オフィスにある群青色のカーペット。靴を脱いで足を乗せてみる。
足を包み込むような、何度も足踏みしたくなるほど、ふかふか。
化学繊維の糸を接着剤で固めてつくられた一般的なカーペットとは違う。足裏から伝わってくる感覚だけで、こんなにも差があるなんて。

堀田カーペットは、国内では希少なウィルトンカーペットのメーカーです。
世界中から厳選した英国羊毛などを中心に、糸の太さや撚(よ)りからデザインして一から織り上げるカーペットは、バランスの取れた密度感を持ち、何十年も使い続けられるタフさがあります。
5つ星ホテルにも選ばれ、日本の暮らしに馴染む「一番気持ちが良い床」をつくり続けてきました。
けれど、この美しい床を生み出す織機は絶滅寸前。
放っておけば、技術も機械も途絶えて、二度とつくれない時代に突入してしまう。
だからこそ堀田カーペットは、自社で織機そのものを開発するメーカーへの進化など、未来へ残すための変革を続けています。
今回は、この変革期を裏から支えるバックオフィススタッフを募集します。
仕組みのないカオスを楽しみながら、これからの組織を一緒に形づくっていける人に、ぜひ知ってほしい仕事です。
堀田カーペットのオフィスと工場があるのは、大阪・和泉市。
いったいどんなふうにウィルトンカーペットはできあがっているんだろう。
はじめに工場内を見学させてもらうことに。
ガシャンガシャンと工場内に鳴り響く機械の音、蛍光灯に照らされて光る糸。18世紀から続く製法だけれど、近未来的な空間にも感じる。

堀田カーペットでは、すべての商品にウールを使用している。提携先の紡績工場と一緒に素材を吟味し、染色まで終えると、糸が入荷されてくる。
無地のカーペットをつくるとしたら、およそ1200個のコマが必要で、最大で5色・6000個を交換するのだとか。
並べられた糸は、無限に続いているような荘厳さ。

ぐるっと一通り見学し、事務所の2階へ。
「わざわざありがとうございます〜」と気さくに迎えてくれたのが、代表の堀田さん。祖父の代から受け継ぎ、3代目になる。

「ウィルトンカーペットは、経糸と緯糸をガッチリと織り込む構造だからこそ何十年も持つ抜群の耐久性があって。世界中の羊毛をブレンドして糸からデザインできる圧倒的な表現力を持っています。だからこそ、ほかには真似できないちゃんとした競争力がある」
「僕のポリシーとして会社を継続させるためだけにやる仕事は、したくない。けれど、ウィルトンカーペットが国内から消えることは、日本にとって大きな損失だと本気で思えるんですよね」
現在、新築住宅におけるカーペットのシェアがわずか0.2%。
残すべきいいものだから、残していく。その想いからさまざまな改革をしてきた堀田さん。
2017年には、堀田カーペットをリブランディングし、初の自社ブランド『COURT』を立ち上げ。今や100店舗ほどで取り扱いしてもらうまでに成長。
さらに中川政七商店と共同出資で新会社を設立。昨年の3月に、一棟貸しの宿「TACTILE HOUSE OSAKA」をオープンした。

シェア0.2%からの逆襲。「本当に残すべきものか」を常に問い続け、攻めの姿勢で市場を切り拓いてきた。
「残していくためには、応援してくれる人がいることが大事だと思っていて。この10年は、ウィルトンカーペットのすごさを伝えることに注力してきました」
「同時に携わりたいと思う人や、携わるべき仕事があること、そして、それができる環境があることも大事だなと気づいて。この2〜3年で社内を整えてきたところです」
熱い意志と、変わり続ける姿勢に共感した人が集まり、ここ1年ほどで若手を中心に5、6名が新たに入社。現在のスタッフ数は44名に。

組織が育つなかで、次に浮かび上がってきたのが、「管理部」の立ち上げ。
「人数が増えてきたことはありがたいこと。でも僕は魔法使いじゃないから、全員の話を聞くのは無理やわって(笑)。間に入って適切に現場の改善を回してくれる人の重要性が増していると感じます」
それを担うのが今回募集するバックオフィスのスタッフ。
まずは、ベテランスタッフの担う経理や総務、労務といった、会社を維持するための日々の実務を引き継ぎ、実務を一通り一人で主担当として担っていく。
慣れてきたら、今まで紙で管理していた帳簿をデジタル化するなど、引き継ぎながら業務改善もセットで進めていってほしい。

「現場の若手たちから『もっとここを改善したい』という声も聞いていて。でも、受け皿がない状態なんです」
現場ではノウハウが属人化していて言語化されていないことも多いという。
「たとえば、機械を動かす前のチェックリストをつくるとか。ゆくゆくは、そういう困りごとに対して『一緒に考えてみよう』とプロジェクトを立ち上げて、まとめていくことも任せていきたいなと思っています」
でも、きれいな仕組みがほしいわけではなくて、と堀田さん。
「目の前にある課題に一つずつ向き合ってきた結果、組織が大きくなってきた感覚があって。ルールや決まりを先につくってしまうわけではなく、その都度起こる課題に対して、適切に対処していく。その改善の延長線上で、組織が育っていくと思うんです」

