのは、きれいに並べられた生地。
たくさんの生地に囲まれたスペースで話を聞いたのは、パノコトレーディングの代表であり、SISIFILLEのブランドマネージャーを務める三保さん。

美術系の大学でファッションを学び、ブランドの立ち上げなどを経験。
パノコトレーディングでは生地の企画営業などを経て、3年前に代表のバトンを受け取った。
「以前取材していただいたのは、ちょうどそのころでしたね。基本的に扱っているものは変わりません。オーガニックコットンを主軸に、原料の調達から生地の製造、販売をしつつ、ブランドとしてSISIFILLEをやっています」
パノコトレーディングがはじまったのは、1987年。
貿易に関わるさまざまな事業をしてきたなかで、オーガニックコットンを扱うようになったのは、まだ「オーガニック」という言葉に聞き馴染みがなかった30年ほど前のこと。
土地に負荷をかけない持続可能な栽培が可能で、育てている人たちの健康を害す可能性も少ないこと。収穫したあとの紡績、織布、染色などの製造工程全体を通じて、化学薬品の使用が最小限に抑えられていること。
ほかにも現地で児童労働などを行って栽培をしていないことなど、さまざまな取り決めをクリアしているものだけをオーガニックコットンとして輸入している。
さらにスイスのリーメイ社が手掛ける、生産者にフェアなオーガニックコットンを生産するプロジェクトに参加。
単にオーガニックコットンを買い取るだけでなく、売上の一部を寄付し、コットンの産地で暮らす人々の生活支援に使っている。
「僕らは現地のサプライヤーから直接原料を購入しているので、だれがつくっているものかわかる。向こうに行けば、農家の人たちともコミュニケーションをとることができます。これだけの年月をかけて、培ってきた信頼関係は大切にしたい価値だと思っています」

海を渡って届くコットンは、産地や種類、その年の栽培状況によって特徴が少しずつ異なる。
それぞれの特徴を活かし、国内の工場に協力してもらいながら生地にして、主にアパレルメーカーやタオルメーカーなどに販売。
扱う生地や製品には、QRコードを掲載したタグをつけている。

読み込んでみると、「FARM to FABRIC」という言葉とともに、どこで育てられたのか、生地はどのような工程でつくられているのか。コットンが育った風景や生地がつくられた場所の様子が表示される。
「私たちの生地を使ってくださっているお客さまは、原料の背景や、生地のクオリティに対して価値を感じてくださっている方が圧倒的に多いんです。ただ単にオーガニックと名乗れたらいい、ということではないんですよね」
「さらに、情報の確実さ、そこに紐付いた背景を知りたがっている。農業から生地になるまで、実はストーリーがあることを伝えているんです」
情報を開示できるということは、綿花から製品になるまでの長い道のりのなかで、隠すことがないということ。
それが、パノコトレーディングが続けてきた誠実なものづくり。

「世の中が変わってきているなかで、繊維業界全般が置かれている状況は、いいとは言えません。僕らは原料を主体にやってきたけれど、変わっていく必要があると思うんです。自社のブランドや製品をもう少し磨いていく。もっと届けていくことが必要だと思っているところです」
そこで力を入れていきたいのが、11年前から続いている「SISIFILLE」。
オーガニックコットンを使った生理用ナプキンやマスクに加えて、インナーなどのアパレルを開発。女性のライフスタイルをサポートするブランドを目指している。
掲げているのは「SOFTEN THE WORLD. 世界をやわらかくする」という言葉。
「僕らの扱うものって、オーガニックであるのはもちろんのこと、『すごく気持ちがいい』って言っていただくことが多いんですよ。単純に触って気持ちがいいこともそうだし、なんかこう、心に及ぼす影響みたいなものもあると思っていて」
「なにも隠さない。サプライヤーに対しても、お客さまに対しても。やかわらかいコミュニケーションというかね。そういうことも含めて、気持ちがいいと思ってくださることが価値なんだと思います」
現在、中心となって働いているスタッフは6名。
SISIFILLEは三保さんを含む3人体制で、商品の企画から営業、広報、オンラインショップの運営など、ブランドに関わるすべてを担ってきた。
営業などの伝える側を担ってきたスタッフの退職が決まり、仲間を募集しているところ。
一緒に働くことになるのは、SISIFILLEの生産管理などバックオフィス周りのことを中心に担当している道端さん。

