小学生のころ、休み時間にドッジボールをしていました。
キャッチするのが苦手で、すぐに当たってしまう。
見かねたクラスの男の子が特訓をしてくれて、怖がらずできるようになりました。
目を逸らさず、逃げない。
会話やコミュニケーションをするうえでも、同じことが大切だと今感じています。
MIWA atelierの代表・三輪さんは、どんなボールが飛んできても、一度受けとめる人。
全国の住宅から店舗、公共施設まで、さまざまな依頼が届く建築設計事務所です。

決して否定しない。建築の「こうあるべき」を押し付けない。
お客さんの意見を聞いたうえで、よりよい提案を柔軟におこなう。
今回募集するのは、建築設計スタッフ。
プロジェクトが年々増えている今、実務経験がある人を仲間に迎えたいと考えています。
打合せスペースを活用したギャラリーの運営やワークショップの開催など、設計にとどまらない仕事も。ここでの経験は、キャリアの幅が広がっていく予感がします。
少ない人数なので、困ったことはすぐに相談して、みんなで支えあう環境です。
ほっと一息つくような心持ちで、読み進めてください。
井の頭恩賜公園は、今日もゆったりとした時間が流れている。そよ風が気持ちいいな。

吉祥寺駅からは歩いて5分。公園を越えて道路沿いをしばらく進むと、MIWA atelierの事務所に着く。
2階の看板には、きれいな光がさしていた。

丁寧なあいさつと一緒に、豊かな香りのお茶をいただく。
この日は、埼玉県春日部市にあるお茶屋さんの茶葉。代表の三輪さんが茶道を習い、日本茶専門店の設計も多く手がけているため、全国のお茶をみんなで飲む習慣がついたそう。入社すると、お茶を上手に淹れられるようになるのは、なんだかうれしい。
MIWA atelierは、今年の春に法人化したばかり。三輪さんを入れて5人という小規模なメンバーではたらいている。

「2008年に個人事業主で始めてから、スタッフを雇うようになって。少し前から、長く働いてほしいなと思うようになったんです。そのための環境を整えようと一歩踏み出しました」
少ない人数でも、プロジェクトは幅広い。
一般住宅、診療所、花屋、美容室、保育園…。ほとんど紹介で三輪さんに依頼が来る。取材の日も、小学校でワークショップを開催していた。
「小学校の改築事業で、地域の声を聞くためにおこなっています。その建物を使う人の想いや意見を、設計に反映していく。固定概念にとらわれず、いろんなことをやっている会社なのかも」
フレキシブルに動いていく三輪さんの設計は、「この人なら何かおもしろい提案をしてくれそう」と期待されている。
「単独のご依頼もありますが、チームに入って、関わっていくことも多いのはうちの特徴ですね。インテリアの会社から依頼を受けたり、どんなスペースにするか決まっていない状態で相談を受けたり」
「『建築はこうあるべき』という考えに引っ張られず、柔軟に受け入れながらみんなでつくっていける人がほしいのかなと思います」
MIWA atelierが手がける建築には、似たものがあまりないように思う。

それは、お客さんへの接し方が影響しているみたい。
「設計するときに共通しているのは、相手の意見や理想を尊重すること。ちゃんと話を聞いて、なるべく気持ちを合わせる。毎回お施主さんは変わるから、要望も変わります。それに沿った空間づくりをするから、私のテイストは混ぜつつも、ちがう雰囲気になるのかも」

たとえば、住宅づくり。
建築士として使い勝手がいい仕様を熟知しているけれど、施主の「あれをやってみたい」をさらによくする選択肢を提示する。住んできた経験が、その人にとっての正解だからこそ、建築業界の当たり前が正解じゃないこともある。
「今の話と表裏一体で、会社のカラーを一言で答えられないのは弱みなのかなって。専門分野がなく、いろいろやっているぶん、自分たちを説明するときに言い淀んでしまうのがもどかしい。相手の想いを受けとめることはやめたくないけど、それが悪目立ちしないようにしたいですね」
新しく入る人にも、いろんな角度から来たものを受けとめられる客観性があるとうれしい。その余白を保つには、心が健やかであることがいちばん。
「人間力や自分の魅力を高めてもらいたくて。自由な時間を過ごしてもらえるよう、残業はなるべく減らしています」
「仕事ばかりじゃなく、建築もアートもデザインも、好きなことを吸収して、アウトプットしてもらえたら。それがお客さんへの対応や設計につながるはずです」

三輪さんのもとで、学べることはなんでしょう。
「プロジェクトが増えても、ひとつのジャンルに特化した設計にはならないだろうし、大きいものから小さいものまでやっていくと思います。その豊かさは、おもしろがってもらえるんじゃないかな」
「社外の人と一緒に進めていくことも多いので、さまざまな人から学べるチャンスがあります。いい意味で受け身の姿勢になって、学んでみたい、いろいろやってみたい人が合うと感じますね」
設計スタッフの伊原さんは、まさにそんな姿勢を体現している人。

数々のプロジェクトを経験して、今年で入社8年目。
小さなころから図工や家庭科など、ものづくりが好きだった伊原さん。自然と模型づくりに興味が芽生え、建築の道へ進んだ。
これまでにつくった模型は、どんなに細かいパーツでも棚の上に保管。大事そうに並べられていた。