堀田カーペットの現場には、20代の若手から、上は70代、80代のパートさんまで。幅広い世代がともに働いている。
「すごく多様性に富んだ、いい組織だと思っています。ただ、コミュニケーションコストはめちゃくちゃ高い。でも、僕はその多様性を維持したいし、コストを許容できる組織でありたいんです」
「新しく仲間になる方も面倒だと思わず、受け止められる人だとうれしいですね。フラットな視点で、現場の人たちとじっくり関係性を築いていってほしいです」
現場の人たちとじっくり関係性を築いていく。
外部から人事部長の役割を担っている鎌苅(かまかり)さんは、まさにそんな人。
隔週でオフィスに通い、スタッフ一人ひとりの面談を重ねてきた。

数々の企業を見てきた鎌苅さんから見て、堀田カーペットはどう見えているんだろう。
「本当にいいものをつくっているということに関して、誰一人として嘘偽りがないですし、誇りとやりがいを感じられる。それはものづくり企業として、すごく強みだなと感じますね」
「ただ、熱があるからこそのハレーションもあって。最初にご相談いただいたときは、組織のなかでそれぞれがしんどさを抱えている状況で。職人らしい強いこだわりを持っていますから、感情的なもつれやコミュニケーションのズレがあちこちで起きていたんです」

鎌苅さんは、会社全体の状況や組織運営とのバランスを踏まえながら、本人の希望をもとに技術習得の機会づくりや担当業務・人員配置の調整を行っている。
スタッフ全員との1on1を導入してからは、新商品の開発をしたい人や、新しくカーペットの施工事業を展開していきたい人なども出てきているという。
「本人が努力を重ねながら、自分らしいキャリアを築いていくこと。そして、その歩みを会社として支えられることは、とても幸せなことだと思っています。前向きに日々の業務へ取り組む姿を見ると、また力になりたいなと思わされます(笑)」

「面談を通じて一つひとつもつれを解きほぐしたことで、組織の土台がだんだんと整ってきて。ようやく次の課題となる『業務改善』に集中できるようになってきたなと感じます」
「導入した方がいいシステムはいくらでもある。でも、それをどう現場に受け入れてもらうかを整えていくのも、新しくきてくれる方の役割なのかなって」
新しいルールやシステムを導入することは、長年そのやり方で働いてきた現場の人にとっては、少なからず不安や戸惑いを生むものでもある。
「現場の意見を無視して勝手に決めると反発が生まれますよね。だから事前に『あなたから見てどうですか?』と相談して巻き込んでおくことは大事だと思います。すると『それなら一肌脱いだるわ』と協力してくれるんです」
「最近、和歌山工場の勤怠システムを見直す必要があって、それを機に、オンラインでの打刻に切り替えることができて。最初から全社で一気に進めようとしてもなかなか難しい。でも、一つの工場でうまくいったという前例ができると、『じゃあこっちの工場でもやってみようか』って広がっていく。大きな変革も、実はこうした小さな変化の積み重ねから始まるんです」
最後に話を聞いたのは、入社して1年目の大村さん。
広報やカーペットを織るためのデータの作成、ECサイトの運営などを横断的に担当している。
新しく入る人は、業務上、大村さんと重なる部分は少ないかもしれないけれど、「自ら仕事を見つけて動くフットワークの軽さ」は通ずる部分もあると思う。

オーダーメイド家具の営業や、ホテルのフロントスタッフを経て堀田カーペットへ入社した大村さん。
「日本仕事百貨の記事で堀田カーペットを知って。素敵なプロダクトだなとファンになりました」
「前職で接客を経験しましたが、自分が前に出て伝えるよりも、いいものを間接的に伝えるほうが性に合うなって。思い切って堀田カーペットへ直接問い合わせて、横断的に色々なことに挑戦するスタッフとして採用してもらったんです」
入社して最初の3ヶ月間は、事務所ではなく製造の現場に配属された。
「ひたすら糸を巻いたり、製品の補修をしたり、配送センターでミシンをかけたり。皆さん、本当に『いいものをつくりたい』という一心で向き合っているんだなと伝わってきました」

新しく入る人も、最初にこうした現場の仕事を体験できる機会がある。「この工程では何を意識して、どんなことをしているのか」、現場を知ることで自分の業務も進めやすくなると思う。
「ただ、手取り足取り仕事を振ってくれるような上司はいないので、最初は戸惑う人もいるかもしれません」
たとえば、ECサイトの運営を任されたときのこと。データの並びが少し煩雑で、管理しづらいなと感じた大村さんは、自ら他部署の人に連絡を取って、商品管理のナンバリングのルールを新しくつくり変えた。
前職での分析や運用の経験、そして一般ユーザーとしての目線を活かした、大村さんならではの小さな業務改善だった。
今回募集するのも、こうした視点を持って動ける人。
「事前に『聞いていた仕事と違う』と不満に思うより、伝えきれない課題が社内にいろいろあるんだろうな、くらいに捉えています。誰かに確認してもらいたいときは、デスクが近い人や営業の先輩に自分から聞きに行ったりして。おかげで、自分でなんとかする力が身につきました」
「自分の業務を、自分で考えて推し進めていく面白さがあります。都心のベンチャーのようにすべてが洗練されているわけではないけれど、そのぶん提案すれば、自分で変えていける権限がある職場だと思いますよ」
今、この変革の渦中にバックオフィスとして携わること。
それは、絶滅寸前の伝統技術を未来へ残すための受け皿を、一からつくり上げていくこと。
日本のものづくりメーカーの未来を支えることにつながるかもしれません。
(2026/06/23 取材 大津恵理子)