美大で建築を学び、内装の仕事を経験した後、しばらく海外を周っていた時期があるという。
日本仕事百貨でパノコトレーディングの記事を読み、働きはじめたのは8年前のこと。
「オーガニックという言葉に惹かれたというよりも、コットンが糸に、生地になる過程を消費者に伝えようとしていること。嘘のないものづくりをしている。その真っ直ぐな姿勢に感銘を受けました」
それまであまりファッションには関心がなく、自分が繊維業界で働くことになるとは思ってもみなかったそう。
生地の織り方・編み方、コットンの品種による違い、縫製の仕様など。覚えることが山ほどあった。
「お客さまのなかには洋服や生地のことはもちろん、オーガニックコットンについて詳しい方も多いので、やりとりしながら逆に教えていただくようなこともたくさんあって。でも、あたらしいことを知るのはすごく楽しいです」
「どの過程にも隠すことがない。ごまかさないで全部を見せられる。そういうブランドを自分たちでつくりあげているという実感があるからこそやりがいがあるし、もっとできることがたくさんあるんだって感じています」

最初は生理用ナプキンからはじまったSISIFILLEも、インナーやTシャツ、ブランケットなど、少しずつ展開を増やしてきた。
新しい商品は、どのようにしてできていくのだろう。
「私自身、どんなものが欲しいかとか、けっこう思いつきだったりもします。今企画しているTシャツは『日本の夏って暑くてしょうがないから、こういうのが欲しいよね』というところからはじまりました」
生地から企画して、チームのメンバーや外部のデザイナーさんと、何度も打ち合わせを重ねてサンプルをつくっていく。
肌触り、丈や幅、縫い方やタグの位置。
商品をつくっていくとき、優先して考えるのは、着ていて気持ちがいいかどうか。
「気持ちいいことが第一。気持ちがいいから着たいって思える服じゃないと。肌触りはもちろん、原料やその背景も含めて、全部を通して気持ちいいものをつくっています」
「みんな生きづらい世の中で一生懸命生きているじゃないですか。そんななかで、身につけるもので自分自身の気持ちがやわらかくなったら、家族や友達に対してもやわらかくなれる。そういう小さな連鎖が広がっていくことで、ひいては世界がやわらかくなるって思っているんです」

続けてきたなかで、自分たちが大切にしたいこと、つくっていきたいものは見えている。
そんな今、課題に感じているのは、伝え方や届け方。
これまではポップアップイベントを企画して手に取ってもらう機会をつくったり、展示会に参加して取引先を増やしたり。
SISIFILLEの考える“やわらかさ”を共有するコミュニティを広げようと、さまざまな人にインタビューをして紹介していた時期もある。
「私たち、できていないだけで、もっと伝えたいこと、届けたいことはいっぱいあるんです。何を伝えるのか、その方法は、新しく入ってくださる方と話しながら考えていきたいですね」

産地のこと、コットンを育てている人たちのこと。日本で生地をつくり続けてくれている工場のこと。
昨年訪ねたコットンの産地、タンザニアでのことも、まだうまく伝えられていないことのひとつ。
「SISIFILLEの売上の一部を寄付して、そのお金が井戸を造ったり、学校を造ったり、どんな支援に使われているのはもちろん知っていました。でも実際に行って、こんなにたくさんの人の生活が変わったんだってことを自分の目で見てきたんです」
「私たちがやっていることって、すごい意義のあることなんだなと改めて実感して。ぐっと来るものがありました。この活動を続けていきたいし、続けていかなくちゃいけない。私が現地で感じたあの感動と熱量を、お客さまにどうにか伝えなければと、ずっと思っているんですけどね」

道端さんは9月から、産休に入ることが決まっている。
それまでのあいだ、新しく入る人とはSISIFILLEの仕事、そして考え方について共有していきたい。
「この会社はいい意味で干渉しないというか。みんなそれぞれに意見を持っていて、尊重している感じがあります。話し合いは頻繁にするし、打ち合わせもけっこう長いです」
「向いている方向は一緒でも、それぞれが思うSISIFILLE像ってけっこうバラバラなのかもしれません。こうじゃなきゃって型にはまる必要はなくて。話をしながら、一緒にSISIFILLEをつくっている感じがします」
人前で話すのが苦手だという道端さん。
営業や広報などを任せていくパートナーとして、積極的に外に出て、人と話すことが好きな人が来てくれると心強い。
「少ないメンバーがそれぞれに動くので、自分のことをマネジメントする能力は求められます。いつまでにこれやって、とか指示を出してもらえないので。人によっては、そこが苦しいかもしれないですね」
「あと私、すごく細かいんです。畳まれた服の幅がバラバラになっていたりとか、ラベルが曲がっていたりするのとか、すごく気になっちゃうんですよ。それってブランドの見え方にもつながるし、みんなが自然にできていることでもある。お客さまはもちろん、一緒に働く相手に対しても、相手が仕事しやすいように、必要な情報をまとめてあげるとか。そういう細かい気配りができる人だと、ここで働きやすいんじゃないかなと思います」

製品とコミュニケーションで、世界をやわらかくする。
それは日々、細かな信頼を積み上げていくことから生まれていくのかもしれません。
遠い土地で育つ綿花から、生活のなかで身につける製品になるまで。
包み隠さず、正直に働きたい人をお待ちしています。
(2026/5/29 取材 中嶋希実)