「模型は、お客さんに持っていくと立体的に見てもらえるので伝わりやすいんです。画面や紙の資料より、手に取れるほうが理解度も高くなるし、打ち合わせも盛り上がる。うちの事務所は、模型をちゃんとつくることが多い気がしますね」
「最初の基本設計も好きですよ。建物を形づくる作業なので楽しくて。実際に建てるときに、細かいことを決めて、どうやったら美しく仕上がるか、みんなで試行錯誤する現場もおもしろい。どの作業もいかに楽しくやろうか考えています」
三輪さんとともに、一つずつプロジェクトを担当。
規模も関わる人もさまざまだからこそ、やりがいと苦労が生まれる。
「お施主さんと打ち合わせすると、使う人目線の声をいただくので、毎回新鮮な気持ちになります。その声に応える柔軟性は、大きなディベロッパーからすると一般的ではなくて。意見をポジティブに変換していく能力は必要だなと感じました」
いつ、どんなプロジェクトが来るかわからない。過去の経験や事務所のやり方にとらわれず、考えをちょっとゆるめてMIWA atelierに組み込めたら、きっといい風が吹くと思う。
「自分の意見を押し通すことも時には必要だろうけど、素直な心で話ができるとうれしいですね。何を設計するかわからないのは、うちの事務所らしいのかな」
たとえば伊原さんが手がけた住宅の改修工事は、まさに予想外だった。
「擁壁(ようへき)があるお家からのご相談で、新たに玄関までの階段をつくりたいというリクエストがありました。基本的には、限りある土地を掘削してつくる流れなので、どうやったらかなえられるか練って、なんとかつくりあげました」
「こんなに難しい案件はもうないだろうと思っていたら、次の住宅も擁壁があり、なかなか大変で。1台しか停められない駐車場スペースに、どうしても2台停めたいと。うちの事務所ならやってくれるんじゃないかと相談されて。こうやったらできるかもとギリギリを攻めて、実現できました。よろこんでもらえて、僕もうれしかったです」
難題がやってきても「できない」とあきらめず、角度を変えて突破口を探していく。目の前の人に応えたいと思う気持ちは欠かせない気がする。

「入社したとき、建築の知識が足りず、三輪さんや先輩が話している業界のことに理解が追いつかなくて。休みの日に建造物を巡ったり、建築論を勉強したり、学ぶ時間を積極的につくりました。それが今、お客さんに提案できるアイデアの種になっているのかも」
表情はあまり変わっているように見えないけれど、伊原さんはよく「楽しい」と言葉にしていた。お客さんに対しての実直な姿勢だけでなく、やっぱり建築が好きなんだなと感じる。
9年目に向けて、どんな設計をしてみたいですか。
「建築には、木造、コンクリート造、鉄骨造の3種類があります。木造とコンクリート造は経験できたので、鉄骨造をやってみたいですね。ここでまだ想像もできないステップを踏んでいきたいです」
「伊原さんに聞けばなんでも返ってくる。頭のなかに引き出しがいっぱいある先輩です」
にこやかに教えてくれたのは、入社5年目の乙戸(おつど)さん。新しい道に進むため退職する予定。

乙戸さんは、小説に書かれた家や生活、舞台の美術セットなど、物語の空間に興味があった。大学院まで6年間、ひたむきに建築を学び、MIWA atelierへ。
「大きな事務所で、長い期間をかけた壮大なプロジェクトを動かすのは、あまり私らしくない気がしました。この事務所では、自分の感覚に近いサイズや時間の設計をすることができたと思います」
たとえば新潟県燕市の「サーキュラーソフトクリーム」。
印刷・パッケージメーカーが、新事業として、ショールーム機能のある店舗をつくる計画に携わることに。何を加えるのかまったく決まっていないところから、設計が始まった。

「カフェと物販のあるお店にしたいと聞いていたので、ひとまず図面を引いていたら『どうやらソフトクリーム屋さんになりそうだよ』ということで、慌てて照準を合わせにいきました」
物件は、住宅1軒ほどの面積。大きすぎない建物づくりは、乙戸さんの感覚にぴったりだった。
「つくっている実感が伴いやすいサイズでした。スケジュールも5年や7年かかるものではなかったので、イメージがつきやすくて。設計しやすく、印象に残っている仕事です」
一方で、最近内装を手がけたプロジェクトは、関わる人数も面積も倍以上に。
「建築士は各所の窓口になりやすい仕事なので、関係者が多いとやることが自然と増えます。やりとりや相談の流れを丁寧に交通整理していく必要がありましたし、立場も全員異なるので、ほかの仕事とはまたちがう難しさを感じました」

乙戸さんは、事務所の上につくった「ミワアトリエのサンカイ」にも関わっている。
定期的にお茶会やアート作品の展示をしていて、新しく入る人にはこの場づくりにも取り組んでほしい。

「サンカイのSNS運用やDM制作、ワークショップの管理などが主なしごと。お家のような温かみのある場を目指してつくっていたので、その雰囲気をうまく引き継いでもらえたら」
「直接設計をしているわけじゃないけれど、場をつくることにはかならず結びついている。建築の裾野をここで広げられたと感じています」
取材のあと、サンカイで作品を見ながらお茶をいただきました。
舟の形をした煎餅と金平糖のお茶菓子。
和やかな時間が自分をゆるめる。
誰かを、自分を、思いやりながら設計をつづけられると思います。
(2026/05/19 取材 久保泉)


